今年のトリ。。。?!
何とこのコラムの今年のトリを仰せつかってしまった。正直、まいったなあ。。。という感じである。一番 トリ に相応しくない人間なのではないかと思っている。年末のトリといえば、日本人なら紅白歌合戦のトリを思い浮かべる(古い人間かしら?)のでしょうが、それは舞台全体に雪(紙吹雪?)が舞い降り深閑とした日本の冬のイメージの中で演歌歌手が滔々と日本の冬を唄いあげ、その後除夜の鐘が鳴り出し、“ああ今年も暮れゆくのだな。。。”としみじみと感慨にふけるという構図を思い出すのは私だけであろうか? いずれにしてもトリとは大役で、それにそぐわない私のこのコラムで申し訳ない! と先に謝罪しておきます。
押し迫った師走に今年を振り返ってみると、今年は最悪だった。私は、生粋の3代続くハマっコ。横浜生まれ、横浜育ちで(厳密には2歳から7歳まで東京に住んでいたが)横浜は、とても愛している街である。その私が今年横浜を捨てようと決心し新しい住処を求めた。横浜の建築家としてエリア045に名前を連ねていながら。。。(この時点でトリ失格ですねえ。。。)1年半ほど前から東京にもアトリエを構え、最近はそこで仕事している事が多いせいか? 横浜にそこまで執着しなくなっている。
巣立った息子、10年ぶりにイギリスから帰ってきた娘とみんなで住み、同居している高齢の母の面倒を見ながら仕事ができる場所を私は今年捜しまわった。東京アトリエのある広尾と横浜アトリエのある自宅の中間地点で神奈川に近い大田区に手ごろな中古物件を見つけてリフォーム案も作り見積もりまでして仮契約までしたのだが、最後の最後になって、45年住んだ今の横浜の家が捨てられず結局契約を破棄し、横浜に住み続けようという選択をした。小さいころからの夢だった大きなガラス張りの2階にオフィスを構え、その上を自宅にするという自社ビルの夢がもう少しで現実になったのに。。。
残念!
なぜ今までこだわり続けてきた横浜という場所と家を簡単に手放そうと思ったのか? 少しだけ考えてみた。家族の世話をしながら仕事をしたい!(子育てと仕事を両立するのはプラスの生活方向ですが、介護と仕事の両立は大変な問題です。仕事をする女性の最大の悩みですが、これは別の次元の話なので後日。)という絶対的な理由が根底にはあるのだが、最近住宅に対する考え方が少し変化したように思う。勿論、家族の大切なモノ、それぞれの家族の住生活を空間化するという設計スタンスは変わっていないのだが、前は家族の変化に対応して何十年も家を変化させていく事に興味があった。しかし年をとったせいか、今はもっと生活を手軽に考えたくなった。普通は年齢とともに風格がましてどっしりと構えるのだろうが、最近の私は一ケ所に留まっていると自分自身の感覚が重くなっていく様な気がしている。これは人生最後の焦りかそれは定かでないが、変化する感覚というものを受け入れ楽しみたいと思う。 人には落ち着きがないとか、飽きっぽいとか思われるかも知れないが、この情報の世の中、一ケ所に留まるだけでなく身軽になって動いてもいいような気がしてきた。
その時々の“チョー気持いい!”感動を求めてもいいのではないか?と。。。
東京に住むということは、東京を買うという事なのではないかと思う。私のような横浜の郊外に長年住んでいる人間は、家の中にいろんなモノを持ち込んで満足げに生活しているのだが、都会は家から一歩出て、お金さえ出せば何でも手にはいるので家の中に必要以上に持ち込まなくてよい。以前、大井町に3世帯の為の共同住宅を設計した時、冷蔵庫が私の想像以上に小さかった。とてもお料理上手な家庭的なその奥さん曰く、「毎日食べる物を買い物するので大きな冷蔵庫はいりません。」 私のような仕事する女は、いつ帰ってきても仕度が可能なように1週間分の食料を備蓄するという習慣が身についているが、(子供が小さい時は1週間分のおかずを日曜日に造り置きし冷凍庫に保存したものだ)そうではなく、いつでも手に入れられ備蓄より新鮮な品物を買うのが都会に生活する人のようだ。コンビニが冷蔵庫変わりといわれる現代、おいしい食事、感動的な演劇、映画、コンサート等なんでも手に入る。これが都会スタイルなのだろう。
横浜に住みたいということは、海の潮風が運んでくれる開放感を身近に感じながら生きたいということなのか? 横浜という街そのものが魅力の一つでもあるが、休日は自由に自分の好きな生活を取り込んで大切に生きたいということなのか? 一歩街に出て何でも手に入れる生活とは少し違っているように思う。
私は、しばらくは、東京スタイルと横浜スタイルの二重生活を楽しもうと思う。
来年の今頃の私は、何を感じているであろうか?
もしかしたら、もっと違う所に生活を求めているかも知れない。トリでなく、鳥になりたいと。。。。
皆様にとって、2005年がすばらしい年になりますように。。。。
(青木恵美子)