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紺碧の採掘師

第17章 03

2020.06.23 06:26

暫し後。黒船より先にアンバーは石置き場のブルートパーズの所へ戻る。

剣菱、ブリッジの窓から下を眺めつつ「しっかし凄い石ばっかりだ…。」

マリア、探知して「ここ、地下にも鉱石柱が…。あ、そうか大きい柱は上に置いて、小さいのは地下なのね」

ネイビー、前方のカルナギの船を指差し「あ、ブルートパーズの荷降ろし作業が始まった。」

見ると有翼種たちが忙しく動いている。石屋が積荷の鉱石柱を査定し、柱の一本一本に番号札の付いたベルトを括り付けると、カルナギ達がそれを運び地上に降ろす。地上の鉱石集積所の有翼種たちがそれを運搬用の小さな台船に載せる。その台船は集積所から少し離れた所の建物の中に入って行く。

マリア、それを指差して「あそこから地下に持っていくのね」

剣菱「なるほどなぁ…。」と見物していると、スピーカーから『次、アンバーの柱に行くぞー』

剣菱「出番が来た」というと受話器を取って「了解!」


ターさんやドゥリー達と共に有翼種の石屋がアンバーの甲板に来ると、積み荷の鉱石柱の査定をはじめる。数人でアチコチ念入りにチェックすると番号札の付いたベルトを巻き付けて「これ降ろして。」

ターさん、護たちに「番号札がついた柱の台木を外して」

護たち「ほいー」

トゥインタ「外した台木は木箱に入れてな」

アンバーからどんどん柱が降ろされる。

その間に、黒船が石置き場にやってきてアンバーの背後につく。


黒船の甲板ではジェッソ達がアンバーの様子を見ている。そこへ総司と静流がやってくる。

総司「おー。降ろしてる降ろしてる。」

昴、気づいて「あれ。副長、なんでここに」

総司「野次馬です。この柱をどんな風に降ろすのか、見学に来ました。」

ジェッソ「今、操船は誰が?」

静流「船長です。」

総司「どうしてもやりたいというので」

ジェッソ「なるほ」


黒船のブリッジでは。

駿河が操縦席にいて、船長席にアメジストがいる。

三等操縦士のアメジストはちょっとため息ついて「…私も操船したかったなー。凄い荷物を積んでる状態。やってみたかった!」

駿河「まぁまたこういう機会あるよ。その時にはやらせるから。」

アメジスト「やらないと上手くならないですもん」と言うと操縦席の駿河の横に来て「じっくり見て、勉強しときます!」

駿河「プレッシャー掛けてきたな」

アメジスト「勿論!」


アンバーの甲板から全ての鉱石柱が降ろされる。

カルナギ、タクに「タク、台木のコンテナをウチの船に持ってけ!」と指示すると穣たちに「次、俺達は黒船の柱を降ろすが、その間にアンバーは貨物室の石茶石を降ろすんだ。まず場所を移動する。ター、後は頼んだ!」と言って耳からアンバー用のインカムを外してターさんに渡す。

ターさん「ほい」と受け取ってインカムを耳につける。カルナギは黒船の方に飛んでいく。

ターさん、インカムに「船長、船を移動します、俺に続いて飛んで来て!」と言いつつ飛んで船の前方、ブリッジの前へ。

穣「俺達は中に入って積荷を降ろす準備だ!」と言いつつハッチから船内へ。

マゼンタ達も「おー!」と言って穣に続いて船内へ。

アンバーはターさんの指示に従ってゆっくりと移動し、様々な石を入れたコンテナが沢山置いてある場所に到着する。

ターさん「ストーップ」とブリッジに停止の合図をして「ここでコンテナ降ろします!」


ブリッジの剣菱「よっしゃ」というと受話器に「皆、ここで積荷降ろしだ!採掘監督ー!」

するとスピーカーから『了解!採掘口を開けます!』

アンバーの採掘口が開き、採掘口のタラップから怪力メンバーがどんどんコンテナを運び出す。

すると石屋がすぐにコンテナを開けて中の石を見始める。

石屋「おー。眠り石。なかなかイイね」というと小さ目の空の木箱をいくつか持ってきて並べると、コンテナの中の眠り石を取り出しつつパパッと査定して仕分け始める。石屋が数人でコンテナから石を取り出してパッと観てはポイポイといくつかの木箱に仕分けていく。

