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すずまき*本と、紅茶と、あの頃と。#8

2020.06.17 11:00




#8「ブルーもしくはブルー」×ブルーマロウティー


人生において、Aを選ぶかBを選ぶか、その選択如何でその後の人生の全てが変わってしまう…そんな分岐点を人はいくつ経験するのでしょう?


はちみつバードなお年頃のみなさまにも、今まで幾度となくそんな分岐点にさしかかってきたことでしょう。

わたしも何度も何度も選んで選んで、この人生を歩んできました。


この小説、「ブルーもしくはブルー」は、ふたりの結婚相手候補のどちらと結婚するか、という人生最大の選択をした主人公・蒼子が、数年後、自分が選ばなかった相手と結婚した「自分」・蒼子と出会ってしまうところから始まります。

今現在の生活に飽き飽きしていた蒼子は自分そっくり(当たり前なんですが)の蒼子と1ヶ月の間入れ替わって生活することを提案します。

が、入れ替わり生活をするふたりを待ち受けていたのは…?


この究極の選択小説を読んだのは、わたしも当時としては人生最大の二者択一の分岐点で、こっちにする!と決めて選んだばかりの頃でした。


大学卒業を前に、就職活動をして(公務員志望だったので周りの友達ほどは活動してなかったけれど)どうにかふたつ、内定をもらいました。

ひとつは当時まだ国家公務員だった、郵便局内務の仕事、いわゆる郵便局の窓口の人。

もうひとつは県職員、小中学校の事務の仕事。

どちらも志望していた図書館司書の仕事とは全く違う職種でしたが、当時のわたしには就職浪人して何としてでも司書になる、というそこまでの信念はなく、まぁ居場所があるならどちらに決めればいいか…なんて浅はかな、短絡的な考えでした。

それでもそれなりに悩んで、いろんな人に相談して、郵便局員になることを決めました。


この本を読んだのは、ちょうどそんな頃。

郵便局員になるという選択をしたわたしは、将来蒼子のように、学校事務を選んでいればよかった、と後悔することがあったりするのかな…あるかもしれないな…なんて思ったりしていました。

しかしすぐにそんな迷いはなくなりました。

というか、迷うとか後悔するとか、そんな心の余裕すらなくなっていきました。

郵便局員という仕事は、想像以上にハードだったのです。

わたしには向いてない向いてない、と思いつつなんとか10年続けましたが、結局いろいろあって退職することになりました。


…でも今となっては学校事務の仕事を選んでいればよかった…とは思っていません。

郵便局時代、とても辛いことや悔しいこともたくさんありましたが、そこで得た友達や経験はとても貴重で、他には替え難いものでした。

今ではわたしの大切な、わたしを創っている要素のひとつです。


その他にも何度も人生の分岐点を経験しました。

人生で一番大きな選択をしたのは、9年前でしょうか。

前の夫と、離婚をするか、そのまま一緒にいることを選ぶか。

この選択は、あの頃のわたしにとっては悩んで悩んで悩みまくった、本当に大きな分岐点でした。


結果、離婚を選択したわけですが。


もし今、離婚をせずあの人と今も生活している自分が目の前に現れたとしたら。


わたしは蒼子のように、入れ替わりを提案したりすることはありません。

逆に入れ替わりを提案されても、丁重にお断りします。

もしも離婚しなかった自分が、今よりも幸せで裕福で、何不自由ない暮らしをしているとしても、わたしは今の生活を選びます。


何故って、わたしはこの選択に、一切後悔なんてしていないから。

あの時の選択が、正解だったとわかっているから。


蒼子もそのくらい自分の選択に自信を持っていたら、入れ替わろうなんて提案はしなかっただろうな。

でもそうしたら小説にはならないけど(笑)


この小説「ブルーもしくはブルー」と、ふたりの蒼子の為に淹れるのは、紅茶ではないのですが、ブルーマロウというハーブを使ったハーブティー。

淹れるととても綺麗なブルーの水色になるハーブティーです。

でもはちみつやレモンを加えると、その綺麗なブルーがなんとピンクに色を変えるのです。


ふたりの蒼子のように、選択肢によって全く違うもののようになってしまう。


…でもそれは見た目だけであって、中身はどちらもブルーマロウという同じハーブティー。

本質はどちらも変わらないのです。


蒼子がどちらの相手と結婚しようが、わたしが郵便局員になろうが学校事務員になろうが、離婚しようがしまいが、蒼子は蒼子だし、わたしはわたし。

どちらかを選んで、全く別の環境や人間関係を経験するとしても、その経験の本質というのは、ひょっとしたら変わらないのではないでしょうか?


結局、どちらの蒼子も根本は同じ問題を抱えている。

結局どちらを選んでも、出てくる問題、学ぶべき試練の根本的なところは、変わらないのだとしたら。


あぁあの時アレを選ばなかったから…あっちを選んでいれば…と後悔ばかりしているか、後悔はせずに正面から受けて立とうとするか。

どちらがいいとか悪いとかではないけれど、わたしは後者でありたい。


ブルーマロウティーがブルーでもピンクでも、どちらも綺麗だしどちらもブルーマロウティー。


自分をしっかり持っていれば、自分が選んだ道に自信を持てるし、それは正解だと思うんです。

ていうか本当はどちらを選んでも、はじめから正解しかないのかもしれません。


これからもいろんな人生の分岐点がやってくると思います。

でも、臆せず自分で立ち向かっていく。

思い出すことはしても、後悔はしない。


…そんなことを決意しながら、優しいブルーマロウティーのティータイムに身を委ねる…。


さて、これからわたしの人生に、どんな分岐点がやってきて、どんな選択肢が現れるのかな?

ゆったりと楽しむくらいが、ちょうどいいかもしれませんね。


「ブルーもしくはブルー」山本文緒 著
角川文庫(1996年)





photo & text by すずまき


紅茶コーディネーター、紅茶学習指導員。
普段は某大学で図書館司書(パート)の仕事をしています。
学生の頃の夢は「良妻賢母な司書の小説家」…とりあえず 「妻」と「司書」にはなれました。
書くことが好きで、書き出すと止まらなくなります。