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感染症の現状 -感染症は人類の歴史をどう変えたか?

2020.06.21 05:59

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=62301?site=nli  【感染症の現状 (後編)-感染症は人類の歴史をどう変えたか?】  019年08月19日保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 篠原 拓也   より

■要旨

前稿(前編)では、感染症の概要と、医療関連感染について概観していった。薬剤耐性菌の問題など、感染症対策ならでは課題についてみていった。

本稿では、市中感染を主なテーマとする。過去に発生した感染症のアウトブレイク(感染患者の発生)を簡単に振り返り、そこからいくつかの気づきを抽出していく。また、病気が拡大する様子を表す数理モデルについても簡単に触れていく。その上で、最後に、感染症への対策について、まとめと私見を述べることとしたい。

前稿と本稿を通じて、読者に、感染症対策への関心と理解を深めていただければ、幸いである。

■目次

0――はじめに

1――感染症の歴史

2――大昔からある感染症

  1|ペストは14世紀にヨーロッパで蔓延し、人口減少をもたらした

  2|「結核は過去の病気ではありません」

  3|天然痘は人類が根絶できた唯一の感染症

  4|スペイン・インフルエンザでは、世界で5,000万人が死亡

  5|麻疹は空気感染による感染力が高い

  6|風疹は先天性風疹症候群の防止が必要

  7|梅毒は、男性20~40歳代、女性20歳代で患者報告数が多い

3――近年、猛威を振るっている感染症

  1|マラリアは、薬剤耐性を持つ原虫や、殺虫剤耐性を持つ蚊が出現して対応が困難に

  2|エイズは、発症していきなりエイズ患者であることが判明するケースが約30%と

   高率で推移

  3|コレラは、地球温暖化により海水温が上昇することで、感染拡大のリスクが高まっている

  4|エボラウイルス病は、開発されたワクチンの効果が期待されている

  5|肺炎は高齢化とともに死亡率が上昇し、死因別死亡率の第3位となっている

  6|食中毒は、さまざまな病原微生物 (細菌、ウイルス、寄生虫) により発生する

  7|がんには、病原微生物によって引き起こされるものもある

  8|ウイルス性肝炎のうち、C型肝炎では治癒率の高い抗ウイルス薬が開発されている

4――感染症の数理モデル

  1|感染症の拡大予防には、「集団免疫」が重要

  2|SIRモデルをもとに感染拡大の様子を分析

5――感染拡大防止策と感染予防策

  1|感染症法は、危険性に応じて感染症を分類して、対応や措置を定めている

  2|予防接種は勧奨接種や任意接種としてさまざまなものが行われている

6――おわりに (私見)

0――はじめに

前稿(前編)では、感染症の概要と、医療関連感染について概観していった。薬剤耐性菌の問題など、感染症対策ならでは課題についてみていった。

本稿は、市中感染を主なテーマとする。過去に発生した感染症のアウトブレイク(感染患者の発生)を簡単に振り返り、そこからいくつかの気づきを抽出していく。そして、感染拡大防止のためにとられた対策が、社会制度や社会心理など、幅広い領域に関係するものであったことをみていく。

また、病気が拡大する様子を表す数理モデルについても簡単に触れていく。そこでは、感染症の拡大予防に重要な役割を果たす「集団免疫」について、数理的な観点からみていきたい。

その上で、最後に、感染症への対策について、まとめと私見を述べることとしたい。

前稿と本稿を通じて、読者に、感染症対策への関心と理解を深めていただければ、幸いである。

1――感染症の歴史

人類は、有史以前から、さまざまな感染症に苦しめられてきた。感染症は、医療が対象とする病気の一種ではあるが、その存在が及ぼす影響は単に病気の範疇にはとどまらない。歴史を振り返ると、感染症が、戦争やホロコーストを上回る大量死を招くこともあった。感染の拡大が、国の社会構造を変化させたり、1つの文明を滅亡させたりすることもあった。

図表1. 歴史上の人類の大量死の原因

ヨーロッパを中心とした感染症の蔓延の歴史をみると、各時代ごとにさまざまな形で人の移動や社会生活の変化が起こり、それらが感染症の拡大をもたらしたことがうかがえる。

図表2. 各時代の主な感染症の蔓延

2――大昔からある感染症

この章と次章では、人類史上に影響をもたらした感染症について、個別にみていく。この章では、ペスト、結核、天然痘など、大昔からある感染症で歴史上大きな影響をもたらしたものを取り上げる1。それぞれの過去の歴史を振り返りつつ、今後の感染症対策への気づきを抽出することとしたい。

1 感染症に関する一般向けの文献に掲載されているものを中心に取り上げた。

1|ペストは14世紀にヨーロッパで蔓延し、人口減少をもたらした

人類史上に、最も大きな影響を与えた感染症として、ペストが挙げられる。患者は高熱、頭痛、精神錯乱などの症状を示すとともに、皮膚に黒っぽい斑点が出て死亡することが多いため「黒死病」ともいわれた。ペストは、ヨーロッパの社会・文明を変化させた感染症といえる。

記録に残る最初のペストの流行は、541年の東ローマ帝国。流行の最盛期には、首都コンスタンチノープル(現在のイスタンブール)で、毎日5,000人~1万人もの死者が出たという。当時の皇帝ユスティニアヌス一世もペストにかかり、回復はしたものの、ガリア(フランス)やイギリス諸島への侵略計画を断念せざるをえなくなったとされる。

中世には、モンゴル帝国の支配下でユーラシア大陸の東西交易が盛んになり、ペストの伝播が進んだ。ヨーロッパでは、14世紀にペストが大流行した。特に、1348~53年の6年間で、当時1億人といわれるヨーロッパの人口のうち、2,000万人~3,000万人がペストで死亡したと推定されている。花の都フィレンツェにはペストで亡くなった人の死体があふれ、地方では多くの村が人口減のために廃村となった。深刻な労働力不足により、農業の労働形態は変化を迫られた。農奴制が崩壊し、小作農が出現して、農民の地位向上につながった。また、ヴェネツィア共和国では、疫病の感染が疑われる船舶を40日間(疫病の潜伏期間)港外に強制的に停泊させる、検疫制度が開始された2。

ペストの宿主はノミで、そのノミがクマネズミなどの齧歯(げっし)類の動物に寄生している。1910年頃には、世界的流行は終わったとされている。現在は、抗生物質での治療が可能となっている。ただし、ワクチンは開発されていない。

ペスト流行時のパニック状態における、人々の心理についてみておきたい。当時、悪疫の原因を求める民衆の心理が、ユダヤ教徒という犯人を仕立てて迫害を招いた。“ユダヤ人が井戸に毒を投げ込んだ”等のデマが広まり、ユダヤ人の虐殺や、家の焼き討ちが行われたという。

2 検疫のことを、英語ではquarantineという。この語は、40日間という意味を有している。

2|「結核は過去の病気ではありません」

結核は太古の昔から存在していたとされる。イスラエル沖で発見された9,000年前の人骨や、古代エジプトの紀元前600年ごろのミイラなどから、結核に感染した人の痕跡がみつかっている。

イギリスの産業革命期には、都市の人口が増え、非衛生的で過酷な労働が行われたことから、結核が大流行した。日本でも明治時代の近代工業化のなかで、結核が流行した。病気療養のために、空気の澄んだ高原の療養所でサナトリウム療法が行われた。しかし、患者は増え続けて、1936年には日本の死因第1位となり「国民病」、さらには「亡国病」とまで呼ばれるようになった3。

