マスクは役に立たない? ワクチンが届く日は近い? 新型コロナウイルスにまつわる「8つの風説」の真偽
https://wired.jp/2020/03/04/alcohol-kills-coronavirus-myth-busting/?fbclid=IwAR20ymM9Dhog_qi7xJGEVCGBdnEmRxFdQVUfJhcXN8mtA9QJ9YQtnrpng-s
【マスクは役に立たない? ワクチンが届く日は近い? 新型コロナウイルスにまつわる「8つの風説」の真偽】 より
新型コロナウイルスに関しては、さまざまな噂が飛び交っている。マスクは必ずしも有効な防御策ではないのか、季節性インフルエンザほど深刻ではないのか、イヌやネコにも感染するのか──。これらのなかから「8つの風説」についての答えを用意した。
新型コロナウイルスによって引き起こされる疾患「COVID-19」の新たな患者が、世界中で加速度的に増えている。そして拡散するウイルスが市民の恐怖と不安をかき立て続けるなか、COVID-19に関する風説が次々に生まれている。
アルコールジェルで新型コロナウイルスを殺菌できるのか。COVID-19は、季節性インフルエンザよりもひどいのか。マスクはつけるべきなのか──。新型コロナウイルスに関する疑問を解消してくれる回答を、以下にまとめた。
1)アルコールジェルでは殺菌できない?
手は、ウイルスが体の表面から呼吸器に入り込む際のメインルートのひとつである。このため手を清潔に保つことは、ウイルスに感染しないためにできる極めて有効な対策だ。可能であれば石けんと水で手を入念に洗い、手洗い場がないときはアルコールベースの手指消毒剤が有効になる。
アルコールジェルの効果はターゲットとするウイルスの種類にもよってくる。一部のジェルが必ずしもノロウイルスに十分な効果を発揮しないのは、こうした理由がある。しかし、新型コロナウイルスの膜構造はアルコールが攻撃できるものだ。60パーセント超のアルコールを含む手の消毒剤が病原菌を殺すために最も効果的だが、自家製の消毒剤をつくろうとするのはやめよう。よくても市販のものほど効果がないだろうし、悪くすれば皮膚にひどいダメージを負うことがある。
2)季節性インフルエンザほど深刻ではない?
「どうしてみんな普通のインフルエンザのことはそんなに心配しないのか」というのが、この疾患が2019年末に最初に現れて以来、コロナウイルス専門家たちが繰り返してきた問いだ。しかし、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同一視は、多くの理由で間違っている。
まず、COVID-19は季節性インフルエンザよりも致死率が高い。平均的なインフルエンザ株に感染した場合の死亡率は0.1パーセントほどだが、COVID-19の死亡率はこれよりはるかに高いのだ。アウトブレイク(集団感染)の中心地である中国・武漢では2パーセントに迫っており、武漢以外の地域を含む死亡率はこれより低くなっている。
新型コロナウイルスはまた、季節性インフルエンザよりも感染が広まりやすいようだ。ある疾患がどのくらい感染しやすいかは、1人の感染者からうつる人数の目安である「再生産数」と呼ばれる数字で定義される。新型コロナウイルスは感染者1人につき平均で2.2人にうつっているようだが、季節性インフルエンザではこの数字は約1.3だ。
新型コロナウイルスを憂慮すべきもうひとつの因子は、これは人類にとってまったく新しいウイルスであるという事実だ。わたしたちは新型コロナウイルスに対する自然免疫もワクチンもない。加えて中国の研究によると、新型コロナウイルスによるCOVID-19の80パーセント以上の症例は軽度なものとはいえ、だからこそ医療当局に気づかれないままウイルスが拡散する可能性が高い。
3)公共交通機関の利用は避けたほうがいい?
これは間違っている。大きなアウトブレイクが発生した場所から帰ってきたばかりであるとか、新型コロナウイルスへの感染が確認された人と濃厚な接触をしたといった場合でない限りはだ。英国国民保健サーヴィス(NHS)は現在のところ、ウイルスに接触した可能性が高い人以外には公共交通の利用をやめるように勧めていない。アウトブレイクが発生した地域から帰ってきて、ウイルスに感染した可能性があるかもしれないと思う人は、家から出ずにNHSの非緊急番号に電話をしてほしい。
4)マスクさえあればウイルスから身を守れる?
COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」の感染予防として最も有効であるのは、普通の人にとっては規則正しい手洗いだ。マスクはコロナウイルスの主な感染ルートであるせきやくしゃみによる飛沫をさえぎる機能があるが、すべてのマスクが非常に小さな粒子をブロックできるわけではない。それに、マスクをしていてもウイルスは目から入ることができる。
本当にマスクをつける必要があるのは、感染者と濃厚な接触をする可能性の高い人々だけだ。一般市民がマスクをつけることに大きな利点があるという証拠はほとんど存在しない上に、市民がサージカルマスクをため込むことは、医療関係者が必要なときにマスクを入手しにくくなることにつながりかねない。
5)もうすぐワクチンがやってくる?
研究者は、わずか10日で新型コロナウイルスのゲノムを公開した。しかし、ワクチンがすぐにできる可能性は低い。
ワクチンの開発は動物実験と人間の臨床試験をはじめとする数々の段階を経る必要がある。その後ようやく一般に使用できるようになることから、新型コロナウイルスのワクチンが使用できるようになるには、少なくとも1年はかかるだろう。それまでにアウトブレイクは収束しているかもしれないし、この疾患は地域の限られた病になっているかもしれない。
6)イヌやネコも感染する?
香港で犬に新型コロナウイルスの「弱陽性」の反応が出たという報道は、ペットもCOVID-19にかかる可能性があるというセンセーショナルな新聞の見出しにつながった。香港の衛生当局は人間から動物への感染の可能性があるとしているが、イヌなどのペットがCOVID-19にかかりうるという証拠はない。
7)主に高齢者にしか感染しない?
高齢者と持病のある人はCOVID-19で重症化しやすい。武漢大学の138人の新型コロナウイルス患者を調べたところ、持病のある高齢者がウイルスの影響をより受けやすいことがわかった。ところが、若者も感染して感染を広げる可能性がある。とりわけ医療関係者のような非常に高い感染リスクを負っている人々はそうだ。
8)封じ込めに失敗したら手に負えなくなる?
英国は、いまも新型コロナウイルスの封じ込め段階にある。いまのところ、医療当局は感染者を特定して動きを追跡し、この疾患が広がった可能性がある場所を示す地図を作成することに対策の主眼を置いている。
とはいえ、もし新たな感染者が急速に増加して封じ込めが不可能になったとしても、疾患の広がりを遅らせる努力を完全に諦めるべきというわけではない。新型コロナウイルスの主なリスクのひとつは、感染者が急増して一時的にNHSの対応能力を上回ることである。このため仮に封じ込め策が失敗しても、医療当局は感染者数をできるだけ低く抑えてNHSの負担が偏らないようにしたいだろう。