第17章 01
暫くして3隻の前方に浮島が見えて来る。
黒船のブリッジでは
総司「…何か見えて来た。船かな」
駿河「船?」と言って立ち上がって船窓から目を凝らして前方を見ると「いや、岩だ。デッカイ浮き石かな」
3隻はそこに近づく。
総司と駿河、同時に「島…」と唖然とする
総司「島だった…。」と同時に
駿河「島が浮いてた…。」と言うと「世界は広かった。」
黒船の甲板では
マリア「すごーい、島が浮いてるー!」
ジェッソ「おおおおお!」
カルナギ「…人工種って何でも驚くんだな」
穣「だって俺らの方にあんなの無いし!」
護「俺達の方で有翼種がビックリするようなモンは無いかなぁ」
カルロス「この採掘船にビックリして欲しかった。」
カルナギ「確かに変な形だけどな。まぁそんなに驚かないな。」と言うと「人工種の船はあの島で石茶石を採る。その間に俺ら有翼種の船はケテル採掘をする。」
護「りょうかーい」
ジェッソ「わかった。」
カルナギ「じゃあ後は金髪頭の探知に頼んだ!」
カルロス「って、私か。」と言い上総を見て「上総は微妙に金髪じゃないんだな」
穣「微妙に栗色っすね」
カルナギ、ドゥリー達に「有翼種はブルートパーズに戻るぞー!」
ターさんやドゥリー達「はーい!」
ドゥリー「じゃあまたねー」と手を振る
ターさんも「頑張ってねー!」と言ってブルートパーズの方へ行く。
カルロス、ジェッソ達に「私に探知させるとトンでもない事になるぞ。たまに嘘言うからな!」
ジェッソ「たまに?」
カルロス「ワザと嘘ついたのはあの時だけですが。」
すると一同ちょっと沈黙!ジェッソ、腕組みしてカルロスを見る。
カルロス「いあ、その。…アレはどうしようも無くて。」と言い「申し訳ない…。」
穣「なんか自分で墓穴掘ってしまったらしいぞ」
護「うむ。」
カルロス「だってああでもしないと、この後継機が私を探知して捕まえる。」
上総「うん!だって逃げるから捕まえろって貴方に言われたし!」
カルロス「だ、だから。とにかく探知出来ないようなトコまで引っ張った。」
上総「ちなみにワザとじゃなくて嘘付いた事あるんですか」
カルロス「というと」
上総「さっき、たまに嘘言うって」
カルロス「…ああ、探知ミスな…。昔はよくやったもんだ…。」
上総「そうなの?」
カルロス「って人の探知ミス話を引き出そうとしても、その手には乗らないぞ」
上総「ええー」
カルロス「上総。お前ちょっと可愛くなくなった」
上総「元から可愛くありません!」
カルロス「お前もそのうち黒船で、探知ミスって恥ずかしい思いをするがいい!」
上総「ミスしません!アンタの後継機だし!」
カルロス「私の後継機って事はミス確定だな!」
上総「性能アップしてるからミスしません!」
ジェッソ「もしもし。そろそろマジメに探知を。どこに着陸するんですか!」
カルロス「ああ。」と言って探知をかけて「お!美味そうな石みつけた!」
ジェッソ「美味そうって」
カルロス「この先になんか凄い所があるぞ。高度を下げつつやや1時の方向へ!」
黒船とアンバーはやや高度を下げて浮島の上に差し掛かる。前方は白い雲の中に消えていて、船の周辺もだんだん曇って来る。
カルロス、黒石剣で方向を指し示しつつ「もう少し行くとケテルの柱が何本かあってその周辺に美味そうな石がゴロゴロある!」
護「でもさ美味い石が売れる石とは限らないから」
カルロス「それはそうだが売れない石を採って石屋に『人工種はヘッポコな石しか採って来ない』と言われるよりは『人工種は美味い石を採って来る』と言われた方がまだマシだ」
護「う、うーん」
カルロス「とりあえず美味い石なら自信がある。というか私が採りたいんだ!」
護「俺は売れる石が採りたーい!」
カルロス「安心しろとりあえずブドウ石と眠り石は売れる事が確定だ。でも他にも美味そうな石が色々あるんだが」