WHOの報告書4によると、結核は、世界の10大死因の1つとなっている。2017年には、世界全体で1,000万人が結核に罹患し、130万人が結核で死亡している。特に、エイズ患者は免疫力が低下しているため結核にかかりやすいとされる。この死亡者の中には、30万人のHIV感染者が含まれている。

結核は、空気感染により、感染が拡大する5。結核菌はさまざまな器官で細胞内寄生をする。特に、酸素を好むため、肺の空洞で増殖して肺結核となることが多い。結核菌が増殖すると、発熱、喀痰(かくたん)・喀血(かっけつ)等の症状が出る。結核菌が血流に乗って、臓器に病変をつくることもある。脳に到達すると、脳を包む髄膜に病巣をつくり、結核性髄膜炎を起こして死に至ることがある。

結核は、半年間の薬剤服用で治癒が可能とされる。近年、薬剤耐性を持つ結核菌が出現している。複数の薬剤に耐性を持つ多剤耐性菌や、4つ以上の主要薬剤に耐性を持つ超多剤耐性菌も現れている。

WHOによると、現在、世界の総人口の約3分の1は、結核菌に感染しているものの、発症はせず、他の人に感染させることのない潜在性結核感染症の状態にあるとされる。日本では、この状態の人が、高齢化により免疫力が低下することで、発症・再発するケースが出ている。年齢別の結核罹患率は、高齢ほど高い傾向にある。このため、厚生労働省や全国の自治体では、「結核は過去の病気ではありません」とのスローガンのもと、注意喚起が行われている。

感染症の中には、かつて蔓延し、一度下火になったものの、近年隆盛となっている「再興感染症」と呼ばれるものがある。結核は、再興感染症の代表例といえ、感染拡大への注意が必要とされる。

図表3. 結核罹患率 (2017年、人口10万人あたり)

3 結核の患者の皮膚が透き通ったように白くなって死に至るため、ヨーロッパでは「白いペスト」、「白死病」と呼ばれた。

4 “Global Tuberculosis Report 2018”(WHO)による。

5 なお結核は、空気感染しかしない。このような感染は、「絶対的空気感染」と呼ばれる。結核は、結核菌を含む飛沫核が空気中に浮遊し、これを吸入して、口腔・鼻腔、上気道、気管支を通過して肺胞に到達することで感染が成立する。飛沫は水分を含んでいるため重く、気道や気管支の粘膜に付着して喀痰として排出される。このため結核は、飛沫感染や接触感染はしない。絶対的空気感染については、前編の感染経路の分類の脚注を参照。

3|天然痘は人類が根絶できた唯一の感染症

天然痘は、歴史上、多数の人々を死に至らしめてきた疾病である。20世紀には2つの世界大戦による死者は全世界で1億人に満たないが、天然痘による死者は3億人とされている6。

天然痘は、日本でも仏教伝来と同時期に、大陸からもたらされたとみられている。737年には平城京で流行して、藤原氏4兄弟7をはじめ、多くの死者を出した。東大寺の大仏は、聖武天皇により、その悲劇の終わりと国家安泰を願って建立された。

天然痘は、ヨーロッパでは昔から流行が繰り返されて、感染した人々は免疫を持っていたとされる。15~16世紀の大航海時代に、ヨーロッパの航海者はアメリカ新大陸に到達し、そこで開拓を始める。1521年にはアステカ帝国(メキシコ)、1533年にはインカ帝国(ペルー)がスペイン人の遠征隊によって征服された。これらの征服は、帝国側の軍事的敗北というよりも、スペイン人の遠征隊がたまたま持ち込んだ天然痘の流行のために帝国側の戦闘力が喪失したことによる影響が大きかったといわれる。

天然痘は、人のみが感染するウイルス性の病気で、感染した人は必ず発症する8。一度かかれば、二度とかかることはない。天然痘ウイルスは口や喉の粘膜で増殖し、それが血流に乗ってさまざまな臓器に至る。患者は頭痛、腹痛、嘔吐などの症状を表し、高い致死率を示す。また、ウイルスは皮膚にも向かい、痘痕(あばた)と呼ばれる発疹を出す。命が助かったとしても痘痕は生涯残るため、外見・容姿を気にする患者の心の傷は癒えないとされる。また、天然痘による失明も、数多くみられる。

1796年、イギリスの医師エドワード・ジェンナーは、牛痘にかかった人のおできの膿を接種することで天然痘の免疫が得られることを確認した。この「種痘」の発見が、天然痘の予防法確立につながった。天然痘にはヒト以外の宿主がなく、感染者は必ず発症するため感染拡大防止の対策をとりやすかった。種痘をベースに、ワクチンによる予防法も確立されていた。こうしたことから、天然痘の根絶に向けた取り組みが進められた。WHOは1960年代に、患者を見つけ出して患者周辺に種痘を行う「サーベイランスと封じ込め作戦 9」を展開して、顕著な効果をあげた。そして、1980年に天然痘の世界根絶宣言を行った。天然痘は、これまでに人類が根絶することができた唯一の感染症となっている10。

6 「怖くて眠れなくなる感染症」岡田晴恵著(PHPエディターズ・グループ, 2017年)の内容を筆者がまとめた。

7 737年に、藤原武智麻呂(たけちまろ)、藤原房前(ふささき)、藤原宇合(うまかい)、藤原麻呂(まろ)の4氏が、相次いで死亡。いずれも藤原鎌足の孫で、藤原不比等の子。

8 つまり、感染しているが発症していない「不顕性感染」の状態の患者はいない。

9 流行地域で患者を見つけた人に対して、賞金(1米ドル)が支払われた。患者が減るにしたがって、賞金額を引き上げていくことで(最終的には1,000米ドルにまで引き上げ)、サーベイランスと封じ込めが徹底された。

10 現在、アメリカとロシアの研究機関で保管中の株が人為的に流出して、バイオテロに利用される懸念が指摘されている。

4|スペイン・インフルエンザでは、世界で5,000万人が死亡

インフルエンザ(流行性感冒)は、これまでに何回かのパンデミック(世界的流行)を引き起こしている。20世紀には3回、21世紀にはこれまでに1回のパンデミックが発生した。特に、1918年には「スペイン・インフルエンザ」のパンデミックが起こり、最大推計で世界で5,000万人が死亡したとされる11。これは、1つの感染症のアウトブレイクによる死者数としては、最大級のものといわれる。こうしたパンデミックの背景には、都市部の人口密集が進んだことと、鉄道や航路などの交通網が発達して人の移動が活発になったことがあると考えられている。

インフルエンザウイルスには、核酸(RNA)とこれを保護するタンパク質(カプシド)12が示す抗原性の違いにより、A型、B型、C型の3つのタイプがある。このうち、パンデミックを起こすのはA型のみである。A型は、ヒトだけでなく野鳥を中心に多くの動物に感染する。B型は、主にヒトでの流行であり、腹痛や下痢の原因となる。C型は、ヒト以外での流行はみられず、比較的軽症の場合が多い。

A型では、ウイルスの表面に2種類の突起(糖タンパク質)がある。これらは、感染防御免疫を行う際の標的抗原となる。1つはヘマグルチニン(赤血球凝集素)(HA)と呼ばれるもので16種類ある。もう1つはノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれるもので9種類ある。A型には、これらの組合せにより144の亜型があるとされる。それぞれの亜型は、たとえば「H1N1」、「H3N2」などと表される13。B型にはHAとNAの違いによる亜型はないが、抗原性の違いから「山形系統」と「ビクトリア系統」に大別される14。C型には、HAやNAはない。

