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感染症と文明

2020.06.20 13:39

http://www.mus-nh.city.osaka.jp/books/Kansenshotobunmei.html

加納康嗣 20111222】

●「感染症と文明」山本太郎著、岩波新書

 感染症と人類との関係を文明の発祥にさかのぼって考察する。農耕の開始と定住が人口増と過密を生みだして感染症流行の土壌を提供し、野生動物の家畜化が動物から新たな感染症を受けとった。このように文明が人社会に感染症を根付かせたことを考察し、さらにマラリヤやペスト、天然痘、麻疹、結核などについて社会が作り上げた流行の諸相が描かれる。また開発が新たな感染症をもたらすことにも言及する。近代医学は感染症の制圧に努力を続けている。しかし人類の行動が選択圧となって病原体も進化する。病原体の根絶は過去の感染症に抵抗性を持った遺伝子を、淘汰に対して中立化する。根絶は行き過ぎた「適応」と言えなくもない。長い目で見てそれが人類に与える影響は無視できない。

 決して心地よいとは言えない妥協の産物ではあるが、病原体の制圧でなく対価を支払う個人が発生することも認めながら、共生の考え方が必要となると結んでいる。

 読みやすくわかりやすい。文明と感染症との関係をよく理解できる。


https://www.saaaj.jp/public/books/public06_2011_10_07_01.pdf#search='%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E3%81%A8%E6%96%87%E6%98%8E'

図書紹介

感染症と文明-共生の道

著者:山本太郎(長崎大学熱帯医学研究所)

発行:㈱岩波書店/〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋 2-5-5/℡03-5210-4054/

新書判/205 ページ/価格 720 円(税別)/2011 年 6 月 11 日発行

本書は人類の長い歴史をたどりながら、感染症と文明との深い関わりを疫学などの見地

から説き明かしている。著者は、「感染症を克服する」から「感染症とともに生きる」、「感染症を消し去ろう」とするのではなく、「感染症との共生の道を探る」べきではないのかといった問題意識を歴史的視点から考察している。

