【辻めしの横山寛さん】「辻堂のポテンシャルはすごい。」コロナ禍で発見した地域の楽しみ方。
茅ヶ崎に住むユニークな方を紹介する「茅ヶ崎で暮らす人」。今回は「辻めし」の横山寛さんにご登場いただきます。コロナ禍で地域のためにできることを考え、自ら動いて辻堂の飲食店情報を発信されたお話をぜひお読みください。
■ツテがないところから足で情報を集める
――― まずは横山さんが取り組まれた「辻めし」の概要から教えてください。
横山 「辻めし」は、「地元の暮らしを楽しむこと」をコンセプトに、まずは辻堂の地元めしを紹介しようということで始めました。
↓「辻めし」のチラシ
――― この活動のきっかけはなんでしたか。
横山 いまコロナで飲食店さんが大変な状況になっていますよね。
それと同時に、我が家では連日の自炊疲れが出てきていました。
その両方を見ながら、マッチングできるかもと思ったのがきっかけです。
――― その飲食店さんの情報は、どうやって集めたのでしょうか。
横山 最初に30店舗を掲載したんですけども、自転車でぐるぐるまわりながらテイクアウトの看板やのぼりを手掛かりに声をかけていきました。
――― まったくツテのない中で一から情報を集めたのですね。
横山 そうですね。私は良品計画という会社で働いているので、その名刺を頼りに「怪しいものではないです」と伝えるところからでした(笑)
――― そこからだったんですね(笑)
横山 情熱だけはあったので、なんとか話を聞いてもらいながら情報を集めました。
SNSで投稿している人はたくさんいらしたんですけど、やっぱりお店の方から直接情報を集めて、それを紙に印刷して配るのが一番良いと思いました。
――― やっぱり紙にまとまっていると違いますよね。どこに配ったのでしょうか。
横山 いつもお世話になっている「髪と日常」という美容室があって、そこを入口にして置かせてもらえるところを探してまわりました。
もともと美容室は「街の情報ステーション」だと思っていたんですけど、今回の取り組みであらためて実感できましたね。
おかげ様で「辻めし」のInstagramがひと月で1,200名にフォローされたので、この反響は嬉しかったですね。
■良品計画のDNA
――― 地域の活動にはもともとご興味があったのでしょうか。
横山 はい。というのも、私はサラリーマンをする中でずっとモヤモヤしていて。
たとえば先ほど名前を出した美容室さんだと、そこの美容師さん一個人のスキルだけで毎月大勢の方の役に立っているわけですよね。
一方で自分はサラリーマンとして、社会の役に立っている実感があまりなくて。
――― なるほど。ちなみに良品計画ではどんなお仕事をされているのですか。
横山 無印良品が「世の中にどう役立つか?」を考えて、それを新サービスや新規事業としてプロジェクト化しています。
たとえば「MUJI SUPPORT」という、暮らしの相談に応えるプラットフォームを担当しました。
会社では常に世の中の役に立つことを考えているので、それが「辻めし」の活動にも繋がっています。
――― 良品計画という会社自体がそういうDNAを持っているのですね。
横山 そうですね。良品計画はもともと、時代のアンチテーゼとして生まれました。
80年代当時はバブルの絶頂期で、いわゆるDCブランドが強かった時代です。
そのとき改めて、ブランドロゴをなくしてモノの本質を見直そう、良いものをつくろう、という考えで生まれたのが良品計画なんです。
――― まさに無印という名前が物語っていますね。
横山 はい。そういう企業文化の中で仕事をしているので、「なにが本質的に必要されているか?」を日ごろから考えることが多いんですね。
特に最近は会社としても地域貢献の活動が盛んになっていて、新入社員もそういう活動をしたいという人が増えています。
■辻堂のトリセツ
――― 「辻めし」を通して、ご自身のなかで発見はありましたか。
横山 発見としては、「伝えていけば、伝わるんだ」っていうところです。
飲食店さんもそうですし、ユーザーさんもそうですし、クラウドファンディングの協力者さんとか、メディアの協力者さんとか。
こちらが声をあげれば響くんだなっていうのは、少し手応えとしてありました。
――― これからやりたいことはありますか。
横山 やりたいことはいっぱいあるんですけど、難しいのはそのマネタイズですよね。
