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猫が口を痛がる ~慢性口内炎~

2020.06.30 09:03

猫がよだれを流す、口を気にする、口が臭いなどの症状が見られたら口内炎にかかっているかもしれません。

猫には「慢性歯肉口内炎」という、特有の病気があります。

今回はこの病気の原因と対応方法について、詳しく説明していきます。


どのような病気か

猫特有の「慢性歯肉口内炎」と呼ばれる病気は、難治性で若い年齢(3~4歳頃)で発症することが多く、口の中が赤くただれたり、ひどい場合には潰瘍がみられ、出血したりします。

症状が出る場所や状態によって口内炎・歯肉炎・歯周病・破歯細胞性吸収病巣と呼ばれたりしますが、その判別をつけるのは難しく、併発することもあります。

 

それぞれの病気について、簡単にご説明します。


症状

私たち人間の場合は1ヶ所でも口内炎になれば、口の動きが悪くなり、常に痛くて憂鬱な気持ちになって、痛みでご飯を食べるのも億劫になります。これが口の中全体に及ぶ、血が出るほどの口内炎だと考えてみてください。猫の「慢性歯肉口内炎」は想像を絶する痛みだと思いませんか?

この病気の特徴的な症状として、ねばねばしたヨダレが出る、口の周りが汚れる、独特の口臭がするなどがあります。猫はそのような症状のために全身の毛づくろいが上手にできなくなり、毛ヅヤが悪く毛束ができたりします。さらにひどくなると、手首の辺りが汚れたりします(前足の先で口の汚れを取ろうとしますが、上手くできずにかえって手を汚してしまうからです)。

また、活発ではなくなり、口の痛みがひどいために触ろうとすると狂暴になることがあり、食欲不振になったり、ご飯を食べている最中にギャッ~っと急に声をあげたりすることもあります。食べ物が痛い場所に接触してしまい、痛さのあまりに叫ぶのです。重症の場合は、痛みに我慢できず食べることもできなくなり、痩せて衰弱し脱水症状になります。さらには水も受けつけず、唾液すら飲み込めなくなり、呼吸困難になることもあります。


原因

猫がなぜこのような「慢性難治性口内炎」になるのか、はっきりとした原因はまだ解明されていません。歯垢や歯石が付き、そこに付着して増殖していく細菌が関わっていることは間違いないと言えますが、『歯垢・歯石の付着=歯肉口内炎』とは言い切れません。そこで、他にもいくつか考えられる原因をご紹介します。

猫ウイルス性鼻気管炎<ヘルペスウイルス1型>や猫カリシウイルス感染症といった「ウイルスの感染」がひとつの原因と考えられています。実験で慢性歯肉口内炎に罹患した猫では、確かにこの2つのウイルス疾患を持っていることが多いというデータがありますが、だからといってウイルス感染=歯肉口内炎でもないようです。

また、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスの感染は直接的な原因にはなりませんが、免疫力・抵抗力・治癒力を低下させるため、歯肉口内炎が治りにくくなり、症状がひどくなるといった症状の経過に関与しているとも考えられています。

他には全身状態に伴って口内炎を引き起こす場合もあります。例えば、腎不全によって尿毒症になると、唾液中のアンモニア濃度が高くなり口腔内がただれ、口内炎になります。


検査方法

検査方法は簡単で、症状や口の中を直接観察することによって診断できます。また、細菌感染の程度やウイルス感染の有無、そして全身状態(腎機能など)をみるために血液検査を行います。


治療方法  

治療方法は色々とありますが、どれも対症療法(症状の原因となる疾患そのものを制御するのではなく、表面的な症状の消失あるいは緩和を主目的とする治療方法)でしかなく、残念ながら完治を望むのは難しいといえます。



以上の治療方法をいろいろ併用して行いますが、一番成果があるのは全抜歯です。全抜歯と聞いて可哀想だと思われるかもしれませんが、細菌が付着して増殖できる場所がなくなるので、抜歯治療の予後は良いとされています。

しかし、いずれの治療方法でも全身状態が悪かったり、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスの感染があると、治療効果は低いと言われています。


予防法はあるの?

普段から口の中をケアしてあげることが大切です。しかし、歯磨きをさせてくれる猫ちゃんはなかなかいないので、消毒液で洗浄したり、歯垢の付きにくいフードを与えるなどがおすすめです。動物病院でも処方食として歯垢の付きにくいフードは置いてあります。また、ドライフードは柔らかい缶詰フードよりも歯垢が付きにくいという説もあります。とにかく予防としては、細菌の塊である歯垢を付着させないということが大切です。


おわりに

人間にも猫にも厄介な病気の“口内炎”ですが、猫の場合は“ただの口内炎”というわけにはいかない大変な病気です。猫ちゃんの口の周りや口の中の様子が、いつもと違うと感じられたときには、いち早くかかりつけの動物病院まで相談にいきましょう。