To be or not3-ムーア人オセロの物語
2020.06.25 11:43
ジェームス1世に代替わりした王家に対し、すぐさまシェークスピアはオマージュをつくった。1604年「オセロ」である。その前年の即位で、レパントの海戦を歌った自作詩を再版した。英国も大航海時代を迎え、異国興味も広がり、イスラムを主題とした演劇も上演されていたのである。
しかしだいたいがムーア人は悪役、ところがオセロは主役で、白人の嫁をもらうという。彼を陥れるのはイアーゴだが、観客は多分イアーゴに共感したに違いないのだ、白人の嫁を持つほうが悪い、と。果たして、オセロはムーア人の性癖とされていた短気、激情によって愚かなほどその罠にのってしまう。
ヒロインのデズデモーナは、オセロをひたすら信じ、殺されてもオセロのせいにはしない。ここまで来ればイエス・キリストの類似、最期にオセロはユダよろしく自殺して改心し、妻の身体に覆いかぶさり、愛を取り戻す、キリストの愛の勝利で終わるというわけだ。
しかしシェークスピアの描写力はそんな単純ではない。戒律に反したからとあっさり殺したりしないのだ。彼は純愛の懊悩に苦しむ。ロミオとジュリエットのように、愛を引き離すものに抵抗しようとする。社会に満ちた対立の中で、シェークスピアのメッセージがないだろうか?
下はロイヤルシェークスピアカンパニーのクライマックス殺害の場面