絶対分かる5Gの仕組み
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01329/060500004/ 【「真の5G」に欠かせないコアネットワークの正体】高橋 健太郎 日経クロステック/日経NETWORK2020.06.18
携帯大手が5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスを開始した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に加え、当初はエリア展開や対応端末が限られていることから、人々の関心はそれほど高まっていない。しかし、5Gは今後10年にわたり、モバイル通信の主役となる存在であることに違いはなく、その重要性は変わらない。5Gはこれまでのモバイル通信技術と何が違うのか、徹底解説する。
新しい移動通信システムでは、無線アクセスの技術に目が行きがちだが、コアネットワークも極めて重要だ。今回は、5Gのコアネットワークを中心に、5Gのアーキテクチャーの全体像に迫る。
5GCの本格導入は2021年度
5Gのコアネットワークは「5GC」と呼ばれる。5GCの導入によりコアネットワークはどのように発展していくのだろうか。
4GではLTEの基地局「eNB」をLTEのコアネットワーク「EPC」が束ねる構成になっている。
5Gのコアネットワークの導入シナリオ
5Gの商用サービスでは当初、通信制御には既存LTEのEPCを使い、一部の基地局で5G対応を進める。この形態を「NSA」という。5Gの基地局を「gNB」、無線アクセスネットワークを「NR(New Radio)」と呼ぶ。NSAでは、データのやりとりには高速なgNBを使い、制御信号のやりとりにはeNB使う形になる。
gNBの制御信号をやりとりするためのeNBは「アンカー」(いかりという意味)、使われる周波数帯を「アンカーバンド」という。アンカーバンドには既存LTEの低い周波数の電波を使うため、制御信号を確実にやりとりできるメリットがある。
そして最終的には、コアネットワークに5GCを導入し、gNBを直接つないで制御する形になる。この形態は「SA」と呼ばれる。高速・大容量通信はNSAで導入できるが、低遅延・高信頼性や同時多数接続、さらには5Gのならではのネットワーク機能の実現には5GCの導入が必須となる。つまり5GとgNBの組み合わせによるSAにより「真の5G」が実現されるといえる。
5GCの導入時期について、2020年4月30日時点でKDDIとソフトバンクは2021年度中を予定している。NTTドコモは検討中としている。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01329/060500003/ 【どう使い分ける?5Gの周波数帯を完全図解】高橋 健太郎 日経クロステック/日経NETWORK 2020.06.17
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携帯大手が5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスを開始した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に加え、当初はエリア展開や対応端末が限られていることから、人々の関心はそれほど高まっていない。しかし、5Gは今後10年にわたり、モバイル通信の主役となる存在であることに違いはなく、その重要性は変わらない。5Gはこれまでのモバイル通信技術と何が違うのか、徹底解説する。
5Gの無線アクセスにおいて、利用する周波数は重要なテーマの1つだ。今回は、5Gの周波数に焦点を当てる。
国内事業者の周波数割り当て
日本国内では、5G向けの周波数として、Sub6帯の3.7GHz帯と4.5GHz帯、ミリ波帯の28GHz帯が使われる。総務省は2019年4月に、これらの周波数は携帯電話大手3社と新規参入の楽天モバイルに割り当てた。
Sub6帯は、1枠100MHz幅ごとに割り当てられる。NTTドコモは3.7GHz帯と4.5GHz帯が1枠ずつ、KDDIは3.7GHz帯の2枠が割り当てられている。ソフトバンクと楽天モバイルは、それぞれ3.7GHz帯が1枠ずつとなっている。ミリ波帯は、1枠400MHz幅での割り当てとなる。4社に1枠ずつ割り当てられた。
自営で構築するローカル5G
これらの周波数は、携帯電話事業者が全国的に提供する5Gの携帯電話サービスに使われる。このほか、「ローカル5G」向けの周波数がある。ローカル5Gとは、企業や自治体が限られた範囲で利用するために構築する自営の5Gネットワークである。LTEにも、自営のネットワークである「プライベートLTE」がある。これの5G版といえるだろう。
国内でローカル5G用の周波数として検討が進められているのが、4.7GHz帯(4.6G~4.8GHz)と28GHz帯(28.2G~29.1GHz)の2つ。4.7GHz帯は防衛省の公共業務用システムと、28GHz帯は固定衛星システムと共用することになるため、共用条件などの調整が必要となる。
このうち、28GHz帯に含まれる28.2G~28.3GHzの100MHz幅については検討が完了し、利用できることが決まった。2019年末から免許申請の受け付けが始まっている。
将来の5G向け追加帯域候補
5G向けの周波数帯域の拡大に向け、国際電気通信連合(ITU)の2019年世界無線通信会議(WRC-19)が2019年10~11月に開催された。WRCは3~4年ごとに開かれる会議で、国際的な周波数分配などを各国間で調整する場である。
WRC-19では、5Gに使えるIMT向けの追加の周波数として、グローバルの周波数と一部の国・地域を対象とした周波数について合意された。IMTとは、ITUにおける国際的なブロードバンド移動通信システムの総称。ITUでは、3Gを「IMT-2000」、4Gを「IMT-Advanced」、5Gを「IMT-2020」と呼んでいる。
