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レオナルド・猫One〜🐾

「後悔より・・・愛を捧ぐ」

2020.07.17 04:08

作者からの一言マメ知識

「後悔より」のよりは。

字の如く後悔よりもの「より」と後悔したその場所から、【後悔(から)より】の「より」の2種類のよりの意味が含まれております。

物語を読んでもらった時に、自分ならどちらの視点であるのか、演じ手さんの「より」が描かれるのだろうなと思って付けた題名です♪


男性1 和哉役

女性1 彩香役 アナウンサー役兼

和哉:彩香と生活を共にするようになって、もうすぐ7年の歳月が過ぎようとしている

​​出会ったのは、高校の時。

​​俺が三年の時に彩香が入学してきた

​​とにかく真っ直ぐに射抜くような目をしていて、すごく印象的だった。

​​

​​彩香:和哉さんと結婚したのはもう七年前になるんだなぁって改めてアルバムを見ながら懐かしむ

​​部活勧誘の時、上から覗き込むように「バレー部のマネージャーやらない?」って声をかけられた

​​見上げた時に浮かべてた笑顔が可愛くて、思わず頷いてしまっていた、そんな出会い。

​​

​​和哉:「俺と結婚しないか?」

​​彩香:「私でいいの?」

​​和哉:「お前がいんだ、彩花」

​​彩香:「和哉さん…嬉しい…!どうぞよろしくお願いします!」

​​

​​和哉:彩香となら明るくて優しい家庭が築ける、そう思っていた

​​

​​彩香:和哉さんの背中をずっと追いかけていた、だからいろんなことを頑張れた

​​

​​和哉:仕事についていくので手一杯で、自分の事を蔑(ないがし)ろにしていれば、そっと手料理をアパートのドアノブにかけて届けてくれた

​​

​​彩香:休みの日も返上して、必死で仕事に取り組んでる和哉さんを応援したくて、お料理もたくさん勉強した

​​

​​和哉:彩香がいたから頑張れた。

​​

​​彩香:和哉さんがいたから頑張れた。

​​

​​和哉:でも…積み重ねていく歳月の中で…溢れていく砂のように

​​

​​彩香:大切なものの守り方を…見失った

​​

​​

​​0:場面転換

​​

​​和哉:「ただいま」


​​彩香:「おかえりなさい!今日もお仕事お疲れ様だったね♪」

​​

和哉:「寝ててもよかったのに…、毎晩ごめんな?」


​​彩香:「全然だよ!仕事が大変なのはわかってる!だからせめて、和哉さんの体調面とかは私が精一杯サポートしていたいから」


​​和哉:「…ありがとう、彩香」


​​彩香:「ううん、こちらこそいつもありがとう」

​​

​​和哉:時計を見れば午前零時は軽く回っていた。

​​それでも彩香は笑顔で俺を出迎え、ダイニングテーブルには、温かな夕食とは言えない、晩飯を並べてくれる。

​​

​​彩香:最近特に一緒に過ごせる時間が減ってきている。

​​和哉さんの表情から笑顔が減った気がして、心の中で言葉に出来ない不安感がある。

​​それでも晩御飯だけは、必ず食べてくれる。

​​本当はきっと済ませているはずなのに…

​​

​​彩香:「ねぇ和哉さん…私ね?そろそろ…子供欲しいな…?」


​​和哉:「…そうだね、わかってるけど…もう少しだけ、待ってくれないかな?」


​​彩香:「あ、もちろん授かりものだから、自然の流れにで大丈夫!でもきっともっと楽しい時間が増えるかなって」


​​和哉:「ごめん、今本当に仕事大変過ぎて…彩香には寂しい思いさせてるのはわかってる。だけど、子供の事まで俺自体手が回らないと思うんだ…」


​​彩香:「うん…わかってる…そうだよね!大丈夫!

