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レイフロ@台本師&声劇民☮

華一会〜HANA-ICHIE〜(2人台本)

2020.03.29 13:00

【ジャンル:シリアス】

【所要時間:15〜20分程度】


●ご使用の際は、利用規約をご一読下さい。

●上記の素敵な画像は、REN'sJackson様に描いて頂きました。ツイキャスで生声劇する際のキャス画にお使い頂いても構いません。(キャス画以外での使用、転載等は絶対に禁止です!!)

【あらすじ】

廃刀令が出される前のお話。

一人の侍と、人買いに売られていた少女が出会った。


【人物紹介】

男♂:無精ひげの侍。とある怪しげな仕事を生業(なりわい)としている。


女♀:子供と呼ぶには育ちすぎており、女性と呼ぶには幼すぎる頃合い。首には醜い傷痕があり、口を利かない。



【演じる際の注意点】

・冒頭、花いちもんめの歌詞が出てきますが、歌ってもいいですし、ただ読んでも構いません。ただし、どちらかには合わせて欲しいので、演じる前にご相談をお願いします。

・文中で出てくる「夜鷹(よたか)」とは、「江戸時代に、夜、道ばたで客を引いた、下等の売春婦」のことです。



↓生声劇等でご使用の際の張り付け用

――――――――

『華一会』

作:レイフロ

男♂:

女♀:

https://reifuro12daihon.amebaownd.com/posts/8632973

――――――――









以下、台本です。

――――――――――――――――

(冒頭の花いちもんめは、歌ってもいいし、セリフとして言ってもいいですが、明るくも暗くもなりすぎないようなトーンでお願いします。つまり普通で。←)



女:

勝って嬉しい 花いちもんめ


男:

負けて悔しい 花いちもんめ


女:

あの子が欲しい


男:

あの子じゃわからん


女:

相談しましょ


男:

そうしましょ …



(間)



女:

私は最後まで売れ残った。

「あの子が欲しい」

「あの子じゃわかりませんよ」

「値段は相談しましょう」

「そうしましょう」

周りの子はどんどん売れていく。


男:

余っていたガキを買った。薄汚くガリガリで、おまけに首には醜(みにく)い傷痕(きずあと)があった。

子供と呼ぶには育ちすぎているが、かといって、女性と呼ぶには未成熟だ。

格安だった。

「旦那、本当に買うんですか」、と念を押された。


女:

売れた。私が売れた。

花が何本か買えるほどの値段だった。

男は小汚い髭を生やしていて、腰には刀が差してあった。




男:

―――…ここまでくれば大丈夫だろう。


女:

一刻ほど無言で私を連れて歩いた後(のち)、

男は辺りを見まわして、腰の刀をスラっと抜いた。

上段(じょうだん)に構えられたそれに、月の光が反射して眩しい。


男:

―――く…っ…


女:

男はそのままの姿勢で存分に躊躇(ためら)っていたが、やがて深いため息と共にゆっくりと刀は下ろされた。

人買いに売られてからずっと付けていた首の縄が解(ほど)かれる。


男:

―――さぁ、どこへでも行っちまえ。


女:

ぶっきら棒な男の言葉と同時に、私の腹の虫がぐうう、と鳴いた。

男は半開きだった目を見開いて、私と、私のお腹を交互に見た。


男:

―――はぁ…面倒なことになった…


女:

男は、小汚い店で粥(かゆ)を馳走(ちそう)してくれた。

温かい物を食べたのは、いつぶりだったか知れない。


男:

―――急に沢山食べると胃の腑(ふ)によくねぇ。一杯にしておけ。


女:

体を労(いたわられ)たのは初めてだった。

のちに分かったことだが、単にこの男、金子(きんす)が心もとないだけだった。


男:

―――女、名を何という。


女:

―――あ、


男:

―――いや待て!お前は俺が買ったんだ。名は俺が付ける。


女:

―――…。


男:

―――うぅむ。


女:

男はしばらく目を瞑って考えているようだったが、やがて諦めたように大きく息をついた。


男:

―――はぁ…。俺には学なんてねぇし、女の名前なんぞ知るか!


女:

結局私は、「女」と呼ばれることになった。




(間)




男:

―――ほれ、犬ころ、取ってこい!


女:

男はなぜか、行く先々で犬には好かれた。

よく骨を持っていたからだろう。


男:

―――女、疲れたか?


