九字護身法
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「九字護身法」とは?陰陽師の使う九字切りの意味や方法、種類について解説!
九字護身法とは「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」に代表される、九字の呪文と九つの印を用いた作法です。特に陰陽師が場を清めたり邪気を祓ったり、精神を統一させたりする時に九字護身法を使います。九字の種類や込められた意味、そして九字護身法のやり方について解説します。
九字護身法とは九つの呪文と印で浄化や護身の際に用いる作法。もともとは中国の道教思想から陰陽師が使用することで有名。代表的な九字は「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」「早九字護身法」と「切紙九字護身法」の2種類がある
九字護身法とは、九つの印と九種類の呪文を唱えて場を清め、邪気を祓うための護身術です。
陰陽師が使う術としてのイメージが強いですが、もともとは中国の道教思想が起源で『抱朴子(ほうぼくし)』という仙人になるための書に、山へ修行に籠る際の魔除けの呪文として「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前(りん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)」と記されています。
そして、密教「大日経」の実践法である「胎蔵界法」での護身法と道教思想等が絡み合い、日本独自の作法として確立しました。
九字「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」
九字護身法
九字の呪文の「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」は、「臨める兵、闘う者、皆陣をはり列をつくって、前に在り」と読み下します。
これは、「我々の味方をする神々の軍隊が前方に列を作っていらっしゃる」という意味となります。
なぜ「九」字なのか
陰陽道において「九」は「最強の数字」とされています。
古代中国では「九星」という民間信仰があります。陰陽道ではその九星に、五行(木・火・火・土・金・水)、十干、十二支、八卦を割り当てて、吉兆を占うために活用します。また、五行説も「洪範九疇(こうはんきゅうちゅう)」という九つの大原則のうちの一つです。
四 ・九・ 二
三・ 五 ・七
八 ・一 ・六
3マス×3マスの九星の表。
縦・横・斜めそれぞれの和が15とななるように配置されています。このため、九という数字は「無限」を象徴しているといえるでしょう。
そして「九」は永久の「久」とも通じ、漢字一文字で表すことのできる最大の奇数であることからも吉数字とされていました。
九字の呪文の種類
九字護身法の際に唱える九つの呪文には様々なバージョンがあります。有名なものをみていきましょう。
・「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」
(りん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)
こちらが最もオーソドックスになります。「烈」は列・烈とも表記します。
・「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女」
(せいりゅう・びゃっこ・すざく・げんぶ・こうちん・ていたい・ぶんおう・さんたい・ぎょくにょ)
陰陽道においては、四神や星人等をあてはめたこちらのバージョンも好んで使われていました。
ほかに、「天・元・行・躰・神・変・神・通・力」(てん・げん・ぎょう・たい・しん・ぺん・じん・つう・りき)、「朱雀・玄武・白虎・勾陣(陳)・帝久(帝公、帝正、帝台、帝后、帝禹)・文王・三台・玉女・青龍」など。
龍神のアマちゃん
九字の最後にもう一字加えて「十字の法」とするバージョンもあるんや。十字にすることで、九字の及ぶ効果を一つに絞り、その分、術をパワーアップさせてたらしいで。
加える一字の代表的なものに「破・命 ・水・王 ・合 ・行 ・勝 ・天 ・鬼 」が挙げられるで。
九字護身法の方法・種類
九字護身法の方法は2種類あります。
早九字護身法:手でつくった刀で素早く九字を切る方法。「破邪の法」ともいう。
切紙九字護身法:両手で一つひとつ印を結ぶ方法。「剣印の法」ともいう。
それではそれぞれの護身法のやり方を詳しくみていきましょう。
安倍晴明
早九字・切紙九字のどちらか一方の護身法でも効果がありますよ。スピーディなのは早九字護身法です。
ただし、「早九字+切紙九字」だとより強力な効果が期待できるのです!
