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うつ病と闘った3年間の日々からの贈り物

2022.11.19 13:29

https://ameblo.jp/yurimorita9/entry-12610153812.html?fbclid=IwAR3xPiafpDaJYsUVm1Z-HYr9TmpRpDZx3eKDEAaMSHGQb3aKlMYTxCPZtVo  【うつ病と闘った3年間の日々からの贈り物 】2020-07-10   より

認知行動療法(CBT)では無理とわかっているのに、ハワイ島コナの診療所の誠実な心理士におつきあいして、CBTのワークシートを何枚もやったために、私のうつ病はかなり悪化した。

日本で今ようやくポピュラーになった認知行動療法は、60年前の1960年代にペンシルベニア大学の精神科医アーロン・ベック博士が、うつ病と不安障害の治療法として確立した。そのベック博士の元で学んで日本に認知療法を導入した大野祐医師の「うつを生かす〜うつ病の認知療法〜」(星和書店1990年)という本は、うつになるずっと前に読んだことがあった。本のトビラにはこうある。

「『ものの見方や考え方』を変えて現実的、客観的に問題に対処している時に役立つのが認知療法である。「うつ」や「不安」に極めて効果的である。ある思い込みのために苦しんでいる時、その思い込みから距離をおき、現実的に問題を考え解決していける自分を作り出すための治療法である。」

しかし、うつは思い込みで苦しんでいる病気ではない。マインドの病ではないのだから、考え方を変えようと頑張って、ワークシートをいくらやっても変化は起きない。ベック博士が60年前に理解していたうつ病の苦しみの本質査定が違うのだと思う。

「うつ病とは硬直した考え方にとらわれてしまい、自分を否定し嫌悪して身動きできなくなる病だ」と大野氏の本は説く。だから考え方を変える認知療法が効果を発揮するという。私は何度でも言いたい。うつは考え方の歪みの病ではない。

とりあえず言語化してみるならば、思考と感情と身体と精神性の輪を繋いでホーリスティックな自分という個を維持している絆のたがが、なんらかの脳神経誤作動が起きてはずれてしまった状態のことだ。

 

「本当にうつが治ったマニュアル」(廣済堂出版2009年)の著者・医学博士の高田明和氏は、ご自身がうつになり、その体験からこの本を書かれた。

 この本では「うつ病は愛の喪失による絶望感からくる病だ」と定義し「うつ病になると愛することも、愛を受け取ることもできなくなります。そうなると心の安らぎは失われ、心が裸のままで寒風にさらけ出されるような感じになるのです。ある種の薬や心理療法は愛する力、愛される力を取り戻させてくれるから効果を示すのです。」

確かに「心が裸のままで寒風にさらけ出されるような感じ」という表現はまとを得ている気がするが、私が経験したうつ病は、愛の喪失というよりは、あらゆる感じる心=感情の完全喪失だった。

2011年3月11日、東北北陸海岸で津波に流される人々の様子をテレビで見ながら、心がピクリとも動かない苦しみだ。恐怖も感じなければ、悲しみも感じない。もちろん喜びも。

感情がなくなってしまうことの辛さと絶望は、多くの人には理解してもらえないと思う。それがどんな苦しみか、経験したことのない人に想像ができるだろうか。

その苦しみをあえて言葉にするなら、まさに感情と行動と思考が全部バラバラな方向に向かって走り出し、自分が八つ裂き状態に壊れるような生々しい堪え難さだ。

ご存知かもしれないが、欧米では認知行動療法はもはやそれだけでは効果が高い心理療法と見なされていない。

2012 年にスウエーデン政府はうつ病と不安障害の治療のために約81億円の予算を投じて心理療法家に一律CBTトレーニングを提供した。その3年後、スウエーデン国家監査局がCBT実践の効果を調査したところ、以下のことが明らかになった。

1、うつと不安障害の治療に、CBTは全く効果がなかった。

2、うつと不安障害の治療に、CBTがその症状を悪化させるケースもあった。

3、4分の一の治験者がCBTプログラムを途中でやめてしまった。

この報告はアメリカでは一時話題になった。が広がってはいないようだ。全くの推測だけれど、保険会社がそのニュースを最小限に止めるか、ブロックしたのかもしれない。アメリカの健康保険会社はその巨大なビジネス力でなんでもできる権威だから。

認知行動療法は数量的効果調査をしやすいので、エビデンスが出しやすく、保険会社にとっては、好都合の治療法なので、今も保険の効く療法として使われ続けている。

臨床家が CBT以外の身体志向のソマティックなアプローチの療法を用いたくても、保険会社がOKを出さないという苦労話は、米国の友人知人のセラピストがよくこぼしているのを耳にする。

私はアメリカの80年代はじめの大学院クラスが認知行動療法ばかりなので、心底がっかりして、専攻を心理学から宗教現象学に変えてしまったほどに、CBTの西欧合理性思考が肌に合わなかった。

それでも90年代の中頃から、性的虐待のトラウマを抱える人の心理療法や子どもを虐待してしまう親のグループ療法に携わってきて、リフレーミングなどの認知療法的なツールは部分的には活用してきた。

またCPT(認知プロセシング療法)は単回の性暴力被害を受けた人のセラピーには効果が早いことを経験してきた。このセラピーだけで、性被害からのトラウマがきれいになくなり、何年も続けてきた自傷が止まった人もいた。ただ、加害者が身近な人だったり、ポリビクティム(多重被害)のクライアントには、CPTだけでは回復に至らないことも経験してきた。コアビリーフが何度も複雑に傷つけられている場合はCPTやそのほかのCBTでは治らない。

そのような人たちには、大学院の外で催眠療法の資格の一部として学んだ内的家族の人格セラピーが最も効果があり、過去30年間使い続けている療法である。インナーファミリーの人格たちとのコミュニケーションを進め、ときには家族えん会議もする。DIDやOSDDの複雑にして多数の人格(時には50人を超す)とのセラピーにおいても有効な方法だ。

1995年にリチャード・シュルツが発表した内的家族システム療法(IFS)は、80年代から私が使ってきた方法と基本はほぼ同じで、トラウマによってバラバラに分離されてしまったパーツの相互の関係性をファシリテーションし、特に沈黙させられてきたパーツに表現の機会を与え、パーツ同士の協同関係を形成していくものだ。

話をハワイ島に戻そう。認知行動療法で痛い目にあったので、今度は身体志向のソマティックなアプローチをとるセラピストを探そうと、ネットに行った。

B氏はMFCC(Marriage and Family Child Counseling 夫婦・子ども・家族カウンセリング)の資格を持つカウンセラーで、WEB上の情報では、笑いをうつ病治療に取り入れているとのことだった。フェスティバルやイベントに出かけて行って、クラウンを演じて人々を笑わせる活動もしていた。

40歳代の男性カウンセラーで、60分のセッションの後半で彼はもっぱらトランポリン療法について語った。

トランポリンの上下運動は、内耳にある三半規管(バランス平行感覚)の機能を活性化し、脳全体の調整機能を高めるのに効果があると。

直径1メートルほどのトランポリンで5分も飛び続けると結構疲れる。

これを毎日やりましょう。自然治癒力誘発リハビリ療法だという。

確かにソマティックだし、認知行動療法のワークシートを何枚もやるよりは効果がありそうだ。

「毎日やるってことは、自宅にトランポリンがないと。」

「そうですよ。私はハワイ島の唯一の委託販売者ですから私から買ってください。一台450ドルです。」

心理療法も最後はそこか。安くはない物販。なんだか興ざめで嫌になってしまった。