ショートショート 1231~1240
1231.君の部屋には大量の洗濯物が干されていた。空の容器がそこら中に転がり、柔軟剤の香りが満ちる。進むと洗濯物は定規や彗星、万物へ変わり「いらっしゃい」君がたらいの中で地球を洗っていた。側には真白な月が置いてある。一段落した君と外へ出ると大雨は止んでおり、世界は少しウタマロの匂いがした。
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1232.1.全ての始まり2.春の星図3.夏の最果て4.秋の暗闇5.冬の詩人は一休み6.月の裏側を念写して7.今こそ夢をばらまこう8.鍵を無くした僕達は9.忘れられた森の中10.毛のない羊の夢を見る11.永遠の匿名者へ12.君は13.迷子にだって14.なれるから15.神様が隠した16.出口を探して17.頼んだよ18.全てはふりだしに戻る
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1233.海の成分を書くと文字達から波が聞こえた。泡沫の弾ける音、鼓動、陽の瞬く熱。全てが永遠で、儚い。息の仕方を忘れた頃、ドポンと何処かで音がした。誰もいない部屋にてノートが捲れる。ナトリウム、マグネシウムと最後の行には何かが書いてあったのだが、水に濡れて読む事はもう叶わなかった。
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1234.私達は舟に乗っていた。月明かり色をした砂漠を、一つの生き物の様に。白い舟にて君は眠る。或いは棺桶だった。海を忘れた珊瑚の森を、時計達が沈む湖を、地に落ちた月の隣を過ぎる。空では星座の無い星達が輝いて、君が世界を壊してからもう何年経っただろうか。せめて今日は、君と踊る夢を見よう。
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1235.月を攫った大蛸が、翌日凍死で見つかった
海の暗闇に耐えられなかったとの噂
月に向った紫蛾が、翌日琥珀で見つかった
美しい物が欲しかったとの噂
月を失った人間が、翌日狂死で見つかった
夜の神様を見てしまったとの噂
月を愛した古猫は、行方不明で見つからない
月への行き方を発見したとの噂
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1236.暗闇に海月が青白く漂う部屋。それは最果てにも似ていた。『おはようございます、只今の座標は…』一人目覚めた私は無機質な廊下を通り、キッチンへ入る。不治の病を患う私は未来を託す為この宇宙船にて宇宙を彷徨っており、きっともう、地球は同じ顔の他人なのだろう。窓の外では冥王星が美しかった。
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1237.星座占いにて最下位の私は今日死ぬらしかった。君は私の手を握り運命から逃亡する。背後ではビルの崩壊やトラックの衝突、隕石落下で同じ星座の人達が死んでいく。なんとか運命切替列車に乗った瞬間地面が割れ、私はプラットホームに君を突き飛ばす。ざまあみろ、運命に立てた中指が君を残して冷めていく。
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1238.星座占いで最下位の君は今日死ぬらしく、私は君を連れ運命から逃亡した。背後ではビルの崩壊やトラックの衝突、地面陥没で同じ星座の人達が死んでいく。何とか発射寸前の運命乗換列車に踏み込んだ瞬間巨大隕石が頭上を照らし、私は君を車内へ突き飛ばした。ざまあみろ、背後では午前零時のベルが鳴る。
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1239.夜を抜け出した君を探しに砂漠を巡る。月明だけを残して月は見当たらず、子供の頃約束した秘密のオアシスへ行くと君が月を抱え眠っていた。「永遠が欲しかったんだ」と君が静かに涙を零す。裁く人がいない世界で犯した罪は果たして罪と言えるのだろうか。ここで眠る私達の事を、きっと神様も知らない。
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1240.AIが作った「存在しない人達の顔」の中に両親、妹、友人、そして自分の顔があった。驚いて鏡を覗くと今まで見ていた自分の顔と何処か分からないが完全に変わっており、目を離した途端私だった顔は数百の顔の中に見失ってしまった。