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2020.06.23 06:16

ピースメイカー ~PeaceMaker~


〇登場人物

♂♀[マリオ]

街の半分を支配するランドルフ家の血統を持つ少年。愛人の息子の為、追放された。

野心を持っている。

後にガフリーと新ファミリーを立ち上げて、幹部となる。

♂[ガフリー]

本名:ロニー・ガブリエル

マフィアグループ・ランドルフ家に対抗する組織の下っ端

後にマリオと新ファミリーを立ち上げて、ボスとなる。


〇役表

【ピースメイカー~PeaceMaker~】

作:焔屋 稀丹


マリオ:

ガフリー:

https://malaynonagurigaki.amebaownd.com/posts/8582293


※作中で過去を振り返るシーンなどで年齢の変動があります。

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ガフ「銃を手にする事が何を意味してるか。分かってるのか?」

マリ「銃は銃だ。それ以外に意味はない。」


(拳銃の音)


ガフM

「マリオって少年を知ってるか。あいつと出会ったのは奴が12の頃だったか。薄汚い路地裏でバッタリとな。どうやらそこにいたのは親父の計らいだったらしい。ようは[捨てられた]訳だ。もうあれから、6年になるかな。随分と化けたもんだが俺はあの時ちゃんと見抜いてたぜ。あいつの中に眠る野獣をよ。」


(6年前)

――雨降るコンクリ街――


ガフ「そっちは終わったか!よし、路地に向かえ!今のうちにずらかるぞ!やっこさん達、騒ぎを聞きつけてぞろぞろ出てくるぞ!」


(拳銃の音)


ガフ「ジェフ!!!クソ!まだいたのか!ジェフ!ジェーフ!!!クッ…すまねぇ!」


(走り去るガフリー)


ガフM

「ファミリーの傘下(さんか)だった俺らは敵にちょっかい出す為に、度々駆り出されてた。何人も死んだ。この街でのしあがってやると誓い合った仲間たち。そいつらのシカバネを乗り越える日々だった。辛かったが、仕方がなかった。この街でのし上がる為だ。そんな中、ジェフって奴が一抜けした日、俺は出会っちまった。」


(拳銃の音)

(撃ち返す拳銃の音)


ガフ「あぁ!鬱陶しい!どこまでついてきやがるんだ、このハイエナども!」


(拳銃の音)


ガフ「ガッ!」

マリ「こっちだ!」

ガフ「え!」

マリ「早く!」


(走り去る音)


ガフ「ハァ…」

マリ「もう大丈夫。さぁ、こっちに来て。」

ガフ「すまねぇな坊主。手当までしてもらっちまって。お前は命の恩人だぜ。」

マリ「大した傷じゃなくてよかった。」

ガフ「おう、これで俺も出世する。助かったぜ。じゃあそろそろ…」

マリ「待って」

ガフ「あ?」

マリ「ロニー・ガブリエル。」

ガフ「おま、なんで俺の名前を…」

マリ「僕を君の仲間にして」

ガフ「はぁ!?」

マリ「僕にはやらなければならないことがある。それは君にとっても悪い事じゃない。だから僕を…」

ガフ「待て待て待て!俺とお前は今出会ったばかりだ。それにお前、いくつだ。どう見たって毛も生えてねぇクソガキじゃねぇか!あのな、何企んでるのかわからねぇがそういうのは他をあたってくれ!俺は忙しいんだ。」