プロローグ 島の流行が語る

第1章 文明は感染症の「ゆりかご」であった

第2章 歴史の中の感染症

第3章 近代世界システムと感染症-旧世界と新世界の遭遇

第4章 生態学から見た近代医学

第5章 「開発」と感染症

第6章 姿を消した感染症

エピローグ 共生の道、

次に小見出しを見ていくと、第1章は狩猟採集社会の感染症及び疫学的転換、第 2 章は

古代文明の勃興及びユーラシア大陸における疾病交換、第 4 章は帝国医療と植民地医学及

び「感染症の教科書を閉じるときがきた」、第 6 章は姿を消した感染症、新たに出現した

感染症及びウイルスはどこへ行ったのかである。ほかに 4 つのコラム(文明の生態史観、

伊谷純一郎最晩年の講義、野口英世と井戸泰、ツタンカーメン王と鎖状赤血球貧血症)、

付録(麻疹流行の数理)及び参考文献がついている。

その概要は、フェロー諸島やフィジー、グリーンランドといった島国における麻疹(はし

か)の大流行によって多数が亡くなったこと、新大陸の孤立したアステカやインカ文明は武

力ではなく、持ち込まれた感染症によって崩壊したこと、メソポタミア、黄河、インダス

の文明は多くの感染症とともに存在し、感染症が文明を守ってきたこと、中世ではペスト

(中国が起源)がシルクロードの交易をきっかけにしてヨーロッパに広がり、大流行を繰

り返し、それがルネッサンスの基になったこと、マラリアや黄熱病の蔓延する大陸アフリ

カへの進出は困難を極めたこと、ペニシリンの発見やワクチンの開発により感染症が姿を

消したこと、エイズ SARS、新型インフルエンザなど未だに発生する新しい感染症が跡を

絶たないことなどが時系列で述べられている。

著者はいう。健康と病気は、人間が生存に際して環境にいかに適応したかの尺度であり、

人間は環境を自らの手で変える能力を手に入れた。しかし感染症との闘いによる勝利、す

なわち防疫による封じ込めは大きな悲劇の準備に過ぎないかもしれない。病原体の根絶は

行き過ぎた適応ではないか。むしろ大惨事に至らないためには「共生」の考え方が必要で

はないか。現代文明は自然(感染症を含む)を克服し、快適になるように進歩してきたが、

いま自然からしっぺ返しを受けつつあるのではないか。長い人類の歴史から学ぶのは、「克

服」ではなく「共生」が進むべき道ではないかと説いている。しかしその共生も適応に完

全なものがないように「心地よいとはいえない」妥協の産物であるかも知れず、ある時点

で理想的な適応が次の不適応となり、それによって生物も感染症も栄枯盛衰を繰り返す。

つまりこの世には理想的な適応はなく、理想的な適応と見えるものも一時的なものに過ぎ

ないということである。

地震や津波対策にもかかわらず、未曾有の震災と大津波による被災地を目のあたりにし

て自然災害についても同じことが当てはまるのではないだろうかと思う。病気の原因とな

るウイルスや細菌は厄介者であるが、本書ではそれも生態系の一部として捉えた感染症と

の「共生」という新しい考え方が打ち出されている。理解はなかなかむずかしいが、考え

させられる一冊である(学会事務局)。 


https://bookmeter.com/books/3307057 【感染症と文明-共生の道】

もえたく

ウィリアム・マクニール『疾病と世界史』やジャレッド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』等を上手く取り入れて、人と感染症の歴史について分かりやすく解説されています。「感染症のない社会を作ろうとする努力は、努力すればするほど、破滅的な悲劇の幕開けに。大惨事を保全しないためには共生の考え方が必要」

フィジーの王様がイギリスに朝貢しにいって麻疹をもらって帰ってきて、各島の族長を集めて王様お帰りなさい宴会をしたら、族長たちを通してバっと広まり、フィジーの全人口15万人のうち4万人が死んだ逸話。G7大丈夫か。スペイン風邪は第一次大戦の折、軍艦にアフリカやアジアの植民地の人々が各地で荷役のために乗り込んだことで世界的に広まった話。戦争中でなければこんなに広まらなかったはずとのこと。コロナはどうなんだろ。

人工呼吸器等が発達していない頃にこの病が流行っていたら、やっぱり天然痘やペストくらいの規模だったのかなあ。医療従事者の方に改めて感謝を。

KJ

農耕が始まり野生動物の家畜化が進めば必然的に感染症との接点は増える。人口が増加し交通が発達すれば流行の規模も速度も増す。文明の進歩と感染症は切り離す事が出来ない。旧世界による新世界への侵略が招いた悲劇。国際防疫体制の確立や天然痘撲滅に至る国際協力の功績。歴史を辿れば感染症の様々な様相が見えてくる。人間が進化すれば病原体も進化する。一つの感染症の消滅は新たな感染症の誕生を招き得る。根絶する事で解決とならないのは確かに心地良くは無い。ただ人類と不可分の関係にある感染症だからこそ共生という発想が必要なのだろう。

ねこ

実数字が用いられており、感染症の広がり方のイメージがよくできた。また、戦争による死者の多くが感染症によるものだったということも分かった。ヨーロッパの新大陸、アフリカ等への進出により感染症が広がり、またそれに対応する医療が発展する流れが分かった。新型コロナが収束するのにどのくらいかかるのか?ワクチンができるのにどのくらい時間がかかるのか?と思った。過去の経験則そのままだと、かなり長期化する気配がした。