鳥インフルエンザは、鳥類に対して感染性を示すA型インフルエンザウイルスの感染症である。通常、ヒトには感染しない。ただし、家禽(かきん)やその排泄物、死体、臓器などに濃厚な接触があった場合に、ヒトに感染した事例が報告されている。また、鳥インフルエンザがヒトからヒトに感染することは極めて稀であり、患者の介護等のため長時間に渡って患者と濃厚な接触のあった家族などに限られている。これまでに日本で発症した人は確認されていない。

ただし、ウイルスが変異してヒトからヒトへの感染力を持つようになると、新型インフルエンザとして猛威を振るう可能性がある。このため、国立感染症研究所等で動向の監視が続けられている。

図表4. 20世紀以降のパンデミック

季節性インフルエンザは、毎年冬季に(熱帯地方では年間を通じて)流行するインフルエンザを指す。流行する型をみると、下図のとおり、年ごとに大きく異なっている。なお、季節性インフルエンザは1~2月頃が感染のピークとなるのに対し、スペイン・インフルエンザや新型インフルエンザのようなパンデミックインフルエンザでは秋季(11月頃)にピークがくる、というピーク時期の違いがみられる。

図表5. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の割合

インフルエンザは、高熱、頭痛、四肢疼痛、全身倦怠などの全身症状を示す15。重篤な場合、急性肺炎を起こして死亡することもある。また、小児では、意識障害などの神経症状が出て、インフルエンザ脳症が起きることもある。現在、抗ウイルス剤として、経口剤、吸入剤などが処方されている16。

インフルエンザのワクチンは、天然痘における種痘のような完全な予防が得られるものではない。発症を防ぐことよりも、発症した場合の重症化を抑えることに重点が置かれている。インフルエンザにはウイルスの型がある。実際に流行しているウイルスと、ワクチンに用いたウイルスの型が異なれば、予防効果は低くなる。このため、毎年、厚生労働省の審議会で、ワクチンの製造株の選定が行われている。なお、パンデミックインフルエンザについては、ウイルスを入手するまでワクチンが製造できない。このため現状では、感染拡大とワクチン接種の間のタイムラグが避けられない。

11 スペイン・インフルエンザは、1918年3月にアメリカのカンザス州で流行が始まった。第1次世界大戦でのアメリカ軍のヨーロッパへの移動に伴って、ヨーロッパに感染が拡大したとされる。交戦中の各国は自国でのインフルエンザ拡大を隠したが、参戦しなかったスペインは感染を隠さなかった。このため、スペインでの流行が最初であると誤解され、「スペイン・インフルエンザ」と呼ばれるようになった。

12 核酸とカプシドをあわせて、ヌクレオカプシドという。インフルエンザウイルスの場合は、ヌクレオカプシドがさらにエンベロープと呼ばれる外膜で覆われている。

13 同じ型、同じ亜型の中でも、HA、NAには小さな変異が存在する。流行を起こすウイルスには、地域や年度によって違いがある。そこで、株が分離された生物種(ヒトの場合は省略)、場所、年度(1999年までは下2桁、2000年以降は4桁)によって命名・分類がなされる。たとえば、「A/ニワトリ/香港/97(H5N1)」など。

14 山形系統は1988年に山形県、ビクトリア系統は1987年にオーストラリアのビクトリア州で分離されたために、このように呼ばれている。

15 通常の風邪(普通感冒)は、ヒトライノウイルスやRSウイルスなどによって起こる気道感染症。鼻みず、喉の痛み、咳、発熱の症状が出るが、全身症状はみられないことが多い。

16 経口剤のタミフル®、吸入剤のリレンザ®、点滴投与のラピアクタ®、長期吸入剤のイナビル®が用いられている。2018年には、1回の経口投与ですむゾフルーザ®が発売された。

5|麻疹は空気感染による感染力が高い

麻疹(はしか、ましん)は、麻疹ウイルスによる感染症で、高熱、赤い発疹が全身に出るといった症状を示す。また、麻疹は、重い合併症を伴う可能性がある点が問題となる。特に重大なのは、二大合併症とされる麻疹肺炎と麻疹脳炎である。麻疹は、紀元前からある感染症で、かつては天然痘と並ぶ二大感染症として恐れられた時期もあった。

麻疹の最大の特徴は、感染力の強さにある。空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれの経路からも、ヒトからヒトへの感染が可能である。免疫を持っていない人が麻疹ウイルスに曝露されると、80~90%程度の確率で感染する。同じく空気感染する、水痘や結核よりも感染力が高いとされる17。

現在のところ、麻疹ウイルスに効く薬剤はない。発症後は、症状を和らげるための対症療法のみとなる。そこで、ワクチンによる予防が重要となる。かつては、1度のワクチン接種で免疫が獲得できるとされていた。しかし、免疫はその後の自然感染により抗体が維持されるもので、近年のように、流行がなく自然感染が起こらないなかでは、抗体が維持されずに発症してしまうケースが出てきた。そこで、現在は、乳幼児期に2回のワクチン接種を行うこととされている。

麻疹は、2014年に東南アジアからの輸入例により増加した。2019年は、8月半ばまでにそれを上回るウイルスの検出が起こっており、感染拡大が懸念される状況となっている。

図表6. 麻疹ウイルスの分離・検出報告数の推移

17 感染の確率は、水痘は60~70%程度、結核は50%程度。(「感染症まるごと この一冊」矢野晴美(南山堂, 2011年)より)

6|風疹は先天性風疹症候群の防止が必要

風疹は、風疹ウイルスによる感染症。空気感染はせず、飛沫感染で流行する。症状は、軽い発熱と発疹が出ることがあるものの、多くは3日程度で治る。まれに脳炎などの合併症を伴うことがあるが、ほとんどの場合、軽い病気で済む。

風疹が問題となるのは、妊娠初期の女性がかかった場合、胎児もウイルスに感染して、流産、死産や、胎児に障害を残すことがある点である。これは、「先天性風疹症候群(CRS 18)」と呼ばれる。特に、眼の障害、難聴、心臓疾患が現れやすく、これらはCRSの3大症状といわれている。

風疹の感染防止には、ワクチンの接種がカギとなる。日本では、かつて女子中学生のみにワクチン接種を行っていた時期があった。しかし、この接種方法では、流行を抑えられなかったことから、現在は、男女の全幼児を対象とするものに変更されている。この結果、1962~79年生まれの男性について、抗体保有率が他の年代より低く風疹にかかりやすい状態となっている。厚生労働省は、2021年度末までの期間、対象世代の男性を、定期予防接種の対象者に追加している19。

風疹は、2012~13年にかけて全国規模で流行した。2012~14年に45件のCRSが報告された。2018年から風疹の流行がみられ、2019年には8月7日までに2,061件の風疹患者からのウイルス検出、3件のCRSが報告されている。対象者への定期予防接種を実施して、集団免疫を進める必要がある。

図表7. 風疹ウイルスの分離・検出報告数の推移

18 CRSは、Congenital Rubella Syndromeの略。

19 2022年3月31日までの間に限り、1962年4月2日~1979年4月1日の間に生まれた男性(約1,610万人)【2019年4月1日時点で、40~56歳の男性】を、抗体検査、予防接種の対象として、全国で原則無料で定期接種を実施するとしている。政府は、2020年7月までに対象の抗体保有率を85%に引き上げ、2021年度末までに90%に引き上げることを目標としている。