マリ「ランドルフ・ガネット」

ガフ「っ!?」

マリ「僕の父親、そして君たちの標的」

ガフ「父親…?」

マリ「もちろん、知られてるような話じゃないし、とうの本人からは厄介払いされて、今じゃこのボロアパートの6階で母さんと2人暮らし。」

ガフ「それって…」

マリ「捨てられたんだよ。愛人の母さんとの間に子供がいるなんて知られたら、ボスの座も危うくなるだろうからね。」

ガフ「そうか。まぁ複雑な事情があるみたいだが、それがどうした。お前がアイツの子供だろうがなんだろうが、俺には関係ない。」

マリ「僕を仲間にすれば、君たちはこの街を支配できる。」

ガフ「っ…」

マリ「って言ったら?僕にはランドルフの血が入っている。この血は、利用できる。」

マリ「それに少しの間だけど、ファミリーの施設で過ごしてた期間もあった。だから内部の情報も…」

ガフ「悪いがそういうのはもっと他をあたってくれ。俺はファミリーの中じゃ下っ端だし、これから成果報告もしなきゃいけねぇ。それに、ジェフの事も…」

ガフ「とにかく、だ。なんでお前が俺に関わろうとするのかはわからねぇが、もう近寄るのはやめておけ。

この街に住んでる奴に言うのもなんだが、関わるだけ損だ。」

マリ「わかった。」

ガフ「あ?」

マリ「もう近寄るのはやめにする。」

ガフ「お、おう…そうか。そいじゃな。傷の手当ありがとよ…」

マリ「待って」

マリ「このUSBあげるよ。これを君のボスに届けて。」


マリオからUSBを渡される。


ガフ「これ…」

マリ「内部情報みたいな奴だよ。それじゃあね。」

ガフ「あ、おい!ったく…なんだよ。」


ガフM

「いやぁ、とにかく気色の悪い体験だったな。だってよ、見ず知らずの小僧が下っ端の俺なんかにとんでもねぇ話を吹っ掛けてくるんだぜ?頭おかしいんじゃねぇかコイツって思ったよ。だが、今思えば全部計画してたんだな。あの化け物め。」


――後日――


ガフ「クソガキ!!!出てこい!どこにいる!」

マリ「近寄らないんじゃなかったの?」

ガフ「おいお前!クソガキ…」

マリ「お前でもなければクソガキでもない。」

ガフ「っ!」

マリ「マリオだ」

ガフ「うるせぇ!そんなことはどうでもいい!お前が渡してきた、あのUSB!ありゃなんだ!!!」

マリ「あぁ…。フフッ。よくやってくれたよ。ガブリエル」

ガフ「内部情報だ~?ハッキングソフト組み込みやがって!!おかげで、追放!!!俺の出世の道もパァだ!」

マリ「大丈夫、安心して。これからは君がトップになるんだから。」

ガフ「あ?」

マリ「今頃、君のファミリーは解体に向かってるだろうね。」

ガフ「!?」

マリ「そして君は大罪を犯した者として、指名手配される」

ガフ「…」

マリ「どうする?ガブリエル。もう後には引けないよ。僕に手を貸して街を支配するか。この街に飲み込まれるか。二つに一つ。」

マリ「どうする?」

ガフ「…ガフリーだ。」

マリ「え?」

ガフ「みんなからはそう呼ばれている。俺の事知ってるみたいだが、そこまでは知らなかったようだな。」

マリ「だってそんな情報、登録され…」

ガフ「ハッ!画面ばっか見てるからだ。これだから近頃の若い奴は!」

ガフ「悪党の世界、甘くはねぇぞ、マリオの坊ちゃん」

マリ「フッ。じゃあ、決まりだね。」


ガフM

「ウン千年前、チャイナじゃ広大な土地を7つか8つに分けて戦い合ってたって話。知ってるか。黄金時代なんて呼ばれてもいるが、仮にその黄金時代がこの街にあるとしたら、それは俺とマリオが組んだその日からだ。」


(3年前)

――組織拠点――


ガフ「戻ったぞぉ!!!」

マリ「なっガフリー!お前その傷!」

ガフ「気にするな!!そんな事より聞いてくれ!今日の作戦も大成功だ!これでトニー、セミオン、アルカポネは壊滅!トニーの奴、いい顔してたから、ばっちりカメラに納めてやったぜ!ほら見ろよ!」

マリ「なっ!やめてくれ!僕はそういうの見るのは苦手なんだ。いつも言ってるだろう。」

ガフ「ほぉぉん?ファミリー作って、はや3年。マフィアの幹部ともあろう者が、ビビってんのかなぁ?」

マリ「ビビリなんかじゃない。ただ単に苦手なんだ。」

ガフ「まだ銃すら握ったことないらしいじゃないか。大丈夫かぁ?はっはっは。しっかし、本当にすごいぜ!