ネタバレこの本で説明されている内容は、過去に世界で発生した顕著な感染症の、発生から収束までの経緯である。著者は感染症の専門家であり、自身の実体験を踏まえつつ客観的に簡潔にまとめられている。2011年に書かれたため COVID19 についての記載はないものの、過去の感染症の中で COVID19 の位置づけを整理できる。私にとって印象的な内容は、エボラ出血熱と SARS でコウモリがウイルスの自然宿主として挙げられていた点である。今後の私はSARS-CoV-2 の由来がコウモリである仮説を、平易に無視しないだろう。

venturingbeyond

昨今の情勢下で、広く読まれている模様。 医学というとミクロレベルでの「治療」にフォーカスされることが圧倒的多数だと思われるが、疫学・感染症学などはマクロレベルでの防疫・公衆衛生を扱っており、こちらは社会科学屋からすると圧倒的に親しみやすい。 エピローグの一節が、本書が提示する問題圏を簡潔にまとめている。

以下、195頁より引用。  ...、私たちの目の前には致死性を有する感染症がある。宿主であるヒトとまだ安定な関係を築いていない病原体も多い。医師として、医学に携わるものとして、そうした病原体によって奪われる生命を見すごすことはできない。...、私たちは、その悲劇に対処するための医学・医療を、部分的であるとはいえ手にしているのだから。  一方で、もしかすると、その積み重ねが大惨事につながるものかもしれないということを知ってもいる。

 こうした問題に対するための処方箋を、今の私はもっていない。しかし「共生」が、進むべき大きな道であることを確信している。だが、それによって対価を支払うことになる個人がいるとき、私たちは、この問題にどう応えていくべきか。  どちらか一方が正解だとは思えない。適応に完全なものがないように、共生もおそらくは「心地よいとはいえない」妥協の産物として、模索されなくてはならないものなのかもしれない。そして、それは、二一世紀に生きる私たちにとっての大きな挑戦ともなるのである。

yone

新型コロナ禍で興味をもって読んだ。長いスパンで見れば、ウイルスが我々人類に病をもたらす存在で亡くなる可能性もある。もしウイルスが他の生物と同じように(ウイルスは生物とみなさない考えもあるが)自己増殖し、子孫を残していく事が種としての目的だとするなら、宿主が死ぬことへ追い込むよりも共生して増殖していく方がウイルスとしても都合が良いのでは無いだろうか。非常に面白い本だった。

世 界 の て ら ®

ウイルスについては、コロナ騒動から慌てて調べた門外漢です。ウイルスが生存するためには弱毒化して人間と共存する他ないとか、帝国主義・植民地と感染症の関係など、興味深く読んだ。人類の長い歴史の中では、今のコロナも定期的に訪れる災厄の一つに過ぎないことも理解した。しかし、こうなる前には、まさか、21世紀のグローバリズムを打撃を与えたのが、原始的なウイルスになろうとは想像もしなかった。ウイルスに関心持ったけど、コロナはイヤンです。なお、人類と感染症の歴史について考察している本なので、目先のウイルス対策は他の本で。

chiro

コロナ禍で感染症に対する感心が非常に高まっているが、そもそも人類の歴史は感染症との共生の歴史であったことがよくわかると共に文明こそがその共生との強い相関があったことを知ることが出来た。今の時代はグローバル化した為にリージョンとしての固有の文明は存在しないが、であるが故に格差に基づく異なった事態を招いている。それが今回のコロナウィルスの特性により鮮明になった訳であるが、全世界レベルでの蔓延でありながら、世界協調の足並みが揃わない弊害も見られており、著者が語る共生の見地からは憂慮する事態であろう。

ミッキー・ダック

採集狩猟社会から様々な文明社会を経て現代のSARSに至るまで、感染症の流行を詳細に辿り、感染症と人類の関係を考察。非常に勉強になった。◆病原体は、はじめは新たな宿主ヒトに病気を起こしながら感染していくが、一定の拡大を遂げると毒性を弱めてヒトに適応し、ヒトも集団免疫によって安定的な関係を築いて適応。病原体が消滅するとその生態学的地位を埋めるために、新たな病原体が出現する可能性。病原体の根絶は、ヒトの感染症への抵抗力を弱め、新たな感染症で大惨事を起こす可能性があるので、『共生』の考え方が必要だと。

