2020.07.21.「第6回 とメはね」ご報告
こちらでの「墨亭」公演のご報告も久々になってしまいました。コロナ禍にあるのは依然変わりありませんが、いわゆる「三密」を防ぎながら、墨亭ガイドラインに沿って、細々と開亭しています。
7月21日(土)は「三密」ならぬ、墨亭ユニット(?)の「第6回とメはね」が開かれました。このところ人気も定着してきたようで「満員御礼」。
この日の番組は、春風亭昇吾『松山鏡』、瀧川鯉丸『武助馬』、柳亭信楽『佐々木政談』で、最後には恒例のトークコーナーで、メインテーマは「キャンプは楽し」でしたw。
この三人を見ていていつも思うのは、三兄弟のようだなあということです。落語『片棒』ではなく、どちらかと言えば、一世を風靡した『だんご三兄弟』。しっかり者で気働き屋の鯉丸さんに、我が道を行くどこか自由な昇吾さん、上の二人を見て、楽しさを追い求める信楽さんと言えばいいでしょうか。高座姿にしても、普段の楽屋での様子にしても、そうしたスタンスの変わらないところが、落語芸術協会に生まれた三兄弟風で、その個性の違いが大変に面白く、毎回、三人と同じ空間にいることさえ、楽しくなってきてしまう会なのです。
トップに上がった昇吾さんは、最初、『狸』をやるのかなあと思っていたら、急に『松山鏡』に。途中で“今日は違うな…”と思ったとのこと。狸が鏡に化けたのか、昇吾さんが狸に化かされたのか…。『松山鏡』の本題に入れば、昇吾さんの持ち味の一つでもある、どこか素朴であり、ちょっと雑な言葉使いが田舎者の雰囲気にピッタリで、これはきっと昇吾さんに化かされたんだなと思えるような出来でした。
鯉丸さんは師匠瀧川鯉昇も得意にしている『武助馬』を。鯉丸さんはオールラウンドプレーヤーだと思っているのですが、特に「墨亭」でも聴かせてくれた『ねずみ』や、延いては『五人男』にしてもそうですが、名人談や苦労談(名人苦労談というより)を味わい深く演じて見せる落語家さんです。この噺では、ちょっとドジなところはあるも、芝居には熱を持っている武助の姿を微笑ましく演じてみせたのが印象的でした。ちなみにここ向島は烏亭焉馬が落語を中興した地。江戸に落語を生んだのは、焉馬が登場する100年前。鹿野武左衛門の登場によるものでした。しかし、武左衛門は舌禍事件に巻き込まれてしまい、大島に流罪に(異説あり)。…と、その事件の元になる噺が、この『武助馬』。落語に縁ある地で、落語史に縁深い噺を聴くことができました。
トリを務めたのは信楽さんで、ネタ下ろしホヤホヤという『佐々木政談』を。政談物とは言え、噺の主役は子供。大人顔負けのこましゃくれた子供を、決して生意気にではなく、観察眼の鋭い様子として描いたことで、演者によってはこの噺を演じる時に見える人間的ないやらしさを感じさせないところに関心。時が経てば、奉行の貫禄も出てくるのだろうなあと、将来の信楽十八番になるのでは?と思わせるものでした。
最後の、もはや恒例となったスペシャルトークでは、「とメはねキャンプ会」の報告を。鯉丸さんは仕事で参加できなかったそうですが、春風亭柳若さんや春風亭橋蔵さんと行ったキャンプが、殊の外、楽しかったとか。ソーシャルディスタンスを保ってのキャンプだったそうで、その話を聞いて、私も行きたくなった……というか、「とメはねキャンプ会」なら私も誘え!wwwと思えるようなお話でした。
次回は8/2(日)11時開演です。こんな時世ですが、もしよろしければお待ち申し上げております。(雅)