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紺碧の採掘師

第13章 02

2020.06.19 07:38

そして翌朝…。

アンバーの甲板に護が出て来ると、んーっと伸びをして「いい天気!布団干ししたいなー」

するとハッチからマゼンタが「イェソドでそれは恥ずかしいから止めといた方が」

護「昔、ブルーに居た時さ、天気がいいとまず皆で布団干しだったな」

マゼンタ「知ってます。護さんがブルーからアンバーに来た最初の頃、晴れた日は布団干せってうるさかったもん」

護「あ、そうだったか」

マゼンタ「ですよ!シーツ洗濯しろだの部屋は整理整頓だのゴハンは残すなだの」

護「あああああ」と言い「最初そんな事、言ってたなー」

マゼンタ「布団なんか乾燥機でもいいじゃないですか!自分で適当にやるからいちいち指示すんなー!って思ってた」

護「そうそれで穣さんと大ゲンカしてさ、それで指示しなくなったんだ、俺。」と言うと「だって俺、ブルーでずっとそうだったし。長兄の満さんが厳しくて」

マゼンタ「ブルーって今もそうなんですよね」

護「…だと思うよ。長兄が採掘監督でいる限りは」

マゼンタ、ため息ついて「俺、アンバーで良かった。あっ、でも今後もしブルーに移動になったらどーしようー!」

護「まぁそれは覚悟するしか…。」

マゼンタ「嫌だ嫌だ、ブルーに行く位なら黒船を目指します!」

護「ガンバレ」


食堂では

剣菱「昨日は寝すぎた…。昼寝して起きたら夜で、遅い夕飯食ってまた寝て。…この船でこんなに寝たの初めてだ」

ネイビー「たまにはいいじゃん」

剣菱「せっかくイェソドに来たのに寝てばかりってのはどうなんだ。…で、今日のご予定は?」

ネイビー「臨機応変!」

穣「そもそもカルロスまだ来てないし。」

すると剣菱「来てない?あの人どっか行ったの?」

穣「街の宿に泊まると。まぁ気にしなくていいです。」


暫し後。テクテクとカルロスがキャリーバッグを引いて布袋を持ってアンバーの採掘口のタラップから上がって来ると、悠斗たちがモップで採掘準備室の掃除をしている。

カルロス「おはよう」

悠斗たち「おはようっす」

階段を上に上がると透が通路の床掃除をしている。

透「あ、おはよー」

カルロス「朝の掃除か」

透「うん。」

カルロス、ちょっと考えると、何かが入った布袋を透に渡して「これ、皆に配布してくれ。」

透「え。…何ですか?」

カルロス「ケテル石のカードケース。まぁ使わなくてもいいけど、これにイェソドの身分証明を入れるといいかもなと。」

透「ええ。」と袋を受け取り、中を見て「もしかして買って来たの」

カルロス「うん。」と言いテクテクと食堂の方へ歩いていく

透「ちょっ、ちょっと!自分で渡しなよ!」

カルロス「頼んだ!」

透「アンタわざわざ買って来たならアンタが」

するとカルロス立ち止まり、照れた顔で「…どうしても恥ずかしいんだ。頼む。すまん。」

透「…。ほい。」


甲板では穣と剣宮が寝っ転がっている。

穣「…ヒマだ…。」

剣宮「ヒマですねぇ…。掃除も終わったし…。」

穣「早く来い有翼種ー…。イェソドでこんなにヒマになるとは思わんかった…。」

と、そこへ甲板ハッチから透が顔を出すと「あ。いた!…ここに居たのか」

穣「んー?」

透、カードケースを出して「これ、カルロスさんからプレゼントだって。」

穣&剣宮「はぁ?」と言いつつカードケースを受け取る。

穣「ケテル石やん。もしかしてアイツ、街でこれ買って来たのか」

透「うん。」

剣宮、カードケースを見て「ほぉぉ…。キレイだな…ケテル石」

穣「ケテル、俺達の方だとバカ高いからな。」

透「鉱砂しかないし。こんなの、無いよ」とカードケースを見る

剣宮「流石は元・黒船の採掘監督、お金持ち…」

穣「いやいや。俺達の金はこっちで使えないだろ。」

剣宮「あ、そうか。」

穣「…あいつ、こっちでは難儀してるようだし、大して金持ってない筈…。」

透「まぁ、嬉しいよね。」

剣宮「うん」

穣「うん。…驚いた。」

と、そこへ上空から「おはようございます。」と声が。

ふと見ると自分たちの上にターさんとレトラと2人の有翼種が浮いている。

穣たち、目を見開いて驚く「うわ!」

穣(やっぱ人が宙に浮いてるってビビるわ!)