和哉さんの仕事が落ち着くのを私も応援してる!」


​​和哉:「ありがとう、彩香。もう遅いし、先に寝てていいよ?俺、明日の資料の準備して寝るから」


​​彩香:「うん…わかった、じゃあ先に寝るね!無理しちゃダメよ?」


​​和哉:「あぁ、おやすみ彩香」

​​

​​彩香:ずっと和哉さんの顔を見ていた。だけど…一度も視線が合う事はない、些細な事なのかも知れない…でも悲しくて…ベッドの中で声を殺して泣いた。

​​

​​和哉:いつからだろう…彩香の気持ちが重く感じ始めたのは…。

毎日、本当に大切に食事を作ってくれて、気配りも申し分ない、本当に自分にとって素晴らしい程の嫁だと思っている。

だが、出来過ぎな彩香にいつからか、申し訳無さを感じるようになった。怒ればいいのに…、優しい、彩香。

​​

​​0:場面転換

​​

​​彩香:「なんだろう…胸がムカムカする…疲れちゃってるのかな?ここ最近よく胸が張ってその後胃が痛くなるけど…、あ!まさか?!」

​​

​​彩香:勘違いも…甚だしいとはこの事。

​​周りにはたくさんの新しい命を授かった人達がいる中で期待感を抱きながら診察を受けた自分に告げられたのは、専門の先生がいる医療病院の紹介状と検査を急いでしなさいとの助言だった。

​​

​​彩香:「ご飯の支度…しなくちゃ、ね♪大丈夫、きっと大したことなんてない!」

​​

​​彩香:頭の中に浮かぶ不安。胸の中に広がる恐怖心。失いたくないもの、大切にしたいもの、あれこれ欲張ったから…なのかな?

​​大切なのは和哉さんとの日々、不器用だけど真っすぐでホントに優しい彼。ずっと結婚記念日は忙しくても二人で祝ってくれて、感謝の言葉をかけてくれる。この忙しい日々を過ぎれば、きっとまたあの柔らかな優しい時間が過ごせるって、そう信じていた…

​​

​​和哉:「わかりました、必ず結果が残せるように仕上げて、この仕事を成功させて見せます!」

​​

​​和哉:ある仕事のプロジェクトチームの主任に抜擢された。

この仕事を二十代で主任を任されることは正直、異例でもあり、それだけ企画案の完成度が高かった、という評価をもらった結果になる。

ずっと憧れていた仕事、自分が描いたものが現実となり形を残す。

やりがいがある仕事であるのは事実だが、主任として意気揚々だったのに日が経つにつれ、まとめる事の大変さ、負担、結果と追われるものが増えていく。

それでも仕事は楽しい、結果が伴えばなお。そんな日々の中で、付き合いという名目の食事も増え、仕事が増え、彩香との時間が減っていく。

申し訳なさは心に広がり、それさえも甘えだと解っているのに、目先の事に必死な自分に「今が大事」だからと言い訳を繰り返す日々。

俺は、…最低だ。

​​

和哉:​​「珍しい、明かりがついていない」

​​

和哉:​​時計を見ればやはり深夜を超えている。これが本来普通なのかもしれないが、明かりが灯ってない部屋に驚きを覚えた自分がいた。

​​

和哉:​​「…ただいま、ただい、ま…?」

​​

和哉:​​いつもなら駆け寄ってる声も、しない。

​​

和哉:​​「あれ?今日は泊りとか何か言ってたかな…?まぁ、いいか。シャワー浴びよう」

​​

​​和哉:汗を流し終わり、サッと軽く体を拭きあげてリビングへ行くと、更に違和感が込み上げた。

​​

和哉:​​「なんだろ…?いつもとなんだか雰囲気が違うような…いや、気のせいか?でも、テーブルには晩御飯作って置いてくれてる…、彩香、調子悪いのか…?」

​​

和哉:​​「彩香…いる?」


彩香:​​「…おかえりなさい、ごめんなさい、ちょっと調子が悪くて…寝ちゃってた…」


和哉:​​「そっか、起こして悪かった。ゆっくり休んで?何か飲み物とかいるか?」


彩香:​​「…ううん、大丈夫」


和哉:​​「わかった…じゃあおやすみ」


彩香:​​「…和哉さん」(すごく小さな声)


