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谷行-たにこう

2020.06.21 06:15

研究問答42 - 身心変容技法研究会

waza-sophia.la.coocan.jp/monndou42.htm

-キャッシュ

2020年5月6日-そこで、井上ウィマラさんに教えてもらった日赤の「負のスパイラル」に陥らないようにするための対策とかも取り上げながら、グリーフケア・スピリチュアルケアとしての能の中でも特に感染症を題材にした「谷行」を今回選んで書いてみました。

https://ranyokohama.amebaownd.com/posts/8562847  【鎌田東二:Re:次回の世阿弥研究会は5月19日(火)16時~18時にオンラインで行ないます 】

020年5月6日  ▲目次3

井上ウィマラ様

世阿弥研究会自体は、世阿弥のテキストの講読会で、次のテキスト「遊楽習道風見」の講読と解釈・鑑賞と意見交換が中心です。

この研究会を、2009年から11年間、月1回開催していく過程で、主宰者の河村博重さんとわたしが協力して、「能舞」という新しい形式を創作し、これまでに11回新作11本を上演してきました。

井上さんの「無常偈」と「般若心経歌」も、河村博重さんが歌に合わせて待ってくれる可能性はあり得ます。

頼んでみましょうか?

井上さんがZoom参加して直接頼んでみるのが一番早いと思います。

わたしももちろん後押しします。

(略)

http://www.noh-kyogen.com/story/ta/tanikoh.html  【谷行 ― たにこう ―】 より

作者 不明(金春禅竹との説あり)

素材 これという出典はないが、山岳信仰、修験道の厳しさと、孝行賛美を見せる曲。

場所 前段…京都松若宅 後段…大和国 葛城山

季節 秋

演能時間 約1時間

分類 5番目 霊験物

■登場人物

前シテ・・松若の母

面:深井または曲見

装束:摺箔、無紅唐織

後シテ・・役行者

面:鷲鼻悪尉

装束:頭巾、無色厚板、半切、袷狩衣

ツレ・・伎楽鬼神

面:顰

装束:赤頭、段厚板、半切、 法被、斧

前子方・・松若

装束:縫箔、稚児袴、竜扇

後子方・・松若

装束:厚板、白大口、 水衣、篠懸、小刀、中啓、刺高数珠

ワキ・・師阿闍梨

装束:大格子、白大口、 水衣、篠懸、小刀、刺高数珠、山伏扇

ワキツレ・・小先達

装束:厚板、白大口、 水衣、篠懸、小刀、山伏扇、刺高数珠

ワキツレ・・山伏

装束:無地熨斗目、 白大口、繍水衣、篠懸、小刀、山伏扇、刺高数珠

アイ・・下人

装束:長上下

■あらすじ

阿闍梨が峰入するため、弟子である松若とその母に暇乞いに来る。風邪気味の母を看病していた松若は、峰入に同行したいと言う。反対する阿闍梨や母に、修行は母の現世を祈るためだと熱心に説いて許しを得る。山伏一行と葛城山に峰入した松若は風邪気味になった事を阿闍梨に言う。阿闍梨は峰入の途中でそのような事は言うものではない、旅の疲れだろうからと休むように言う。しかし、他の山伏たちに悟られてしまい、峰入の途中で病気になったものには昔よりの大法によって、谷行を行わねばならないと阿闍梨を諭す。阿闍梨は松若に大法の事を話し、別れを惜しんで谷行を行う。出発の時になっても悲嘆にくれる阿闍梨は、歎きも病気も同じ事だから自分も谷行にしてくれと頼む。他の山伏たちも同情し、松若を蘇生させようと皆々で祈る。役行者が現れ、松若は親孝行の子供だから命を助けると告げ使者の伎楽鬼神を呼び出して松若を助け出し、生き返らせて阿闍梨に渡し、人の目には見えぬ岩橋を渡って去って行く。

■みどころ

山岳信仰の峯入りの形を見せ、厳しい掟の様子を舞台で現す。

役行者が出る流儀と出ない流儀がある。

■ワンポイントアドバイス

谷行―山岳信仰の掟のひとつで病気になった者は、その時点で谷へ生埋めにする私刑。

■小書

なし

■舞台展開

松若の母(シテ)と松若(子方)が登場。地謡前に着座する。

師阿闍梨(ワキ)の登場。松若の母に峰入のために暇乞いに来る。風邪気味の母の看病をしていた松若は峰入に同行したいと言う。阿闍梨も母も反対するが、松若は母の現世を祈るため難行の道に出るのだと説くので、しかたなく許す。

松若の家に仕える下人(アイ)の登場。阿闍梨が峰入のための暇乞いに来て、松若も同行することになったことを述べ、出立の時分になったので用意するようにと言って退く。

後見によって、深山断崖に見立てた作り物が出される。

阿闍梨、松若、小先達(ワキツレ)、山伏(ワキツレ)が京都から葛城に着く。

松若が阿闍梨に風邪気味であると言う。旅の疲れだろうと休むように言う。

他の山伏たちが峰入の途中で病気になったものには昔よりの大法によって、谷行を行わねばならないと阿闍梨に言う。阿闍梨は松若に説明し、谷行が行われる。

悲嘆にくれる阿闍梨。他の山伏たちも同情し、松若を蘇生させようと皆々で祈る。

役行者(後シテ)が現れ、役行者が使者の伎楽鬼神(ツレ)を呼び出す。土木磐石を押し倒し取り払って松若を助け出し、生き返らせて、目に見えぬ岩橋を渡って失せる。


https://stage.corich.jp/stage/91090  【谷行-たにこう】  より

修験道とは日本古来の山岳信仰と密教が結びついたもので、修行者は「山に起き伏す(寝起きする)」事から山伏と言われ、特別な力を得ると考えられてきました。

「谷行」の舞台となる葛城山は大峯山に並ぶ聖地で、大阪・和歌山の県境に連なる和泉山脈から北上して奈良・大阪の県境の金剛山脈に続く峰々の総称を言います。

この葛城山系に修験道の開祖・役行者が法華経八卷二十八品を埋納したという伝承があり、これら二十八の経塚を「葛城二十八宿」と言い、修験道のルートとなっています。

「谷行」というのは、脱落者を谷底に捨ててしまうという修験道の厳しい掟の事で、この掟が今回の能のメインテーマです。

【あらすじ】

今熊野の山伏には松若という一人の弟子がいましたが、まだ幼かったので母の元から通っていました。ある日、山伏の一団は修行の為に葛城山に峰入りする時期になったので、その事を告げる為に松若の家に行きます。この時に松若の母は病気で伏せっていましたが、松若は母の病気の平癒を祈る為に自分も峰入りしたいと強く願い出ます。松若の父は既に他界しており、母は一人残された我が子を心配し、残るように説得しますが松若の決心は変わりませんでした。

峰入りはしたものの、旅慣れていない松若は途中で病気になってしまいます。師匠の山伏は必死にかばいますが、厳しい掟の通り、泣く泣く松若を谷行にします。師匠はすっかり気を落としてしまい自分も谷行にするよ様に山伏達に言いますが、「日頃の修行もこの様な時の為」と山伏達の提案により法力を使って松若を蘇生させようとします。

山伏達が懸命に祈っていると、役行者が現れて「松若は親孝行の者なので、蘇生させてやろう」と言い、伎楽鬼神を呼び出します。やがて鬼神は谷底から松若を抱き上げて行者の前に置くと、行者は「そのなたの孝行の心に感じ入ったぞ」と松若の頭を撫でて蘇生させ、山伏の元に返します。