なお、2018年度の男性の抗体保有率(HI抗体価1:8以上)は、30歳代後半は86%、40歳代は79~86%、50歳代前半は77%であり、女性や他の年齢層の男性に比べて特に低い。(「風疹流行に関する緊急情報:2019 年7 月24 日現在」「感染症流行予測調査」(国立感染症研究所)をもとに筆者がまとめた。)

7|梅毒は、男性20~40歳代、女性20歳代で患者報告数が多い

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌による感染症である。梅毒は、かつては不治の感染症とされ、症状が進行すると全身の麻痺、精神錯乱、失明、運動障害や言語障害に至るため、恐れられていた。現在は、抗生物質の投与により、適切な治療を受ければ治る病気となっている。

梅毒は、もともとヨーロッパ、アジア、アフリカの旧大陸にはなかった。大航海時代に、アメリカ新大陸からもたらされ、ルネサンス期の性の解放で蔓延に拍車がかかった、とされる20。

梅毒には、大きく分けて2つの感染経路がある。感染者の母親から胎児に感染する先天性のものと、性行為によって感染する後天性のものである。後天性の梅毒は、病気の進行とともに病状が変化する。 第1期(感染後3週間~3ヵ月)には、陰部、口唇部、口腔内などの細菌が侵入した部分に赤いしこりや腫れができて膿を出すが、あまり痛みはない。症状はいったん消える。第2期(3ヵ月~3年)は、バラの花びらのような「バラ疹(しん)」と呼ばれる発疹が全身にできる。発熱、頭痛、倦怠感を伴うこともある。第3期(3~10年)には、皮膚、筋肉、骨に「ゴム腫」と呼ばれるゴムのような腫瘍ができる。激痛を伴うこともある。そして、第4期(10年以上)には、神経系が侵されて、全身の麻痺、精神錯乱、失明、運動障害や言語障害に至る。

感染してもすぐに症状が出なかったり、症状が一時的に消えたりする時期があるため、患者が自然治癒したと勘違いをして、治療が遅れることがある。症状が消えている間も、患者には他の人に病気をうつす力があるため、感染拡大につながる恐れがある。

特に、近年は、日本で若齢の感染者が増加している。患者報告数の推移をみると、2014年頃から急増している。男性は、20~40歳代、女性は20歳代で患者報告数が多い。

図表8. 日本の梅毒患者報告数の推移

図表9. 日本の梅毒患者の男女別報告数 (2018年)

梅毒などの性行為を主要な感染経路とする感染症は、症状が現れないと、感染者が検査や診療を受けないケースがある。このため、実際の報告数のほかに、感染しているがそのことに気づいていない人がいるものとみられる。検査を受ける人の負担を減らすために、費用を無料としたり、匿名での検査を行ったりしている自治体もある。感染が疑われる人は、早期に検査を受けることが求められる。

20 つまり、大航海時代の新大陸(アメリカ大陸)発見により、天然痘が旧大陸から新大陸へ、梅毒が新大陸から旧大陸にもたらされたことになる。

3――近年、猛威を振るっている感染症

前章につづいて、人の生命や生活に大きな影響をもたらす感染症についてみていく。この章では、マラリア、エイズ、コレラなど、近年、猛威を振るっているものを取り上げる。また、微生物への感染が原因となる肺炎、食中毒などの疾患についてもみていく。

1|マラリアは、薬剤耐性を持つ原虫や、殺虫剤耐性を持つ蚊が出現して対応が困難に

マラリアは、エイズ、結核とともに、世界三大感染症の1つとされている。マラリア原虫という寄生虫が病原体で、これがハマダラカという蚊の雌の吸血によって媒介されて、ヒトを感染させる。現在、日本ではマラリアの流行はないが、アフリカや東南アジアの熱帯・亜熱帯の国々で流行が続いている。WHOの報告書によると、2017年には2億1,900万件の症例が発生し、43万5,000人が死亡したと推定されている。死亡者の61%は5歳未満の子ども、とされている21。アフリカでは、貧困や戦乱・紛争が発生している地域で、十分な医療が行われていないことが、その背景にあるものとみられる。

マラリアは発症すると、高熱、頭痛、嘔吐などの症状が出る。症状が悪化すると、意識障害や、腎不全を起こして死亡することもある。

現在のところ、マラリア原虫に対するワクチンは開発されていない。治療は、抗マラリア薬の投与が中心となる。いくつかの薬剤が開発されており、死亡率の低下に寄与しているとされている。予防のために薬剤を内服するケースもある。また、殺虫剤を散布して媒介する蚊を駆除したり、殺虫剤を含む蚊帳を用いるなど、生活環境面での予防も推奨されている。

近年、薬剤に耐性を持つマラリア原虫や、殺虫剤への耐性を獲得したハマダラカが出現してきている。このため、薬剤や殺虫剤の選択の変化が激しく、対応が困難になりつつある。

21 「世界保健機関(WHO) 2018年世界マラリア報告書」より。

2|エイズは、発症していきなりエイズ患者であることが判明するケースが約30%と高率で推移

エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染症である。感染後2週間程度インフルエンザに似た発熱などの症状が出ることがある。その後、症状は収まるが、患者の体内ではウイルスが増殖していく。そして、この無症候期が10年程度続いた後、発症する。エイズは、免疫力が低下したことによる日和見感染症が中心である。最も死亡者が多い日和見感染症は、結核とされる。このため、エイズ患者の多いアフリカのサハラ砂漠以南地域では、エイズ対策と結核対策がセットで進められている。

エイズでは、HIVの空気感染、飛沫感染、接触感染は起こらない。性行為、輸血、母子感染(分娩時、母乳)、注射型麻薬などが感染経路となる。

1981年にアメリカ・ロサンゼルスで、同性愛者の男性が死亡したことで注目された。1990年代半ばまで、エイズは死に至る病として恐れられてきた。その背景には、この病気が突如現れたこと。病原体が不明であったこと。治療法がなく、発症した患者が急速に死に至ること、があったとされる。日本では、感染を恐れるあまり患者に対する差別が起こったり、飛沫感染によっても病気がうつるのではないかとの不安心理から、エイズパニックが生じたりした。

その後、感染のメカニズムが解明され、感染者の発症を遅らせる抗HIV剤の開発が進んだ。併せて、性行為時の避妊・性病予防具(コンドーム)の使用により感染を防ぐ等の感染リスク対策の社会的な認識も進んだ。これらの効果もあり、現在、エイズを死には至らない病に変貌させることができた。

WHOが公表しているエイズ関連のデータによると、2017年には世界全体で新たに、約170万人がHIVに感染。2018年末にはHIV感染者は約3,790万人となった。また、2017年には、約94万人がHIV関連の疾患で死亡している22。

日本におけるHIV感染者とエイズ患者の新規報告数は、それぞれ年間1,000件、400件程度。2000年代後半以降、ほぼ横ばいで推移している。無症候期に血液検査でHIV感染者として発見されることなくエイズを発症して、いきなりエイズ患者であることが判明するケースが新規報告数の約30%と高率で推移している。これは、無症候期に性行為を通じて、感染を拡大させた可能性がある患者が一定数いることを意味しており、感染拡大防止の観点からは深刻な事態といえる。

図表10. 日本におけるHIV感染者とエイズ患者を合わせた新規報告件数(推移)