早九字護身法のやり方
九字切りの刀印
刀印:右手の人差し指と中指を真っ直ぐに立て、小指と薬指は内にして親指で押さえる。
この手刀で九字を切る方法が早九字護身法です。
九字を切る前は左手を丸めて「鞘」に見立て、そこに右手の手刀をおさめておきます。
刀印にした右手の「手刀」を左手の「鞘」におさめて準備ができたら、精神統一し、素早く空中に九字を格子状に切っていきます。
九字切り
<空中での九字の切り方の順序>
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」(りん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)の掛け声とともに、空中にネットをはるイメージで、横→縦→横…と、四縦五横の格子状に切っていきます。
格子状であることで、鬼や怨霊などの「魔」が入る隙がないとされているのです。
九字を切り終えたら、手刀を鞘におさめ「オン キリキャラ ハラハラ フタラン バソツ ソワカ」と3回唱えて九字の印を解除しましょう。
切紙九字護身法のやり方
九字護身法の印
「切紙九字護身法」は両手を使った形を九つ変えていくことで、それぞれの印を表す方法です。
手の印は「契印」と呼ばれます。契印の形は流派によって少しずつ異なってきます。
九字 印 手の結び方
① 臨 独鈷印 左右の手を組み、人指し指を立て合わせる
② 兵 大金剛輪印 「臨」の形のまま、中指を人指し指の上に交差させる。親指は解いて並べ立てる
③ 闘 外獅子印 左右互いに中指・人差し指をからませて伏せ、残りの指(親指・薬指、小指を立てる)
④ 者 内獅子印 左右中指で互いの薬指をからめ残りの指を立て合わす
⑤ 皆 外縛 全て指を組み合わせる。右親指が外側
⑥ 陣 内縛 内側に(爪が手の平側にくるように)全ての指を組み合わせる
⑦ 烈 智拳印 左の四指を握り、人差し指のみを立てて右手で掌握する
⑧ 在 日輪印 左右の親指・人指し指先を軽くつけて日輪のようにする。残りの四指は光輪のように開く。日光印ともいう
⑨ 前 隠形印 左の手を軽く握り、右の手を上から包む。宝瓶印ともいう
※印の読み方・・・
独鈷印(どっこいん)、大金剛印(だいこんごういん)、外獅子印(そとじしいん)、内獅子印(うちじしいん)、外縛印(げばくいん)、内縛印(ないばくいん)、知擧印(ちけんいん)、日輪印(にちりんいん)、隠形印(おんぎょうのいん)
最後に「オン キリキャラ ハラハラ フタラン バソツ ソワカ」と3回唱えて印を解除しましょう。
九字の印が示す仏神
九字は民間信仰や宗教が合わさったものであるため、九字の印それぞれに仏や神をあてることもあります。
九字の印と結びついている神仏は次の表の通りです。
「胎蔵界五仏」
九字 仏 神
臨・ 毘沙門天・ 天照皇大神
兵・ 十一面観音 ・八幡神
闘 ・如意輪観音 ・春日大明神
者・ 不動明王・ 加茂大明神
皆 ・愛染明王 ・稲荷大明神
陣・ 聖観音・ 住吉大明神
烈・ 阿弥陀如来 ・丹生大明神
在・ 弥勒菩薩・ 日天子
前 ・文殊菩薩・ 摩利支天
九字護身法で期待できる効果3つ
日常生活の中に九字護身法を取り入れることで期待できる効果を3つご紹介します。
その場の邪気を祓う
九字護身法を行うことで邪気を祓え、その場の空気を清浄なものにできるでしょう。
なんとなく不安に感じる場所や空間に向かって九字を切ると、澱んでいた空気が一新されるかもしれません。
悪縁を断ち切る
人間関係に疲弊してしまっているときは、誰かの邪(よこしま)な気持ちが渦巻いている場合が多いです。相手の心に「鬼」が棲みついているかもしれませんし、あなたの心に「鬼」がいるのかもしれません。
このまま付き合ってもお互い疲れるだけなのに、ずるずると連絡をとっている場合などは九字護身法を行ってみましょう。人の心に棲まう鬼が退散し、新しい人付き合いへの前進が期待できます。
ネガティブエネルギーを断ち切る
ネガティブな気持ちが続くと、楽しめるはずのことも楽しめず、また、人に気を遣わせてしまって余計に心苦しくなるなど、負の連鎖が続いてしまいます。もしかしたら悪霊が憑いているのかもしれませんし、また、呼び寄せやすくなっている状態ですので、九字護身法を行って心身を浄化してみてください。
不安や焦燥感がリセットされて、清々しい気持ちになれるのではないでしょうか。
安倍晴明
目に見えるもの、見えないものどちらにも「邪悪なもの」は存在します。
九字護身法で心身を浄化させると、心が軽くなるかもですね!
まとめ
陰陽師が場を清めたり精神を統一させたりする際に九字護身法は用いられてきました。
九字護身法は道教や密教といった様々な宗教や信仰が複雑に絡み合っており、仏や神の名と九字の印は切っても切れない関係があります。
九字護身法には人知を超えた強力なパワーがあるといえるかもしれません。