◆著者は医師として、「病原体に奪われる命を見過ごすことは出来ず、手にしている医学医療で対処せざるを得ない。一方で、その積み重ねが大惨事に繋がるかも知れないということを知っている。こうした問題に対処するための処方箋を、今の私はもっていない。しかし『共生』が、進べき大きな道であることを確信している。」と正直に吐露している。◆アフリカで倒れた友人を送る会場に流れた「風に立つライオン」と、曲のモデルになった医師の一文が、著者をハイチや震災直後の東北へ駆り立てたという、その真摯な生き方に感動させられた。

◆交易・交通網発展・移民・植民地・戦争・開発等の社会変化により、集団免疫を持たない新たな感染症が外部からもたらされ大流行すると、社会の人口を減らし、社会のあり方を変えたり文明を滅亡させたりする。ヨーロッパ近代は、ペスト流行の終焉と同時に幕開けした。◆今、グローバリズムにより一体化した世界を新型コロナが襲っている。しかも抗体があっても再感染する可能性があるという。ワクチンや薬の開発に期待する一方で、ウイルスとの共生を前提とした社会のあり方を問われている。リモートワークだけでない大きな変化の可能性が。

aya

ネタバレコロナ禍でもなければ出会わなかったかもしれない、勉強になった! 人類とウイルスの戦いはこれまでも、これからも続いていく。そんな中で、私達がうまく生きていく道は、ウイルスとの共存。ウイルスは毒性が強ければ人の中で長く生きられず、感染力が強ければ人の中で抗体が作られるためこれまた生きられない。よって毒性が弱く、潜伏期間も長くなっていく。たとえ人類にとってちょっとした邪魔者であっても、人間にとって致死率は低く、ウイルスにとっても長く生きられる、こういった共生の道を辿っていくことになるんじゃないか、ということ。

north

時節柄、感染症関係の本を読んでみようと思い、購読。いろいろ勉強にはなったが、叙述が単調で関心を持続するのがちょっと難しかった。帝国医療・植民地医学についての議論がもっとも面白かった。

Takao

2011年6月21日発行(2020年4月27日、第5刷)。感染症との「共生」、コロナウィルスが猖獗を極める今、荒唐無稽にも聞こえるが、本書で述べられている人類と感染症との歴史を振り返ると、著者の意見にも頷く。中世ヨーロッパでのペストの大流行、コロンブスらヨーロッパ人の新大陸への感染症持ち込み、ヨーロッパ帝国主義のアフリカ侵略、第一次大戦当時のスペイン風邪流行、等々。交易の拡大、戦争など社会的な背景との関連にも気づかされた。

おさむ

コロナ禍に読むべき新書。売れ筋ランキングで1位になるのもわかります。国際保健学者の山本氏が人類と感染症の闘いと共生の歴史をわかりやすく紹介してくれます。インドのカースト制の元になったという説や、文明は拡大する過程で感染症のレパートリーを増やして文明を守る防御とする説など、トリビアも多い。ペストは明の鄭和の大遠征が欧州に広がる一因になったり、デカメロンを生む土壌になったりと大きく世界を変えたことも再認識。さて、今回のコロナはどこまで私達の世界を変えるのでしょうか?

翔亀

【コロナ8】うむ、これは?!と、読後考え込んでしまった。アフリカなどの感染症対策に携わってきた医師による2011年の書。前半は自らの体験を交えながら、わかり易く感染症の歴史を語る。文明により感染症の流行が引き起こされたこと、感染症により人類の歴史が大きく変えられてきたこと。この分野での先駆的なマクニール【コロナ3】と論旨は同じだが、よりポジティブだ。例えば1665年の「ロンドンの大ペスト」で大学が休校になったおかげで、ニュートンが「創造的休暇」を得て万有引力など近代科学を導いたと、悪いことばかりでは↓

→3)ばならない。しかし嵩上げには限界がありいずれ破たんし大惨事になる。それと同じように、近代医学を武器に患者を救う一方で(著者の日頃の営み)、感染症を近代医学により人類が抑え込もうとすればするほど、「大惨事につながるかもしれないということを知っている」(p195)。その背景には、ウィルスは自らが子孫を残して生き残るために、宿主(=人間)の生存可能性を高める(弱毒になるあるいは潜伏期間が100年を超える)方向に進化するという、進化の大原則があるからだ。だから本書の結論はこうだ。人類は感染症と共生する↓