その様子を見て、穣「査定するのはっや!」

マゼンタ「人力でやるんだ…」

すると一人の石屋が手を止めて「人工種は採った石をどうすんの」

穣「いやまぁ、こういう石は人力で査定するけども」

悠斗「機械で選別する事もあるけど」

穣「そもそも俺らはイェソド鉱石の採掘がメインなんで、鉱石入れたコンテナを機械で横にして、集積タンクにザバッと移して終わり。」

石屋「まぁ採る石にもよるな。色んなやり方があるって事だな」と言い作業に戻る。

と、その時。少し離れた所に居たオーキッドが「うわぁ!黒船凄いよ!見て見て」と穣たちを呼ぶ。

穣たちが行くと、黒船が鉱石柱を降ろす作業をしている最中だった。

黒船の上には、船体の下にワイヤーを吊り下げた運搬船が居る。その運搬船のワイヤーを、黒船メンバー達が甲板の鉱石柱に括り付けると、運搬船は鉱石柱を水平に吊り下げつつちょっと上昇し、そのままスライドするように移動して、大きな鉱石柱が置いてある集積所に行き柱を地面に降ろす。

穣「あれ柱専用の運搬船なんだな」と言い「ん。」と何かに気づいて「そうだ。採掘船でもアレが…できんかな?」

護「アレって?」

穣「人工種だけで鉱石柱を採る時に、柱を採掘口からワイヤーで吊って、もう一隻の甲板に載せるとか」

透「その前にまず柱を横倒しにしないと吊れなくない?」

穣「横倒しにしちゃえばいいやん。」

護「場所があればね」

穣「飛べない奴は飛べないなりに採り方考えるんよ。いつかやってみたいな」

そこへターさんが飛んで来ると「ねぇねぇ君達、あのでっかいブドウ石、凄いじゃん!よくあんなの採ったねぇ!」

護「やっぱターさんもビックリした。」

すると悠斗が「ふ…。探知と協力して地面を掘り掘りして採ったのです。」

ターさん「アレは凄いよ!石茶石を採るのは個人採掘師が多いから、ああいうデカイのはなかなか採れなくて出回らないんだ。あのサイズだと、もう石茶用じゃないし」

マゼンタ「え。何に使うの」

護「観賞用」

ターさん「石好きが集めるの。」

マゼンタ「あー、そっち系ね。」

ターさん「石屋の皆が喜んでる。ブドウ石なのに鉱石柱並の値が付いたって」

護たち「ほぅ!」



暫し後、採掘船の停泊所にて。

船首を揃えて並んで着陸している黒船とアンバー。それと向かい合うようにブルートパーズが着陸していて二隻とブルートパーズの間に各船のメンバー一同が集っている。

カルナギと剣菱と駿河は一同から少し離れた所で話し合いをしている。

剣菱、カルナギから渡された明細書を見て「ほぉ…予想より稼げたな。」

カルナギ「アンバーと黒船が石茶石を採ってたのは大体1時間位か?短時間でよくあれだけ採ったな。」というと「ちなみに合計金額を3隻で割ると端数が出るんで100ケテラだけウチの船に手数料って事でいいかな。するとキレイに3隻分に割れる。」

