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紺碧の採掘師

第16章 01

2020.06.22 06:35

暫し後、船団はケセドの街の街はずれの採掘船停泊所へ。


レトラ、駿河に「恐らく人間の世界でも同様でしょうが、イェソドでも船が街中を飛ぶ時には飛び方のルールがあります。しかし今それを教えるのは無理なので、船で移動する時には有翼種の船と一緒に飛ぶか、この通信機で我々を呼んで下さい。」と言いながら肩から斜め掛けにした自分のカバンから手のひらサイズの四角い携帯通信機を出し、「この中央の丸印を触ると我々に繋がりますから、何かあったら連絡して下さい。」と説明して駿河に渡しつつ「これをアンバーにも渡しておきます。」

駿河「何ならアンバーの分も預かりますよ。後で渡しておきます。」

レトラ「ではお願いします」と言いカバンからアンバーの分の通信機を出して駿河に渡すと「それでは私は一旦ここで失礼します。」

駿河「帰りは船の上と下、どちらから行かれます?」

レトラ「上から」

駿河、上総に「じゃあ上総、甲板のハッチ開けてあげて」

上総「はい。行きましょうレトラさん」

レトラ、上総と一緒にブリッジから出つつ「まぁ、気軽に連絡して下さい。」

駿河「はい。色々とありがとうございました。」とお辞儀をしてレトラを見送ると、「よし、じゃあこの後はゴハンだ。」と言いため息ついて「ちと疲れたな。」



船首を揃えて採掘船停泊所に停泊している黒船とアンバー。

二隻の周囲には、アンバーの半分位の大きさの有翼種の採掘船が数隻、ちらほらと泊まっている。


アンバーの甲板には数人のメンバーがいて、昼食を取ったり休憩したりしている。

剣宮、ゴハンを食べつつ「たまには甲板でランチってのもいいねぇ。」

その横で甲板に寝っ転がっているマゼンタ「食った後、寝っ転がれるし!」

同じく寝っ転がっている透「あー…いい天気だねぇ…」

その寝っ転がってるメンバーの上を妖精がポコポコと跳ね回っている。

寝っ転がっている悠斗「妖精は俺達の上を跳ねているし」

剣宮、ゴハンを食べ終わるとお茶を飲み干して「よし、食ったから俺も寝る」と甲板に横になる。

妖精にポコポコ跳ねられながら、甲板の上に寝っ転がってのーんびりしているメンバー達。

マゼンタ「…イェソドっていいなぁ…。」

その時、ポコポコ跳ねていた妖精の一匹がポーンと跳ねた拍子に船のヘリに着地して船から落ちそうになる。

それに気づいたマゼンタ「あ!」と見ている間に妖精は下に落ちてしまう。

マゼンタ「落ちた!」

護「ダイジョブだー」

マゼンタ「ほんとに?」と言いつつ船の縁から下を見て「どこいった?」と言うと「浮き石確認!ジャーンプ」と言うと下に飛び降りる。

護「マゼンタまで落ちた。」

剣宮「いいなぁ人工種は。浮き石を扱えて」

健「人間も少し浮くじゃないですか」

剣宮「人工種みたいに高いとこから自由に降りられるようになりたいの」と言ったその時

下の方から「たーすーけーてー!」という叫び声が。

悠斗「なんだ?SOSが」と言いつつ皆で甲板から下を見ると…。

マゼンタは沢山の妖精に取り囲まれつつ逃げていた。

オーキッド・悠斗・剣宮「うわー!」

透「す、すごい数の妖精。」

護「何がどうなった?」

悠斗「よし助けてやろう!浮き石確認、レッツゴー!」と言い下に飛び降りる

そこへ護が「俺も助っ人するぞ!」と言うと下へジャンプする

だが悠斗と護が着地した途端、妖精たちは2人の方にポコポコ飛んで来て体当たりをする。

悠斗「お、おっ」

マゼンタ、まるでバレーボールのように妖精のお尻をポンと叩いて妖精を護たちの方へ飛ばすと「アッチ行けアッチ!」

護「せっかく助けに来たのに!」と言うとマゼンタ同様、バレーボールのように妖精のお尻ををポンと叩いてマゼンタの方に投げる。妖精は楽しそうにクルクル回転してマゼンタの頭にポコンとお尻で体当たり。