→4)しかない。それがたとえ、心地よいとは言えない妥協の産物であったとしても。しかし、私はここで???!となった。論旨と雰囲気はわかったが、理解したとはいえないのだ。要となる次の文章の意味がわからないのだ。これを解決するために次の本に進もう。<くだんの個所>「病原体の根絶は、もしかすると、行きすぎた「適応」といえなくはないだろうか。感染症の根絶は、過去に、感染症に抵抗性を与えた遺伝子を、淘汰に対し中立化する。長期的に見れば、人類に与える影響は無視できないものになる可能性がある」(p193)。

ミュウ吉

「共生とは理想的な適応ではなく、決して心地よいとはいえない妥協の産物」。安易に「共生」、「適応」という単語を使ってた。決してそれは理想郷ではない、永い歴史の一つの瞬間に過ぎないのかもしれない。

しぶみ

感染症をギリシャ神話のパンドラの箱に例えていたのが驚きでした。パンドラの箱の中にあった災いをウイルスに見立て、最後に箱に残った「希望」のように、私たち一人一人が希望を持ち続けることで、社会に希望が生まれるのだそうです。新型コロナに対しても希望を忘れないで行動していこうという気持ちになりました。他にも、ギルガメッシュ叙事詩やもののけ姫のエピソード、鏡の国のアリスの赤の女王の言葉などを用いて感染症をわかりやすく説明されていたので、感染症と文明について理解が深まりました。

二人娘の父

サブタイトルにある「共生」が著者の結論である。ただし一読してその結論に俄かに共感できない自分もいる。もちろん著者も悩んでいることが記されている。そういう点では同じ立場である。俄かには共感できないが、論理の展開にはたいへん学ばされた。「共生」と聞いて思い当たるのは「がん」である。両者ともに現状では「撲滅」が多数派である。しかし、がんも感染症もたたかう相手ではない、という議論との共通点を感じる。このテーマは正解を求めるのは間違いなのかもしれない。

電波時計

古代文明から続く人類の感染症との戦いについて扱った本。著者は医師なので、感染症の特徴やメカニズムについて詳しく解説されている。やはり一番印象に残ったのは、病原体の根絶は根本的な解決策とはならず、病原体との「共生」が必要だと主張していること。共生といっても妥協の産物なので、社会を破綻させるほどの大きな悲劇ではないが、小さな悲劇(「共生のためのコスト」)はおそらく起こるはずで、そのとき私たちはどう振る舞えばいいのかが難しい。

ほんのみちを

COVID-19以後の世界はどうなるのか? 現在、事態はまだ初期段階にあるので気が早い「問い」なのかもしれないが、本書はその答えについて示唆に富む内容だと思う。 ペスト以前と以後でまったく異なった社会に変わってしまったヨーロッパ。 ニュートンの「創造的休暇」。 「決して心地よいとはいえない妥協の産物」としての、ウイルスとの共生。 是非とも、今読んでおきたい。

TM

各時代で流行した感染症を紹介し、それらが歴史にどのような影響を与えてきたか記した本。本書は、先史時代の寄生虫から十数年前に流行したSARSまでを対象とし、感染症が流行した経緯や病状、流行によって人類が受けた影響を解説している。感染症と文明の興亡が関連づけて紹介されているので、面白い歴史書のように気軽に読めた。エボラやコロナなど、危険な感染症は現在でも多く存在する。それらを押さえ込むべく奮闘している研究者や医療従事者へ尊敬の念を改めて抱いた。

aochama

感染症と人間との攻防を歴史的に鳥瞰し、結果的には、共生していくしかないとします。感染症の原因となったウイルスなどは、何度も大流行して多くの命を奪ったものから、瞬間的な流行で消滅したものもあるそうです。感染症を殲滅すると新たな驚異が出現するかも知れないというのは、案外当たっているかも。自然の営みには逆らえないので、共生しかないんでしょうね。いずれにせよ、今の状況は好転してほしいと思います。

