第17章 02
鉱石柱を積んだ3隻の船は死然雲海を飛んで街へ戻る。
その飛行中、アンバーの甲板の上では護やターさんがお茶を飲みつつまったりモード
アキが甲板ハッチの近くで皆にお茶を渡しつつ「なんか甲板でお茶しながら飛ぶって前代未聞じゃない?」
そこへ船内からハッチの所にネイビーがやって来て、ハッチから顔を出して甲板を見ると「やっほー!あらまぁ機関長!って機関士のシナモンちゃんもいる」
シナモン「はーい」
ネイビー「やだ機関室、無人じゃん!」
良太「たまにはええやん。ウチのエンジン君、元気だし。」
ネイビー、ハッチから甲板に出ると、穣達に「船長が寂しがってたよ。みんな甲板でお茶してていいなーって」
透「流石に船長はブリッジに居ないとさ」
ネイビー「副長がブリッジに居てもいいのよ。でも船長、じゃんけんに負けたから」とニコニコ
透「じゃんけん?」
ネイビー「私と船長どっちがブリッジに残るかじゃんけんして船長が負けたのー」
透「あらまぁ」
ふとそこでアキが「あ。今日の夕飯っていつもと同じ18時合わせでいいのかな。船長に聞いて来よっと」と言い船内に入る。
ネイビー、甲板に積まれたケテル鉱石柱を触って「すごーい。近くで見るとマジ凄い!」
マリア「こんなの本部に持ってったらビックリされるよね」
護「でもさぁ、俺達の方にそのケテルを活かす技術無いから持って行っても使えないかも」
ネイビー「どういう事?」
護「ケテルって切り方難しいし、向こうには切る道具も無いから、持って行っても石を殺しちゃうだけかも」
穣「またはそのまま珍しい石として置物になるとか」
マゼンタ「石マニアは喜ぶよね」
ネイビー「なるほど。」というと「なんか皆すっごい楽しそうに採掘してたね」
マゼンタ「楽しかった!」
悠斗「たまにはこういう採掘もいいなぁ。」
透「もっと色んな石を採ってみたくなるよね」
護「だろ?」
穣「アレだよ。石によって採り方が違っててさ。その特性に合わせてどうやって採るかってのがオモロイんだな。」
護「そうそう!」
悠斗「何せ俺達ずっとイェソド鉱石ばっかりだったもんなぁ」
護「しかも採掘量ばっか気にしててさ、とにかく採ればいいみたいな」
穣「そうなんだよ。丁寧に採るとか考えた事なかった」
マゼンタ「丁寧に採ってあげないと妖精が可哀想だ」
穣「ん。ああ、そうか。コイツ鉱石の妖精だった。」と言い、いつの間にか甲板に居た妖精を捕まえて手に取ると「基本、俺らはイェソド鉱石なんだけどさ。機会があれば、またこういう合同採掘してぇなぁ…。」と言いつつ妖精の頭をなでる。
ターさん「やろうよ」
護「やろう!そしていつか大死然採掘にも参加しよう!」
良太「なにそれ?」
ターさん「死然雲海の奥、大死然。年に一度、有翼種の採掘船は船団を組んでそこに行くんだ。…大死然はもうね、探知メンバー全員で力を合わせて船と船を繋いで行かないと行けない位、エネルギーが濃い所だから、大変だよ」
良太「…鉱石弾って使えないのかな。」
ターさん「なにそれ」
穣「あー!鉱石弾か!」
良太「船の前についてる砲身。あれ実はイェソドエネルギーを打ち出す所なんだけど…。使った事ないからどんなモンか分からないんだ」
穣「いつか鉱石弾、雲海で撃ってみるべ!雲海なら問題なく撃てるだろ」
良太「まずは整備しないとね…。」
一方、黒船の甲板では。
甲板に積まれた大きな鉱石柱の脇に、有翼種の採掘メンバーと黒船のメンバーが何人かいる。
カルロスと上総は皆からちょっと離れた船首近くでドゥリーに何やら指導を受けている。2人ともクッタリ顔。
ドゥリー、カルロスの左肩に右手を乗せると「行くよ、同調探知!」
カルロス「はい。」その途端、上総とカルロスの身体とドゥリーの翼がバンと光ってカルロス思わず「う!」と唸る。
ドゥリー「対象がズレてるー。」
カルロスと上総「…。」ちと苦し気
ドゥリー、同調探知をやめて「大死然採掘の時はもっと大勢の探知で同調するから」
カルロス「…何人くらい」
ドゥリー「最大で20人だった事あるよ」
カルロス「なにぃ」
上総「そんなに居ないとダメなの?大死然って」