和哉:​​「うん、どうした?呼んだ?」


彩香:​​「…ううん…なんでもない、大好き」


和哉:​​「…ありがとう。早く良くなれよ?」

​​

和哉:​​そっと寝室を出て自分の部屋に戻った後、明日の仕事の資料作りをこなしているうちに、頭の中で引っかかっていた違和感は、どこかに消え去っていた。

​​


和哉:​​「ただいま」

​​​​最近はすっかり出迎えもなくなり、明かりが灯る部屋ではなくなった。

​​休みの日に久々に彩香と会話しようと思っていても、仕事は大詰めを迎え休みでも呼び出される。


【寝室】​​

和哉:​​「…彩香、入るよ?

あのさ、ゴメン。また呼び出しだから行ってくる」


彩香:​​「うん、いってらっしゃい」


和哉:​​「なぁ、最近家の事少しサボりすぎじゃないか?晩飯も最近のあれ、スーパーの惣菜だよね?」


彩香:​​「…ごめんなさい」


和哉:​​「それから、さ?寝室電気付けろよ?

​​調子悪いって言ったあの日から、もうすぐ2か月近くたつけど、まだ調子悪いの治らないなら病院変えた方がいいかもしれない。」


彩香:​​「そうだね、うん。考えてみるね?」


和哉:​​「なぁ彩香、痩せたんじゃないか?」

​​​​暗くてはっきり見えないが、なんだか線が細く感じる。

​​

彩香:​​「…あまり食べれなかったりだったから、かな?」


和哉:​​「…今日は早く帰れると思うから、なんか俺が作るよ」


​​彩香:「…あ、私の事は大丈夫だから、和哉さんは何か美味しいものでも食べて帰ってきて?私もその方が助かるから」


和哉:​​「?!そっか、わかった。じゃあそうするわ」


彩香:​​「うん、じゃあ行ってらっしゃい」


和哉:​​「あぁ」

​​

​​和哉:会話中の間、彩香は一度も顔をあげなかった。一度も俺の方を見なかった。

「どこかで食べてきてくれた方が助かる」そんな言葉を彩香から聞くとは思わなかった。

そうか、当たり前だよな、二人の関係が冷え切ってしまってるならそれは俺のせい。

でも本当は彩香が「私を見て!」と怒ってくるのを期待してたのかもしれない。

そのきっかけでこの微妙な距離を修復したいと願っていたのかもしれない。

​​

​​彩香:和哉さんがご飯を作って一緒に食べようって言ってくれたのに、拒絶したみたいになっちゃった。

食べてる姿見たかったな…。

一緒にたわいのない話をして、笑って。でも正直、今の私は立って歩くだけでも体がつらい。

既に手遅れな私の体に残された選択は、体中に散らばったがん細胞が、引き起こす臓器たちの悲鳴が、「痛み」や「むくみ」となって襲ってくるのを、痛み止めという名の薬で繋ぎとめるだけ。

手術さえ施すこともできないほどの状態なのならば、私の選択は一つ。

和哉さんと一緒に少しでも居たい、それだけ…。

​​

​​和哉:「彩香いるか?明かり付けるよ?」


​​彩香:「和哉さん…ごめんなさい。ちょっと頭痛がひどくて、明かりはつけないで?」


和哉:​​「…わかった」


彩香:​​「どうしたの?珍しいね?大切な話…かなぁ」


和哉:​​「彩香、俺に何か隠してること、ない?」


​​彩香:「…ないよ?」


和哉:​​「嘘つくなよ!だっておかしいだろ?最近は全く寝室から出てこなくなった?!」


​​彩香:「ふふ、和哉さん、心配してくれてありがとう(微笑む感じ)」


​​和哉:「彩香の事、避けたりしてるわけじゃない…

ただ、申し訳なさがずっとあってどうしていいのかわからなくなってた…」


彩香:​​「そっか、よかった…。別れを、切り出されるのかって思ってた」


和哉:​​「何を言ってる?俺は、彩香に呆れられてるのだと思ってたんだ。

だから、だんだん目も見れなくなっていた。だけど、いっそ彩香が俺に対して怒りでもぶつけてくれたら、素直になれるんじゃないかって思ってたんだ」


彩香:​​「怒るとこなんてどこにもなかったよ?