birdwatcher

これを読んで、ウイルスとは何らかの形で共生するしかなく、最近テレビや新聞で見かける「ウイルスを根絶する」という言葉がいかに非現実的かを理解できた。また、巻末付録で集団免疫の計算の仕方が説明されており、もっと複雑な計算をしているのかと思っていたが、意外と簡単なことが分かったのも収穫だった。

ぱリ

2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大により緊急事態宣言が発令され、日本国民はあまねく外出自粛中。一か月前まで7月下旬から東京五輪を開催するつもりだったとは信じられないほど悪化。そんななか手にした本。文明の勃興と衰退に、これほどまで感染症がかかわっていたことに驚く。文明が発展するにつれ感染症を制御できると思い込んでいた人類へのしっぺ返しか。スペイン風邪から100年経っても、感染症対策はマスク着用とソーシャルディスタンス確保。弱毒化するまで時間を稼ぎ、集団免疫獲得に持ち込むしか策はないのか。

goro@81.7

一つ穴を塞いだと思ったらまた別のことろから湧き出てきてそこも修復したのに、また出てくるような感染症と人類の闘い。共生するとはいまだどう捉えれば良いのかわかりませんが、―助かるはずもないという諦めが、無気力と抑うつをもたらし、しばしば人間を死に至らしめる事がある~心身症的状態が感染症の被害を助長した可能性がある―これからはこんな段階に進んでいくのかと思える。風に立つライオンの皆様、ありがとうございます。医療に携わる人たちが倒れてしまうのはリーダーの責任です。そして私たちは出来ることをしましょう。

_kuramoo

感染症の歴史を辿る。コロナ禍に際して、感染症と人類がいかにして歴史を紡いできたのか気になり、読むことにした。事態を冷静に見て考えるための一助になる。

ちゅんさん

タイトルは『感染症と“文明”』だけど著者が伝えたいのは『感染症と“共生”』だと思った。感染症と“共生”するという事がどういう事か一応は理解できた。だけどそれには「共生のコスト」が必要。著者は“共生”こそが進むべき道であると確信しているけどそれによって対価を支払うことになる個人がいるときどうすればいいか答えを見つけていない。そこを誤魔化さずに書いていることには好感を持てる。大変勉強になった。これを読んだからと言ってコロナに対する恐怖心が無くなるとかはないけれどじっとしてはいられない。

ちゅんさん

個人的には感染症と共生するなんて概念が全くなかったのですごく読んで良かったと思ってます。逆に感染症と共生って聞いて“うん、それもありだよね”ぐらい聞いてわかる(しっかりくる)人は読む必要ないかもしれません。

Akio Kudo

★★★★ 評判だったので、読んでみた。いい本ではあるが、フルマークとまではいかない。感染症が侵略や文明発展とセットなのはわかるのだが、それが何を意味するのか、作者の主張が感じられない。

ゆ み

何人かの方とコロナと共生していくしかないよね。と話しに出るんだけど、共生ってどういう事と心の中で思っていた(笑)なるほどーそういう事なんだ!と読みながら視界が開けた気がした。(潜伏期の延長→発症の遅延)ただ、共生というのは簡単に出来るものでもない事もわかった。ウィルスと宿主が安定していれば共生は可能だけど、環境の変化や、医学・医療の進歩で大惨事に繋がる事もある。この先コロナとの関係はどうなるんだろう。そしてその結果によりさらに最悪の状況にならない事を望む。

薬ができる事で、ウィルスがさらなる変異を遂げて人間にとって脅威になってしまうことになることもあるようです。共生というのは難しいですね。。

かっぱ

副題にあるように、これは「感染症との共生」を示唆する本である。感染症は、ヒトに対する一方的な攻撃者ではなく、共生者であり、宿主の長期的な持続を必要としている。 現状のcovid-19との関係がどのように変化していくのかはわからないけど、完全な撲滅が難しいとすれば、安定的な共生関係をどのように構築するのか、ということを考えるべきなのかもしれない。