ドゥリー「うん。奥はすっごい濃いからね。皆で力を合わせて探知と雲海切りしないと」
上総「うへぇ…。」
ドゥリー「慣れだよ慣れ!」
カルロス「慣れか…。」というと甲板に座り込み、仰向けになって大の字になると「疲れた…。」
上総も横になったカルロスの隣に正座して「疲れました。」
ドゥリー「頑張った頑張った。」
カルロス「また今度、ご指導よろしく…。」と言い欠伸をする。
ドゥリー「うん。また練習しよう。ゆっくりおやすみー」というとメリッサ達の方へ歩いていく。
カルロスはそのままスヤスヤと寝てしまう。上総、そんなカルロスを見ると、自分もカルロスの隣に横になる。
するとカルロスの腕が上総のアタマに伸びて来てポンポンと上総の頭を叩く。
上総「?」カルロスを見るが、カルロスはスヤスヤと寝ている。
メリッサ達の所では、有翼種と人工種の皆が集って雑談中。
有翼種トゥインタ「ほぉ。その首輪、ただの首輪じゃなかったのか」
シトロネラ「うん。なかなか謎の多い首輪なのよ。」
有翼種タク「絶対付けなきゃならないの?」
メリッサ「生まれた時からもう付けられるしね。」
レンブラント「生まれる前からじゃ?」
メリッサ「あ、生まれる前からか」
トゥインタ「生まれる前?! どうやって付けるんだ」
夏樹「まぁ人工種は機械で作るので、育成ケージの中で…。」
レンブラント「って言っても、わかんないよね…。」と苦笑い
タク「でも僕の爺ちゃんにタグリング付いて無いよ…?」
レンブラント「爺ちゃん?」
そこへ話を聞いていたドゥリーが「この子の祖父、カナンさん」
メリッサたち「ええ?」
と、そこへ突然「うわぁデッカイ柱だな…。」という声が。
見れば鉱石柱の下になっている甲板ハッチから駿河が頭を出している。ハッチは鉱石柱に半分塞がれているので幅がちょっと狭くなっているが、駿河、そのハッチの隙間から這い出るようにして甲板の上に出て来る。
メリッサ「船長」
駿河「副長は休憩してるけど、静流さんとアメジストさんの操縦士2人にブリッジ任せて来た。…飛行中に甲板に出たのは初めてだな…。ちと怖い」と言い這うようにメリッサ達の所に来て正座する。
トゥインタ「首輪が無いのが人間か。分かり易くていいな」
シトロネラ「船長、この子の祖父、カナンさんなんだって」とタクを指差す
駿河「へ?」
ドゥリー、タクの頭をなでつつ「こいつの母親が、カナンさんの養子」
タク「だから血の繋がりは無いけど僕の母方の爺ちゃん人工種、婆ちゃん有翼種。」
駿河達「へぇぇぇ!」
駿河「貴方の名前は?」
タク「タク・カミヤ・アルバート」
メリッサ「何歳?」
駿河「兄弟とかいるの?」
タク「15です。9歳離れた姉貴が居て、料理屋で働いてる。」
駿河「君は何で採掘船に乗ろうと思ったの」
タク「…なんか、面白そうだったから」
ドゥリー「採掘師カッコイイから」
タク、ドゥリーの肩をぱしっと叩いて「違う」
トゥインタ「カッコよくなりたいんだよな」
タク「採掘、面白そうだから!」
駿河「いいんだよ!カッコイイよな採掘師!」
夏樹「うんうんカッコイイ!」
レンブラント「カッコよさは大事だー。」
タク焦って「そういえば!何で、カナン爺ちゃんにタグリング付いて無いの?」
駿河「壊れちゃったんだってさ。」
夏樹「勝手に取れたんだって」
駿河、そこでふと。「あれ。そういえばカルロスさんは?」
ドゥリー「あそこで寝てる」と甲板に寝てるカルロスと上総の方を指差す
駿河、「寝てる?」と言って立ち上がるとテクテクと2人の所へ歩いていく
上総とカルロス仲良く2人で甲板でスヤスヤ
駿河「…探知が2人で仲良く寝とる…。」(なんか…いい光景だな…。よかった。)と微笑む。
18時頃。
3隻はケセドの街に戻って来て、有翼種の採掘師達が集う石置き場へ。
周囲には他にも船が何隻か居て、採掘師が石屋と共に忙しく動いている。
3隻は上空で待機している。辺りはもう暗いが石置き場はライトで照らされていて結構明るい。
