冬の体 ~野口晴哉先生語録~
2020.07.28 12:52
《野口晴哉語録より》
冬になれば冬の体にならねばならぬ。冬になって冬の体にならぬなら、本当の丈夫にはなれません。円融無碍の生活は出来ようはずがありません。
人間の体温は夏でも冬でも、三十六度五分ないし七度、暑くとも寒くとも、少しも相違ありません。
暑ければ体温も昇り、低ければ体温も低くなりそうなものですが、実際は夏でも冬でも変わりはないのです。
がしかし、この一定の体温を保つ体の中の作用は、夏と冬とでは全く大違い、否大違いどころの沙汰ではありません。
諸君よ、表面だけ見ないで内部の体温を維持する作用をご覧なさい。
夏は暑いので体温が余り、これを放散させないとうだってしまうから汗を出す、皮膚は弛む、臓器もその活動を遠慮して、食欲も減退します。
ところが冬になりますと、このままでは済まなくなります。第一、冷たさ寒さに体温を奪われて、凍えてしまいます。
それ故に冬の人体は緊張そのものの如く、肺も胃も腸も、肝、脾、腎、膵の各臓器は言うに及ばず、皮膚、血管に至るまで一つになって、奪われた体温を補給しようと、体温発生の為に大車輪の活動をいたします。
毎年、秋から冬にかけて、体の中では動員令が発せられ、総動員の姿であります。
それ故、冬は夏よりも遥かに生活力が旺盛になるのです。だから寒風が吹くと飯が美味しくなり、冷気が満ちてくると頭が澄んで参ります。