すももの未来/大塚智穂
アチャールとはインドやネパールで食ベられている漬物のことを指す。
私はネパールが好きで、過去3回訪れている。空気感、人、食事、行くとなぜだかホッとする、それが私の感じるネパール。最後に行ったのが2012年だから、今は随分と変わってしまっただろうなぁ。機会があったらぜひ訪れて欲しい国、ネパール。私を虜にしたネパールの日常の食事は「ダルバートタルカリ」という定食が基本。直訳すると『豆スープ、ご飯、おかず』となります。ネパールでは日本と同じで白いご飯が主食。もちろんそれ以外にも色々あるのですが、基本は白米。大きなお皿には、日本昔話を連想させるような山盛りご飯に優しい豆のスープ、野菜のおかず、アチャール(お漬物)がのる。ちょっと豪華だとお肉やお魚のおかずが乗っていたりする。それを混ぜこぜにして手で上手にすくって口に放り込む。優しい豆のスープが馴染んだ白ごはんに野菜のおかず、ピリリと辛く塩辛いアチャールがたまらない。このアチャールが本当に良い仕事をしていて、ダルバートにはアチャールがないと物足りない。アチャールにはいろんな種類の物があって、私が現地のアチャール屋さんで試食させてもらったアチャールの中でも「おお、これはウマイ!」と印象に残っているのが、スパイシーな梅干しのようなアチャール。梅ではないけれど、梅のように種があり酸味があり、それでいてスパイシーなアチャールだった。島で住むようになり、沢山の食材を手にするようになってから「あ、これでアチャールしてみたいな…」と思ったはずだったのに、忘れてしまっていた果物がある。
小豆島は梅雨の前の本当に短い期間に大量の「すもも」が出回る。産直などで売られているものはもちろん、人からもらうことも多い。それもビニール袋いっぱいのすももだ。昔からよく見る真っ赤なすももは、実はあまいけれど皮に酸味があって、食ベ進めていくうちに皮の苦味もあったりして、実はあまり得意ではなかった。が、容赦なく我が家にやってくる大量のすももたちは、シロップやジャムに化けていった。
今年は友人が無農薬のすももを扱っていることがわかり、急に「あ、アチャールやってみよ!」と、無理を言ってまだ青いすももを用意してもらうことにした。無農薬すもも1キロ400円。同じタイミングで赤いすももも1キロ購入した。
今回は実験なので、青いすももの半分は半割にして塩に漬けた。残りは丸のまま塩に漬けて重しをかける。半割のはすぐに水が上がってきた。しばらく置いておくとシュワッと発酵しているのが見て取れた。よしよし。赤いすももは全部半割にしてオーブンでセミドライに。双方準備が揃ったところで、菜種油にスパイスやにんにく、生姜をいれテンパリングし、赤唐辛子と塩も足し、準備したすももと和えてビンに詰める。具材が空気に触れないように油で蓋がされているかもチェックし、置いておく。翌日早速味見してみた。
控えめに言って、旨い。成功だった。分量など適当だし、なんとなくでやってみたけれど、美味しければなんでもいい。これが正解だ。気を良くして、ご近所さんにいただいた小振りのすもも迷わず半割にしてセミドライ、アチャールに変身させる。
青いすももは半割りにしてお塩をふる。
赤いすもも。
時々摘み食いしながら半割りに。
並べてオーブンでセミドライに。
いい具合。これをお砂糖をまぶしてしばらく置いておくと、お菓子にも使える。
水気を切った塩漬けした青いすももに、追い塩、スパイス、唐辛子。
スパイス&ニンニク、生姜を菜種油でテンパリングし、和えて瓶詰に。
こちらはセミドライの方。
翌日開封しちょっと味見。
青いすももの方。セミドライとは全く違うけれど、どちらも良い!
雨が続くとすももは割れてしまうので、今年のすももは終わりを迎え、すももアチャールに目覚めた今「なぜこの時期に実をつけた?!」と思わなくもないが、来年からは迷いなく、赤いすももは片っ端からアチャールに変身させる予定である。
大塚智穂
2012年5月、夫と共に小豆島生活をスタート。ごはんやおやつを作ること、人に食べてもらうことが好き。夫、ナミちゃん(5歳の愛犬)、ちびすけ(2歳男の子)の3人と1匹暮らし。