バロックの時代6-カラヴァッジオ帰還途上死す
2020.07.15 11:23
マルタ島で投獄されたカラヴァッジオは、2週間後に脱獄に成功して1608年10月シチリア島に渡る。映画では神が助けてくれることになっているが、やはり誰かが助けてくれたのだろう。シチリアの古都シラクーサで、ローマの旧友の画家に世話になった。守護聖人「聖ルチアの埋葬」などを描いている。
しかし彼は、マルタ島で襲撃したベッツィア伯爵の復讐を恐れて、近くのシチリアにはおれず、対岸のメッシーナに移った。メッシーナは港町として繁栄しており、彼はここで「ラザロの復活」を描く。キリストの手によって復活しようとするラザロは、まさに自分をうつしている。
一か所におちつかない画家は、シチリアの首都パレルモに行き、さらにナポリに帰った。が、09年10月24日、居酒屋でベッツィア伯爵の手の者に襲われ重傷を負った。ここでもコロンナ公爵夫人に助けられ、別荘で養生した。この頃から殉教画を描いているが、闇がさらに濃くなっていく。
その頃ローマでは画家の恩赦嘆願が行われていた。10年7月、彼は全財産と数点の絵を持ってローマへ旅立った。しかし港町パロで、山賊と間違えられ逮捕される。釈放されたときには、荷物の乗った船は出航していた。彼は次の港まで歩き熱病に冒されて亡くなったのである。最後の絵「マグダラのマリア」には闇の底から神を求める彼の心が映し出されている。祈りといえば究極の祈りかもしれない。
下は映画「カラヴァッジオ」