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マーラー<リュッケルトによる5つの歌>より≪Ich bin der Welt abhangen gekommen(わたしはこの世から離れた)≫

2020.07.18 10:00

Facebook投稿【クラシック音楽バトンリレー】より


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【クラシック音楽バトンリレー第3日目】


 マーラーの歌曲に取り組む時、譜読み段階でいつも<ドイツ語の詩と曲の融合>に脱帽

しています。

 どうにも甘くなりきらないドイツ語の(発)音を、言葉自体が無限の可能性を持って

人の心に届くように作曲されている、言語の音に忠実以上の旋律で表現されている…

だからこそ、言葉だけの詩からは想像できないほど広げられたマーラーの世界観を

『そのまま聴いてほしい』と言う欲求に駆られるのです。

(そして歌い手の表現として、作曲家の世界観をそのまま伝えようとすることが最も

困難です😭)


 第3日目は、マーラーの<リュッケルトによる5つの歌>から≪Ich bin der Welt 

abhangen gekommen(わたしはこの世から離れた)≫について書きたいと思います。

 

 このドイツ語の“abhanden”と言う言葉の意味を考えても、この曲には、<この世と

死がもたらす向こう側の世界>と<俗世と俗世から離れた世界>の二つの視点を感じま

す。そしていずれにしても、後者の二つの世界から見た感覚を<洗練された精神性>

を持って淡々と語っています。

 

 演奏家はそれぞれこの曲を読み込みながら、どちらの世界をどんな視点を持って

表現しようとするのか、年齢や経験によっても変わるのだろうと思いますが、今日は

1957年に録音されたクリスタ・ルードヴィッヒがピアノと協演している演奏を

ご紹介したいと思います。

(この曲はピアノ伴奏とオーケストラ編成で作曲されたものと二つありますが、

マーラー は先にピアノ伴奏の作品を完成させています。歌曲独特の細やかな表現は

オーケストラとの演奏とは違う味わいが感じられると思います)

  ↓

https://youtu.be/puyusNXkcj4


 現在92歳になるメゾ ソプラノ歌手クリスタ・ルートヴィッヒは、以前、

インタビューで「自分が亡くなったら、私の葬儀にはこの曲を☺️」とおちゃめな顔で

話していました。


 『私は1人で生きている。私の天国(空)の中で。私の愛の中で。私の歌の中で』。


 この歌曲の最後のページに込められた言葉の音と音楽のすべてが、身体中の細胞に

浸透して、細胞の粒が震え、その粒々からさらに感動が込み上げてくるような体験は

深い<洗練された精神性>と、音楽だからこそ表現できる世界を視せていると感じます。