Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

源法律研修所

法令で決められた髪型<追記>

2020.07.14 03:30

<読売新聞朝刊に連載されている植田まさし氏の四コマ漫画『コボちゃん』>

https://natalie.mu/comic/news/33259


 今朝、五十肩の治療のために病院へ行ったついでに薬局に立ち寄って薬の処方を待っていたら、小さな男の子と若いお母さんが入店して来られた。

 思わず二度見した。男の子の髪型がコボちゃんだったからだ!

 お椀を被せたかの如く、前髪からぐるっと後頭部まで耳にかかるぐらいの長さに揃えて水平にカットし、耳から下のサイドとバックを刈り上げている。リアルコボちゃんを見たのは生まれて初めてだった。

 お母さんが子供らしい髪型にしてほしいと散髪屋さんにお任せしたら、ご高齢の散髪屋さんがコボちゃんにしてしまって、お母さんが絶句した場面を想像したら、思わず吹き出しそうになった。


 帰宅後、検索したら、様々な美容室で「コボちゃんカット」がおすすめされていることを知った。どこにいても直ぐに我が子を見付けられるというメリットがあるそうだ。今の子は、散髪屋さんではなく、美容室に行くことにも驚いた。

https://beauty.hotpepper.jp/slnH000429786/style/L029477834.html

 こんなことを書くと、必ず「先生が子供の頃は、どんな髪型をしていたのですか?」とメールが来るので、こちらに回答を書いておきます。

 私はおぼっちゃまだったので(笑)、小学校を卒業するまでは、坊ちゃん刈りで、中1から現在まで七三分けです。


 さて、ついでに、法令で決められた髪型ってあるのだろうかと調べてみた。e-Gov法令検索で「髪型」を検索したら、3つの法令がヒットした。少年院法施行規則、少年鑑別所法施行規則、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則の3つだ。


 例えば、少年院法施行規則第31条第5項には、「在院者の調髪の髪型並びにその調髪、ひげそり及び顔そりの方法の基準は、法務大臣が定める。」とある。

 これを受けて法務大臣が定めた「在院者の保健衛生及び医療に関する訓令」第6条に在院者の髪型の基準等が定められている。

 すなわち、「女子の在院者については,華美にわたることなく,清楚な髪型とする。」とあるだけなのに対して、「男子の在院者については,オールショート刈り(別図第1)又はショートバック刈り(別図第2)とする。」とあって、髪型が厳密に決められている。

 う〜ん、男女差別のような気がするなぁ〜。


 そういえば、中学生のときは、夏になると、男子全員丸刈りだった。丸刈り自体は、さっぱりしていて嫌いではなかったが、全員同じ髪型というのは気持ち悪いので、私は、角刈りにしていた。先生に注意されるかと思ったら、なぜか注意されなかった。角刈りは、俳優の渡哲也の髪型で硬派のイメージがあったからだろうか。

<角刈りの渡哲也氏>


 ただ、秋になると、髪を伸ばすのだが、伸びる途中でボーッとした間の抜けた締りのない頭髪になるのが嫌だった。学生帽を被っていたので、さほど恥ずかしくはなかったが(最近、学生帽を被っている生徒・学生を見かけないなぁ〜。)。


 さて、先生によると、男子全員が丸刈りをしなければならないのは、プールの排水口に髪が詰まるからだというご説明だった。

 ところが、女子は、長い髪でもスイミングキャップを被ればOKだった。男子も、スイミングキャップを被っていたのに、なぜ丸刈りせねばならないのか、納得できなかったが、直ぐにウチの中学校の生徒だと分かるように丸刈りにして、非行を予防しようとしているのではないかと思っていた。今でも当たらずと言えども遠からずだろうと思っている。ただ、当時のウチの中学校で非行に走った男子はいなかったが。


 この点、中学校に進学予定の小学生男児が、小野市立小野中学校の丸刈り校則が無効であることの確認を求めた小野市立中学校丸刈り校則事件(最判平8.2.22)で、最高裁は、市立中学校の「中学校生徒 心得」における男子生徒の頭髪を丸刈りにする旨の定めは、違反した場合の処分規定がなく、生徒の守るべき一般的心得を示すにとどまり、それ以上に個々の生徒の具体的な権利義務を形成確定する等の法的効果を生ずるものではないとして、抗告訴訟の処分性を否定し、門前払いにした。

