【栃木県】日光(日光市)
「日光東照宮」陽明門門前
平成11年に世界文化遺産に指定された「日光の社寺」は、日光山内の東照宮、二荒山神社、輪王寺の二社一寺が抱える合わせて103棟の国宝や重要文化財の建造物群、それらを取り巻く文化的景観で構成されている。
門前町としての日光は、江戸時代に徳川家康を祀る東照宮の建立を機に整備され、五街道の一つ日光街道の終点も兼ねることで旅籠屋や土産物屋が建ち並ぶようになる。
近代に入ると、周囲を山で囲まれ、冷涼な気候と前述の豊富な文化遺産を有する景勝地として早くから欧米人に好まれた。
かつての宿場町だった鉢石町に門前町としての古い街並みが点在するが、それらはいずれも明治時代以降に建てられたものである。
二社一寺だけでなく、明治6年に開業した日本最初のリゾートホテル「金谷ホテル」や、同23年開業の日本鉄道日光線の終着駅「日光駅」、大正天皇の御用邸として整備された「旧田母沢御用邸」など見所のある近代建築も多く、国際的な観光都市として早くから知られていることを改めて認識させられる。
【栃木県】日光「日光駅」(日光市)202007
宇都宮から日光線を梢高い日光街道杉並木に並走して1時間弱の日光駅は、明治23(1890)年に日本鉄道が開業、現在の駅舎は鉄道技師の明石虎雄の設計により大正元(1912)年に竣工されたものである。
典雅な木造2階建てのネオルネサンス様式の駅舎は、当地を訪れる皇族や外国人を意識したもので、その名残として2階の旧特等待合室やホームにある貴賓室が今も残る。
【栃木県】日光「日光物産商会」(日光市)202007
日光駅を出て、日光街道に沿って山へ向かって一直線に上ってゆくと、街道の最後の宿駅「鉢石宿」の古い街並みが現れる。
そこから神橋を抜けると神域に入り、日光東照宮が終点になる。
神橋の手前に、赤い鉄板葺き屋根の寺院のような建物が威容を放つように建っている。
明治38年に建てられた「日光物産商会」は金谷ホテルの土産品店として開業し、日光彫や木工品、漆器類などを扱っていたが、現在は土産屋さんだけでなく食堂や喫茶も入る。
【栃木県】日光「鉢石町」(日光市)202007
日光街道は五街道の一つで、江戸から日光東照宮への主要参詣道として整備されたが、江戸から数えて21番目で最後の宿駅が「鉢石宿」である(現在の鉢石町)。
東照宮の門前町も兼ねていたが、現在の古い街並みは近代に入ってからで、宿場町にありがちな伝統的な商家は見当たらず、和風の意匠をしながらも外国人訪問客を意識したものが多い。
「日光物屋商会」をはじめとする土産物屋さんが軒を連ねるが、特に羊羹の店が多い。
写真手前の独特な看板を掲げる「ひしや」もその一つだ。
日光鉢石町「ひしや」
【栃木県】日光「金谷ホテル」(日光市)202007
日光東照宮をはじめとする豊富な文化遺産を擁し、山々に囲まれ冷涼な気候の日光には、近代に入り多くの外国人が訪れるようになり、避暑地として別荘を構えるものも少なくなかった。
明治6年に金谷善一郎が自宅を改装して外国人専用民宿「金谷カテッジイン」を開業したのが「金谷ホテル」の前身(現在「金谷ホテル歴史館」として公開)。
その20年後の明治26年に日本初のリゾートホテルとして「金谷ホテル」を開業。 アインシュタインやヘレン・ケラーをはじめ、多くの外国人著名者が宿泊している。
本館の外装は一部大谷石で、昭和11年に当初の木造2階建てだったのを地面を掘り下げて3階建てにするなど、数度の増改築を経ている。
本館脇に建つ千鳥は風の屋根と唐派風の車寄せを持つ和風様式の建物が、昭和10年築の別館である。
【栃木県】日光「旧田母沢御用邸」(日光市)202007
避暑地として早くから外国人に好まれた日光は、また皇室の保養地にもなった。
銀行家小林竹雄の別邸を含む9万平米もの広大な敷地を買い上げ、病弱な大正天皇(当時は皇太子)の保養地として明治32年に整備されたのが「田母沢御用邸」である。
紀伊徳川家中屋敷や赤坂仮皇宮などの移築や増築を重ね、宮内省内匠寮の綿密な設計により106もの部屋を抱える大規模な建築群は、江戸、明治、大正3時代の異なる建築様式をみせ、和洋折衷の生活様式が取り入れられている。
戦前の一時期に大上天皇(当時皇太子)が疎開生活を送られたこともあり、公園敷地内に防空壕跡も数か所見られる。
現在、記念公園として一般公開されている。
【栃木県】日光「旧日光市役所」(日光市)202007
日光には外国人訪問者の目を意識してか、和風の意匠を取り入れた建築物が多いが、その代表と言えるのが旧日光市役所日光総合支所だろう。
天守閣風の城郭のような外観だが、元々は外国人訪問客相手の「大名ホテル」として大正8(1919)年に建てられたもの。
しかしホテルとして利用されないまま、古川電工の職員アパート、進駐軍の社交場を経て、昭和29年から日光市役所として使用された。
【栃木県】日光「神橋」(日光市)202007
日光駅から街道を経て旧宿場町の「鉢石町」を抜けた先に、深い渓谷の大谷川に架かる朱塗りの太鼓橋「神橋」が見える。
かつて参詣者はこの橋を渡って神域である東照宮に入った。
【栃木県】日光「日光山輪王寺」(日光市)202007
世界文化遺産「日光の社寺」は、東照宮を中心とする103棟の建造物群とそれらを取り巻く文化的景観で420㌶にも及んでいるが、東照宮が建立される以前は輪王寺と二荒山神社の神仏習合による山岳信仰の聖域とされていた。
日光山輪王寺は勝道上人が天平神護2年に建立、その本堂「三仏堂」は正保2年に改築され、阿弥陀如来・千手観音・馬頭観音を本尊とする。
裏手には青銅製の相輪橖が聳え立っているが、住職だった天海大僧正が徳川家光の建言で建立したものだ。
写真は大護摩堂の前から三仏堂と相輪橖を撮ったもの。
”平成の大改装”を終えたばかりの「三仏堂」