女:

いいえ、と首を横に振った。


男:

―――これから登る山は険しい。今日は麓(ふもと)で野宿するとしよう。


女:

男と行動を共にしてひと月が過ぎていた。

私は未だに「女」と呼ばれ、男も名乗らなかったので、呼びようがなかった。






男:

―――これで何か食って待ってろ。


女:

新しい町に着くたびに、小銭を渡されて、待っているように言われた。

そして、男は夜鷹(よたか)に袖(そで)を引かれ、そそくさと暗がりに消えていくのだ。


男:

(女を押し倒して)

―――んっ…


女:

そっと後をつけて暗がりを覗き込むと、みすぼらしい御座(ござ)の上で男が夜鷹を組み敷いていた。


男:

(吐息交じりで)

―――はぁ…っ


女:

夜鷹(よたか)は着物の袖を噛んで声を抑えていた。




女:

私は露天で水飴を買った。

売り子は私を見てぎょっとしていた。

首の傷痕が醜(みにく)かったからだろうか。


女:

男を待つ間、夜鷹を買う金で、時折見かける花売りから綺麗な花が何本買えるのか計算しようとしたが、面倒になって止めた。



男:

―――何をしている。


女:

私は構わずに水飴を練った。

いつの間にか広まった夜の闇に、クチャクチャと、水音が響いた。


男:

女は少し拗ねているようにも見えた。

俺が夜鷹(よたか)を買ったことを快く思っていないのだろうか。


男:

いいや、気のせいだ。

夢中で水飴を練っているではないか。女とは言え、まだガキなのだ。

夜鷹が何なのかすら、わかっていないだろう。


女:

男は、私が水飴を食べ終わるまで、律儀(りちぎ)に待っていた。




(間)




男:

それから数日かけて山を二つ超えた。

女は弱音一つ吐かなかったが、ふとした時に草履(ぞうり)に血が滲んでいることに気付いた。

次の町までもう少しというところだったが、その日はボロボロの山小屋で早めに休むことにした。


女:

―――…っ…!


男:

―――痛いか?


女:

―――…んん…(首を横に振る)


男:

鼻緒(はなお)が擦れて、傷ついた右足の親指と人差し指の間を水で洗ってやる。

女は小さく震えて痛みに耐えていた。


男:

―――俺が何故、人相(にんそう)書きにある罪人を探し回っているか分かるか?


女:

私は首を横に振った。


男:

―――金目当てじゃあねぇ。殺すために探している。


女:

私は、黙っていた。


男:

―――俺が怖いか?


女:

男の目が、鈍く光った。


男:

―――本当かどうかは知らんが、人の心(しん)の臓(ぞう)は、妙薬(みょうやく)になるのだそうな。

俺は罪人を殺して、心の臓を抉(えぐ)り、それを真っ当じゃねぇ薬師(くすし)に売っている。


男:

―――お前のも売ろうと思っていたんだ。

依頼があってな。子供の心の臓なら、いつもの三倍の値で買い取ると言われた。

まぁ、お前はもう子供というにはギリギリと言ったところだが。


男:

―――子供の心の臓を手に入れるためには人攫いをするしかなかったが、それは信条に反する。

だが、人買いが売っている二束三文の売れ残りのガキなら…いいと思っちまった。


女:

可愛い子や扱いやすそうな子から売れてゆく。

私は最後まで売れ残った、要らない子。


男:

―――お前は喉元に醜い傷痕があって、口もろくに聞けんようだしな。

これまで、さぞ酷い人生だったろう。


女:

私は、

要らない子。


男:

―――お前を買ったはいいが…結局俺には出来なかった。

お前の手が温かかったから悪いんだ。

決心が鈍っちまった。


女:

なんて甘い男だろう。手が温かかったという理由でガキを殺せぬとは。

罪人とて、手は温かいだろうに。


男:

―――その喉の傷は誰に付けられた?父か?破落戸共(ごろつきども)にか?


女:

どうでもいい。もうこの醜い傷は一生消えないのだから。


男:

―――どうした?まだ足が痛むか?


女:

優しい言葉など信じない。また騙される。また…


男:

―――おい、顔色が悪いぞ?


女:

もうたくさんだ。傷つけられるのは。

ならば、いっそのこと…!



