美しさのまとい方 身長
「身長は遺伝で決まる」、「親の背が高いから子どもも大きい」と聞いたことがある人も多いはずだ。医学的にみてこれは果たして本当なのであろうか。
【身長は遺伝で決まるとは言いきれない】
そもそも遺伝はどのくらい身長に影響するものだろうか。身長が決まるのは遺伝が約80%、環境因子が約20%である。80%ということは、やはり遺伝要素が強いということなのだろうか。
それは違う。睡眠、運動、食事、ストレスなどの環境因子による身長への影響範囲をすべて足すと、男子はプラスマイナス9センチ、女子はプラスマイナス8センチの差が出ることが研究でわかっている。遺伝以外の要素は20%しかないが、生活習慣などの環境を整えることで10センチ近く身長を伸ばせる可能性があるのだ。但し“少年期の”という但し書き付きである。
【身長は9歳までの生活習慣で決まる】
0歳~4歳までの幼年期にとっては、栄養状態が身長を伸ばす要因になる。脳が発達してくる少年期(5歳~14歳)に入ると、背を伸ばすために重要なのが、睡眠中に分泌される成長ホルモンである。
しかし、思春期をむかえると成長を促進する要素は成長ホルモンよりも、主に男子では男性ホルモン(テストステロン)、女子では女性ホルモン(エストロゲン)になる。
今の日本人は思春期をむかえるのが、平均で男子が12歳、女性が10歳であり、そこから思春期が終るまでに男子プラス25センチ~30センチ、女子はプラス25センチほど伸びるのが一般的である。それ以上大幅に伸びる可能性はほとんどない。つまり、思春期が来ると最終身長はだいたい決まってしまうとされている。
思春期を過ぎると成長が止まるのは、骨が大人の骨になってしまうためである。子どもの骨を大人の骨にするホルモンは、男子も女子も女性ホルモンであることがわかっている。女子の方が思春期が早く始まり、思春期の伸びも小さく、早く大人の骨になってしまうため、男子より低い成人身長になる。思春期は性ホルモンの働きで急激な伸びがあると同時に背を止めるメカニズムも働くため、一定時期たつと成長が止まってしまう。そのため思春期に入る前に十分伸ばしておかないと、成人身長が低く終わることになる。
【寝る子は育つ】
生活習慣の中でいちばん大切なのは、睡眠を取ることである。骨や骨を支える筋肉をつくる成長ホルモンは睡眠中に分泌される。そのため寝ているときにしか骨は成長せず、背は伸びない。たとえ骨折しても、起きているときは骨は回復せず、寝ているときにしか修復されない。
睡眠は量と深さが重要で、この二つが揃わないと身長は伸びない。
子どもの成長にあわせた睡眠時間の目安は下記のとおりである。
・1歳~3歳ごろ 12時間~14時間
・4歳~6歳ごろ 10時間~13時間
・7歳~12歳ごろ 10時間~11時間
・13歳~18歳 8時間~9時間
睡眠は浅い眠りの「レム睡眠」と、脳が完全にお休みする深い眠りの「ノンレム睡眠」がある。寝始めてから約2時間後にいちばん深い「ノンレム睡眠」が来る。このとき成長ホルモンはもっとも分泌される。身長を伸ばすためには、就寝後最初に訪れる「ノンレム睡眠」が深い睡眠であることが大切といえる。
子どもだけに限らずヒトは幸せでなければ、深い眠りに導入されないことは医学データでわかっている。明るい心を持って日中の時間を過ごすことが重要である。特に運動はストレスの発散になったり、程よい疲労感が熟睡につながるといわれている。運動は継続することが大切なため、本人が好きで楽しめる運動がよい。
成長ホルモンは少量ではあるが、運動した後にも分泌される。しかしこの運動をすれば背が伸びるとった医学的根拠はない。
ちなみに、顔の輪郭、首や手脚の伸びやかさといった骨格は遺伝が発現する確率は五分五分といわれている。骨格的な成長は、身長よりも基本的な生活がより一層影響する。親の心がけと本人の意志で、卵型の輪郭、優雅な首元、まっすぐな手脚に成長させることもできる。
骨や骨を支える筋肉を成長させるには、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠、健康的な生活をおろそかにしないことが大切である。
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