悠斗もマゼンタの方にどんどん妖精を投げる。飛んで来た妖精をマゼンタが手のひらで打ち返す。

甲板からその様子を見ている透達

オーキッド「なんか、ボール遊びみたい」

剣宮「いいなあ楽しそう。」

健「よし俺達も行きましょう!」と言うと剣宮を抱えてジャンプ

剣宮「おおおおー!」と叫びつつ健と剣宮、下に着地。

剣宮「び、ビビった…。せめて飛ぶ前に心の準備を」と同時に透やオリオン、オーキッドも降りて来る

透「こら!妖精はボールじゃないぞ!」と言いつつマゼンタに妖精を投げる。

悠斗「そうだ!妖精は大事にしなきゃならないんだぞ!」と言いつつ妖精投げ

なぜか突然、妖精投げ大会が繰り広げられる。


と。そこへ。

アンバーの甲板ハッチに穣が顔を出すと「あれ。皆いない。どこ行ったん…」

すると船体の下の方から声が聞こえる。

「うわああ」「マゼンタに当たれ!妖精様!」「いぇーい」

穣「ナニゴト?」と甲板の縁に行って下を見ると、メンバー達が沢山の妖精と戯れている。

穣「おぉ?!」と呟くと急いで甲板ハッチから船内へ入る。


下では。

マゼンタ「もおおぅ!皆して俺をいじめやがって。反撃だああ!」と言って「人間をいじめてやれ!」

剣宮「俺?!」

悠斗「人間だ人間だ」と言って剣宮に妖精を投げる。妖精たちは一気に剣宮へ

剣宮「うわああ」逃げる。そこへ「こらあ!」という声が。

声の方を見るとネイビーや穣たちがタラップを降りて走ってくる

ネイビー「アタシの可愛い二等操縦士に何するのよ!」

マリア「人間イジメちゃダメでしょ!」

良太「お仕置きだー!」

悠斗「うわ副長に機関長まで来た」

穣「お前らな、こんな事してると隣の黒船に笑われるぞ!いいのか護!」と言って護に妖精を投げる

護「知るかー」と穣に妖精を投げる。アンバーがそんな大騒ぎをしていると。

突然「お前たち!妖精をイジメちゃダメだろう!」

ふと見ると黒船の方からジェッソやカルロス、レン、上総やメリッサ達が来る

透「うわあ黒船までノッてきた!」

護「黒船だ!アンバーのライバルだ!倒せー!」と叫んでジェッソ達に妖精を投げる

妖精たちは一斉にジェッソ達の方へ。ジェッソ達は妖精にポコポコと跳ねられる

妖精にポコポコされる上総「うわ」

メリッサ「ちょっと!」

ジェッソ「こんなカワイイ子達を投げちゃいかーん!」と言いつつ自分も投げる

カルロス「こんな事してると有翼種にアホな奴らだと思われるぞ!」と言って穣に妖精を投げる

穣「元々アホじゃあああ」と言ってカルロスに二匹一緒に投げる

カルロス、妖精を手のひらで打ち返しながら「それは知っている!」

一同が妖精と大騒ぎをしていると、二隻の上空に有翼種の採掘船がやって来て、ターさんが降りて来ると「ちょっとちょっと!場所空けてー」と叫ぶ

ジェッソ、数匹の妖精を抱えつつ「妖精の皆、こっちにこーい」と、アンバーと黒船の船体の間へ誘導する。

マリア「妖精さんこっちだよー」一同は船と船の間に退避する。

ターさん、飛びながら一同に「皆、これからカルナギさんが、君達に死然雲海での採掘について、説明をするよー」と叫ぶ。

護「え。ホントに?」

ジェッソ「おお!」

ターさん「あと15分位したら始めるから、船長さんとか呼んで来てー」

護「了解!」

穣、悠斗たちに「あ!さっき甲板にいた奴ら、食事の片付けをー!」

悠斗「おっと、そうだった」

剣宮「はーいっ!」

透「すまーん」と慌てて船の中へと戻って行く。


暫し後。

黒船とアンバーの船体の前に、採掘船メンバー一同が集っている。そのメンバー一同と向き合うように、一同の前にカルナギ達が立つ。その横には石の入った木箱が一つ置かれている。カルナギ達の背後にはブルートパーズが着陸している。そしてなぜか沢山の妖精が一同の周辺を取り囲んでいる。