22 “HIV/AIDS Key facts”(WHO)等より。アドレスは、https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hiv-aids

3|コレラは、地球温暖化により海水温が上昇することで、感染拡大のリスクが高まっている

コレラは、ビブリオ・コレラという細菌の感染症である。感染者の便に含まれる細菌が、水や食物を通じて経口摂取されて感染する。感染者の8割程度は症状を出さないとされる。症状が出た場合、急性の激しい下痢を繰り返し、重症の脱水状態となる。重篤な場合には、死に至るケースもある。

コレラの原因菌は、コレラ菌のうちO-1血清型とO-139血清型のもので、いずれもコレラ毒素を産生する23。これに対しては、水道水の塩素消毒が重要となる。

19世紀には、コレラが何度も世界的に流行した。明確なコレラ・パンデミックは、6回あったとされる。1854年には、イギリスの麻酔科医ジョン・スノウが、第3回のパンデミックのロンドン市内での流行について、感染者・死亡者の分布と、井戸の分布を地図で重ね合わせることにより、感染の原因が飲料水の汚染であることを突き止めている。これは、疫学を用いて感染症を終息させた偉業として現代に語り継がれている。

現在は、1961年にインドネシアで始まった第7回のパンデミックの途中とされる。近年は、地球温暖化の影響で海水温が上昇しており、コレラ菌が生育しやすい環境になっている。このため、世界各国で、感染拡大に対する警戒が高められている。

23 O(オー)は、O抗原という細胞壁の抗原を意味する。コレラ菌は、O抗原によって200種類以上の血清型に分類されている。

4|エボラウイルス病は、開発されたワクチンの効果が期待されている

エボラウイルス病は、主に、アフリカ中部やサハラ砂漠以南の西アフリカで発生する。CDCのまとめによると、1976年の流行 24を皮切りに、これまでに28回のアウトブレイクが起きている。特に、2014~16年に西アフリカのリベリア、ギニア、シエラレオネで起きたアウトブレイクでは、感染者数28,652人、死亡者数11,325人、感染者の致死率は約4割に上った25。なお、統計にカウントされていない感染者や死亡者がいるとみられ、実際の犠牲者はさらに多数であったと考えられている。

エボラウイルス病の病原ウイルスは、オオコウモリを宿主としているという説が有力となっている。感染経路は接触感染であり、患者の体液と接触することで感染が成立する。感染の拡大には、いくつかの背景がある。アフリカ中部での流行では、流行地域が過疎地域で、貧困であったため医療器材が不足し、病院内での注射器の使い回しが行われたことによる院内感染が起きた。一方、西アフリカでの流行は都市部で発生した。死者の埋葬の際、死者を悼んで体を抱擁したり手足をさすったりする、この地域特有の風習があり、これが接触感染を引き起こしたとされる。

また、2014年の西アフリカのケースでは、アメリカから派遣された医療従事者が本国に帰って二次感染を起こした。飛行機による人の高速移動が、別の地域に二次感染を引き起こす事例となった。

2018年の夏にコンゴ民主共和国で発生したアウトブレイクは、2019年8月14日時点までに、患者2,852人、死亡者1,913人(それぞれ94人の高可能性例を含む)を出している。WHOは、この事態を受けて、7月17日に緊急事態宣言を出している26。エボラウイルス病については、ワクチンが開発されており、接種を通じた感染拡大防止効果が期待されている27。

24 この病気は、初期の流行地域であるザイール(現コンゴ民主共和国)のヤンブクを流れるエボラ川にちなんで、「エボラ出血熱」と呼ばれた。患者が激しく出血することから出血熱と名づけられたが、出血を伴う前に死亡する患者もいることがわかり、WHOは2014年に病名を「エボラウイルス病」に変更した。

25 “Ebola Virus Disease Distribution Map: Cases of Ebola Virus Disease in Africa Since 1976”(CDC)による。(アドレスは、https://www.cdc.gov/vhf/ebola/history/distribution-map.html)

26 これまでに、WHOが緊急事態宣言を出した事例として、中南米でのジカ熱の流行(2016年2月)、西アフリカでのエボラウイルス病の流行(2014年8月)、パキスタンやシリアでのポリオ(小児まひ)の流行(2014年5月)、新型インフルエンザのパンデミック(2009年4月)がある。

27 別途、薬剤を用いた試験的な治療も実施されている。出資元のアメリカ国立衛生研究所(NIH)は8月12日に、実施した4種類の治療法のうち、REGN-EB3またはmAb114の薬剤を用いた治療法は患者の生存率が高く有効だった旨の発表をしている。

5|肺炎は高齢化とともに死亡率が上昇し、死因別死亡率の第3位となっている

肺炎は、日本での感染症として身近なものだ。「人口動態統計」(厚生労働省)によると、2017年の肺炎(誤嚥性肺炎を含む)の死亡数は、96,807人(概数)。死因別にみると、肺炎は第3位の死因となっており、死亡数全体の9.9%を占めている28。

戦後、抗生物質ペニシリンの開発・投与により、肺炎による死亡数は減少した。しかし、1980年代より、高齢化が進むに連れて、肺炎による死亡率は上昇に転じている。

図表11. 主な死因別死亡率推移 (人口10万人あたり)

一般に、高齢者は肺炎になりやすい。その理由の1つとして、誤嚥性肺炎が挙げられる。食べ物が誤って気管に入ったときに、咳によって肺に入ることを防ぐが、咳反射が低下していると肺に入ってしまう。食べ物に付着していた細菌のうち、肺炎球菌、レジオネラ菌、肺炎マイコプラズマなどが肺の中で増殖して炎症を起こす。

肺炎は重症化すると、肺のガス交換を阻害し、呼吸不全を起こして死亡する恐れがある。肺炎球菌に対しては、小児向けと65歳以上の高齢者向けに、ワクチンの予防接種(勧奨接種)が行われている。

28 人口動態調査の死因別死亡数の調査では、2017年より、誤嚥性肺炎が肺炎から独立して集計されている。2017年の誤嚥性肺炎による死亡数は35,740人で、死亡数全体の2.7%を占める。

6|食中毒は、さまざまな病原微生物 (細菌、ウイルス、寄生虫) により発生する

食中毒には、さまざまな病原微生物が原因となるものがある29。食中毒を起こす病原微生物としては、細菌、ウイルス、寄生虫がありうる。それぞれ代表的なものをみていく30。

図表12-1. 食中毒事件発生状況(病因物質別、2018年)/図表12-2. 食中毒患者発生状況(病因物質別、2018年)

29 病原微生物が関与しないものとして、キノコやフグなどの自然毒によるものや、カジキ・マグロ・ブリなどを食べたときに蕁麻疹がでるヒスタミン中毒がある。

30 円グラフ中のウェルシュ菌は、ヒトなどの動物の腸内常在菌。大規模食中毒事件の原因となることで知られている。

(1) 細菌性食中毒

細菌は、時間の経過とともに食材の中で増殖していく。このため、古い食材ほど、細菌性食中毒のリスクが高くなる。ヒトをはじめさまざまな動物の腸内常在菌で、鶏肉やレバー(豚、牛、鶏)などに含まれるカンピロバクターは、数百個という少ない数の細菌で感染を引き起こす。主に、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリという2つの菌種が、食中毒の原因菌となる。

