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#062.読みやすい手書き楽譜の書き方 2

2020.07.27 21:41

前回、楽譜にはある程度のルールがあり、それを無視すると大変読みにくい楽譜になってしまい、音楽に集中できなくなってしまいます、というお話をしました。


音楽に携わっているとちょっとしたメモなども含めて意外と楽譜が多いので、今回は鉛筆での楽譜の書き方について解説いたします。



読みやすい楽譜とは

では具体的にどのような楽譜が読みやすいものなのでしょうか。実際に演奏活動をされている方は、これまでにたくさんの楽譜を見てきたと思いますので、思い出しながら(もしくはいくつかの楽譜を手に取ってご覧になりながら)この先を読んでください。


音楽は時間とともに強制的に進行していくものであり、一旦始まると自分の意思で止めたり緩めたり、ましてややり直したりなどできません。楽譜はじっくり味わって眺めたり読んだりするものではなく、流れ続ける音楽を生み出すために視界に入れ続ける参考メモのような存在です。

したがって、目で追っている流れの中に自然と様々な情報が関連性を持って把握できる位置関係を意識して書くことが大切なのです。


例えば、極端なことを言うとクレッシェンドした先のffが関連性が薄い位置に置かれていたら絶対に演奏に支障が出ますよね。

関連性を持たない文字が一列に並ぶと頭の中で整理できず、考える時間が必要になってしまいます。

こんな楽譜を渡されたら演奏どころではありません。


そしてここからは手書き譜について解説するわけですが、先に言い訳をしますと、僕はプロの浄書屋さんに習ったわけではなく完全に独学で、前回紹介した本と、たくさんの浄書経験から手に入れたスキルをもとに解説します。したがって、もしかすると専門家の方から言わせるとちょっと違うところや、(無いとは思うのですが)時代の流れで「今はそんなことしない」といったものがあったらごめんなさい。



用意するもの

手書きの楽譜を書く上で用意するものを紹介します。


[五線紙]

五線の段と段の距離は見やすさに大きく影響します。あまりに狭いと上下の段に加線が書かれていたり文字が多いと誤解が生まれる可能性が出てきたり、広すぎると段が変わる瞬間に目が泳いでしまいます。

そのため、選ぶ五線紙の種類も重要になります。


五線紙はいろいろありますが、最も手に入りやすいルーズリーフの五線紙は最も流通している(と思われるものが)B5サイズであり、これだと紙のサイズそのものが小さく、その割に12段入っていて、線が細いので、これを見て演奏する、というのはおすすめしません。こういったものはメモ書きや理論を学ぶ際には使い勝手はいいかもしれません(ちなみに聴音も本番の試験で使われるサイズは基本的にもっと大きいのでルーズリーフサイズに慣れてしまうのはおすすめしません)。


ではどのくらいのサイズが良いかと言うと、トランペットの楽譜を書く場合はA4サイズで10段くらいが良いです。加線が多いフルートやテューバの場合は9段など少ない段数が書きやすいです。もし12段の楽譜でフルートの楽譜を書こうとすると、加線が上の五線とかぶってしまい、大変読みにくくなってしまうのです。

この楽譜はA4サイズ10段ですが、段の間がこれくらい広いと情報が多くても書きやすく読みやすいです。


ちなみにこの五線、こちらのサイトから無料で五線紙が手に入ります。

ただ、デフォルトのものは非常に五線が細いので、ページ最下段の「オリジナル五線譜作成」メニューから「線の太さ」をもっと太くするのがおすすめです。僕の持っているプリンタですと0.27mmにしたら個人的に好みでした)。


余談ですがfinale(楽譜浄書ソフト)でしたら段の距離を調節することはできますが、それをやっていない人が結構多く、読みにくい原因の一つになっています。



[鉛筆]

絶対に鉛筆です。できればB以上の濃いものを用意します。

シャープペンシルがダメな理由は、実際に書いてみればわかりますが力加減によって太さを自在に変えられない点(細すぎ)と、薄い点、消しにくい点です。

僕はノック式の鉛筆を常備しています。これがあると鉛筆削りの手間が減ったり、複数本用意する必要がありません。使い勝手の良さや長期的に利用することを考えれば鉛筆よりもコスパは良いと思います。


[消しゴム]

消しゴムを選ぶ際に重要なのが「軽く擦っただけでよく消える」「大きく消せる」「細かいところも消せる」点です。消しゴムは本当にいろいろあって「コレ!」というのが具体的に言えませんが、少なくとも言えるのは100均にあるようなものは消しゴムではなくて黒を塗り広げるだけなので良くありません。

消しミスは楽譜を読む上で誤解を生む原因のひとつですので、良いものを選びたいです。


[鉛筆削り]