(一呼吸おいてから)


女:

―――…っふ…!(男に飛び掛かる)


男:

女は突然、俺の胸に忍ばせていた太刀(たち)を奪うと、そのままの勢いで俺を押し倒した。


女:

―――はあ、はあっ…


男:

太刀たちの切っ先が、俺の心の臓の真上で止まっている。

プツッと音がして、薄い皮膚が破れた。


女:

―――ふっ…うう…うううッ!(刺そうと力をこめようとする)


男:

女は、必至に太刀(たち)を俺の心の臓に押し込もうとしているようだったが、刃はカタカタと激しく震えるだけだった。

表皮に無数の切り傷が出来、そこから血がジワリと滲み出る。


女:

―――はあ…、…はぁ…


男:

どのくらいそうしていただろうか。

女の息がそのまま止まってしまうのではないかと思うほどに、小さくなっていった。


女:

…ふふ…(少しだけ笑う)


男:

おい、どうし…


女:

(舌ったらずな感じで)

―――あい、が、と… (ありがとう)


男:

女が “ありがとう” と言った。

聞き取りづらい声だった。

女が初めて微笑んだ。

美しいと思った。


女:

―――ふっッ!!


男:

次の瞬間、俺の胸の上にあった太刀たちは大きく振りかぶられ、女は、その切っ先を自身の薄い胸へ向けて、一気に振り下ろした。


(SE:刺さる音)







(十分に間を取ってください)








女:

―――れぇ、こで、あってう? (ねぇ、これ合ってる?)


男:

―――あぁ、それでいい。そのまま魚が食いつくまで待て。


女:

―――きょ、いぃ、てえき(今日、良い天気)


男:

―――良い天気ってか?そうだな。最高の釣り日和だ。


女:

―――て、いらい?(手、痛い?)


男:

―――手が痛いかって?まぁあの時、咄嗟(とっさ)にお前の自害を止めようとして、手のひらにグッサリいっちまったからな。

医者が言うには、もう動かねぇってさ。


女:

―――……。


男:

―――あの後、お前がぐわんぐわん泣きながら麓(ふもと)の医者まで俺を連れてってくれたおかげで、俺はこの程度で済んだんだ。

罪人とは言え、今まで散々人を殺した罰にしては、随分軽かったと思うぜ。


男:

―――…そんな顔すんな。

(無事な方の手で女の頭を撫でる)


女:

―――ん…。


男:

―――さ、晩飯はお前の釣りの腕に掛かってんだ。しっかり頼む、ぜ…?


女:

―――ど、たの? (どうしたの?)


男:

―――いや、名前がねぇと不便だなと思ってよ。今まではお前が喋らなかったから、おいとかコラで済んでたが。


女:

―――ら、まえ…(名前)


男:

―――俺の名前は、なんてことはねぇ。平八(へいはち)ってんだ。言ってみろ。


女:

―――へーはひ


男:

―――へ・い・は・ち


女:

―――へー、は、ひ


男:

―――ぷっ…ま、いっか。お前の名前は?


女:

―――あ…


男:

―――いや待て!お前は俺が買ったんだ。俺が付ける!


女:

―――ん…


男:

―――ん~何にするか…。最初会った時は小汚かったから、「くま」なんてどうだ!「おくま」!


女:

―――やっ (やだ)


男:

―――じゃあ…最近はようやく健康的に肉も付いてきたから「おふく」は?


女:

―――やらっ (やだ)


男:

―――ばっか、お前決まんねーじゃねーか。


女:

―――むぅ (拗ねたように)


男:

―――じゃあアレだな。お前、前から花売りとすれ違うとジッと見てたろ?


…「おはな」、でどうだ。



女:

―――…っ!…ん!(嬉しそうに頷く)





(十分間を取って下さい)





【回想】


(↓以下の「あのこが欲しい」は歌わないで下さい。セリフとして言ってください。)


男:

あの日、狭い格子こうしの中には一人の女がいた。


―――あの子が欲しい。


人買いは、「旦那、本当に買うんですか、売れ残りですよ?」と念を押したが、俺の腰の刀に気付くと納得したようにこう言った。

「あぁ、お侍様でしたか。こいつぁ試し斬りには十分ですが、もちっと待って頂ければ上玉(じょうだま)もまた入りやすよ?」


俺は下種(げす)な人買いから目を反そらし、ジッと睨んでいる女に視線を戻した。

その瞳には、絶望と焦燥(しょうそう)と、

ほんの一縷(いちる)の光が宿っていた。



―――いや、あの娘(こ)が欲しい。







End.

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作者レイフロ

Twitter:@nana75927107

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【あとがき】

このページの一番上に画像貼ってありますが、僕の敬愛する台本師様、REN'sJackson様にファンアートを書いて頂きました…!

めっちゃかっこいいし、もう家宝です(´;ω;`)

とにかくすごいシリーズものを書かれている台本師様なので、ぜひ『千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜』をチェックしてみて下さい!

↓(リンクは小説家になろうに飛びます)