一方、牛肉などに含まれる腸管出血性大腸菌O-157は、わずか50個ほどの細菌で感染が成立する。重症の患者は、痙攣(けいれん)や意識障害を伴う脳症や、「溶血性尿毒症症候群(HUS31)」という溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全を伴う症状を示して死亡することもある。

31 HUSは、Hemolytic Uremic Syndromeの略。

(2) ウイルス性食中毒

ウイルスは、細菌と異なり自己複製能力を持っていない32。このため、時間の経過とともに食材の中で死滅していく。したがって、ウイルス性食中毒は、新鮮な食材ほどリスクが高いことになる。代表例として、二枚貝や牡蠣(かき)に含まれるノロウイルスが挙げられる。このノロウイルスは、経口感染だけではない。感染者の嘔吐物や糞便が、「エアロゾル」という微細な固体または液体の粒子となて空中に浮遊・飛散する。その結果、空気感染により、多くの感染者の発生につながる恐れがある。

ノロウイルスの宿主はヒトであり、その他の動物には感染しないとされる33。このため、動物実験やウイルス培養が困難であり、これまでに抗ウイルス薬や、ワクチンは開発されていない。また、ノロウイルスはアルコールに抵抗性がある。このため、アルコール手指消毒はあまり効果がないとされている。感染予防対策として、石鹸と流水での手洗いが必要となる。

32 ウイルスは、DNAとRNAのどちらか一方しか持っていない。自己複製はできず、なんらかの細胞にとりついて増殖する。このため、生物学的な分類では、生物には含まれない。(前編参照)

33 二枚貝や牡蠣には、単にウイルスが集積しているに過ぎない。

(3) 寄生虫

近年、サバやサンマなどに含まれる蠕(ぜん)虫34である、アニサキスが食中毒を起こす事例が多発している。アニサキスは、イルカやクジラなどの海生哺乳類を最終宿主とするが、海中で孵化(ふか)した幼虫はオキアミ等を通じて、サバ、サケ、サンマなどの中間宿主に取り込まれる。日本では、刺身や寿司など海産魚介類の生食を嗜好する食習慣があるため、食中毒が発生しやすいとされる35。

アニサキスの食中毒は、みぞおちの激しい痛みや嘔吐などを伴う。感染予防として、調理の際に十分な加熱処理を行うなど36の対策が求められる。

34 寄生虫のうち、多細胞生物を指す。

35 国立感染症研究所の推計によると、33万人規模のレセプトデータを用いた試算で、年間に7,147件のアニサキスによる食中毒が発生したとみられている(2005~11年の年平均)。(「アニサキス症とは」(国立感染症研究所ホームページ, 2014年5月13日改訂)より。(アドレスは、https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html))

36 60℃で1分以上の加熱が、確実な感染予防の方法となる.またマイナス20℃で24時間以上の冷凍処理を行うことによって、アニサキス幼虫は感染性を失うとされる。(前の注記と同じ出典)

7|がんには、病原微生物によって引き起こされるものもある

ヒトの体内で、がんを引き起こす病原微生物が、いくつか知られている。

ヘリコバクター・ピロリ菌は、慢性胃炎、胃潰瘍から胃がんを引き起こす細菌とされている。WHOは1994年に、疫学的調査の結果に基づいて、この細菌が発がん性を持つことを認定した。日本では、2000年より胃潰瘍、十二指腸潰瘍のピロリ菌除菌療法が保険適応となった。そして、2013年には、ピロリ菌による慢性胃炎にも、この治療法が保険適応となっている。

一方、ウイルスは細胞に感染して、その細胞を増やすことで増殖する。その際、がん細胞の増殖を抑制したり、自然死(アポトーシス)を促したりする遺伝子を阻害することで、増殖の歯止めを効かなくするようなことも行われる。ウイルスのうち、ワクチンがあるものについては、ワクチン接種による感染予防策が考えられる。ただし、ヒトパピローマウイルスについては、副反応37が問題となり、現在、ワクチン接種の積極的な推奨は差し控えられている。その結果、定期接種の接種率は1%程度となっている(第5章参照)。

さらに、胆管がんや膀胱がんのなかには、吸虫(きゅうちゅう)と呼ばれる多細胞生物の寄生虫(蠕(ぜん)虫)が引き起こすものもある。

図表13. がんを引き起こす病原微生物

37 ワクチンの予防接種の場合、免疫獲得以外の発熱や腫脹(しゅちょう)などの反応を「副反応」という。

8|ウイルス性肝炎のうち、C型肝炎では治癒率の高い抗ウイルス薬が開発されている

ウイルスによって肝炎が起こることがある。ウイルス性肝炎には、A型からE型まで、5つの種類が知られている。肝炎ごとにそれぞれ別のウイルスがあり、感染経路は同じではない。症状もさまざまであり、ワクチンの有無も異なる。

特に、B型肝炎やC型肝炎は、慢性化すると、肝硬変や肝細胞がんにつながる可能性がある。このため、早期の発見と治療が求められている。B型肝炎の治療には、インターフェロンというタンパク質製剤や、核酸アナログ薬と呼ばれる製剤が用いられる。C型肝炎にも、インターフェロンが用いられるが、近年、経口薬で、治癒率の高い高額の抗ウイルス薬が開発されており、インターフェロンを用いない治療が主流となりつつある38。

なお、A型肝炎やB型肝炎のようなワクチンがあるものについては、ワクチン接種による感染予防の強化が進められている。

図表14. ウイルス性肝炎

38 たとえば、ハーボニー®、ソバルディ®、ヴィキラックス®、グラジナ®、エレルサ®、ジメンシー®、マヴィレット® など。これらの医薬品は、治療効果が高いために患者の治癒を達成しており、その結果、C型肝炎医薬品市場は縮小傾向となっている。(「薬事ハンドブック2019 - 薬事行政・業界の最新動向と展望」(じほう)をもとに、筆者がまとめた。)

4――感染症の数理モデル

感染症は、感染拡大によって社会に深刻な影響を及ぼす可能性がある。そこで、これまでに感染症に関する数理モデルが開発され、感染拡大の研究が進められている。モデルを活用することで、感染拡大を定量的に予測することも行われている。この章では、感染症の数理モデルについて、概念や用語などを簡単にみていこう。

1|感染症の拡大予防には、「集団免疫」が重要

(1) 基本再生産数

まず、感染症の感染拡大をみる上で重要な「基本再生産数」という概念がある。「R0」という記号で表されて、英語ではアール・ノート(R naught)と呼ばれる。これは、ある感染症にかかった人が、その感染症の免疫を全く持たない集団に入ったときに、直接感染させる平均の人数を表す。R0が1より大きいと、感染は拡大する。1より小さければ、感染はいずれ収束する。ちょうど1ならば、拡大も収束もせず、その感染地域に、風土病のように根付くことになる。

(2) 集団免疫率

感染症の拡大予防には、「集団免疫」が重要とされている。これは、集団内に免疫を持つ人が多ければ、感染症が流行しにくくなることを利用した感染拡大防止の考え方を指す。具体的には、予防接種等により、集団内の免疫保持者を一定割合まで高めておくことを意味する。

たとえば、ある集団で、R0が3である新たな感染症に備えることとしよう。この集団では、まだ誰もこの新たな感染症に、かかったことがない。外部から感染症にかかった人が、この集団に入ったとする。1人の感染者から、平均して3人が直接感染する。そこで、もし、この集団の1/3の人が免疫を持っていれば、感染は、平均して2人に抑えられる。もし、2/3の人が免疫を持っていれば、感染は、平均して1人に抑えられる。もし、2/3を超える人が免疫を持っていれば、感染は、平均して1人未満に抑えられて、この感染症はいずれ収束することになる。

