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猫の目ヤニ・鼻水・くしゃみ ~猫のカリシウイルス感染症~

2020.06.26 05:50

猫に目ヤニ・鼻水・咳・くしゃみが見られたら?猫も風邪をひくの?人にはうつるの?

今回は、猫風邪のひとつ、カリシウイルス感染症についてのお話です。


感染経路

猫のカリシウイルス感染症は鼻やノド、咽喉へウイルスが感染し猫同士でうつる伝染病です。このウイルスに感染した猫の目ヤニ・鼻水・よだれなどに、まだ感染していない猫が接触することによって感染します。同じ食器でご飯を食べたり、目の前でくしゃみをされることによって簡単にうつってしまいます。

また、カリシウイルスが風に乗って飛沫感染や空気感染をすることもあります。そのため、この病気は空気が乾燥する冬に発生しやすく、飼い主さんが野外でカリシウイルス感染症の猫を触ったり抱いたりした後に、皮膚や衣服を通じてそのウイルスを運び、自宅で飼っている猫に感染させてしまうケースもあります。

特に、ワクチンを打っていない野良猫たちの間では感染していることが多いため、飼い主さんがその野良猫、もしくはその猫から生まれた子猫を拾った時点ですでにウイルスを持っている可能性もあります。

なお、「猫風邪」といってもこの感染症が人にうつることはなく、人の風邪が猫にうつることもありません。


症状

カリシウイルスに感染すると、ひどい目ヤニで目がふさがってしまったり、口内炎や舌潰瘍を起こして、その痛みから食欲がなくなったり、くしゃみや鼻水により鼻がつまって呼吸がしづらくなるなどの症状があらわれます。発熱は必発ではありません。

通常であれば2週間ほどで回復しますが、時に肺炎や食欲不振から衰弱し、徐々に抵抗力がなくなり死に至ってしまうこともあります。特に授乳期や離乳直後で、まだ身体に十分な免疫が備わっていない子猫が感染すると、症状が悪化することが多く他の病気との合併症があった場合はさらに治療が困難になってしまいます。


ヘルペスウイルス感染症との違い

カリシウイルス感染症と同じ「猫風邪」と呼ばれる病気にヘルペスウイルス感染症があります。カリシウイルス感染症は口内炎や舌炎が主症状となりひどくなりやすいのに対し、ヘルペスウイルス感染症は主に結膜炎による目ヤニやくしゃみが主症状としてあらわれます。

しかし、感染初期はどちらの感染症においてもくしゃみや鼻水が発症するため、あまり見分けがつきません。よって症状だけでどのウイルス感染症なのかを特定することは難しく、更に、検査によるウイルスの特定も簡単ではありません。

また「猫風邪」として、カリシウイルスとヘルペスウイルスの両方に感染していることも多々あります。


治療

効果的な抗ウイルス剤があまりないことから、カリシウイルスを直接退治する方法はありません。よって治療の基本は症状をできる限り抑えながら感染した猫の体力や免疫力を上げていき、自力回復するのを手助けすることが重要です。

中でも目や鼻の洗浄は大切で、猫はにおいにより食欲が促されるため、鼻の洗浄には特に気を配る必要があります。目ヤニや鼻水をきれいに拭き取ったあと抗生物質や消炎剤などの点眼・点鼻薬を投与します。症状が改善するまでは持続的に行う必要があります。また、抗生物質の全身投与により二次的な肺炎を防ぎます。

食欲がない場合は、点滴によって栄養剤、抗ウイルス剤であるインターフェロンなどを投与したり、体を温めて高カロリーの栄養補給食品を強制投与するなどして栄養をつけさせ、猫の体力や免疫力の低下を防ぎ自力で回復することを期待します。

成猫の場合、たとえ感染していてもそれほど症状の悪化はせず、子猫に比べて回復もしやすいのですが、カリシウイルス感染症と同時に猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスなどといった免疫力を弱めてしまう病気にかかっている場合は、回復が難しく、逆に症状がひどくなってしまいます。


カリシウイルスの消毒方法

カリシウイルスは、感染猫の分泌物を媒体にして感染します。よって感染猫がいる場所や、くしゃみやよだれを垂らした場所の清掃や消毒、普段使っている食器の洗浄など、身近な環境の消毒をしっかり行うことも感染を広げないという意味でとても大事です。

室内で飼っている、特に多頭飼いの場合は感染猫を隔離します。同居猫と接触しないほか、行動範囲が限定されるため、分泌物に含まれるウイルスの拡散は狭くなり、分泌物の掃除や消毒もしやすくなります。消毒は塩素系の消毒剤か、クレゾール石鹸液を使用します。消毒用のアルコールは効きません。

もちろん飼い主さんが感染猫を触った場合もよく消毒して、衛生的な環境を保ちましょう。


予防方法

最大の予防方法はワクチンです。カリシウイルスやヘルペスウイルスの感染を防ぐ混合ワクチンを子猫の時からしっかり接種することが重要です。それと同時に室内で飼うことを徹底して、野外での感染の可能性を極力減らしましょう。

ただし、ワクチン接種前にカリシウイルスに感染してしまっている場合は、保菌状態でウイルスが体の中に潜んでいる可能性が高いため、ワクチン接種をしてもそれ以降に発症してしまう場合があります。感染症の再発を防ぐためにも過度のストレスを与えないように注意し、日常の健康管理を心がけましょう。


おわりに

前述のように重要なことは、一度カリシウイルスに感染した猫は治療してもウイルスを完全に退治することができず、体内にウイルスを持ち続けてしまうということです。そのため、治癒後かなりの期間が経っているのに再び発症してしまったり、同居している別の健康な猫が発症してしまうこともあります。

重要なのは、カリシウイルスに一度かかってしまうと、治ったあとも慢性の保菌状態が続くことを十分理解して、その後の猫との日常生活を送るようにしましょう。