動物病院における「セカンドオピニオン」について
「セカンドオピニオン」という言葉は、動物病院だけでなく、人の病院でもよく使われる言葉なので一度は聞いたことがあるかと思います。
しかし、「なんとなくは知っているけれど…本当の意味を知らない」という飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は改めて「動物病院におけるセカンドオピニオン」について、詳しく説明していきます。
誤解されがち?「セカンドオピニオン」の本当の意味とは?
では、言葉はよく耳にする「セカンドオピニオン」とは、どのような意味なのでしょうか。
簡単にいえば、「主治医以外の獣医師に診断や治療方針について、第二の意見を伺うこと」です。
しかし、最近ではこの言葉に少し誤解があるように思います。それは「○○病院で治らないから来ました」や「○○病院の先生とは意見が合わなくて…」などという場合です。このような今までの病院に対してある程度の不信感や不満があるような理由から病院を変えることは「転院」といい「セカンドオピニオン」とは言いません。
本当の意味のセカンドオピニオンとは『獣医さんから説明を受けても治療に対する決断が完全にはできず迷いがあり、さらに多くの獣医さんの意見や検査法・治療法を知りたいときに、新しい知識を取り入れる目的で別の動物病院を訪れること』なのです。
このような場合、飼い主さんにはもちろん、最初の病院に不信感や不満の気持ちはありません。「セカンドオピニオン」で病気や治療に対する考えを広げることで、より自分の納得した方法で治療を受けられるようになるのです。
セカンドオピニオンを受ける前に
セカンドオピニオンを考え始めたら、別の病院を訪れる前にもう一度、かかりつけの獣医さんに相談し、疑問に思っていることをすべて聞くことが大切です。
もちろん飼い主さんには、言いづらい気持ちもあるかもしれません。でもそれは病気を治したいからこその行動であり、その先生にとっても飼い主さんの目線から意見や質問を聞くことができ、大変ありがたいことなのです。ですので、わからないことはそのままにせずにどんどん聞きましょう。
そして「どういう病気なのか?」「どうして症状が良くならないのか?」「ほかに治療法はないのか?」など再度しっかり聞き直してもなお、疑問に思うことがあり、さらに多くの知識を取り入れたいと思ったときには、別の病院を探しセカンドオピニオンを考えましょう。
“ペットを治したい”という気持ちは、獣医さんを含めて患者に関わる誰もが持っているものです。飼い主さんがしっかりと気持ちを伝えたうえであれば、セカンドオピニオンを不快に思う獣医師はいないはずなので、まずはかかりつけの獣医さんの意見をよく理解してから、今後の治療の選択をしましょう。
セカンドオピニオンでは、より心掛けたマナーを
セカンドオピニオンを見つけ、そこで新しい意見を聞くことは決して悪いことではありません。むしろ、愛するペットを治すために飼い主さんができる行動のひとつです。
しかし新しい病院へ行ったときには、ぜひ心掛けてもらいたいマナーがあります。
それは飼い主さんもセカンドオピニオンの獣医さんも、それまでの間、診断・治療をしてくれた最初の獣医さん(ファーストオピニオン)のことを尊重していただきたい、ということです。ですので「前(ファーストオピニオン)の病院の悪口を言わない」「獣医さんにはそれぞれの考え方があるため、どちらの獣医さんに対しても不信感を抱かない」ことが大切です。
病気によってはセカンドオピニオンにおいてより深い検査が必要となるため「検査や病院の方針を素直に受け入れる」ことは、より的確な診断・治療を求めるためにとても重要なことなのです。
診察をよりスムーズにするためには
セカンドオピニオンの目的は、一から動物を診察しなおすことではありません。最初にかかりつけていたファーストオピニオンである獣医さんからの診療の引継ぎをして、その病気に対するさらに広い知識と飼い主さんの納得、そして最適な治療を飼い主さんに提供することにあります。
ですので、ファーストオピニオンでおこなった診察内容や飲んでいた薬などについて、きちんと話せることができればよりスムーズな診察ができるでしょう。そのためにもファーストオピニオンでのきちんとした意思疎通、インフォームド・コンセントが大事になるのです。
もし自分で説明することが難しいようでしたら、最初の獣医さんに検査の正確なデータや今までの診療経過、先生の考えなども書いた紹介状をお願いしてみましょう。
特に難しい治療の場合、専門医やより高度な検査機械がある動物病院に任せるほうがよいと判断して、飼い主さんから言い出さなくても自ら紹介状を書いてくれることもあります。もしそうだとしたら、その先生はとても信頼できる獣医さんかもしれませんね。
最適な治療を選ぶために
ファーストオピニオンとの間にどうしても信頼関係が築けなかった場合、「転院」をすることもあるでしょう。しかし、一ヶ所の病院に決められずにあちこちの動物病院を転々とする飼い主さんもいらっしゃるようです。
大切なのは、「本当に自分に合っているだろうと思われる動物病院を見つけ、一から信頼関係を築いていくこと」です。
はじめにお話しましたが、「セカンドオピニオン」と「転院」を一緒にしてはいけません。セカンドオピニオンは動物病院に対する不信感の上に成り立つものではなく、ペットの治療に向けてもっと意味のある病院として存在するものなのです。
ファーストオピニオンで獣医さんとしっかりと話し合い、なおかつセカンドオピニオンで知識を広くし「ペットのためにどうすることが最適なのか」という最終的な治療方針を、飼い主さん自ら納得し、決定することが大切です。
まとめ
これまでに思っていた「セカンドオピニオン」と違う、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
今までに動物病院を変えた経験のある飼い主さんは、
「最初の動物病院に対してどんな風に思っていたか」
「セカンドオピニオンとしてマナーを守れていたか」
などを、この機会に一度振り返ってみていただければ幸いです。