ふたば✧読書リハビリ失敗に付きリトライ準備中

人間の生活範囲が広がり、人口が増加し、移動による集落や、国をまたいだ交流によって、ウイルスとの接触の機会が増加していく。土着の人たちには自然とついていた免疫を持たない、外来者は感染すれば爆発的に感染を広げ、場合によっては致命的な打撃を与える。それでも、時が経てば、それらの人々も一定の免疫を得て鎮静化する。やがて何でもない流行り病の類に落ち着く。人間と感染症のかかわりは人類に文明が勃興したころから変わりなく繰り返されている。ウイルスを制御することは不可能なこと。被害を最小限に止める方法を模索するべきだろう。

Ted

'11年6月刊。◎支那発の武漢肺炎ウイルスによる悪性伝染病が猖獗を極めている昨今だが、支那には黄河と長江の二大大河があるのになぜ黄河にしか文明が勃興しなかったかというと、インフルエンザウイルスやコロナウイルスによる疫病(風土病)が絶えず発生する地域だったからだ、という知見には頷かされる。長江への文明到達は、黄河に遅れること約一千年!

ヤマネコ

新型コロナウイルス(COVIT−19)が世界的に蔓延する中で以前読んだ山本先生のこの本を再読しました。 人類の歴史と密接に関わる感染症… 古くはメソポタミア文明… インカ帝国の衰退などの感染症と文明との関わりがよく分かる書籍です。

kuukazoo

ある意味課題図書かなと。ヒトが農耕定住生活と野生動物の家畜化を行うようになり文明が育まれ同時に様々な感染症に苛まれるようになった。ペスト、マラリア、天然痘、様々な風土病など、寄生虫や菌やウイルスによってもたらされる病は、ヒトの動きによって広がり多くの命を奪ってきた。covid-19もまた歴史的俯瞰視野からみればそんなムーブメントの一つに過ぎないのだろうが、私たちにとっては紛れもなく今起こっているリアルである。ウイルスの根絶は不可能で、ヒトとウイルスが互いに互いを飼い慣らして共生していくしかないのだろうか。

yo yoshimata

感染症を軽視していたーーという自戒を込めて読んだ一冊になりました。感染症との共生は、理想的なものでなく、「決して心地よいとはいえない妥協の産物なのかもしれない」という著者の問題意識を深く受け止めたい。直面する課題を乗り越える努力を尽くした上で、感染症対策や医療体制を切り刻んできた政治のおおもとを変える決意を迫る一冊でした。

アベベベベ

人に感染するウイルスの毒性を人が調整することは困難だと学んだ。 読み易い本とは思わないが、要所に面白い内容がありエピローグに結論が分かりやすく記載されている。

おせきはん

感染症と人類の戦いの歴史を振り返ったうえで、社会を破綻させる大きな悲劇を避けながら、小さな悲劇を最小にするため、感染症と共生していくことを提唱しています。医薬品やワクチンの開発も大切ですが、感染症との戦いのゴールを根絶に限定せず、被害の拡大を抑えながら弱体化したウイルスとの共生を模索する方向性は、心地よいとはいえないものの現実的だと思いました。

横山也寸志

爆発的流行は人間にとってもウィルスにとってもリスクなのだと分かった。共生すること。一つの種のみが快適で無敵なのはあり得ないのだ。多少居心地が悪くても共に生きることが大切。深い。

kzm

染症は消えることがない。共生していくしかない。大変読み易く、知識を得ることができた。

ikedama99

司書さんから勧められた本その4.歴史・文明と感染症のかかわりを丁寧に書いてある。最後の部分にある共生の話は妙にふに落ちる感じがした。感染症のウイルスと人間とがともに生存していく形・・感染症のウイルスも「生き延びる」ための戦略があるというのは興味深かった。

(略)