普通の鉛筆を使用するなら必須です。できれば削る太さが調整できるものを持っておくと良いです。楽譜を書くときはあまり尖りすぎたものを使用しないほうが良いのです。

以上です。あれ?定規いらないの?と思うかもしれませんが、僕は定規を使用しません。小節線も手書きで十分です。ただ、スコアやピアノ譜を書く場合は定規があったほうが良いかもしれません。



それぞれの記号の書き方

さてそれでは実際に記号などパーツごとに書いてみたいと思います。


[小節線と余白の対処]

予め4小節など線を引いてしまう方が多いのですが、情報量によって小節線幅は変化します。したがって小節内の情報を書き終えて小節線で閉じる、という流れのほうが楽譜は見やすくなります。

16分音符が続くところは広く、最後の全音符は狭くしているのが分かります。


この小節線の書き方だと各段の右側に微妙な余りが生まれてしまう場合がありますが、それは問題ありません。余白である、という表記があれば読む上では邪魔にはならないのです。

もしこれがイヤな場合は、各段を書き始める前に各小節のある程度の配分を考えておけば良いのです。最後の小節を強引に広くしてしまうのは読みにくい原因になります。また、小節の途中で段が変わるのはルール上絶対ダメとは言えませんが、非常に誤解を招きやすいので、とても長いカデンツァなどの場合を除き採用すべきではありません。



[音部記号]

トランペットはト音記号しか使いませんが、例えば「ガイド」と言って自分の演奏再開箇所がわからなくならないよう親切に他のパートの音符が書かれていることがあります。そのパートが低音楽器だと音部記号も変わるので、やはり全部書けるほうが良いので全部解説します。と言っても3種類しかありません。


ト音記号

ト音記号は第1間から書き始めて…あ、五線や五線の間それぞれに名前があるのはご存知でしょうか。

このように下から第1線、第1間、第2線、第2間と名前が付いていて、五線の中に書けない音域を記す際に用いられる「加線」にも名前が付いています。

加線の場合は五線から近い順番で第1、第2と呼び、五線の下は「下(した)第1間」「下第1線」と、五線の上は「上(うえ)第1間」「上第2線」と呼ばれます。覚えておくと説明するときに便利です。


これを覚えてもらった上でト音記号に話を戻します。

ト音記号は第1間から書き始めて、第3線に触れたら第1線に戻り、五線の上へ突き破って五線下まで直線で降りていく、という書き方のルールがあり、これらは印刷譜と同じです。ト音記号は「G」の文字が変形したもので、Gは日本の音名で「ト」なのでト音と呼ばれます。英語だとそのまま「G clef(クレフ)」です。


そのGの文字が変形し、第2線をGと定めたのがト音記号です。ですので、この記号を書く際に最も重要なのが第2線を中心としてクルっと回転していることで、言ってしまえば他は不格好でも最後の部分を玉にしなくてもそんなのは結構どうでも良いのです。


ヘ音記号


アルファベット「F」が変形してできた記号です。ヘ音記号の最も重要なのは「:」の位置です。この「:」は「F」の右先端部分で、二本の横線に挟まれた第4線がF音であると定めているのです(ですから最初に書くクルっとした部分は実はやっぱり結構どうでも良いです)。


ハ音記号

弦楽器のヴィオラにメインで用いられる音部記号で、アルファベット「C」が変形したものです。視力検査のようですが、第3線がC音であると定めていて、これを「アルト記号」と呼びます。吹奏楽では稀にトロンボーンやユーフォニアムが高音域を演奏する際に加線が多くならないよう用いられることがあり、その場合は位置が変わり「テノール記号」と呼び方も変わります。

音部記号は以上3種類です。最後に紹介したハ音記号のようにト音記号もヘ音記号も位置がずれたものがあるのですが(ハ音記号もまだいくつかあります)、昔使われていた記号なので現代の楽譜には出てきません。興味がありましたら調べてみてください。



[調号]


調号は書く順番が決まっています。シャープの場合は左から「ファ→ド→ソ→レ→ラ→ミ→シ」、フラットの場合は「シ→ミ→ラ→レ→ソ→ド→ファ」です。これは法則がありますが、それらについては過去の記事「楽譜を読むための基本6『調と音階について その1』」を参考にしてください。

調号を書く際のポイントは、これらはフラットやシャープを1つずつを読むというよりも「かたまりとして1つの記号」なので、あまり広々とスペースを使うよりもギュッとまとめるほうが読みやすいです。すべてのシャープやフラットが均一のサイズになるように心がけると読みやすくなります。


楽譜に書かれている記号は結構数が少ないのですが、こうして解説していると長くなることがわかったので、続きは次回にしたいと思います。


それではまた来週!



荻原明(おぎわらあきら)

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