いつだって、あのころと変わらない、自分の未来を諦めることなく形に変えていく和哉さんを、私は誰よりもそばで応援したかった」


和哉:​​「彩香、ごめん…な?」

​​

彩香:「謝らないで?和哉さんは真っすぐだから、もし誰か他に好きな人が出来て、その人に気持ちが向いてしまってたら、私はすぐ見抜く自信がある」


和哉:​​「それは俺が単純って意味?」

​​

彩香:「違うよ?(笑)ずっと和哉さんだけ見続けてきたから、仕草や表情で嬉しいも悲しいもわかるつもり。

和哉さんは、ホントに一生懸命仕事と向き合っていた、だからこそ精一杯美味しいもの…作って…貴方の隣が私の居場所でいたかった…(感情が溢れ出す)」


和哉:​​「彩香…どうして、過去形のように話す?俺達は今も夫婦だよね?これからだって」


彩香:​​「和哉さん、ごめんなさい、私から貴方を自由にしてあげなきゃ…だね?」


和哉:​​「…何を言ってる?俺は別れるつもりはない!」

​​

和哉:​​足元に何か大量のかたまりが触れた。

違和感、ずっとどこかで引っかかっていった「違和感」が大きな鼓動となって全身を駆け巡った。

​​

和哉:​​「彩香、電気をつけて」


彩香:​​「だめ!!」


和哉:​​「ダメじゃない!リモコン貸して!」

​​

​​和哉:明かりをつけた先に映ったのは…空になった大量の薬のPTP包装シートが散乱した、異常な光景だった。

そして彩香の姿が目に飛び込んできたとき、違和感の答えが自己嫌悪となり自分の不甲斐なさに吐き気がこみ上げてくる。

​​

和哉:​​「彩香…、嘘だよな?…嘘だって…言ってくれ…!」


彩香:​​「みすぼらしくなってごめんね」


和哉:​​「そうじゃない…そうじゃないだろ!!ごめん!ごめんな、彩香!!!」


彩香:​​「和哉さん、黙っていて…ごめんなさい」


和哉:​​「謝るな…彩香!謝らないでくれ…!どうして…俺を責めない?!こんなになるまで!どうして!」


彩香:​​「違うの!私が貴方といたかったから!立っていられる時間が短くなって、食事もまともに作れなくなって、和哉さんにもう別れようって言われるのを覚悟してた」


和哉:​​「そんなわけないだろ!っ!なんで?!俺はなにを…見てた…?!」


彩香:​​「貴方のそばで自分の人生を終われるなら、私は幸せだと思ったけど、和哉さんにはたくさんの迷惑を掛けてしまうことになる…、分かってても、それでも…貴方のそばに…いたかった」


和哉:​​「…責めろよ!罵れよ!こんなになるまで気付かない、ろくでなしの夫だぞ!!!仕事ばかり必死で、彩香を大切にできなかった!なんで!!どうしてだよ!こんなになってまでも、俺に、優しく出来るんだよ!」


彩香:​​「和哉さんはいつも輝いてた。

一生懸命でホントに仕事熱心で、それで私の事をお座成りにしてるって思っちゃったのかも知れないけど。

いつだって私の事を考えて、ご飯だって必ず食べてくれた。

小さな事一つ一つ、ちゃんと大切に貴方はしてくれてたのよ?責める?責める事なんてどこにもない。私は貴方に出会えて、そばで見つめて同じ時を過ごして、幸せなの。

責められるなら、私の方よ?