駿河「勿論。問題ありません」

剣菱「了解です。」

カルナギ「んで大変申し訳ないんだが、今日は遅くなっちまって明日の朝でないと現金の用意が出来ないんだ。」

剣菱「ああ、構いませんよ。ちなみに駿河さん。実はウチの連中が明日は採掘しないで街に行きたいと言ってんだが」

駿河「いいですよ。あ、いやウチの船の皆に聞かないと分からないけども、俺は個人的に街に行きたいと思っていて。有翼種の暮らしを見てみたい。」

カルナギ「…でもな、街には人間という種族に偏見のある奴もいるから…失礼な奴が居たらゴメンな。」

駿河「分かってますって。大丈夫です。」

剣菱、カルナギに「ところで有翼種はお酒ってのを飲むのかな」

カルナギ「人間は酒を飲むのか」

剣菱「はい。私は石茶よりも美味しいお酒に興味があります。」

カルナギ「じゃあこの後チョコッと飲むか。有翼種の夜の街にご案内してやる…って手持ちの金が無いのか」とガクッとして「分かった俺が立て替えとく!」

剣菱「え、でも」

カルナギ「明日払ってくれればいい、俺の行きつけの店で一人につき1000ケテラ分だけ飲もう。どうだ」

剣菱「ありがたい。」というと駿河に「アンタもどう?」

駿河「俺は…ちょっと。」

剣菱「そんな気がした。酒、あんまり飲まんの?」

駿河「今は全く飲みません。でも前のティム船長が、よく酒を飲む人で」

剣菱「あの人が?意外だな」

駿河「しかもあの人、飲んでも殆ど酔わないという。一緒に飲むと大変です。自分のペースがワカランなる…。それでもう酒が嫌になった。」と言い「昔はよく飲み屋でティム船長からアドバイスという名の説教を受けてたんですよ。」

剣菱「…よく耐えたわな…。」と言い、カルナギに「んじゃそろそろ皆に結果報告を」

カルナギ「うん。」船長3人は一同の前へと歩き出す。そしてカルナギを中心に、黒船メンバー側に駿河が、アンバー側に剣菱が立つ。

カルナギ「それではお待ちかねの結果発表だ。…合計金額から行こうかな。全部で256000ケテラ、手数料100ケテラ取って3隻で割ると1隻あたり85300ケテラ、一人あたり5330ケテラ!」

一同「おお」

穣「ほぉー!意外に稼げた」

透「ランチ代位かなって思ってたのに」

ジェッソ「大体時給1000ケテラって感じだな。」

カルナギ「内訳は、ウチの船とアンバーに載せた鉱石柱が合計で8万、大体一本5000から1万ってとこだ。黒船に載せたデカイ鉱石柱が10万」

一同「!!」

上総「あれ一本で?!」

カルロス「やっぱりそれだけ行くのか…」

護「行くよねアレは。」

カルナギ「で、石茶石だが、眠り石が3万、ブドウ石が46000ケテラ。ちなみにブドウ石の一番大きな奴は1万ケテラ。ブドウ石で初めて鉱石柱レベルの値が付いた。」

ジェッソ「おお!」

カルロス「なんだとう?!」

上総「探知した甲斐があったぁ」

カルナギ「あの大きさを完璧に掘り出すって難しくないか?どんな穴を掘ったんだよ。」

悠斗「フッフッフッ!」

ジェッソ「怪力人工種の本気モードでございます!」

上総「探知も!」

ジェッソ「ああ探知も」

カルロス「あれはなー…あれはビックリしたもんな。」

カルナギ「…という事で、実は今日は現金が用意出来なかったんで、給料は明日の朝、渡す。スマン!…その代わりに、もし今日これから飲みに行きたいって奴が居れば俺が一人につき1000ケテラ分だけ立て替えといてやるが、誰か居るかな」

