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Yanaoka's research page

幼児期の課題目標保持を検討した研究が出版されました

2020.06.30 07:32

Yanaoka, K., Moriguchi, Y., & Saito, S. (2020). Cognitive and neural underpinnings of goal maintenance in young children. Cognition

タイトルにある目標の保持というのは文字通りの意味で、日常的には新たなルール、他者の言いつけ、自らの予定または達成すべき状態(スーパーに行く、またはスーパーに行って食材を買ってカレーを食べる)などを頭の中に記憶として残しておくことです。このように保持ができているからこそ、常に目標にむけて行動をすることが可能となります。逆にこうした目標の保持が失敗した状況というのは心理学ではgoal neglect(目標無視)と言われており, 目標に従った行動が一時的にできなくなってしまう状態を指します。Goal neglectはその定義として、目標無視の状態にあっても完全に目標を忘れたわけではなく、「目標はなんだったけ?」と聞くと言語的に回答できるということが含まれます。この意味でも先の「一時的」というのはポイントで後から思い出すこともできますし、ミスした次の瞬間には目標を思い出して、適切な行動を取れる可能性はあります。ここまで聞くと目標保持機能というのは地味ながらも日常生活には欠かせないということが分かるかと思います。これは幼児においても同様に当てはまるのか、当てはまるとすればどのような認知・神経基盤を持っているのか。この研究ではそうした疑問に取り組みました。具体的には、認知基盤については、目標無視を測定するよう幼児向けに開発された課題と抑制機能およびワーキングメモリとの関連を検討しました。神経基盤については、目標無視を測定する同課題を改良し、課題目標保持に関わる脳活動を近赤外線分光法(NIRS)を用いて検討しました。結果、幼児期の課題目標保持には認知基盤として抑制機能、神経基盤として右の前頭前野が密接に関連することが示されました。以上の結果をもとに、幼児期の課題目標保持の背後にある認知・神経メカニズムについて論じました。

直感的には目標保持というのは子どもでも重要な気がしています。自分が立てた予定や大人から言われたことを頭におきながら、行動することで初めて自分の行動の準拠枠のようなものができると考えています。もちろん子どもには行き当たりばったりな時期は必要ですし、発達的にも重要な意味を持っていると思います。ただ、先の目標の従って行動するということができて初めて、自分の予定していた通りに行動が進んだ感覚というのが得られるのではと思っています。まあ、こうした主観的なところは今後突き進めて研究をしたいです。そのだいぶ手前の一歩というところでしょうか。今後も頑張ります。