剣宮「お、おはようございます!」

透「中へどうぞ!」と言うと、ハッチから船内に駆け下りて船内電話の受話器を取り「皆さん!有翼種の方が来ましたぁー!」と叫ぶ


ブリッジ前の通路に剣菱や護、レトラ達が集っている

レトラ「こちらがカナンさんのご兄弟の身分証明書です。」と封筒を差し出す。

カルロス「ありがとうございます。」と言いレトラから封筒を受け取る。

レトラ「あなた方が今回イェソド鉱石を採掘するのは許可しますが、今後の採掘について、そして黒船をイェソドに入れるかどうかの判断は、黒船がイェソドに来てからにします。」

護たち「!」驚く

レトラ「実際に乗員に会ってみないとどのような人々かわかりませんので。過去の歴史を考えると慎重にならざるを得ない。ご理解下さい。」

護「…そうですか…」

カルロス「仕方がありませんね。すると、カナンさんに会うのは」

レトラ「カナンさんは、我々がターメリックさんの家まで連れて行きます。」

カルロスたち「えっ」

カルロス「つまりコクマではなく、ターさんの家で会わせると?」

レトラ「はい。まぁ、その後、状況を見てカナンさんとご兄弟のみ、コクマへ連れて行く事はあるかもしれません。」

カルロス「なるほど」

レトラ「ではご兄弟を4日後の午前中に連れて来て下さい。」

カルロス「承知しました。」

レトラ「他に質問が無ければ、今からイェソド鉱石の採掘エリアまで案内します。」


暫し後、アンバーはケセドの街を後にして山裾の河原の近くへ

崖に穴が開いていてそこからキラキラ光る水が流れている。その周辺も鉱石だらけ。

アンバーはその上に停船する。採掘口から穣たちがコンテナや道具を持って降りて来る。

穣、周囲の鉱石を見て「すっ…げぇ…。」

マゼンタ「川がキラキラしてる!」

そこへレトラが「我々はこれで失礼します。」

穣「あ、はい!」

護「ありがとうございました!」

カルロス「4日後、宜しくお願い致します。」

レトラ「では」と言い飛んでいく。

悠斗、鉱石を見て「こんなに凄い鉱石を採って行ったら本部の人たち喜ぶなぁ!」

マゼンタ「黒船に自慢できるぅ!」

穣「よーし皆、採りまくるぞ!」

ターさん「俺も手伝う」

透「え」

ターさん「やらせてよ。やりたいんだ」


採掘の始まり。

オリオンの爆破で鉱石を崩してスコップで細かい鉱石をコンテナに詰めたり

カルロスの黒石剣や護とターさんの白石斧で切った塊を悠斗たちがコンテナに詰めたり

そんなこんなで、どんどんコンテナが鉱石で一杯になる。貨物室は鉱石で満杯。

一同、満タンになった貨物室を見つつ満足顔

穣「もう貨物室が満タンになっちまった。早っ!」

悠斗「うははは満タン満タン!」

護「甲板まで積む?」

穣「んー、甲板積みすると船の速度出せなくて帰りが遅くなるから、今回はいいや。貨物室だけで凄い量だし。…こんだけ採ったの久しぶりじゃね?」

マゼンタ「だって少し前までヤル気ゼロだったもん」

悠斗「なぁ?仕事が辛くて辛くて」

マゼンタ「今日は久々にメッチャ楽しかった。採掘楽しいー」

ターさん「楽しいよね!」

穣「そりゃこんだけ質の良い石を採ってたらなぁ。採り甲斐あるし」と言い「よし、じゃあジャスパー戻るか!」

護「その前にターさんの家に寄ってからだー」

ターさん「いいよ俺、ケセドの街で買い物してから帰るから。船長に挨拶して来るね。」


ブリッジでは

ネイビー「久々に船が重い!」

剣菱「良かった良かった。これで管理にゴタゴタ言われなくて済む。」

そこへターさんがブリッジに入って来ると「剣菱船長」

剣菱「お、ターさん。」

ターさん「俺はここで失礼します。街で買い物して帰るので」

剣菱「そうですか」とターさんの前に立つとターさんの手を取り握手して「色々と本当にありがとう。」

ターさん「こちらこそ。皆と採掘出来て、凄く楽しかった」

剣菱「4日後。また宜しくお願い致します。」

ターさん「はい。噂の黒船がどんな船なのか、楽しみにしてますよ!」と言い、ブリッジから通路に出ると、護たちに「上から帰るね」と言って甲板ハッチへと歩く

ターさん、ハッチから甲板に出ると「じゃあまたねー」

カルロス「またなターさん」

マゼンタ「またねー!」

穣「4日後になー」

ターさんは手を振りつつ街の方へと飛んでいく

穣「よーし戻って黒船と管理を驚かせてやろう。今日の採掘量はアンバーが第一位だ。」

カルロス「黒船も向こうで頑張って鉱石採ってるんだぞ」

穣「へいへい」



一方その頃、ジャスパー側では。

岩場の採掘現場で作業をしている黒船メンバー。鉱石層を崩してスコップで鉱石をすくってコンテナに詰める。