   お前の指示通り動いたら敵のボスをあっさりやれちまうんだから。天才か!天才なのか!天才だなぁ!」

マリ「そんなことは無いよ。たまたま、敵が僕らよりもバカだっただけ。全部が全部そういうわけにはいかない。特にあの組織はね。」

ガフ「あぁ、前ほどの勢いは無いつっても、やっぱりあそこにはキレ者が多い。ウチも大きくはなってきたが、大きくなればなるほど、あいつらと対峙する日が怖くなるってもんだ。」

マリ「ん?ガフリー、そんな事に怖気づいてるのかい?ビビリちゃんはどっちかな。」

ガフ「うるさいぞ黙れ。毛も生えてないガキが大人をおちょくるもんじゃない。こういうのはな!ビビってるんじゃなくまぁ武者震い的な…」

マリ「…生えてる。」

ガフ「…へ?」

マリ「もうとっくの昔に生えてる!いつまでもガキ扱いするんじゃない!殺すぞ!」

ガフ「ぶっはははは!なんと!マリオの坊ちゃんもとうとうボーボーか!!これで大人の仲間入りだなぁ!!どれ、見せてみろ!」

マリ「うぉっ!触るな!近づくな!!クソ、調子が狂う。ほら、次の標的の話をするぞ。」

ガフ「あ、おい!!!」


ガフM

「分かるか?たったひとつのハッキングによって街を担っていた二大組織はバラバラになったんだ。そして裏切りに裏切りが会い、血みどろの時代ってやつがはじまった。ランドルフのグループはその中でも長生きだった方なんじゃないか?ボスが死んで、バカ息子のアレックスが継いだ後も優秀な部下がいたおかげで今の今まで続いてこれたわけだ。ウチも相当やられたが、マリオのおかげで、俺たちは生き延びてきた。これだけは間違いない。だが嬉しい反面、不安もあった。」


――深夜、拠点近くの港――


ドラム缶の上に座り海を眺めるマリオ


マリ「…」


黄昏るマリオに気づくガフリー


ガフ「ん?マリオじゃないか。こんな時間に何を…」


近づいていくガフリー


マリ「父さん…」

ガフ「マリオ。」

マリ「っ!」

ガフ「どうした。ボーッと海なんか見つめて。」

マリ「なんでもないよ。関係ないだろ。あっちいってろ」

ガフ「ランドルフ、死んだな…。」

マリ「っ…」

ガフ「伝説の男、凶弾に倒れる…か。あっけない終わりだったな。」

ガフ「つってもファミリーは息子のアレックスが継ぐらしいし、部下も健在だ。まだまだ、あそこは侮れねぇ。」

マリ「あぁ…」

ガフ「親父に会いたかったのか。」

ガフ「はっはっは。残念だったな。さぞかし自分の手で殺してやりたか…」

マリ「殴ってやりたい!!あいつの顔!!」

ガフ「…」

マリ「お前の勝手で母さんを振り回して!愛人だからってずっと厄介者扱いしやがって!それで子供が出来たのを知って?跡継ぎになるかもしれないからってんで、仕方なく匿って。本妻(ほんさい)との間に子供が出来たらポイかよ!!!はっはっは!ざまぁみろ!お前の愛人の息子はな、この街をグチャグチャにしてやったぞ!ファミリーも崩れ去った!!雑魚の鉄砲玉ごときに倒れやがって、くだらねぇ人生だったな!!てめぇのディックの制御もできねぇバカ野郎だから、バカみたいな死に方するんだよ!バーーカ!!!」

