福島原発事故から9年(7)今後に備え知っておきましょう! 「原発事故・関連事故による放射線被ばくを避けるために ~安定ヨウ素剤の適切な服用で、甲状腺を被ばくから守る~」
福島原発事故から9年(7)今後に備え知っておきましょう!
「原発事故・関連事故による放射線被ばくを避けるために
~安定ヨウ素剤の適切な服用で、甲状腺を被ばくから守る~」
福島県による甲状腺検査で、事故当時 18 歳以下の子ども 38 万人の内、240 人が甲状腺がん・疑いと診断され、195 人が手術によって悪性がんと確定しました(2020/6/12ourplanet)。県が検査結果を公表する度にがん患者数が増え続けています。
小児甲状腺がんの多くは、ウランが核分裂した時に生じる放射性ヨウ素を甲状腺が取り込んで発症します。
原発事故でまき散らされる放射性ヨウ素による被ばくから甲状腺を守るために安定ヨウ素剤があります(服用は大人 1 回 2 錠、子ども 1 錠、3 歳未満の子どもはゼリー錠)。チェルノブイリ事故の時、ポーランドでは安定ヨウ素剤が服用され、事故由来の甲状腺がん発症者がいなかったことが知られています。安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素以外の内部被ばく(空気・水・食べ物から体内に放射性物質を吸収して体内で被ばくすること)や外部被ばく(体の外から放射線を浴びること)を防ぐことまではできません。
安定ヨウ素剤は放射性ヨウ素による被ばくの 24 時間前から 4 時間後くらいまでに服用するのが効果的で、被ばく後 16 時間以上たってから飲んでもほとんど効果はありません(参考:原子力規制庁「安定ヨウ素剤の配布・服用に当たって」)。服用のタイミングが重要です。従って、住民は、事前に安定ヨウ素剤を準備し、事故後の放射性プルームの動きが的確に判断され、情報が得られることが必要です。
【3・11 事故当時、安定ヨウ素剤は服用されたのか】
2011 年当時、安定ヨウ素剤は原発から 10km 圏内の市町村と原発立地県に備蓄されていました。福島第一原発、第二原発周囲 10km に当たる市町の富岡町(2 万千個)、双葉町(少なくとも345 人)、大熊町(340 人)は、町の判断で配布し服用の指示を出しました。いわき市、楢葉町は個人配布、浪江町は一部避難所に配備しましたが、県の指示も情報もないため服用されませんでした。
10km 圏外で唯一、三春町は町職員の判断で福島県庁に安定ヨウ素剤を取りに行き7250人に配布、服用指示を出しました。
避難の混乱の中で県や国からの情報や指示はなく、どれだけの人が服用できたのかわかりません。県立医大の関係者(家族も)は服用したと言われています。政府の原子力災害現地対策本部の記録では「服用指示を出したが、時期が遅く住民避難が完了していたため指示に基づく服用者はいなかった」とされています。
【今の原子力規制委員会の指針】
原子力規制委員会の新基準では、「副作用の心配は殆どなく、子どもや妊婦は優先的に服用するべき」とされています。「原発 5km 圏(PAZ)は事前配布し、事故発生時は服用して避難、30km 圏(UPZ)は屋内退避後、避難時に配布」となっています。しかし、「事故後の配布が困難な地域は UPZ も事前配布可」となっています。東海原発近隣の茨城県ひたちなか市は、3・11 事故後独自に UPZ を含む市民全員に薬局を通して事前配布を進めてきました。兵庫県丹波篠山市は福井県の原発から 50km 離れていますが、兵庫県のシミュレーションで、風向きによっては高線量の被ばくが予想されるということから市独自で事前配布をしています。
福島第一原発事故では原発から 100km 以上離れた関東地域にもホットスポットが点在し、福島県以外の東北・関東地域の子どもにも甲状腺がんの患者が出ています。このことから、少なくとも原発周囲 100km の地域では安定ヨウ素剤を準備しておくことが必要です。(ちなみに大阪市は、福井県の原発からだいたい 100km に位置します。)
【被ばくを避けるためにはどうすればいいのか】
安定ヨウ素剤を飲んで放射性物質から逃げることが必要です。
逃げる方法は
① 逃げる方向は放出源に対して反対側に、風の向きと直角にできるだけ遠くに。
② 雨ガッパ、長靴、マスクで防護→安全な場所で全てビニール袋に入れて適切に捨てる。
③ 渋滞等あるので、車より電車や飛行機を使う方が良い。
④ 放射性物質放出後、最初の雨や雪に濡れないこと。
⑤ 逃げられないときは屋内退避。 発生源から 100km 以上離れているときも放射性物質の拡散状況を確認して屋内退避。エアコンは使わない、窓を密閉して外気を取り込まない。水
道水は飲まない。木造家屋ではなくコンクリ―トが望ましい。
内部被ばくを避けるために汚染されたものを食べない。
※「窓密閉、外気を取り込まない」という点は、コロナ対策と反対となります。
しかし、原子力災害の一番の防護策は、
原発を止めること、廃炉にすること!です。
高浜原発事故 兵庫県で甲状腺等価線量50mSv超が最多となる場合
http://www.jca.apc.org/mihama/bousai/photo20140428_11.jpg
大飯原発事故 神戸で積算線量が最大となる場合
http://www.jca.apc.org/mihama/bousai/photo20140428_04.jpg