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013/赤いもみじに

2020.06.23 23:59

「紅葉が隠してくれるから大丈夫だよ。こんなにも赤いんだもん」

 山の斜面にある神社。僕は彼女とキスをした。

 学校帰り。抑えきれない衝動。触れたくてたまらなかった。

 どこなら人がいないだろうと神社に入った。そこには真っ赤に燃える楓の大木があった。

「こんなところではずかしい」

 そうはいっても彼女は抵抗しなかった。唇を合わせ、舌先で触れ、唾液が滴り落ちた。

 日が陰るころ、名残惜しむように抱きしめてから帰った。

 彼女の体は秋風にしては熱かった。

 においも覚えている。彼女の匂いだ。


 秋になるとそんな性の記憶が蘇る。

 赤いもみじのように赤い僕達。


 その後、僕はこんな句を詠んだ。


 この恋がどれだけ燃え上がろうとも楓の梢よ色づくなかれ


 彼女とは程なくして別れた。

 秋は、きっとそんな季節。