 つまり、丸刈り校則違反の処分規定がないので、丸刈り校則に従うべき義務はないわけだ。

私が中学生の時にこの判決が下されていればよかったのになぁ〜。

 

cf.1少年院法施行規則 (平成二十七年法務省令第三十号)

(調髪及びひげそりの回数等)

第三十一条 男子の在院者には、入院後速やかに、及びおおむね一月に一回、調髪を行わせる。

2 男子の在院者には、入院後速やかに、及び一週間に二回以上、ひげそりを行わせる。

3 女子の在院者には、必要があるときに、調髪及び顔そりを行わせる。

4 前三項の規定にかかわらず、在院者が調髪又はひげそりを行わないことを希望する場合において、その宗教、その者が国籍を有する国における風俗慣習、出院の時期その他の事情を考慮して相当と認めるときは、調髪又はひげそりを行わせないものとする。

5 在院者の調髪の髪型並びにその調髪、ひげそり及び顔そりの方法の基準は、法務大臣が定める


cf.2少年鑑別所法施行規則(平成二十七年法務省令第三十一号)

(調髪及びひげそりの回数等)

第十九条 在所者には、おおむね一月に一回以上、調髪を行うことを許すものとする。

2 男子の在所者には、一週間に二回以上、ひげそりを行うことを許すものとする。

3 女子の在所者には、一月に一回以上、顔そりを行うことを許すものとする。

4 在所者の調髪(自弁により行うものを除く。)の髪型並びにその調髪、ひげそり及び顔そりの方法の基準は、法務大臣が定める


cf.3刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則 (平成十八年法務省令第五十七号)

(受刑者の調髪及びひげそりの回数等)

第二十六条 男子の受刑者には、刑の執行開始後速やかに、及びおおむね一月に一回、調髪を行わせる。

2 男子の受刑者には、刑の執行開始後速やかに、及び一週間に二回以上(閉居罰を科されている者については、一週間に一回以上)、ひげそりを行わせる。

3 女子の受刑者には、必要があるときに、調髪及び顔そりを行わせる。

4 前三項の規定にかかわらず、受刑者が調髪又はひげそりを行わないことを希望する場合において、その宗教、その者が国籍を有する国における風俗慣習、釈放の時期その他の事情を考慮して相当と認めるときは、調髪又はひげそりを行わせないものとする。

5 受刑者に行わせる調髪の髪型の基準は、法務大臣が定める

(受刑者以外の被収容者の調髪及びひげそりの回数等)

第二十七条 受刑者以外の被収容者であって男子であるものには、おおむね二月に一回以上、調髪を行うことを許すものとする。

2 受刑者以外の被収容者であって女子であるものには、おおむね三月に一回以上、調髪を行うことを許すものとする。

3 受刑者以外の被収容者であって男子であるものには、一週間に二回以上(閉居罰を科されている者については、一週間に一回以上)、ひげそりを行うことを許すものとする。

4 受刑者以外の被収容者であって女子であるものには、一月に一回以上、顔そりを行うことを許すものとする。

5 受刑者以外の被収容者の行う調髪(自弁により行うものを除く。)の髪型の基準は、法務大臣が定める


cf.4在院者の保健衛生及び医療に関する訓令(平成27年法務省矯医訓第3号大臣訓令)

(在院者の髪型の基準等)

第6条 少年院法施行規則(平成27年法務省令第30号。以下「規則」という。)第31条第5項に規定する法務大臣が定める在院者の髪型の基準は,次のとおりとする。

(1) 男子の在院者については,オールショート刈り(別図第1)又はショートバック刈り(別図第2)とする

(2) 女子の在院者については,華美にわたることなく,清楚な髪型とする

(3) 法第52条第2項に規定する自弁の調髪の髪型については,前2号の規定にかかわらず,少年院内の衛生の保持並びに少年院の規律及び秩序の維持に支障を生ずるおそれがない限り,本人が希望する髪型とする。2 男子の在院者の調髪は,その在院者の希望を参酌して,前項第1号に規定するオールショート刈り又はショートバック刈りのうちから,少年院の長が一つを選択して行わせるものとする。ただし,出院が近いとき,矯正教育上適当と認めるときその他必要があると認めるときにおいて,その者が希望するときは,前項第1号に規定するショートバック刈りの髪型を参考にして,適当な長さに頭髪をそろえる調髪を行わせるものとする。

<追記>