マリ「地獄で母さんに土下座しろ!クズが…」

ガフ「マリオ…」

マリ「一回でよかった…。」

ガフ「え?」

マリ「マリオって……呼んで欲しかった。」

マリ「抱きしめて…欲しかった…。」

ガフ「マリオ…」

マリ「すまない、ガフリー。もう気は済んだ。今日はもう…っ!?」

マリオを抱きしめるガフリー

ガフ「別にいいんだぞ」

マリ「え?」

ガフ「こういう時は、泣いたっていいんだ。」

マリ「ぐっ……」

ガフ「よく、耐えてきたな。マリオ」


――現代――


ガフ

「なんだかんだ言っても、あいつはティーンエイジャーだ。どこかのお飾りのボンボンと違って裏でいい仕事をしてくれていた。だが、マフィアの世界で何年やってようがな、あいつは親の愛情に飢えたクソガキなのよ。そんな奴は正直いって、この悪党まみれの街は似合わねーのよ」

マリ「俺におんぶに抱っこの癖に好き放題言ってくれるな?ガフリー」

ガフ「おや?随分と早かったじゃねぇか。マリオの坊ちゃん。」

マリ「捕まえたか。」

ガフ「目の前にいますよ~」

マリ「やぁ、初めましてだな。いや、こういった方がいいかな…。やっと会えたな…兄弟。」

マリ「アレックス、お前はヘマをした。せっかく父さんが築き上げてきたこのファミリーも、お前が馬鹿でトロいせいで今日で終わりだ。でも、安心しろ。父さんの血はこれからも続く。この街は今後もランドルフの血を継ぐ俺が守る。この俺、マリオ・ガネットによってな。」

マリ「ガフリー、銃を貸してくれ。兄貴としての恩情だ。俺がケリをつける。」

ガフ「んん?マリオお前、銃なんて今まで…」

マリ「大丈夫だ。使い方は知っている。」

ガフ「マリオの坊ちゃん。まだ引き返せる今のうちに聞いておく。銃を手にする事が何を意味するか。分かってるのか?」

マリ「銃は銃だ。それ以外に意味はない。」

ガフ「ほらよ」


銃を持つマリオ


マリ「だが…」


拳銃を構える


マリ「撃った弾には、想いが乗る。」


(拳銃の音) 

倒れるアレックス

しばらくの沈黙


ガフ「重かったかい?」

マリ「意外とな」

ガフ「そうか。フッ…」

ガフ「聞けお前ら!ガネットファミリーのボス!アレックス・ガネットは死んだ!!今日をもってこのファミリーは壊滅だ!!!これからは俺たちが!この街のトップだ!」

ガフ「そして、もう一つ!お前たちにプレゼントだ。今日をもって俺は引退する!!」

マリ「!?」

ガフ「いやぁ、働き過ぎだー!正直言ってきつい。疲れたー!」

マリ「馬鹿な!このグループはお前がいなきゃ……オワッ!?」

ガフ「マリオ・ガネットォオオ!!!お前が次のボスだ!!いいよな、お前らぁ!!」

マリ「あっ…。はぁ、まったく。勝手に決めやがって」

ガフ「へっ。お前にさんざん振り回された罰だ」

マリ「でも、俺にできるか。俺はお前ほど冷徹にはなれない。」

ガフ「悪党の時代はもう終わりだ。」

マリ「え?」

ガフ「マリオ、お前が得られなかった愛。お前の求めてきた愛を、この街に求めてみな。」

マリ「…愛」

ガフ「このファミリーの次の仕事だ。だが、悪党が蔓延(はびこ)る街だ。簡単じゃねぇぞ?」

マリ「ハッ。俺を馬鹿にしてるのか?いい度胸だ、やってやるさ。俺がこの街の悪党全員を改心させてみせるよ!悪党としてな!」

ガフ「ハッハッハッハ!マリオ、お前は本当に悪党(ピカロ)が似合わねー男だ。」


※悪党(ピカロ)表記のセリフはどちらで読んでも大丈夫です。


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