このように、感染症のR0の大きさに応じて、集団内の免疫保持者の割合を、(R0-1)/ R0 よりも大きな水準にまで高めておけば、集団免疫が働いて、感染症は収束に向かうことになる。この集団内の免疫保持者の割合は、「集団免疫率」と呼ばれ、集団免疫を行う際のメルクマールとされる。

ただし実際には、予防接種を受けたからといって、全員が、免疫を獲得するわけではない。そこで、「免疫獲得率」という考え方が出てくる。集団免疫を機能させるためには、集団免疫率を、この免疫獲得率で割り算した水準まで、予防接種の接種率を高めておく必要がある。

(3) 過去に発生した感染症の基本再生産数

それでは、過去に発生した感染症の基本再生産数R0の値は、どのくらいだったのだろうか。これについては、医療や公衆衛生関係の研究機関で様々な分析が行われている。たとえば、国立感染症研究所が2008年に示したデータによると、麻疹は16~21、風疹は7~9、天然痘は5~7、インフルエンザは2~3などとされている。麻疹の感染力の高さがうかがえる。なお、R0 は、感染症が発生した時代背景、社会、国、病原体などによって、異なる点に留意が必要となる。

図表15. 感染症の基本再生産数と集団免疫率

(4) 基本再生産数の計算方法

実際に、R0を計算するには、どうしたらよいか。計算には、2つの方法がある。

1) 構成要素から理論的に計算する方法

分析対象の感染症について、「1回の接触での感染確率」、「単位時間あたりの接触の回数」、「感染症が感染性を保つ平均時間」の3つの要素を、測定や推測によって求める。理論上、これらを掛け合わせたものが、R0となる。しかし、実際には、これらの各要素を正確に計測できるケースは少ないとされる。

2) 感染拡大の状況から概算する方法

そこで、R0を概算するための計算式が考案されている。まず、ある人が感染してからつぎの人に感染させるまでの時間(患者発生間隔)と、患者数が倍増するのにかかる時間(患者数倍加時間)を計測する。そして、患者発生間隔を患者数倍加時間で割り算して、これに1を足したものが、R0の概算結果となる。

2|SIRモデルをもとに感染拡大の様子を分析

感染症の拡大の様子を表す人口モデルとして、SIRモデルが有名である。

このモデルでは、ある感染症に対して、免疫を持っていない人々からなる集団を考える。そこに、外部から感染者が加わったときに、どのように感染が拡大するのか、をみていく。

モデルのなかで全体の人数は変わらず、各時点において、つぎのS、I、Rの3つの集団に分けられることとなる。S、I、Rは、いずれも時間の経過とともに変化していく。すなわち、時間(t)の関数とみることができる。39

図表16. SIRモデルの3つの集団

また、基本再生産数の3つの要素である、「1回の接触での感染確率」をβ、「単位時間あたりの接触の回数」をκ、「感染症が感染性を保つ平均時間」をDとする。

その上で、つぎのように、S、I、Rに対する微分方程式をつくる。そして、この式に数値を代入して、数値計算をすることで、時間の経過とともに各集団の人数(S、I、R)が変化していく様子がわかる。

図表17. SIRモデルの微分方程式

図表18. SIRモデルの計算結果の例

前提として、2,000人の感受性あり(S)の集団に、1人の感染中(I)の人が加わるものとする。当初の時点では、耐性あり(R)の人は、いない(0人)ものとする。全体の人数(N)は、2,001人となる。

また、1回の接触での感染確率(β)を0.1、単位時間(1週間)あたりの接触の回数(κ)を21回(つまり1日平均3回)、感染症が感染性を保つ平均時間(D)を1週間、とおく。これは、基本再生産数R0を、2.1(=β×κ×D)とおいたことに相当する。

この前提のもとで数値計算を行ってみると、上記の図のとおり、Sは時間とともに減少して、最終的に201.6人となる。Iは当初増加するが、11週目頃に431.9人とピークを迎えて、それ以後は減少して最後に0人となる。Rは時間とともに徐々に増加して、最終的に1,799.4人となった。Sが0人まで減らずに201.6人でとどまったのは、時間とともにRが増えて、集団免疫が働いた効果とみられる。

このモデルは、βやκなどの値を時間の経過によらず一定と置いているため、「決定モデル」といわれる。実際には、βやκなどの値は一定とは限らない。そこで、これらの変数に偶然(ランダム)の要素を入れて「確率モデル」としてモデルを構成することもある。そして、この確率モデルで、何回も(たとえば 1万回も)繰り返して計算を行って、集団人数の変化の変動幅をみていく。このように、予測結果と、その信憑性をあわせて把握していくような研究も行われている。

なお、感染症に関する数理モデルについては、つぎのような限界があるとの指摘もある。

― 性別や年齢などの違いにより、感染の仕方は異なるはずだが、モデルはこれを無視している。

― 感染して発症した人は、医療施設に入院したり、自宅で療養したりするため、他の人との接触の機会が減るはずだが、モデルはそうした点を加味していない。

― 同じ感染症でも、空気感染、飛沫感染、接触感染などの複数の感染経路があり、感染確率等が経路によって異なるはずだが、モデルは感染経路を1つに限定している。

SIRモデルの計算結果をみる際には、こうした限界を踏まえておくことが必要と考えられる。

39 さらに、SとIの間に、感染症に曝露しているが潜伏期間中で発症していない人(Exposed, E)の集団を設けて、SEIRモデルとして研究が行われることもある。

5――感染拡大防止策と感染予防策

最後に、感染症法における感染拡大防止策と、予防接種法における感染予防策の内容をみていこう。

1|感染症法は、危険性に応じて感染症を分類して、対応や措置を定めている

日本では、感染症法40が1999年に施行された。それ以前には、1897年(明治30年)制定の伝染病予防法があった。伝染病予防法は、制定当時、年間10万人を超える死者を出したこともあるコレラをはじめ、赤痢やペストなどの予防について規定している。しかし、患者の就業制限や、交通の遮断及び隔離など、人権への配慮を欠く予防策がみられた。また、制定時からの時間の経過とともに、規定されている病気の種類も見直しが必要とされた。こうしたことから、1999年の法改正に至った41。

感染症法では、危険性の高い順に「一類」~「五類」に感染症が分類されている。また、新たな感染症などに対しては、これらだけでは十分に対応できないため、「新型インフルエンザ等感染症」、「指定感染症」、「新感染症」の分類が、別に設けられている。

そして、感染症の分類に応じて、医療機関から、保健所を経由しての都道府県への届出基準が定められている。一類~四類感染症は、全数把握の上、ただちに届け出ることとされている。五類感染症のうち一部のものについても全数把握とされており、その上で、侵襲性髄膜炎菌感染症、風疹、麻疹はただちに、その他の疾患は7日以内に届け出ることとされている。それ以外の五類感染症については、全数把握は行われず、疾患ごとにあらかじめ定められている定点医療機関が、週単位や月単位等で届け出ることとされている。

なお過去には該当する疾患があったが、現時点(2019年8月)では、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に該当する疾患はない。

図表19. 感染症法上の感染症の分類 (一類~五類)

図表20. 感染症法上の分類 (一類~五類以外)

感染症法では、感染症の分類に応じて、感染した患者に対する入院治療、就業制限の規定が設けられている。また、立入制限や交通制限などの対物措置も設けられている。

図表21. 感染症法の対応・措置 (主なもの)