やっぱり継続性を考えると、お金を払う価値のあるものを考えたいです。
普段からそこで勝負しているお店の方々を見ていると、お金もらえるスキルってプロだなって思うので、そこが次のチャレンジですね。
――― 横山さんのご活動によって、辻堂がもっと盛り上がると良いですね。
横山 辻堂というエリアはすごくポテンシャルがあると思っている分、妄想が激しいんで、やりたいことは色々浮かぶんですど(笑)
ただそうすると本職に影響が出ちゃうのでバランスが難しいですね。
――― よくわかります。
横山 私が一番根っこで持っているのが、なんでも「お互い様」だと思うんです。
「辻めし」は飲食店支援のようで、それを利用する私たち生活者のためにもなっている。
そういうお互い様という設計にはこだわっています。
――― みんなにとって価値があることですよね。
横山 コロナの自粛が落ち着いたとき、「おうち時間」から「地元時間」という枠組みにステージが上がるじゃないですか。
地元時間を楽しむためには、地元のお店がすごく大事だし、もっと言えば人との出会いが重要になると思っています。
――― 人との出会いですか。
横山 この「辻めし」の活動で、辻堂にはお店のオーナーさんの魅力がこんなにあったんだって気づかされました。
だからこの「エキウミ」が茅ヶ崎のいろんな方々にインタビューをして、紹介しているのを見ていて、「辻めし」としてもインタビューメディアはやりたいことの一つだったりします。
お店のオーナーさんの魅力をどう地域につたえて、そのオーナーさんを好きになってお店に行くっていう流れはあると思いました。
――― ぜひやって欲しいです。
横山 そうやって街の楽しみ方を伝えていく、「辻堂のトリセツ」がつくれたら面白いですよね。
やっぱりそういう手掛かりがないと、楽しみ方ってわからないと思うので。
■駅の破壊力を活用する
――― 最後に、この「エキウミ」は茅ヶ崎の雄三通りを拠点としているのですが、横山さんから雄三通りが面白くなるアイディアをいただけますか。
横山 雄三通りは既にすごい魅力的なので、あとはもっと情報の入口が分かりやすいと良いと思います。
雄三通りの入口に大きい「雄三通りマップ」があって、初めて来る人でもすぐ情報が得られるような。
そこの伝え方次第で、ブランディングにもなっていくと思うんですよね。
――― やっぱり現地での見せ方は大事ですよね。
横山 そう思います。そういえば「辻めし」を広めるにあたって、駅の掲示板も使わせてもらえたんです。
↓駅に「辻めし」のチラシが置かれた様子
横山 最初どうすれば良いかわからなくて、まずは駅の人に聞いたら「管轄が違います」って言われて(笑)
最終的に辻堂市民センターの人につながって、電話して会いに行ったらそこから先の人と交渉してくれて、置かせてもらえることになりました。
――― すごい!
横山 ダメもとでも、言ってみるもんだなと(笑)
やっぱり駅ってすごい破壊力があって、すぐに数百部がなくなりました。
雄三通りは南口の玄関口ですから、そこで情報が伝えられたら面白いと思います。
――― 大変参考になるお話でした。インタビューは以上です。ありがとうございました。
(おしまい)
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年に茅ヶ崎市に移住し、2017年に「エキウミ」を立ち上げる。東海岸商店会の公式サイトの運営や、m'no【エムノ】のWEBマーケ、片耳難聴のnoteマガジン、記事の寄稿も行う(SUUMOタウン、Gyoppy!、ARUHIマガジン、SPOTほか)。
▼編集アシスタント 権藤勇太
エキウミインタビュー担当。平日は都内で法人向けの業務改善提案を行う営業マン。休日は緑に囲まれた茅ヶ崎で畑をいじったり、キャンプしたりフットサルをしたりのんびり生活をしている。消防団に入ったことをきっかけに、自分が使うお金がどこに流れて回っていくのか興味をもち商店街の活性化に2018年参加。
▼編集アシスタント 髙橋 一矩
茅ヶ崎生まれ茅ヶ崎育ち。ネットサーフィンをしていてエキウミを見つける。奄美大島の喜界島にボランティアで行ったときに、彼らの喜界島への愛を感じて「自分も地元に何かしたい!」とぼんやり思っている。ラーメン専用のインスタアカウントがあることは秘密。実は収益化を目論んでいる。