ターさん、皆の前に立ち、「…なんか凄い数の妖精がいるけど始めるよー」

カルロス「うん」

剣菱「どうぞ!」

カルナギ、前に進み出ると、ちょっと周囲を見回して「一体何でこんなに妖精が…まぁいい。俺は採掘船ブルートパーズの船長で」と言った途端

駿河が思わず「ブルー?」と言って「あ、ちょっと気になる船名だったから」

カルナギ「そういや人工種の船に似た名前の奴が居るとか。ブルー…なんだっけ?」

駿河「ブルーアゲート」

護「だからブルーって略さないで」

カルナギ「わかったわかった」

駿河「ちなみに何でブルートパーズ?」

カルナギ「俺がカルナギ・ブルートパーズって名前だからだ」

駿河「そうでしたか!」

カルナギ「で…、えーと。」と言い「面倒だからとっとと言うと!その変な船と一緒に採掘してみたくなった!」とアンバーと黒船の方を指差す

護「変な船って!」

カルナギ「ウルサイぞ人工種!」と言うと「お前らイェソド鉱石ばっか採ってたら、こっちで稼げねぇだろ!だからその…、一緒に採掘したら一緒に稼げる。そしたら一緒に街に行って美味いもん食える!」

ターさん「カナンさんの店で美味しい石茶飲むとかね!」

カルナギ「アンタらがこっちの金を稼ぐ為には、こっちの採掘の事を知らないとな!…てぇ事で…まず…」と考えて「雲海切りからか?」

ドゥリー「活かし切りは?」

カルナギ「ああ。」と言うと、護たちを指差して「そっちでは活かし切りしないんだよな」

護「うん」

カルロス「こっちでは、エネルギーの高い石が高く売れる」

カルナギ「俺達の方ではそれはダメだ。エネルギーが高くても石が活きてないと高く売れない」

ジェッソ「活きる?」

カルナギ「例えば…」と言って、横に置いた木箱の中から鈍い色と澄んだ色のケテル石を取り出すと「この二つは同じエネルギーを持っているが、片方は死んでいて、片方は活きてる。」