護「まずブドウと眠りだけ採るの!」
カルロス「くぅ」と言って「あ。」と気づいて「今からは普通の採掘だから船内から道具を取って来ないと」
ジェッソ「そうだった!」
穣「すーっかり忘れていたぁ!」
カルロス「とりあえず雲海切りしよう」と言って黒石剣をバッと振るう。
前方が拓けて背の高い細いケテルの柱が何本か立っている地帯が見える。
カルロス「あの柱のちょっと手前辺りに着陸しよう。」
2隻はケテル石林の手前に着陸する。その採掘口のタラップからコンテナや道具を持ったメンバーが駆け下りて来る。
カルロスも黒石剣をホルダーに仕舞ってスコップを持って先頭を走りつつ「まずはあの柱の下だー!」
上総「こっちにもあるよ!」
マリアも「こっちもあるー!」
護「誰がどこに行けばいいんじゃー!」
穣「テキトー!好きなトコ行けー」
ジェッソ「散開!」
カルロス、ケテル柱の近くの草叢にスコップを突き立てると「ここにブドウ石がある!」と言うと、「ん…。あっちに眠り石がある!」と黒石剣を抜いて方向を示しつつ別のケテル柱の所へ走って行く。そのケテル柱の根元には、いくつか岩が突き出している。
カルロス、皆の方に向かって「硬い石を採りたい人、集まれー!」
昴、手を挙げて「爆破いくいく!」と言い「爆風飛ばす人、誰か来て」
穣「あっ、バリア行くから思いっきりブッ飛ばせー!」
昴「おっけー!」
護「怪力も行くよー」とコンテナを持ってカルロス達の方へ
昴、眠り石の岩の前に立つと、穣に「準備いい?」
穣「いつでもどうぞ!」
昴「爆破っ」と言いつつ、バンと爆破をかけると、岩にちょっと亀裂が入って一部分が欠ける。
昴「アレ。これメッチャ硬い。」
カルロス「思いっきり爆破しないと割れないぞ」
昴「遣り甲斐のある石だ!」と言うと「いくぞー、大爆破!」と言いドカンと爆破をかける。すると眠り石の岩がバゴン!と音がして二つに割れる。穣のバリアに小さな欠片が当たって落ちる。
穣「割れた割れた」
カルロス「デカイ塊だと高く売れない。もう少し小さくしよう」
昴「とりあえずコンテナ入れて。そしたら中で亀裂入れるから」
護がコンテナに塊を入れると、昴が塊に手を当ててバンと内部爆破させて塊を細かく割る。
その間に他のメンバーはブドウ石の場所を掘っている。
マゼンタ「おっ、出てきた出て来た」と言いつつ土の中からブドウ石の塊を取り出して「なんか芋掘りみたい。」と言いつつブドウ石の連なった小さな丸い塊の一つに力を入れるとボキンと折る。
健「あ。折った!」
マゼンタ「マジで芋みたいな感じで折れる!」
健「どっちかというと生姜」
マゼンタ「芋だよ芋!」
健「生姜だよぉ」と、その時。マゼンタ達の左側で「おおー」という歓声が上がる。
マゼンタ達が振り向くと、巨大な穴からジェッソが巨大スコップでブドウ石の大きな塊を土ごとすくい出した所だった。
マリア「すごいすごい!」
マゼンタ「ちょっとナニソレ凄いんですけど!」
巨大スコップを持ちつつジェッソ「フ…。この感じがタマラン。」
マゼンタ「こんなデッカイ穴、掘っちゃって…。」
悠斗「埋めればいいのだ!」
そんな様子を見つつ、透とメリッサと夏樹の三人は、少し離れた所でスコップで地面を掘り掘りしつつブドウ石を普通に採っている。
メリッサ「怪力の連中って豪快よねー。」
夏樹「まぁ怪力だしねぇ」
透、スコップに手をかけて、ため息つくと「何か出番ないかなぁ。」
そこへ通りすがりのマゼンタが「どしたの。お疲れ?」
透「ここ3人、風使いなんだけど、風使いの能力を使う出番が無いなぁって。」
マゼンタ「はぁ?…俺なんか別に何の能力も無いから出番も何も」
夏樹「能力があればあるで、悩みもあるんだよ」
マゼンタ「贅沢!」
夏樹「何かさぁ、風使いならではの採掘をしたいよね。」
メリッサ「うんうん」
