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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

バロックの時代7-ルーベンスバロックの誕生

2020.07.16 10:48

カラヴァッジョに対して、アントワープに戻ったルーベンスは、スペイン統治の南ネーデルランドのアルブレヒト大公の宮廷画家、しかもブリュッセルの宮廷に行かず、民間の仕事も受けられるという破格の待遇を受けた。大公夫妻は芸術に造詣が深く、イタリアとスペインで認められたルーベンスを処遇しないわけがない。

そしてこの地では、北ネーデルランドにこれみよがしに、どんどんイエズス会のカトリック教会が建っていたのである。さっそく1611年から1年間で完成させた大作が聖母大聖堂の三連祭壇画「キリスト昇架」である。この絵画と共にオランダバロックが出来たといって過言ではない。

そして彼は続けざまに「キリスト降架」を完成させる。この2作に共通するのは「途中」ということである。途中であるがゆえに、鑑賞者は、これから起こる受難劇をリアルに体験することができる。身体は立体的であり、途中であるがゆえの、筋肉の緊張が描かれる。

彼は結婚して現在美術館となっている豪邸を手に入れる。そこは工房となったのはもちろんだが、今まで手に入れた古美術を展示した。彼は古美術コレクターとしても有名となり、それを見るために欧州中から貴族や大商人が訪れ、ルーベンスに注文をした。現代でいえばテーマパークといえるだろう。

下はルーベンスの「キリスト昇架」三幅対