サクラスの社長に直接聞いてみた、学生の起用にこだわる理由
池上真之/ユーゴスラビア生まれ/情報工学科卒業後外資コンサルに入社。その後サラリーマン社長を経験後独立
(写真は全て池上さん提供)
――サクラスでは学生のインターンを多く起用していますが、そこにはどういった意図があるのでしょうか。
学生の可能性に期待しているという点もありますが、自分よりも若い世代に「社会で生きていく力を身につける場を提供したい」という思いが根底にあります。僕自身も社会人としての15年あまりのキャリアの中で、就職から今までポジティブなムードの日本経済というものは味わったことがありませんが、僕の就職後、日本のいわゆる「失われた10年」が20年になり、30になろうとしていて、年々(社会の)厳しさは増していると感じます。
例えば、かつては会社が何年もかけて育成期間を設けてくれていました。最初の半年はずっと研修という会社もありましたし、その後も先輩についてOJTでしっかり仕事を習う。今はそうした手厚い育成ができなくなっている。今の世代の新人はサポートがない分大変ですよね。そうした世代間の不公平な部分を、インターンとして成長する場を学生達に提供することによって埋められたらと思っています。
――学生には、そうした不利な環境の中でも、自ら考えて動けるようになってほしいということですね。
これからの学生にとっては、社会は「戦場」といってもいいほど厳しくなるかもしれません。急にそうした戦場に降り立っても疲弊してしまわないように、社会で求められることに学生の段階から慣れておくと有利になると思います。
これは個人的な体験ですが、自分が大学生だった時は院に進む前提の学科に入ったため就職活動と大学の両立が難しく、教授や先輩に呼び出されて就活をやめるよう叱られたりするなど大変な思いをしました。そうした経験があるので、就活を妨害されたり、そこまでされずとも情報が得られなかったりして不利になることを無くしたいという考えがあります。
――基本的に、就職活動と大学は無関係ということですね。では学生が社会に慣れるよう、社長が工夫していることは何かありますか?
そうですね。自分が仕事をするにあたって感じた「これはやっとけばよかったな」ということは伝えるようにしています。このブログもそうですし、直接業務を通じて伝えたりすることもあります。
――リモートだと特に伝える工夫が必要ですよね。
この状況だと、なかなか会って直接というわけにはいかないので、マニュアル化したり、文字にして可視化したりして残るようにする工夫は大事ですね。しかし直接会うよりは無駄を省いて伝えなければならないため、ちょっとしたことを教える場合はやりづらさを感じます。
「できなきゃいけない」「失敗しちゃいけない」という思いがハードルになっている気がします。これは以前からそうなのですが、リモートになることでさらに強まっている気がします。
――確かに文字だと履歴に残ってしまうため、躊躇してしまいますよね。
それでさらに失敗しにくくなっているように思います。できていないものでも画面に出さなければならないので。同じ場所にいたら聞きやすいことも、リモートになることで聞きづらくなっていますよね。こうしたことを防ぐために、普段からコミュニケーションを取る習慣を持つことが大切だと思います。離れているからこそ、メンバー同士の関係値も大事ですね。
――チームの結束を高めるために工夫されていることはありますか?
SlackやZoomであっても一体感を持たせるようにしています。
――確かに、メンバーの誕生日なんかも、全員が集まるチャンネルで必ず祝福されていますね。それでもやはり「怒られたくない」と思ってしまうのですが、そんな気持ちに対処する方法はありますか?
自分を客観視してみたら良いと思います。クライアントがいて、達成したいゴールがあるなら、そのゴールが達成されることが一番。そのために怒られていると考えるとそれは尊い犠牲です。自分のプライドが傷ついてゴールが達成できるなら、それも自分のバリュー。「怒られて恥ずかしい」という学生がいますが、怒られずに「恥ずかしい物を世に出す」方が恥ずかしいことです。
――なるほど。全体の視点から考えると良いのですね。
あとは、よく言われることですが、お金を「払う」立場と、「もらう」立場では正反対です。学生であるうちは、学生は大学の「お客さま」で、先生がお金を「もらう」側です。僕からしたら大学は「生花教室」や「ピアノ教室」と同じ。そうした教室に通うのと同じ感覚で会社に来られると困ります。コンビニやファミレスのアルバイトであっても、シフトに入って「お客さま」のように振る舞う人はいないはずなので考えてみると当たり前のことなのですが、改めて意識してほしいですね。
――お金を貰っている限り責任感を持つ必要がありますね。ところで、サクラスは普通のバイトと比べて時給が高めですよね。そこに込められた意味はありますか?
いろいろな理由はありますが、皆が個人事業主で業務委託ですし、特別高くしているつもりはありません。社会に出た時と同じくらいの基準で設定しています。よく考えたら、大学を卒業した途端にその人の価値が上がるなんて、おかしいですよね。社会人1年目で(年収)500万円貰えるなら、大学4年のときに400万円台でも、おかしくないはずです。時間あたり2,000円弱ですよね。
僕自身も、学生のころは賃金がどのように決まっているのかはあまり意識しませんでしたが、社会に出て気づいたのはもっと「お金」のことを知っておくべきだったということです。自分の給料にしても、他人に一方的に決められるものではありません。自分が発揮するバリュー次第。例えば、大廣さんがこのブログを運営してくれて、優秀な学生3人がサクラスに加入してくれたとします。もしそれまでサクラスが優秀な学生に採用かけているお金がひとりあたり5万円だったとしたら、大廣さんは15万円貰ってもいいことになりますよね。これは少し言いづらいことですが、皆が社会に出て貰うお金は多くの場合、「他の誰かが貰うはずだった」お金です。お金はどこかから湧いてきているわけではないので。そうした意識を学生の頃から持てていると良いですよね。
――最後に、学生に伝えたいことはありますか?
そうですね。ここまででだいぶ話したのですが、ひとつ付け加えるなら「人と違って良い」ということです。もちろん、基本である当たり前のことはこなしてほしいのですが、得意不得意はそれぞれあって良い。サッカーで例えると、プロサッカー選手としてリフティングはもちろんできなければならないけれど、シュートを決めるのが不得意ならポジションを選べばいいし、プレースタイルも人それぞれでいいということです。みんな同じだったらドラフトで選べないですよね。
――基本的なことは抑えた上で、人とできることが違っても良いということですね。
社長の学生に対する想いが伝わるインタビューだった。ここまで読んでくださった方には、インターンの雰囲気がなんとなく感じられたのではないだろうか。池上社長はときに厳しいが、常に学生のことを考え、一人ひとりが成長できるように仕事を与えてくださっている。またサクラスでは、これから社会人になってからもずっと大切な価値観を学ことができる。会社に入り、一歩先からのスタートを切りたい学生には最適の環境だ。