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Photo小説:『雨』

2020.06.19 03:12

 雨の音で目覚めた。


 窓の外は土砂降りで、部屋の中に降り込められる。


 小さな灯だけ点けて、薄闇の中で雨の音を聴く。


 目を閉じると部屋の中に満ちた雨の音で、雨の中に閉じ込められる。


 風の音で 目覚めた夜明けは薄明かり

  あなたの肩にかけるシーツ


 小林麻美の『Typhoon』が、頭の中で流れ続ける。


 嘗て愛した人の面影が淡く掠め、幼い日の雨の記憶が過ぎる。


 もう少し、眠ろうとするけれど、一度覚めた眠りは訪れてはくれない。


 眠れぬままに、枕元の本に手を伸ばし、薄明かりの中で、雨の音を聴きながら、言葉の波間に漂う。


 窓の外は雨。


 時を止めた儘。


 雨の中に閉じ込められて、恋の残り香を聞いている。


photo/文:麻美 雪