受験生の不安 ~野口晴哉先生の質問に答えて~
《野口晴哉先生の質問に答えて》
〈質問〉
受験が近づいて高校生の息子が不安そうなのですが、その不安を除くにはどうしたらよろしいでしょうか
〈答〉
受験期が近づいて不安にならなかったら、よほど頭が悪いか自信過剰があるかで、不安になるのが当たり前です。
親がその不安を強調したり刺激したりしないように注意することは必要ですが、不安を除こうとすることは本当ではありません。
―中略―
むしろ大いに不安を持つべきだと思う。ただこういうことを教えてあげたらよい。
不安になるのはお前一人ではないのだ。今は誰もが不安になっている。不安になると何故いけないのかというと、試験場であがりやすくなるからだ。
不安があるから一生懸命勉強するので、不安がなければ、勉強もしないかもしれない。だから不安があるのはちっとも悪くない。安心のゆくまで勉強すべきであり、試験が終わるまでは安心のできないのが普通である。
だから大部分の生徒はそうで、そうでないのは特別頭が鈍いか感受性が鈍いか、或いは運を天に任すといったように高を括っているか、ともかく特殊な状態だ。
しかし大半の人は不安を持っているのだから、これはお互い様ということになる。だから試験場へ行ったら、あがっている人が何人いるか数えてごらんなさいと教えるがよい。
人間があがるというのはどこがあがるのかというと、肩があがるのです。肩があがってくると血が頭へ上がったきりになって下りてこない。
身体中が硬張って下腹に力が入らない。鳩尾が硬くなる。そこで普段ある力も出せなくなってしまう。だから肩を下ろせばよいのだが、ただ下ろそうとしても下ろせない。あがるまいと思えば思うほどいよいよあがってしまう。
意識に向かって「余裕を持て」とか「しっかりせよ」とか言ったら、却って余分な負担になる。だからあがっている人を数えろと言う方が具体的で、意識はただ数えるということにしか使っていないから、当然それは心に余裕を持つ手段ということになる。
それからもう一つ、自分のあがったのを下ろす方法として、肩を上げる、前に出す、ストンと落とすというのがある。こうすると落ち着いてくる。
―中略―
あがらない予防にやるよりは、あがってしまった時にやるとスッと下りる。