…病院に行ったときはすでに手遅れだった。

全身に転移していていて、手術しても気休めにしかならないって言われて、本当は貴方に相談すべきことなのに、私の人生の幕引きなら精一杯我がままになろうって一人で決めっちゃったの、最低でしょ?」


和哉:​​「彩香…俺にとって彩香はいつだって勿体ないほどの嫁さんで…、俺に愛想を尽かしてしまうんじゃないかって不安だった。

だから仕事だけでも成功して、胸張ってお前の夫ですって言える人に人になりたかったんだ…。

これだけは言わせてほしい、俺は出会って未来を二人で歩むと決めたあの日から今でもお前だけを愛してるんだ…」


彩香:​​「和哉さん…、私たちはとても不器用ね。だけど私もあなたに出会ったあの日から、貴方だけを愛してるの。この命が尽きる日まで、私は貴方のそばにいても…いいかな?」


和哉:​​「当たり前だろう?!それに俺はまだ諦めたわけじゃない!俺が出来ることを俺はやる!だから、一緒に出来ることを二人でやろう!」


彩香:​​「…和哉さん、ありがとう…」

​​

​​和哉:仕事先に電話をかけて事情を説明し、退職を願ったが有り難いことに事情を理解してもらえた結果、長期の休暇扱いとなった。

そして、癌に対しての専門病院やいろんな情報を集めてくれて、人の温かさを感じた。

​​だけど、俺が俺として彩香の支えがあったからこそ、今の俺がいるのだとなおさら感じた。

​​

和哉:「神様なんて信じてこなかった。身勝手と言われても仕方がない。分かってる…だけどどうか!神様がいるのであれば…俺から彩香を奪わないでください…、お願いします、お願いします!」

​​

彩香:​​和哉さんはあの日から仕事を休職して私のそばにいてくれている。

​​貴方のそばにいれるのはとても嬉しい、だけど貴方の大切に頑張ってきた仕事の、完成を見ることを貴方の手から奪ってしまった。

でも、私といてくれることを選んでくれたことが、ただただ嬉しい。

​​病院もたくさん調べてくれて、結局、検査結果も余命も覆らなかった。

それでも、諦めずにあなたと共に未来を描こうとする日々は元気を分けてもらえた。

口内炎が広がって物も食べれなくなったけれど、貴方が一生懸命に私のために流動食を作ってくれて食べさせてくれるのが、燕(ツバメ)の子供にでもなったみたいで、なんだか愛を感じた。

何度も神様にお願いをしたけれど、私の願いはただ一つ。

​​

彩香:​​「神様、和哉さんに出逢わせてくれて感謝します。そしてどうか和哉さんが幸せであれるように、愛せる人に出会い、たくさんの人に愛されますように」

​​

和哉:​​起き上がる事さえ出来なり排泄も出来なくなって、ホスピタルへ入ることとなった彩香は抱き上げても重みを感じないほど痩せてしまった。

​​何も食べれない、何も口から摂取できない、それでも彩香はいつも微笑んでいた。

​​声も出すことが辛くなっても、愛しそうに俺の名前をその唇で描く。

​​痛みが襲っても涙を見せまいと歯を食いしばり、少しでもモルヒネ投与を抑え、意識が保てる時間を、手放さまいとする姿が痛々しく、だが、それ以上に彼女の愛を感じた日々。

​​

彩香:​​「か… …ず  や…さ ん」


和哉:​​「どうした?彩香?痛い?さすってやろうか?」


彩香:​​「…しあ わせ  だっ… あり、 がと…」  


和哉:​​「なに?彩香…聞き取れない…!もっと分かってやりたいのに…大丈夫、そばにいるから…!」


彩香:​​「あい…   て る…」


和哉:​​「彩香?!彩香…ん、眠ったのか…?

苦しいよな、痛みに耐えながら俺のそばにいてくれる彩香には申し訳ない、でも!

