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なぜ、繰り返し豪雨に?

2020.07.20 03:14

https://news.yahoo.co.jp/byline/katayamayukiko/20200710-00187528/

【なぜ、繰り返し豪雨に?原因はシルクロードテレコネクション】片山由紀子 | 気象予報士/ウェザーマップ所属  より

熊本県では多くの河川が増水・氾濫し、大きな被害が発生した。

繰り返される豪雨、なぜ、梅雨前線は日本列島に停滞し続けたのか?原因のひとつに蛇行するジェット気流があった。「シルクロードテレコネクション」は夏の異常気象を引き起こす。

台風19号の2倍の雨量

梅雨の大雨はときに想像を超える激しさで降ります。この一週間に、全国で降った雨の量(降水量の総和)を見積もったところ、約17万5千ミリとなり、これは2019年10月の台風19号(令和元年東日本台風)による降水量の総和(約8万ミリ)の2倍に相当します。今回の大雨は昨秋の東日本や東北の大雨を上回る規模であることがわかります。

動かない梅雨前線

こちらは10日(金)午前9時の地上天気図です。梅雨前線に多少の動きはあったものの、この一週間、ほとんど日本列島に沿うように停滞しました。

梅雨前線の南側には夏の高気圧(太平洋高気圧)があり、非常に湿った空気により、雨雲が繰り返し発生する場所です。豪雨が続いた原因のひとつに、梅雨前線が停滞し続けたことがあります。

原因は亜熱帯ジェット気流の蛇行

梅雨前線が北にも南にも動けない状況、つまり日本周辺の気圧配置(天気図)が変化しにくい状況が作られました。

梅雨前線を専門的にいうと、地球を取り巻く大きな流れ=ジェット気流(上空の強い西風)と密接に関係しています。この亜熱帯ジェット気流が今回、蛇行したことで、梅雨前線の停滞を引き起こし、次々と湿った空気を日本列島に引き寄せる原因となったのです。

ちょっと見にくいのですが、緑の矢印で示した所に日本列島があります。この図は7月4日から8日までの5日間を平均したもので、暖色が高気圧性の渦、寒色が低気圧性の渦を示しています。高気圧性循環と低気圧性循環が交互に並び、線に沿って、ジェット気流が西から東に蛇行しながら流れている様子を表しています。

「シルクロードテレコネクション」が夏の異常気象を引き起こす

日本のはるか西、中東のあたりから日本にかけて、赤・青・赤(黄)・青と交互に並んでいます。このような亜熱帯ジェット気流の流れを専門的な言葉で「シルクロードテレコネクション」といいます。

東洋と西洋を結んだ歴史的な交通路シルクロードにちなんだ名前です。そして、テレコネクション(teleconnection)とはある場所での大気や海洋の変化が遠く離れた場所に、長期間にわたり影響を及ぼすことをいいます。テレコネクションが起こると、同じような天気が長く続くため、長雨や少雨、寒波や熱波などの異常気象が発生しやすくなります。

この夏、異常気象が頻発する?

このシルクロードテレコネクションは徐々に解消に向かうものの、西日本では来週の火曜日(14日)頃まで大雨になりやすいでしょう。そして、18日(土)頃からは夏の高気圧(太平洋高気圧)が強まり始める見通しです。長雨のあとは猛暑になるかもしれず、極端な天候の変化に振り回される夏になるかもしれません。


https://www.nishinippon.co.jp/item/n/625427/ 【なぜ?「数十年に一度」の大雨、7年で16回 特別警報多発の理由】より

熊本県南部を襲った記録的豪雨からわずか1週間の間に、気象庁が最大級の警戒を呼び掛ける「大雨特別警報」が3回発表された。「数十年に一度の大雨」に相当するレベルだが、運用開始から7年間で計16回出ている。今回はインド洋の海水温の高さに遠因があり、専門家は「地球温暖化が進み、これまでの防災の常識が通用しなくなりつつある」と警鐘を鳴らす。

 室戸台風(1934年、死者不明者3千人以上)、伊勢湾台風(59年、同5千人以上)、九州北部豪雨(2012年、同32人)…。気象庁は、こうした規模の災害に匹敵する大雨が予想される場合、大雨特別警報を発表すると説明している。

目安は、48時間または3時間の予想雨量と土壌にたまる水分が「50年に一度の値」を超えた場合。気象庁によると、大雨特別警報は13年8月の導入以来、既に33都道府県に計16回発表されており、最も多いのは福岡、長崎県の4回。佐賀、沖縄県の3回が続き、九州地方に集中している。

   ◆    ◆

今回は、積乱雲が帯状に固まって局地的豪雨が降る「線状降水帯」が次々と発生したことによって、大雨特別警報の頻発につながった。なぜ「数十年に一度の大雨」が相次ぐのか。

気象庁は二つの要因を挙げる。一つ目はインド洋の海水温の高さだ。6~7月の海水温が平年より0・5度高く、積乱雲とともに上昇気流が発達し、上昇した大気がフィリピン海近くで下降。結果、例年は北側に膨らんで梅雨前線を押し上げる太平洋高気圧が南西側に張り出し、梅雨前線を日本付近に停滞させている。

二つ目は偏西風の蛇行によって、黄海付近の気圧が低くなっていることだ。大気は気圧が高い方から低い方に流れるため、暖かく湿った空気が太平洋高気圧に沿って南から梅雨前線に向かって、大量に流れ込んでいる。福岡管区気象台の川口弘人予報官は「同じ気圧配置がこれほど長く続いて、梅雨前線が停滞する事態は記憶にない」と困惑する。

   ◆    ◆

滝のように降る1時間雨量50ミリ以上の雨の発生回数は、21世紀末に全国平均で2倍以上になる-。気象庁が想定する「温暖化による最悪のケース」だ。既に現実となりつつあり、気象庁の統計では全国の観測所で1時間雨量50ミリ以上を記録した回数は、1976~85年の年間平均226回から、2010~19年は327回に増えた。

日本の平均気温は100年当たり1・24度のペースで上昇し続けている。気温が1度上がると、大気中の水蒸気量は7%増え、積乱雲が発達しやすくなる。

水害の規模も大きくなっており、気象研究所の川瀬宏明主任研究官らが、230人以上の死者が出た18年の西日本豪雨をスーパーコンピューターで分析したところ、約40年間にわたって気温が上昇した影響で、総雨量が6%ほど増えたという結果がはじき出された。

東京大の中村尚教授(気候力学)らの研究では、東シナ海など日本近海の温暖化ペースは、地球の全海洋の平均に比べて2倍速いことも分かった。中村教授は「今までの経験を基に避難訓練を繰り返していたら、命を落としかねない状況になりつつある。雨の降り方が過去にないほど激しくなる恐れがあることを肝に銘じておくべきだ」と警告した。 (御厨尚陽、鶴善行)