人民大学 2020.06.13 12:21 前職が中国の北京大学と人民大学に「寄付講座」というものをやっていて、その講師に指名されて北京に赴いた。 行く前の準備打合わせで、私が講義を行う予定の「人民大学」について、どういう大学って聞いたら、担当者が「中国共産党の大学です」とスラリと答えてくれた。「北京大学」が東大とすりゃ「人民大学」は京大ってとこらしい。 当然、講義の内容は「広告」に関すること。大講堂で講義をしながら、参考資料でアメリカのTVコマーシャルも見せた。CMってその国の風俗とか人情が色濃く滲み、会話も砕けているので外国人には理解が結構難しいものだ。だが、「これ分かる人?」って挙手させたら、相当の生徒が手を挙げた。そのうちの1人に内容を描写させたらきちんと分かっていて、舌を巻いた。 自分自身の講義は90分で終わり。他の講師が頑張っている時には、観光しかない。「万里の長城」「紫禁城」そして皇帝たちの墓などを観たが、一番印象的だったのは「天安門広場」だった。1989年の「事件」もさることながら……。あそこに立った時に、いろんなものが見えたような気がした。 「中原に鹿を逐う」と表現があるが、漢族のみならず、匈奴、蒙古族、満州族などがここに覇権を求めて雪崩れ込んできた。 (紫禁城の額には漢字とモンゴル語が併記されていた……。皇居にハングル文字は掲げていない。) ……とすれば、今現在の共産党書記長っていうのは、つまりは「皇帝」なんだよねって。これほど広大な国土を治めるって、巨大な権力がないとできない相談かも知れないなと。 2日後くらい。学生たちと講師陣の懇親昼食会があり、愛くるしい女学生と隣になり英語で話をした。14億人だかの人口のなかから、厳しい試験と選考で選ばれてここにいるのがよく分かった。めちゃくちゃ頭がいい。ハイパフォーマーなのである。彼女の英語が素晴らしいので、 「アメリカに留学したことあるの?」 「いえ、英語放送でだけで勉強しています」 「ところで、お父さんは何やっている人?」 「共産党の幹部です」 「はあ……」 会話はその先へはなかなか進まなかった。 人類の四大発明と言われている「羅針盤」「火薬」「紙」「印刷」をことごとく産んだ文明なのに、清以降の中国って欧州の国々に蚕食されてボロボロになった。(日本までこの〝植民地化〟に参加した。) 国家が滅亡しても不思議でなかった。でも、今現在はどうなっている? 今までの世界史のなかで、いったん国勢が退潮して滅亡寸前までいって、鮮やかに甦った国を「中国」以外は知らない。……とすれば、「中国共産党=皇帝」というのは、誠に正しい選択ではあったとはいえるのだろう。 毎晩他の講師やスタッフと飯を食うのだが、とにかくかの地のものは脂っこい。相当に胃もたれ状態。担当者が 「料理を変えますか?何がいいですか?」 「韓国はどう?」 「……いやいや、北京料理でなくて、上海、カントン、四川……東北料理というのもありますが、そういうのにしますか?という意味です」 日本の人は余り気づかないが、この国は〝多種民族国家〟なのだ。実際、現地のサポートチームは蒙古族の男性が一人と朝鮮族の女性が一人混じっていた。従って様々な国の料理がある。で、それらのなかからいろいろと試みたのだが、日本人からすればどれもこれもいわゆる「中華」で、相変わらず胃のもたれは改善しなかった。