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紺碧の採掘師

第9章 03

2020.06.16 05:19

暫し後。管理の船はSSFの屋上に着陸し、タラップから一同が降りて来る。

護「おおーSSFだ!カルさんの実家だ!」

カルロス「実家じゃない!私は周防がまだMFに居た頃に作られたんで」

護「そっか。アンタMF SUだもんな」

カルロス「まぁ定期メンテで若干ここには来るが」

護「ってか今、製造師がここに居るなら実家では?」

管理官「私語は慎むように!」

一行は建物の中に入り、階段を降りて待合室のような場所で待機する。

そこへ受付の女性が来ると「お待たせしましたぁ。メンテの方、こっちへどうぞー」と呼ぶ。

管理官「行って来い。我々はここで待つ。」

護とカルロスは立ち上がり、女性について廊下を歩く。

女性「お久しぶりです、カルロスさん。元気そうで何より」

カルロス「…どうも。」

三人は、いくつかロッカーと更衣室が並ぶ小さな部屋に入る。

女性「じゃあここでメンテの準備してね。着替えたら教えて」と言い出て行く

カルロス、はぁと溜息ついて「メンテか…。」とガックリしつつ「着替えよう…。」

2人はそれぞれカーテンで仕切られた更衣室に入ると着替えをして、メンテ用ガウンに着替えてスリッパを履くと再び通路へ。女性が「じゃあこちらへ」と言い向かいの部屋のドアを開ける。中は病院の診察室のような部屋で、白衣を着た若い男が一人いる。

男「…遺伝子管理官の月宮と申します。メンテするからこっちへ。」と言い部屋の奥へ歩いていく。

カルロス「あれ。…周防先生は?」

月宮「周防先生に貴方たちのメンテをするように頼まれました。」

護「…メンテって管理の方もできるんですか?」

月宮「管理も色々いるんです。俺は遺伝子管理官で製造師見習いなのでメンテできる。」

護「製造師見習い…。」

カルロス「…だったら別にMFでメンテしても良かったのに…。」と言いつつ、メンテナンスポッドの所へ。

月宮「…もしどうしても周防先生が良いというなら連れてきますが。」

護「じゃあ」と言いかけたのをカルロスが

カルロス「いやいやいや」

護「えー。俺、周防先生に会ってみたい」

カルロス「うるさい」

月宮、メンテナンスポッドを指差して「どっちからメンテする?」

護「カルさん、じゃんけん。せーの!」…カルロスちょき、護ぐー

カルロス「お前からだ」

護「え、勝った方からなの?じゃあ俺から。」

月宮「…じゃんけんした意味って」

護「ですよねぇ」と言いつつガウンを脱いで機材の脇に置かれた篭に入れると、ポッドに入る。メンテナンスポッドが閉じられてタグリングにコードが繋がれると同時にポッド内に人工羊水が満たされる。調整システムをチェックする月宮。

カルロス、月宮に「…貴方はなぜ製造師になろうと思ったんです?」

月宮「何となく。」と言い、それからカルロスを見て「貴方はなぜ黒船から逃亡したんです?」

カルロス「…何となく。」と言い「語ると長い。」

それから暫しの沈黙。月宮は黙々と作業を進めて護のメンテが終わる。コードが外れて人工羊水が無くなると、ポッドのカバーが開く。護、ポッドから出て来ると「次、アンタだ。」と言いつつ篭からガウンを取って羽織る。