透「せっかく3人もいるんだし」
そこへマリアがマゼンタ達に「あそこにブドウ石あるよ!」と少し離れた草叢を指差す。
マゼンタ「おっけー」
夏樹「マゼンタ君を風でブッ飛ばすか」
透「いいねぇ」
マゼンタ「なんだとう。飛ばすなら飛ばしてみやがれ!」と仁王立ちしてみる
びゅー
マゼンタ君、後ろにスッ転ぶ
透「瞬殺だった」
メリッサ「悲しすぎる」
マゼンタ「くぅ…。」
暫し後。
悠斗たちはコンテナにブドウ石を丁寧に詰めていて、詰めたコンテナをジェッソがアンバーの貨物室に運んでいる。
悠斗、コンテナの中のブドウ石の塊を手に取り「こっちを下に入れた方がいいか」と言い、石をコンテナに入れ直しつつ「丁寧に詰めないと、欠けちまうからな」
マゼンタ「芋は大事にしないと」
その隣では透や夏樹たちが巨大なブドウ石の塊をコンテナにどうやって詰めるか詰め方を悩み中。
上総、石とコンテナの間に微妙にスキマが開いているのを見つつ「これ、緩衝材に土を詰めるとか」
夏樹「土ねぇ…。小さいブドウ石があったら詰めるんだけど」
そこへ悠斗が「小さい欠片なら余ってるぞー。これそっちに詰める?」とブドウ石の欠片が入った小さなコンテナを見せる。
透「うん、それをこのスキマに詰めよう」
するとそこに突然「おお!」と言う声が。ふと見ればコンテナを担いだ護やレンブラント、オーカー、石を担いだ穣や昴がやってくる。一番前に居たカルロスがダダダと夏樹たちのコンテナの所に走って来ると巨大なブドウ石の塊を見て
カルロス「これ、どうやって採った!」
上総「俺が地面を探知して、石の周りをグルッと掘って採った。」
透「怪力の人が巨大スコップでドーンと」
するとカルロス、悔しそうに「黒船に先を越されたな」
上総「はぁ?」
カルロス、護を見ると「護!小型船をゲットしたら我々はこれよりデカイ塊を採ろう!」
護、眠り石のコンテナを持ったまま「え。まぁカルさんが探知してくれたら採るけどさ。」
穣「アンタ何を黒船と張り合っとるねん。」
カルロス「一応、個人事業主になりますので」
護「しかし人数多いとデカイ石採れていいよねぇ。船がデカイと沢山積めるし」
穣「デカイ船、持ったらいいやん。」
護「え。」
カルロス「…高い!人件費もかかる!」
穣「稼げ!」びしぃっ!とカルロスを指差す
護・カルロス「…。」
カルロス、ブドウ石を見つつ「とりあえずこのレベルの石は採りたい…。」
透「じゃあ頑張って2人で穴掘り穴埋めしてね」
悠斗「それ掘り出すとデッカイ穴開くからな!」
護「カルさん頑張ろう!」
カルロス「う、うむ。」
上総、ふと穣が抱えている石を見て「それが眠り石?…エネルギーすっごい低い」
カルロス「だろ。さっき叩き起こしたのにまた眠ってしまった。」
マリア「これは探知し難い石だぁ…。」
穣「ま、とにかく船に積むべ。向こうにまだ眠り石入れたコンテナあるし。」
護「全部アンバーに積むよね?」
透「うん。黒船にはあの柱が載ってるから。」
一同が作業していると、ケテル柱を積んだカルナギの船がやってくる。
と同時にターさんが飛びながら「皆ー、そろそろ戻る時間だよー」と叫びつつやって来る。
穣、採掘メンバー達に「んじゃ撤収作業に入るべ」
ジェッソ「撤収撤収!」と言ってから慌てて「ああ、そうだターさん」と言ってターさんの所に駆け寄り、ポケットからインカムを出して「これ、そちらの船に預けます。今後の連絡用に」
すると穣も「あ、んじゃあウチの船のもやっとくわ」と耳のインカムを外してターさんに渡すと、護に「護、俺ちょいとブリッジ行ってインカムのスペア取って来るから」
護「ほいさ」
ターさん、護に「いい石採れた?」
護、ニヤリと笑って「なかなか凄いの採れたよ。多分、石屋もターさんもビックリする」
ジェッソ「うむ。」
ターさん「へぇ。それは楽しみ。」