日本国内で使える周波数としては、24.25G~27.5GHz、37G~43.5GHz、47.2G~48.2GHz、66G~71GHzの合計15.75GHz幅の周波数が合意された。現在国内で割り当てられている約2GHz幅に、約8倍もの帯域幅が追加される。2020年代半ばまでに、まずは43.5GHz以下の周波数を割り当てる方向で検討が進んでいるという。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01329/060500002/ 【超高速で超低遅延の5G、その本当の理由】高橋 健太郎 日経クロステック/日経NETWORK 2020.06.16
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携帯大手が5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスを開始した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に加え、当初はエリア展開や対応端末が限られていることから、人々の関心はそれほど高まっていない。しかし、5Gは今後10年にわたり、モバイル通信の主役となる存在であることに違いはなく、その重要性は変わらない。5Gはこれまでのモバイル通信技術と何が違うのか、徹底解説する。
5Gの最大の特徴は、4Gに比べて大幅に通信速度を高めたこと。今回は、高速化を中心に5Gの無線アクセスネットワークの進化を取り上げる。
帯域幅を最大20倍に拡大
5Gの通信速度はいくつかの工夫によって高められている。その中で最も貢献しているのは、1チャネル当たりの周波数帯域幅(チャネル帯域幅)を大きく広げたことだ。
4Gのチャネル帯域幅は最大で20MHz。これに対し5Gの周波数帯域幅は、「Sub6帯」と呼ばれる6GHz以下の周波数帯では最大100MHz、ミリ波帯の28GHz帯では最大400MHzである。ミリ波帯で見ると、5Gは4Gに比べ20倍もの周波数帯域幅を使えることになる。
4Gと5Gの無線仕様の比較
エリクソンや3GPPの資料に基づき本誌が作成
[画像のクリックで拡大表示]
高周波数帯による広帯域化で通信を高速に
では、なぜ5Gではこのような広い帯域幅が利用できるのか。それは、これまで移動通信に不向きとされてきた高い周波数帯域を使うからだ。
現在、日本国内でLTE向けに使われている周波数帯は、プラチナバンドと呼ばれる700MHz帯/800MHz帯/900MHz帯に加え、1.5GHz帯、1.7GHz帯、2.0GHz帯、3.5GHz帯。
これに対し、国内で現在5G向けに割り当てられているのは、Sub6帯では3.7GHz帯と4.5GHz帯、ミリ波帯では28GHzである。厳密には5G向けの28GHz帯はミリ波帯から外れているが、一般にはミリ波帯に属するとみなされている。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01329/060500001/ 【すごいはずの5G、すごく見えないのはなぜ?】高橋 健太郎 日経クロステック/日経NETWORK 2020.06.15
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携帯大手が5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスを開始した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に加え、当初はエリア展開や対応端末が限られていることから、人々の関心はそれほど高まっていない。しかし、5Gは今後10年にわたり、モバイル通信の主役となる存在であることに違いはなく、その重要性は変わらない。5Gはこれまでのモバイル通信技術と何が違うのか、徹底解説する。
NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手3社は、2020年3月に5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスを開始した。現在主流の携帯電話サービスは4G(第4世代移動通信システム)だが、5Gはその次世代という位置付けになる。
海外では2019年に5Gの商用サービスを始めた携帯電話事業者があるが、国内では2020年が「5G元年」といえる。
携帯大手が2020年のサービスインを目指して注力してきた理由の1つは、同年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックを最大のショーケースとして見込んでいたからだ。だが、新型コロナウイルスの影響で2021年に延期された。
5Gは「DXの時代」
携帯電話サービスを支える移動通信システムは、約10年ごとに新しい世代が登場してきた。5Gはその5世代目ということになる。
最初の1G(第1世代移動通信システム)のサービスが始まったのは約40年前の1979年。用途は通話のみで、音声をアナログ変調で送る単純なものだった。
1993年には2Gのサービスが開始された。デジタル技術を取り入れ、音声の符号化・圧縮によりユーザーの急増に対応した。さらに短い文章をやりとりするショートメッセージサービス(SMS)や、「iモード」「EZweb」「J-SKY」といった携帯電話事業者独自のパケット通信サービスも始まった。
その次の世代は2001年に開始された3Gサービスである。携帯電話で写真や低解像度の動画を扱えるようになった。さらに携帯電話事業者のパケット通信サービスを経由せずに、直接インターネットに接続できるようになった。
そして現在主流の4Gは2010年に始まった。スマートフォンが登場し、高解像度の動画やモバイルアプリを利用する本格的なマルチメディア時代を迎えた。
では5Gを象徴する言葉は何だろうか。5G向けネットワーク機器を手掛けるスウェーデンのエリクソンなどは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を挙げる。
DXは、一般にITによる企業の変革とされているが、もともとITで社会や人々の生活を良いものにするという広い意味がある。4Gまでの移動通信技術は、基本的にユーザー同士のコミュニケーションに使われてきた。
これに対し、5Gは産業や社会インフラの幅広い分野で使われることを念頭に仕様が決められている。例えば、産業用IoTによる工場のデジタル化や自動車の自動運転といった用途だ。この点で、5Gは「DXの時代」といえそうだ。