ふと上総が何かに気づき、「あ。」と言って探知をかける。

それを見た昴「もしかして」

上総「アッチから来る」と、とある方角の空を指差すと、空に点が見える。「うわぁ凄いイェソドエネルギー…。貨物室が鉱石で満タンだ!」

メリッサ「って事は」

ジェッソ「首尾は上々という感じかな」

上総「黒船より鉱石積んでるアンバーなんて初めてです。今日は向こうが第一位だなぁ。あ、低空飛行してきたー!」

レンブラント「自慢かっ!」

暫くするとアンバーが飛んで来て黒船メンバーの上を通過して行く。

上総「…ここでカルロスさんが飛び降りてきたら面白いのに」

メリッサ「こっち来い、こっち」

そこへジェッソが「以前、黒船はアンバーの分まで採ってやったよな。」

昴「うん。アンバーがサボってたから」

ジェッソ「アンバーが大量に採って来たなら今日はこの辺で終わりにするか!」

上総たち「え」

ジェッソ「真の勝負は二隻が一緒にイェソドで鉱石採掘をする時だ」

レンブラント「だよなぁ、片方だけイェソドってのはフェアじゃねーし!」

メリッサ「そーよねー!同じ土俵じゃないと!」

ジェッソ「って事で今日は撤収!」

一同「おー!」



翌日の午後…。

SSFの門の前にカバンを持って一人佇むカルロス。ちょっと悩むような仕草をして、ふぅと溜息をついてから、門の中に入りテクテク歩いて正面玄関から建物の中に入ると、受付の女性に「こんにちは、カモミールさん」

カモミール「あら。こんにちはカルロスさん」

カルロス「これを周防先生に渡して頂けますか。」と言い封筒を差し出す「イェソドで貰って来た周防先生の身分証明書です。」

カモミール「イェソドの…!はい。あ、でも」と言うと「今そこに周防先生がいるから直接渡した方が」

カルロス「私はこれから用事がありまして」

カモミール「せっかくだから会って行けばいいのに。周防先生ー!」と事務所の奥に向かって叫ぶ。

すると事務所の奥の休憩室から周防が出て来て「どーした」

カモミール「カルロスさんが」

カルロス「身分証明もってきた。金曜の朝8時に黒船とアンバーがSSFにアンタを迎えに来るから。詳しい事はその封筒の中の紙に書いてる。後で読んでくれ。」

周防「了解。」

カルロス「あと、これ。もし良かったら身分証明入れるのに使ってくれ。」とケテル石のカードケースを差し出す。

周防、それを手に取り「これ、ケテル石の?」

カルロス「うん。…イェソドで買って来た。」

周防「ほう?」と言い「ありがとう。大事に使うよ」

カルロス「では私はこれから教習所なので失礼します。」と言い、そそくさと去る。

周防、カードケースを見つつ(…あいつが私にプレゼントとは…)と内心嬉しい。

カモミール「良かったですね。」

周防「ん?うん。」



カルロス、SSFを出て近くの喫茶店へ。

窓際のカウンター席でカフェオレを飲みつつ小型船の教本を読んでいた護の横に座る。

護「渡して来た?」

カルロス「うん」

護「じゃあ後は出発の日まで教習所頑張ろう」

カルロス、教本を見て溜息をつき「学科ってメンドイなー」

護「皆は今日も採掘頑張ってんだから俺らも頑張らんとー」

カルロス「へいへい」

護「しかし昨日の夜さ、本部の奴ら、ビビってたね。鉱石のスゴさに」

カルロス「まぁ鉱石貯蔵施設の奴らも、あんな質の良い鉱石、初めて見るだろうし。」

護「でも昨日がアレだとさ、今日は皆、ヤル気出なかったりして」


その頃のアンバー

穣「よっしゃあ皆、黒船に負けないようにガッツリ採るぜぇー!」

健「えー。負けてもいいんじゃ」

マゼンタ「昨日あんなに採ったし」

穣「昨日はイェソド、今日は黒船と同じ土俵!黒船の大事な相棒としては本気で採ってあげないと。」

一同「大事な相棒?!」

透「いつからそんな事に」

穣「だってウチの護と黒船のカルロスがくっついちまったやん。相棒がションボリしてたら向こうも張り合いないだろ?黒船と互角に張れるのはブルーじゃなくアンバーだ。頑張るべー」

マゼンタ「そ、そうなの?」

悠斗「まぁ確かに俺達が頑張らないと、黒船さんもヤル気が出ないか」

穣「そうそう!」


再び喫茶店の護たち

カルロス「まぁアンバーのヤル気なんざどうでもいいんだが」

護「えー!黒船のライバルなのに」

カルロス「そんな事より私のヤル気が下がり気味だ。学科メンドイ…。石茶が飲みたい…。」

護「ここを頑張れば石茶が飲める!今はコーヒーで我慢だカルさん。」

カルロス「石茶がいい…。」


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