【kengo machine(FREAKY MACHINE)vs 根木龍一(microAction)】湘南という地の音楽文化を開拓していく意志。
マスではなくよりコアな世界で表現していくことを選び、湘南をベースに活動を続けるバンドFREAKY MACHINE。結成28年を迎え、15年ぶりに4枚目のアルバム『SMOKE』がリリースされた。魂から湧き出るメッセージとサウンド。すべての作品の作詞を手掛ける松本健吾とレーベルmicroActionの根木龍一の対談。
文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 林 大輔 photo = Daisuke Hayashi
— 久しぶりに4枚目のアルバムがリリースされました。何年ぶりになるのですか。
K 15年ぶりになります。メンバーそれぞれが、いろんな旅をしていますから。なかなか揃わない。ずいぶん前に、リリースするのならマイクロアクションからと話していたんです。
— アルバムをリリースするというモチベーションは、いつくらいから高まってきたのですか。
K 2年半くらい前に、ロングセットのライブが入っていたんですよ。そのライブの日に、ギターが「昨日、旅から帰ってきた」と前触れもなく現れて。そこからですね。
N これで揃った、進めていきましょうと。
K 15年もリリースしていないから、掘り返したら曲は腐るほどある。ライブでやったりスタジオで消したり。曲が熟成しているというよりも、それぞれが年を重ねて、いろんな経験もして深くなって、俺たちの独特な雰囲気がより濃くなっている。濃厚になりつつ、さらに広がって聞きやすくなっていると思います。うまみ成分は失わずに、パワーが外に出るようになった感じですかね。アルバムを出すということで、バンドとして締まっているという感覚があります。
N レーベルとして、こういうものを出して欲しいという方向性を出すことはあまりないですね。バンドの今を音で表現してもらえればそれで良いと思います。
K 自分で聞いても、変な音楽だと思うんですよ。ユナイトに向かいつつ反体制であり。今の世の中とはちょっと違うぞというメッセージは常に持っていますから。スピリットはパンクのままで。
— そもそもフリーキーマシーンをどういうバンドにしたいと思って結成したのですか。
K 何も考えず、とにかく好き放題にやりたかった。パンクをやっていても、俺が作ると違う曲になってしまう。パンクだけではなく、パーティーやフェス、ジャムなど、いろんなシーンで演奏することになっていった。けれど核はアナーキズムに支配されているというか、誰にも支配されることがない調和が一番大事だと思っているから。そこにたどり着くのは難しいけど。
N 自分たちも、ひとつの方向性としてそこを目指しているところはありますね。
K マイクロアクションは、そういう部分でも一緒のアティチュードだから。
N フリーキーは、ライブでも作品でも、そのメッセージを変わらずに発信しながら、タブーにも挑戦していると思う。
— フリーキーにとって、湘南というベースも大きな存在だと思います。
K 東京のシーンはリスペクトしているし、本当にエキサイティングでおもしろいと思う。でもそこに俺たちが混ぜてもらっていることはあっても、例えばワンマンライブとかしなくてもいいかなっていう思いもある。ある時代に東京に出て行って、あるバンド仲間に「まだあんな不毛の地で音楽をやっているのか」って言われたのが、心にカチンときて。当時は確かにできていなかった。その言葉がひとつのきっかけで、だったら自分たちでシーンを作ろうと。
— 「エコービーツ湘南」も湘南の文化をつなぐ役割を果たしていたと思います。
N ライブハウスが充実しているわけではないのに、ミュージシャンが多くて、ちゃんとバトンタッチされていて、ライブも日常にありますよね。湘南もそうだし、自分の地元横浜もそうですが、神奈川は独特なおもしろさがありますね。
K 湘南は若い奴らも元気で、クリエーションを発信しているから。音楽だけでもいろんな文化がある。その文化のクロスオーバーの仕方が、めちゃくちゃでおもしろい。俺たちの音楽ってサイケデリックでディープで、深いところの音楽ですよ。だけどサーファーの奴らがフォローしてくれたりだとか、ものすごい受け入れられ方をしている。
N 湘南はローカルの力を強く感じますね。「橋の下」や「トヨロック」などで豊田にも関わっているんだけど、豊田も湘南と同じようにローカルが強く繋がっている。いろいろな街でもそんな文化がもっと育っていけば。自治の力というか。
K 湘南はすごく一体感がある。どんな奴でも、年齢に関係なく、音楽をやっている、音楽が好きだっていうことだけでつながっていくし。
— 今後の展開ってどう考えていますか。
K 死ぬまでロックンロールですよ(笑)。変わることは何もないです。ぶっちぎりでいいアルバムが出せた。俺のなかでは最高傑作になったと思う。ずっとやってきたことが実となった感じですね。
『SMOKE』
結成28年を迎え、15年ぶりにリリースされた4枚目のアルバム。メンバー9人に加え、サックスで元晴と家永慎也、コーラスで小林正明がゲストで参加。8月8日には12インチアナログが発売される。リリースに合わせて、Tシャツ、オリジナルスリップマット・トートバッグ(3色)の受注限定で生産される。
受注締切:Tシャツ(7月27日)/オリジナルスリップマット(7月31日)/トートバッグ(7月31日)