もっともっとお前と一緒に居たいんだ…。

元気なうちに、お前との時間を大切にすればよかった…。

でも彩香!君と過ごせているこの時間が、とても幸せなんだ、俺…」

​​

和哉:​​声が届いたのか、彩香はとても優しい笑顔を浮かべた。

その表情があまりにも美しくて、、可愛くて、彩香の、荒れ乾いた唇を濡らすように…そっと口づけをした。


和哉:彩香は…、このあと二度と意識を取り戻すことはないまま、苦しかっただろう闘病生活に終わりを告げた。

​​

和哉:​​「彩香…どこにいる…?」


和哉:​​「彩香…なんで…こんな黒縁の枠の中で…笑ってる?」


和哉:​​「なぁ…彩香…本当にお前は…俺なんかと一緒になって…幸せ…だったのか?」

​​

​​和哉:彩香のいなくなった家は、あまりに広く、あまりに寂しくて。いっそ、死んでしまおうか…そんな事を思い始めていた。

​​

和哉:​​「彩香の…携帯。解約しなきゃだな…」

​​

​​和哉:何気なくロック番号を俺の誕生日を押してみると、いとも簡単に解除された。

​​写真のアルバムを開くとそこには…、二人の思い出がたくさん写っていた。

​​

和哉:​​「バカだな…彩香。俺ばかり、撮ってる…。メモ帳…?なんだろこれ…」

​​

​​和哉:メモ帳っていうアプリが気になって開くと、そこには彩香が綴った日記と、そして「和哉さんへ」と記されたメモがあった。

​​

彩香:​​「和哉さんがこれを読んでるときには、きっと私はここにはいないのでしょうね(笑)それを承知でこのメモを残します。和哉さん、今、もう死んでも良いかな。なんて思ったりしてるでしょ?」

​​

和哉:​​「…なんでお見通しなんだ…彩香」

​​

彩香:​​「ダメだよ?そんな事思っちゃ。私は本当に貴方と会えて幸せだったの!毎日貴方のために作る料理も、それをちゃんと美味しそうに食べてくれる和哉さんが目の前にいて、疲れてるのに目を細めながら私の話を聞いてくれる貴方が誰よりも愛しくて」

​​

​​和哉:「彩香…俺は…」

​​

彩香:​​「一度だって和哉さんと一緒になれた事を、後悔なんかしたことありません。そしてこの世の中で一番幸せだったと、胸を張れる。お願いだから、自分を責めないで。私の言葉を信じて欲しい。」

​​

和哉:​​「…バカ…だなぁ…彩香…」

​​

彩香:​​「私の願いは一つなの。和哉さん、どうか長い人生の中で、私を超えて愛せる人と、貴方を愛してくれる人と巡り合ってください。」

​​

和哉:​​「…無理だよ…」

​​

彩香:​​「和哉さんがその命を全うする時、迎えに来るから、その時貴方の思い出話をたくさん聞かせて?目を輝かせて夢を追いかけて欲しい。たくさんの人を愛して、愛されて。貴方らしく生きて欲しい。私は誰よりも貴方の幸せを願っています」

​​

和哉:​​「…彩香」

​​

彩香:​​「私の事を後悔するなら、生きて。貴方の幸せな時間を私に見せて、応援させてください。神様に感謝してる。私の人生は、心から…幸せでした。和哉さん…愛してくれて、ありがとう。」

​​

和哉:​​涙が止まらない。人は後悔の中で生きていくのだろう。だけど、ここに記してくれている言葉は、俺への彩香からのエール、俺への愛情。

​​自分を許さない想い、悔しさ、不甲斐なさ、それすら彩香、君は愛してくれた。

​​

和哉:​​「すぐには…きっと前には進めない。だけど彩香、君からの言葉を大切に生きていくよ。たくさんの経験を、君にまた会って話せるその日まで…」

​​

​​0:アナウンサー

​​「交通が不便だったこの街にかけられた「彩香橋」。

市民の声を受け、設計企画から実現されたこの橋は、この地域をより活性化、させてくれる事でしょう。

では、この事業の責任者でもある二条和哉担当主任に一言いただきます」

​​

和哉:​​「人と人とを繋ぐ架け橋となるこの事業に携われた事を、心から嬉しく思っております。そしてこの事業は私にも生きる力を与えてくれました。市民の皆様の中枢となるこの橋が、たくさんの方に愛される事を願っております」

​​

​​0:アナウンサー

​​「素敵なお言葉ありがとうございました!」

​​

和哉:​​…後悔の中で、ようやく君に胸を張れる仕事を終わらせる事ができたよ、彩香。君と…たくさんの話をできる日を…楽しみにしながら、俺は今日も生きていくよ

​​