カルロス「アレはまだ分かり易い。実際にはその差はかなり分かり難い」

護「いっぱい切ってるとだんだん分かって来る」

カルナギ、護を指差して「お前の採る奴、前よりはマシになった。でもターが採る石と比べたらまだまだだな!」

護「くぅ」

カルナギ「よしお前、ここに来い」と護の腕を引っ張って前に連れ出す。

護「な。なんだよ」

そこへターさんが木箱から大きめのケテル柱を持ってきて皆の前に置く

カルナギ「ケテル石は同じケテルか、黒石剣じゃないと切れない。これからコイツに活かし切りを実演してもらう!」

護「なんですと」

カルロス「人工種の名誉にかけて、失敗するんじゃないぞ!」

護「カルさんも黒石剣持ってんだから、やろーよ!」

カルロス「護さんの方が先輩です!」

護「くぅ」と言うと、白石斧を手に取り、コンコンと石を叩いてそれからガンと側面を薄く切る。

石が輝く

穣たち「!」

上総「エネルギーが変わった!」

カルロス「な?面白いだろ?」

護、何カ所か活かし切りをすると「こんな感じかな…」

マリア「さっきと全然エネルギーの感じが違う!」

カルナギ「ケテルは切り所があって、変な所を切ったり雑に切ると石が死ぬ。」と言って護に「この辺、適当に切ってみ」

護「適当に?」

カルナギ「石殺しの参考だ」

護「なるほど」と言って斧をガンと振り下ろした瞬間、石が輝きを失って三つに割れる。

一同「!」

マリア「何てこと」

上総「ホントに死んだ…」

カルナギ「でも。ここからでも活かす事は出来る」と言い、護に「やってみ?」

護「ええ。ここから活かすのか…」と言い、欠片をコンコン叩き始める

カルナギ「ター!見本!やってくれ」

ターさん「ほいほい」と言うと白石斧を持って護の隣に来て欠片の一つをカンッと切る。欠片がキレイに切れて、美しく輝く

一同「おお…」

護も自分の目の前の欠片をガンと切るが、やや切り口が荒い。「あんまり光らんかった…」

カルナギ「まぁこんな感じだ。」

ジェッソ「…我々の採掘とは全く違う。難しそうですなぁ…」

カルロス「ケテルは石材だからな。美しさとか、あと強度が関係する。切り方によって石の強度も変わるので」

カルナギ「そう。用途に合った大きさや強度、加工のし易さを考えて採る。…高層建築に使うような建材用の石を採る場合は、かなり堅い石を大勢の採掘師で力を合わせて切る。…って事で、とりあえず今日はこれから一緒に採掘に行くが」

護・穣・ジェッソ「おお!」

カルナギはアンバーと黒船を指差しつつ「あの船、上にモノを乗っけられるんだろ?」

護「はい」

剣菱「載せられます。」

カルナギ「そんな気がした。どんだけ積めるんだ?」

剣菱「ウチは一応コンテナ10個は積める」

ネイビー「滅多に積まないけど。」

駿河「ウチはイェソド鉱石の柱を一本載せた事があります」

カルナギ「あんたらには『台船』をやってもらいたいんだが」

駿河「台船?」

ターさん「切った鉱石柱を運ぶ船の事です。受け船、とも言う。」

駿河「どの位の重量かによりますが」

カルナギ「載ると思うぞ。ウチの船より頑丈そうな船だから」

総司「まぁ、乗っけてみて重量オーバーの表示出たらやめるって事で」

カルナギ「んで…、あんたらはまだケテルを切れないし、翼が無くて飛べないからな。ケテル以外の石も採ろうと思う。」

ターさん「カルさんが雲海切りして、皆で石茶用の石を採るんだ。」

カルナギ「で、雲海切りってのは」

カルロス「それは説明したよ。」

カルナギ「…ならいいか。じゃあ特別サービスで」と言い「今、売れる石をちょっとだけ教えてやろう」

護「ええ!」

カルロス「それはフェアじゃない気が!」

カルナギ「なんで」

カルロス「自分で探すから面白いのに!」

カルナギ「…アンタはともかく。」と言うと、木箱からブドウのように小さな石が集まった石を取り出して「これはブドウ石って奴だ」

カルロス「人気の石茶石!でも私はまだ見つけていないんです!」

ターさん「場所が違うから。それね、採掘船が行くような所じゃないと無いんだよ。」

カルロス「なるほど」

カルナギ「これは手荒く採ると小さい石がバラバラになる。こんな風に大きな塊の方が高く売れるから、周囲を深く掘って、出来るだけ優しく採ってくれ。」

ドゥリー「掘った所の埋め戻しもしてね」

カルナギ、木箱からもう一つ石を出して「これは、眠り石」

カルロス「必ず熱湯で淹れる石茶石だ」

カルナギ「…石茶の淹れ方は知らねぇが、これは適当にガンガン採っていい。」

カルロス「それな、エネルギーが低くて探知し辛いからあまり出回って無いんだが、ガンガン叩いて熱湯を淹れると凄く美味いエネルギーを出すので人気があるんだ。」

駿河「美味いエネルギー…?」

護「最近、カルさんは売れる石より美味い石を良く見つける…」

穣「あいつ石茶屋決定だな」

カルナギ「って事で。皆で採って売れた稼ぎは三隻で三等分って事でいいかな」

剣菱「そうしましょう。」

駿河「それでいいです。」

カルナギ「よし、そんじゃあまずケテルを採るが、最初はアンバーで採って、次に黒い奴で採って乗っける。最後にウチの船がケテルを採ってる間に人工種の連中が下で石茶石を採るって事で。…まぁとにかくやってみよう。んじゃ仕事に行くか!」

護「おっしゃー!」

穣「よし行くべ!」

昴「採掘だ採掘だ」