月下百鬼道中 2.【月下の出会い】 6話 大魔王の助言
「というわけで…何か知らないトッポ?」
「~~~~!!…だからといって、どうしてこのトッポ様に聞く!人間のことなど知ったことか!帰れ!!」
「えー、やだ。」
と、二本足で立つ青いネズミがローザと話をしている。
今僕らがいる『ここ』は、『シュリンガー公国』の隣に位置する『滅びの村』。別名はスティグマ。スティグマというのは簡単に言うと、負の烙印、象徴という意味を持つ。社会的に見放されている場所、人の住む場所ではないということだ。なぜここにそういう烙印が押されているのかは知らない。
けれど、そんな人も寄り付かないここにはいつしか魔物が住み着いていた。その魔物が今目の前にいる「トッポ」というネズミの魔物だ。そしてトッポは自分を『魔王』という。魔王は魔物を統べる王。当然、強いらしい…のだが今のところ勝てている。ほんとに魔王なのだろうか。
「<大魔王>のトッポのことだから、知らない事はないんじゃないかなーって。」
「確かに!この!大魔王トッポ様に分からないことなどない…だが!お前達に教える事等ない!」
やたら大魔王誇張するなぁ…本当なんだろうけど…多分。
「おい。ところで何だその袋。」
トッポはローザが手にしていた袋に視線を移す。それはローザが連邦を出る前に市場で買ったものだった。
「これ?これはジャガイモだよ。教えてもらう代わりにと思って。戦うのもなぁって…でも教えてもらうのに手ぶらなのも悪いと思ったの。」
「ふん。なるほど、このトッポ様に貢ぎ物を持ってきたということだな?良い心がけじゃないか。……ふん、いいだろう。では1つ気になることがあるから教えてやる。」
「ホント?!」
「はっ!力こそすべての魔物のルールに、わざわざへりくだる人間のルールを持ち込むとは愚かな!だが悪い気はしない。許す。」
許された、いいのか大魔王。ジャガイモで。いや、そりゃ食料は大事だろうけど。
と間髪入れずに思ったが、弱肉強食、奪い奪われが当たり前な世界で食べ物を苦労せず手に入れるというのは大きな価値があるのだろう。
ふと見るとトッポの背後、そのずっと後ろに小さな魔物の姿が見える。トッポの子分だろう。なるほど、伊達に大魔王を名乗っていない。
初めてトッポと出会ったとき、人間への恨みをぶつけられた。俺様は殺され続けたと、ただ一族を守っているのだと。
それでもこうして自分の都合よりも合理的に話を彼はしてくれている。色々あったけど、寛大な王だと僕は思う。
「お前達のためではない!あくまで俺様が確かめたいことなのだ!問題が俺様の所にまで及ばないとはいえないからな…お前達が丸岩と呼んでいる場所があるだろう。そこに、俺様の力に匹敵するような存在が感じられる。お前達が確かめてこい。」
変わらずの上から目線。だけど、うん。
「行ってくるよ。」
僕がそう言うとトッポはそっぽを向いた。
「ふん………………おい。」
「?」
「…気をつけていけよ、相手は魔王レベルだからな。」
「…うん、ありがとう。」