穣「え!飲みって、酒ですか?」

剣菱「お酒です。私は飲みに行ってきます!」

駿河「俺は行かないけど、行きたい人はご自由に」

ジェッソ「では私は行ってきます!有翼種の酒を飲んでみたい。」

穣「俺も行くー!」

透「ち、ちなみにどんな所に飲みに行くんですか!」

カルナギ「俺の行きつけの店で、採掘師連中がよく行くところだ。」

透「採掘師連中ですか…。」

マゼンタ「残念!」と透の肩をポンと叩く

メリッサ「ちょっと何が残念なの!」

マゼンタ「え?何だろう!」

護「俺も行こうかなー…。」

穣「ええ?」と驚いて「お前も行くんか」

護「うん。」と言い、カルロスに「カルさんは?」

カルロス「私は行かない。」

メリッサ、カルロスに「お酒に弱いですもんね」

護「え。」と驚き「そうなの?」

穣「ああ。そういやアンタそうだったな」

上総「意外だ…。」

護「飲むとどうなるの」

メリッサ「すぐ具合悪くして倒れちゃう。」

護&上総「へぇ」

カルロス「しかも飲むと探知が全く出来なくなる」と言い、カルナギに「ところで明日は何時頃に給料を頂けるんですか」

カルナギ「9時半頃だな。」

剣菱「あ、そうだ。明日な、イェソド鉱石の採掘しないで街に遊びに行こうって話があるんだが」

駿河「俺が有翼種の街を見たいんです。採掘は明後日でいいかな」

マゼンタたち「やったー!」

メリッサ「オッケー行く行く!」

ジェッソ「どうせ臨機応変の予定で来てるし、向こうに戻るのはゆっくりでも大丈夫です。」

すると上総が「周防先生はどうするの」

剣菱「明日の夕方、迎えに行こう。明日の夜はコクマの街に停泊。明後日は採掘して夕方に本部に戻る」

駿河チト溜息ついて思わず「戻るのかぁ…。」と呟く

剣菱、驚いて「え」

駿河「あ、いや。…だって戻ると管理が…。アンバーはいいけどウチの船は面倒なんですよ。」

穣「大丈夫ですって。ここのイェソド鉱石はハンパ無く凄いから、メチャ沢山採って戻れば向こうもガンガン怒れない」

カルロス「そもそも怒られる理由がワカラン。」

ジェッソ「むしろ喜んで欲しい位で」

駿河「本来はそうだよな。でも管理に大喜びされても気持ちが悪い」

カルロス「まぁな?」

ジェッソ「今までの事がありますからなぁ」

駿河「とりあえず今後の予定は了解しました。」

剣菱「じゃあ…明日は朝9時半にまたここに集合って事で。」と言うと「飲みに行く人はここに残って、あとは解散!お疲れ様でした!」

一同「お疲れ様でした!」と言って立ち上がる

護、カルロスに「なぁカルさん、飲まなくていいから一緒に行こうよ!」

ターさん「そうだよ、石茶を飲んでればいい!」

カルナギ「あの店の石茶はあんまり美味くないけどな」

カルロス「いや、今日は疲れたので早く休みたい」

剣菱、駿河に「アンタも飲まなくていいから行かないか?」

駿河「んー…。俺もちょっと疲れたので遠慮しときます。」

すると総司がリキテクスと一緒に駿河に「じゃあ俺と機関長は行ってきます。」

駿河「いってらっしゃい。他に行く人は?」

昴「俺と夏樹」

駿河「てことはジェッソさんを入れて5人か。了解。」

穣「アンバーは俺と護と悠斗だけかな」

剣宮「俺も行きます」

リキテクス、良太の所に歩み寄ると「もし良ければ行きませんか。鉱石弾の話がしたい。」

良太「あ、いいですね!行きます行きます。」

穣「じゃあ5人か。しかし男ばっかだなぁ…。」

剣宮「男の話をすりゃいいんですよ」

悠斗「ってどんな話?」

剣宮「………。」

悠斗「そこでフリーズすんな!」と言って剣宮の背中をパンと叩く

剣菱「じゃあネイビーさん!」

ネイビー「はぁい!船の事は任せて。いってらっしゃーい」

剣菱「宜しく頼みます!」

カルナギ「んじゃ行こうか。飛んですぐの所…じゃなかった。歩くんだった。あそこ歩くと何分なのかな」

トゥインタ「20分位かな。」

ターさん「まぁゆっくり行こう!」一同はテクテクと歩いて移動を始める。


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