類感呪術
類感呪術(るいかんじゅじゅつ、英: Sympathetic magic、Imitative magic)は、文化人類学者のジェームズ・フレイザーが定義した、人類学における呪術の性質を表す言葉である。類感魔術とも。類似したもの同士は互いに影響しあうという発想(「類似の法則」)に則った呪術で、広くさまざまな文化圏で類感呪術の応用が見られる。
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ギリシア・ローマ・古代インド バビロニア・エジプトの魔法使いは、敵に似せた像を傷つけたり破壊する事で敵に危害を加えたり殺害したりできると信じていた。北米インディアンは、砂や灰の上に人物の像を描き尖った棒で突き刺す事で相手に同様の痛みを感じさせる事が出来ると考え針が刺さったり矢が刺さった部分と同じ場所に激痛が走ると信じていた。古代バビロニアでも粘土や樹脂 蜂蜜など柔らかい素材で敵に似せた像を作り不快な相手をこの世から追放する手段として極普通に行われていた。しかし悪意や恨みを抱く者達が操る禍々しい呪術は 時に悪魔を混乱させ打ち負かす方法として 宗教の礼拝儀式にも 取り入れられた。
羊や牛を増やそうと考える時 蝋や粘土、疑灰岩で彫った動物の像を作り生贄として山の洞窟に安置する。山こそがあらゆる富の主人だと信じているからだ。奉納された数種の動物の像が発掘された例もある。
ベーリング海峡のエスキモーの場合 子供に恵まれない女性は 呪い師か夫の手によって 小さな像が作られ枕の下に入れて眠るように指示される。日本では、近所の産婆がやってきて その家の嫁に出産時の真似をさせる。マリオ族は 赤子の形をした像を家の守り神としていた。原寸大のその像に乳を含ませる事で子が授かると信じていた。
古代ヒンドゥー教では 黄疸の治療に手の込んだ儀式を行う。ターメリックやウコンなど黄色い植物を病人の頭から足先まで塗りつけ 寝台に横たわらせる。次にインコやセキレイなど三羽の黄色い小鳥を寝台の脚に結ぶと病人の身体に水をかけて洗い流す。これで間違いなく黄疸は小鳥たちに移ったと信じる。更に祭司は 病人の肌の色艶のために赤牛の毛を金箔に包み病人の肌に塗りつける最後の仕上げをする。
共感呪術は 肯定的な教えと否定的な教えとがある。
否定的な教えとは タブーの事である。
多くの未開人たちは これらの法則を言葉で明確に表しているわけではなく
意思とは全く無関係に自然の法則を盲目的に信じている場合が多い。
未開人の多くは ある行動をとれば二つの法則のいづれかの力によって
結果が持たさされる。そしてその結果が自分たちにとって好ましくなかったり
危険だとわかれば当然その害を未然に防ぐため用心して行動に移す。
肯定的な呪術の目的は 望む結果をもたらす事であり
否定的呪術の目的は 望まない結果を避ける事にある。
マレー人は、罠に餌をしかけワニがかかるの待つ間、食事をするとき必ず最初の三口を噛まずに呑み込む。これは ワニの喉に餌が通りやすくなるからだと信じる。また カレーに入っている骨は決して自分では取り出さない。これも餌に仕掛けた先の尖った棒がワニの口から外れてしまい逃げられるのを恐れたからだ。
南北戦争の最中 チェロキー族の戦士は 出陣前に呪い師から植物の根をもらい呪文を唱えてもらうと 戦いの前夜 川で身を浄め その根を噛む。すると弾丸が当たっても不死身になると信じていた。
ガリアリーズ族の掟では 釣り上げた魚に糸が絡んでも決して切っては成らないとされている。もしも切ってしまうと 次の漁で必ず糸が切れると恐れている。カナダのエスキモーは、男の子のあやとりを禁じる。子供の頃のあやとりは 大人になって銛の綱に指が絡まるからだと信じている。カルパティア山脈の猟師の妻は夫が狩をしている間 糸をつむいではいけないとされている。なぜなら夫の仕留めた獲物が 紡錘のようにぐるぐると回り挙句取り逃がしてしまうからだと言う。
古代イタリアでは、女性が歩きながら糸を紡ぐ事をタブーとしている。これは 作物の茎に作用し まっすぐに伸びないからだと信じられている。サハリンの出産間近の女性は 糸紡いだり縄を編んではいけないといわれている。この掟を破ると生まれてくる赤ん坊の腸がねじれてしまうと怖がられていた。
ある日、オリノコ川流域のインディオにカトリックの司祭が言った。「焼け付くような陽が照っているのに 乳飲み子を抱えた女性に畑で種まきをさせるのを良くありません。」インディオたちは司祭にこう言う。「女が種をまくと とうもろこしの穂が3つも4つもつきます。女は子供を産む術を知っている。そしてまいた種を実らす術も知っている。司祭様 だから女房に種をまかせてやってください。」ブラジルでは、男のまいたアーモンドは育ちが悪いと信じられている。
女性と植物の育成には密接な関係が見られる。多くの子宝に恵まれた女性は 収穫に良い影響をもたらし 逆に子供のできない女性は植物に実りをもたらすことができないと信じられていた。数々の禁止や回避の掟は 人間の特定の現象に有毒で伝染する性質があると言う信仰はこのように生まれたのだ。
参照 http://d.hatena.ne.jp/mminazuki/20050722/1122039837