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『アフターダーク』村上春樹(講談社文庫)

2020.05.31 23:00

◆書評

村上春樹による11作目の長編小説。

ある日の東京の日没後、23時56分から6時52分までの出来事を描いた作品。

三人称形式での叙述の他、一人称複数「私たち」という視点が用いられ、やや実験的な作風。

深夜の時間帯に様々な出来事が起こる。マリと高橋という男女が再開し、ラブホテルの一室では中国人の売春婦が客(白川)に殴打される。マリの姉であるエリは2ヶ月前からほとんど眠ったまま。

姉にコンプレックスを持ち、頑なな性格のマリは、高橋やカオル、コオロギ、コムギらと出会い、語り合うことで少しずつ影響を受ける。小説の終わり、エリの部屋でのマリの行動は、姉に対する想いが昇華されたことを新しい太陽の光が差し込む情景とともに象徴的に描いている。

なぜ白川は売春婦を殴ったのか、半透明のマスクをした男は誰なのかは謎のまま。

小説の終わりに夜は明け、マリたちの新しい物語の始まりを予感させる。


◆心に残った文章

波もなく流れもない純粋な思惟の海面
「自分の影と競争しているような気がすることがある」「どれだけ速く走って逃げても、逃げ切れるわけがないねん。自分の影を振り切ることはできんもんな」( コオロギ)
「人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないのかな」「大事な記憶も、それほど大事やない記憶も、ぜんぜん役に立たんような記憶も、みんな分け隔てなくただの燃料」(コオロギ)
「人類が暗くなったあとでも平気で外に出るようになったのは、歴史的にみればつい最近のことだ」(高橋)
「僕らの人生は、明るいか暗いかだけで単純に分けられているわけじゃないんだ。そのあいだには陰影という中間地帯がある」(高橋)


◆物語に登場するもの


◆物語に登場する音楽