カルロス「うん」といいメンテナンスポッドに入る。作業を始める月宮。そんな月宮を見つつ

護「…月宮さんは何で製造師になろうと」

すると月宮がちょっとガクッとして「さっき同じ事を聞かれた。」

護「あら。」

月宮「何となくかな。」と言い「ちなみに。俺が貴方たちのメンテをする羽目になったのは、貴方のせいなんですよ。」と護を指差す。

護「俺?」

月宮「周防先生が貴方をメンテすると、十六夜先生に後から何か言われるかもと。…見習いの俺がメンテしても何か言われそうですけど。」

護「あー…。」

月宮「まぁでも管理の俺がメンテするとタグリングには何の問題も無いという確実な証明が出来る。」と呟く

護「えっ」

暫しの沈黙。黙々と作業をする月宮。メンテが終わってカルロスがポッドから出てくる。

月宮「じゃあ着替えて下の食堂へ行って下さい。そこで食事をとるように」

カルロス「その後はどうなるんだろう。」

月宮「多分SSFの簡易宿泊所に泊められると思いますよ。そこで朝まで尋問かな」

カルロス「なにぃ」

月宮「冗談です。でも当分、自由にはならないでしょう。…恐らくアンバーの乗員も採掘船本部で拘束の筈」

カルロス「仕方がない、ここで朝まで管理に『船を持たせろ』と騒ぐ事にしよう」

月宮「船?」

護「俺達、自分の船を持つ為に戻って来たんです。」

カルロス「船を持って自由に採掘して自由に売る、つまり個人事業主になろうという」

月宮「ええっ?!」と驚いて「本気で言ってるのか?」

カルロス「本気だから、わざわざ戻って来たんです。」

月宮「どういう事ですか」

カルロス「とにかく船が欲しいんです!その許可はどこに申請したらいいのか」

月宮「そんなの…無理っていうか」

カルロス「無理じゃない!」

護「どうしてもやりたい!」

月宮「…。」暫し唖然としてから「うーん…。」と言って悩むと「まぁ、人工種関連の全てを決定するのは霧島研だけど。」と言い「無理だと思うなぁ…。」

カルロス「なぜ」

月宮「…だってさ…。状況的に、今、船が欲しいと言うのはまずいよ。阻止されるに決まっている。暫くは大人しくして、信用回復した所で」

カルロス「もー、何だそれは!ああもうバカの集団か、管理は」

護「カルさん落ち着け!」

カルロス「だって結局、何がどうでも阻止なんだろ?だったら直に直談判だ!我々は何がどうだろうと霧島研へ行って訴える!」

月宮「…。」ちと唖然としてから「そ、そんなに…。」

カルロス「当たり前だ!私がどんだけ苦労して向こうへ行き、そして戻って来た事か」

護「俺はドンブラコだけどな!」

カルロス「貴様はどうでもいいー!」

月宮「…じゃあ、とにかく…。どうやったら船の所持を霧島研に認めさせる事ができるか考えよう。」

護「え?…貴方、管理の人間じゃ」

月宮「うん。でも、管理も色々なんですよ。」



一方、その頃アンバーは。

採掘船本部の整備用の格納庫に入っているアンバー。駐機場の方には管理の船と黒船が並んで着陸している。

アンバーの船長室では剣菱が管理に色々質問されている。

管理、ため息をついて「貴方が人工種を大切にしたい気持ちは分かりますが、あまり独断で行動されると困るのですよ。そもそも有翼種という未知の存在を易々と信用するなんて、危機管理意識が低すぎます。もしその有翼種がこちらに危害を加える様な存在だったら」

剣菱「相手は護と共に居たのです。護が無事であるのに」

管理「人工種は懐柔されやすい。だから我々人間が守ってやらねば」

剣菱「はぁ?」

管理「貴方は甘すぎるのです。」

剣菱「…なら私を降ろせばいい。」

管理「そんな簡単な問題ではない。」


食堂ではマリア、穣、ネイビー、良太が事情聴取されている。

ネイビーが辟易したように「ですから…有翼種が呼ぶ方向へ」

穣(ったくもうさっきから何回同じ話を…!相当ヒマなんだな管理って)

管理「何度も言うが、仮に有翼種と出会ったとして、まずは管理に連絡すべきだったんだ。」

穣たち「…。」

管理「そして船長が行こうと言った場合でも、君達は船長を止めねばならない。人工種なのだから」

穣(意味がワカラン…もー、眠くなる…)


とある船室にはマゼンタ・オーキッド・悠斗・健・透が集められている。

オーキッド「…これって監禁って言うんじゃないかなぁ」

悠斗「どっちかと言うと、軟禁だな。」

マゼンタ、見張りの管理官に「…あのぅ。お腹がすきました…。」

管理「順番に食事を取らせるのでちょっと待て。」

マゼンタ「ちなみにトイレ行きたいんですけど…」

悠斗「俺もです」

管理「仕方がないな。順番に行こう。まずは君から」とマゼンタを指差す。

マゼンタ「はい」と立ち上がって部屋を出るとドア前に居た管理が付いて来る

マゼンタ「え。もしかして監視付き?」

管理「うん」

マゼンタ「それ管理しすぎなんじゃ」

管理「私語は慎むように」

マゼンタ「へーい…。」と返事しつつ(もぅ…何なんだよこいつら…。)



再びSSF。

既に着替えて、とある小部屋で管理に尋問されている護とカルロス。

管理「船なんかダメに決まっているだろう!」

カルロス「なぜ」

管理、ため息をついて「いいか。船を持つには航空船舶免許が必要でな。人工種は一等操縦士までなんだ。つまり副長。船長になる為の免許は取れない」

護「採掘船の船長になりたいんじゃありません。小型個人船で」

管理「それでも船長はダメ」

護「むぅ?」

カルロス「とにかく我々は小型船が欲しいのです。」

管理「一人乗りの個人船なら人工種でも持てるぞ。」

護「それって買い物とかに使う『ミニ船』ですよね。あれでイェソド行ったら凄いな。」

カルロス「私なんぞ徒歩で行ったぞ。」

護「でも『ミニ船』、ターさんの木箱より積載量ないじゃん!」

カルロス「むしろターさんの木箱で『ミニ船』が運べるという。…とにかく我々は、小型船が、欲しいのです。」

管理「ダメなものはダメ」

カルロス、ため息ついて「貴方じゃ話になりません。後日、霧島研に直接出向いて話をする事にします。」

管理「やめとけ。どうせ無理だ。」

カルロス「なぜ」

管理「門前払いで終わりだよ。それに君達は当面、移動を制限されるから」

護「なんですと」

管理「当たり前だろう。黒船から逃亡するような奴を自由にしておく訳が無い。」

護「俺は事故ってドンブラコなんですが。」

カルロス「ちなみに私は今後どうなるのでしょうか。」

管理「ん。まぁ恐らくこのままSSFで働かせるか、または我々と共に管理の船で」

カルロス「か、管理の船?!」

護「カルさんの探知は凄いから管理の船に乗せたら便利だと思いますよ。」

カルロス「他人事だと思って」

護「他人事ですもん。」

その時、カルロスが「う…」と首を抑える

護「どしたん」

カルロス「なんか、首が…。」と言いゴホッと咳をして「コレが苦しい」

護「え。」と言い「マジで?」

カルロス「うう」とうずくまる。

護「ちょ、アンタ」と言い管理に「この人、なんか変なんですけど!」

管理「…。さっきメンテした筈なんだが」

護「でも管理の人がメンテしたから」

管理「月宮は優秀な奴だ。」

護、カルロスを気遣いつつ「じゃあ管理の船に乗せられるってのがショックだったのかな」

カルロス、苦し気に「そんな…事は」

護「とりあえず周防先生にメンテしてもらった方が」

カルロス「それ…だけは、断る」

護、管理に「お願いです周防先生に」

カルロス「嫌だ」

護「ワガママ言うなー」

カルロス「嫌なモンは嫌だ!」

管理「…仕方がない。周防にメンテさせよう。」


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