40 正式名称は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年10月2日法律第114号)

41 感染症法は、伝染病予防法、性病予防法、エイズ予防法を統合して成立した。2007年には、結核予防法が廃止され、感染症法に統合された。(乳児へのBCG接種については、予防接種法に統合された。)

2|予防接種は勧奨接種や任意接種としてさまざまなものが行われている

予防接種については、予防接種法に規定されている。予防接種法による勧奨接種は定期接種とも呼ばれ、主に小児を対象とする集団予防目的のA類疾病と、個人予防目的のB類疾病がある。その他に、予防接種法によらない任意接種もある。ワクチンの副反応が問題となり、接種の積極的な推奨が差し控えられている子宮頸がんを除くと、A類疾病の接種率は、いずれも90%台後半となっている。

勧奨接種の場合は、接種を受ける人が公費補助を受けられる。一方、任意接種の場合は、自費で接種を受けることとなる。なお、定期接種のワクチンは、政令で接種対象年齢が定められている。接種対象年齢以外で接種する場合には、任意接種として受けることになる。実際には、ワクチンごとに標準的な接種期間が設定されており、その期間を踏まえて接種が行われている。

図表22. 日本の予防接種

6――おわりに (私見)

前章までに、感染症を巡るさまざまなトピックスを概観してきた。多くの感染症が、人類の歴史に影響を及ぼしてきたこと、感染症対策には過去の経験が活かせる部分があることなどである。本章では、まとめとして、感染症対策について筆者の私見を述べることとしたい。

〔1〕 感染症を適切にこわがろう

感染症は、通常、眼に見えない細菌やウイルスなどによって起きる。このため、感染原因菌や感染経路が特定しにくい。これらがわからないと、人は不安になる。そして、不安は疑心暗鬼を生む。なにかもっともらしい理由付けを求めて、デマや流言を信じやすい心理状態となる。

ペストの蔓延時には、悪疫の原因を求める民衆の心理が、ユダヤ教徒という犯人を仕立てて迫害を招いた。エイズの感染拡大時には、感染の仕組みが不明な段階で、感染を恐れるあまり、患者に対する差別が広がった。これらの差別や偏見が、病原微生物に曝露した人の検査や診断をためらわせることとなれば、さらなる感染拡大を招いて、二次災害的に新たな感染者を生んでしまう可能性もある。

感染症をこわがる気持ちは、生存のためのリスク感知本能として保持しておくべきだろう。しかし、合理的な根拠を欠いて、ただむやみにこわがるだけでは、感染防止対策を滞らせることもありうる。

一般の人々が正しい情報のもとで、感染症を適切にこわがり、対策をとることが必要と考えられる。

〔2〕 感染症対策は、環境問題、貧困問題、地域紛争問題とあわせて考えよう

感染症の拡大は、単に医療の問題だけにとどまらない。

コレラは、いまなお発展途上国を中心にパンデミックの状況にある。地球温暖化の影響で海水温が上昇して、コレラ菌が生育しやすい環境になっており、感染拡大のリスクが高まっている。地球温暖化という環境問題が感染症の蔓延に拍車をかけている。

エボラウイルス病がアフリカ中部で蔓延した背景には、現地の社会が貧困状態にあり、注射器具を患者間で使い回さざるをえないという状況があった。貧困問題が感染症蔓延の土壌となっている。

さらに、マラリアなど、感染症が拡大する地域に戦乱・紛争があれば、海外からの医療支援が滞り、感染防止は望めないであろう。

有効な感染防止策を実施するには、環境問題、貧困問題、地域紛争問題とあわせて考えることが必要となろう。

〔3〕 まずは、石鹸での手洗いを習慣化することから始めよう

誰でも、いますぐに取り組める感染症対策は、手指衛生である。戸外から帰宅したとき、食事の前、トイレの後などには、石鹸を使ってしっかり手を洗うようにしたい。社会生活のなかでは、誰かと握手をしたり、手でモノに触れたりすることが頻繁に起こる。このためつねに、手を介して、接触感染や経口感染などを起こすリスクが伴っている。

もちろん、手を洗えばすべての感染が防げるというわけではないが、感染のリスクを減らすことにはつながるだろう。外出の際は液体石鹸を小型ケースに入れて持ち歩くなど、石鹸で手を洗うということを習慣化することが、感染症に対する衛生管理の第一歩となろう。

【参考文献・資料】

(下記1~11の文献・資料は、包括的に参考にした)

「感染症まるごと この一冊」矢野晴美著(南山堂, 2011年)

「ウイルス・細菌の図鑑 - 感染症がよくわかる重要微生物ガイド」北里英郎・原和矢・中村正樹著(技術評論社, 2016年)

「矢野流! 感染予防策の考え方 - 知識を現場に活かす思考のヒント」矢野邦夫著(リーダムハウス, 2015年)

「You Can Do it ! CDCガイドラインの使い方 感染対策 - 誰でもサッとできる !」矢野邦夫著(メディカ出版, 2019年)

「図解入門 よくわかる 公衆衛生学の基本としくみ」上地賢・安藤絵美子・雑賀智也著(秀和システム, 2018年)

「創薬科学入門(改訂2版) - 薬はどのようにつくられる? - 」佐藤健太郎著(オーム社, 2018年)

「人類と感染症の歴史 - 未知なる恐怖を超えて」加藤茂孝著(丸善出版, 2013年)

「続・人類と感染症の歴史 - 新たな恐怖に備える」加藤茂孝著(丸善出版, 2018年)

「パンデミックを阻止せよ! - 感染症危機に備える10のケーススタディ」浦島充佳著(化学同人, DOJIN選書049, 2012年)

「怖くて眠れなくなる感染症」岡田晴恵著(PHPエディターズ・グループ, 2017年)

「インフルエンザ なぜ毎年流行するのか」岩田健太郎著(KKベストセラーズ, ベスト新書593, 2018年)

(下記の文献・資料は、内容の一部を参考にした)

“Global Tuberculosis Report 2018”(WHO)

「結核登録者情報調査年報」(厚生労働省)

「インフルエンザウイルス分離・検出速報」(国立感染症研究所ホームページ)

「麻疹ウイルス分離・検出状況」(国立感染症研究所ホームページ)

「風疹ウイルス分離・検出状況」(国立感染症研究所ホームページ)

「風疹流行に関する緊急情報:2019 年7 月24 日現在」(国立感染症研究所ホームページ)

「感染症流行予測調査」(国立感染症研究所ホームページ)

「発生動向調査年別報告数」(国立感染症研究所)

「世界保健機関(WHO) 2018年世界マラリア報告書」(WHO)

“HIV/AIDS Key facts”(WHO)

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hiv-aids

「平成 29 (2017)年 エイズ発生動向」(エイズ動向委員会, 厚生労働省)

「人口動態統計」(厚生労働省)

「平成30年 食中毒統計調査」(厚生労働省)

「アニサキス症とは」(国立感染症研究所ホームページ, 2014年5月13日改訂)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html

「薬事ハンドブック2019 - 薬事行政・業界の最新動向と展望」(じほう)

「わが国におけるプレパンデミック ワクチン開発の現状と臨床研究」(国立感染症研究所 感染症情報センター, 平成20年度 感染症危機管理研修会 プログラム4資料)

「感染症法に基づく医師の届出のお願い」(厚生労働省ホームページ)