【Fiction】私がサーフィンに連れてってあげる
僕は波の乗り方を知らない。車には乗れる。運転免許は持っている。
僕は君の扱い方を知らない。君はよく笑い、よく怒る。そして隠れて泣く。
読んで字のごとくSun、Sunとギラつく太陽。海のように青い空と、空のように青い海。
今日は彼女に連れられて、僕らはサーフィンに来ている。
君は波の乗り方を知っている。車にも乗れる。ETCカードも持っている。
君は僕の扱い方を知っている。僕はよく笑かされ、怒らされ。男のくせにと泣かされる。
君の肌は綺麗だ。小麦色に焼けたというより、ミルクチョコレートを塗りたくったような。
あなた方読者と違って、僕は決して舐めたいとは思わない。僕は甘いものが苦手だ。
チョコレートはビターしか食べないと決めている。
海に着くなり君は、発泡スチロールのように服を放り投げ、若手芸人のように駆け出していく。あんまりだ。
君は言ったはずだ。待ち望んだ初孫をなだめるばあちゃんのように優しく、シルバーの匙に卵を乗せて運ぶように丁寧に、教えてくれると言ったはずだ。がっかりだ。
いつも君はせっかちで。
たまのノンビリは希少価値だ。
キャビアやフォアグラにも負けやしない。
君は僕に期待を持たせて、華麗に裏切る。
僕は君に裏切られて、また期待を持たされる。
君は上げて落とすのが上手い。そして僕は上げられて落とされるのが上手い。お互い日本代表。
君の背負い投げはすごいが、僕の受身もオリンピック級だ。
君は波に乗っている。楽しそうだ。
僕は波際に立っている。日焼けしそうだ。
いったい君はいつになったら、僕にサーフィンを教えてくれるのだろうか。
僕は波の乗り方を知らない。君は知っている。
僕は波の乗り方を知りたい。君に教えてほしい。
僕は波に乗りたいのか。
いや、本当は波になりたい。
僕が君を運ぶ。君を笑顔にする。
だから、サーフィンがしたい。