ブルートパーズではカルナギがブリッジで石置き場と電話連絡をしている「え。40分待ち?!しゃあねぇな」というと受話器を置いて「今日、なんか混んでやがる。…ドゥリー、ター、その耳電話で黒船とアンバーに40分待つから夕飯でも食っとけと連絡してくれ。俺らもメシ食って待とう。」
ターさん、インカムを耳に着けて「ほい」
ドゥリーも「うん」と言ってインカムに「もしもしドゥリーでーす」
黒船のブリッジでは。
スピーカーから『今日なんか混んでて40分待ちだから、その間にゴハンでも食べてて』
駿河、受話器をとると「了解しました。」
するとスピーカーから『あっ、待った、ドゥリー!』
『なに』
『黒船のは最後に降ろすから、待ち時間もっと長い。あー…とりあえず一時間待ちって事で!』
駿河「聞こえました。了解でーす」というと受話器を置いて「じゃあ採掘メンバーはゴハンだな。」
すると操縦席の静流が「船長。もしどこか着陸できる所があれば、ブリッジに私だけ残して船長は皆と一緒にゴハンが食べられますが。」
駿河「お。なるほど。」といい再び受話器を取ると「もしもしドゥリーさん。どこか船が着陸出来る所ありませんか?出来れば下で待機したいんです。」
するとスピーカーから『船長、黒船がどっか着陸したいって』
すると小さく『すぐ隣の駐機場空いてるよー!2隻分ある』という誰かの声が聞こえる
『もしもし黒船さん、右側の林の向こうに駐機場あるの見える?』
駿河「はい。あそこに行けばいいんですね。了解。」といい受話器を置く
静流「移動します。」といい操船する
駿河、再び受話器を持つと「さてと。」と言い船内放送のボタンを押して「船内連絡。船長です、石置き場が混雑していて駐機場で1時間待機になったから、今のうちに採掘メンバーは夕飯を取って下さい。次の作業開始は19時の予定」と言って受話器を置く。
甲板ハッチ周辺にいた採掘メンバーは、船内に入って食堂へ。
ジェッソ、ハッチから船内に入りつつインカムに「ジェッソです、了解しました。甲板の全員、中入ります。」
ブリッジの駿河、静流に「静流さん、交代する?今、本来はアメジストさん担当の時間帯だけども」
静流「鉱石柱を降ろす作業の時は、私か副長の方が良いです。」
駿河「まぁ俺でもいいんだけどね。じゃんけんして決めるか。」
静流「それはちょっと」
駿河「わかった。じゃあ今から一時間だけアメジストさんにブリッジで連絡待機してもらって、荷降ろしの時の操船は俺がやる。」
静流「え」と驚き「船長が?」
駿河「こんなデカブツを積んだ状態の黒船を操船出来る機会なんて滅多に無いんで。」
静流「わかります、船長もやりたいですよね、わかります!」
駿河「って事で、駐機場に着陸したら静流さんはフリータイムと」
黒船とアンバーはブルートパーズから離れて隣の駐機場に着陸する。
駐機場に着陸したアンバー船内。
船内通路を食堂に向かって剣菱と剣宮が走っている。
剣菱「ゴハンだゴハン!ササッと食わんと。」
剣宮「俺はのーんびり食います」
剣菱、食堂に入りつつ「席、空いてるかなっ」
するとトンカツ定食を乗せたトレーを持って食堂から出ようとした透と出くわす
透「勿論。席を空けておきましたよ船長」
剣菱「流石!」
剣宮、透に「部屋で食べるの?」
透「うん。」
剣宮「俺も船室でのーんびり食べようっと。」
カウンターからトンカツ定食を乗せたトレーを受け取る剣菱。その後ろのテーブル席では、護と穣が既に夕食を食べながら話をしている。
護「うんまぁ別に急いで帰らなくてもいいし」
穣「なぁ。イェソド鉱石の採掘は、明後日にしてさ。」
剣菱、テーブルにトレーを置いて穣の隣の席に座ると、「何の話だ」と言いつつゴハンをパクリとほおばる。
穣「船長、明日はケセドの街で遊びませんか。」
剣菱「ほぇ?」
護「今日、稼いだし。鉱石採掘は明後日にして、明日は遊んでもいいんじゃないかと」
剣菱「皆がいいなら俺はいいよ?」と言って「まぁ俺は一週間以内に帰れればいいという覚悟で来たからな。」
穣「皆そうですよ。イェソド行って何が起こるかワカランって。」
護「人生、奇想天外だもんねぇ」
剣菱「あとは黒船さんの返事次第だな。後で聞いてみる。」と言いトンカツをほおばる。