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ネオ・シャーマニズム

2020.07.29 02:39

https://www.fili.co.jp/therapy/43/detail  【ネオ・シャーマニズム(詳細)】

シャーマニズムとは、シャーマンと呼ばれる特別な人物が、一種のトランス状態に入り、動物や祖先の霊と交流することを通して、予言や治癒をおこなう呪術的宗教の一形態だ。世界各地の文化に普遍的に見られるものだが、近代化された社会では、原始的な迷信としてうとんじられる傾向がある。

ところが、近年の研究によって、シャーマニズムが単なる迷信などではなく、実際の治癒効果を発揮することが明らかにされるにつれ、シャーマニズムを見直そうという気運が急速に高まり、シャーマニスティックな技法を自己の成長や治癒に役立てようという動きが起こってきた。そうした動きを総称して、ネオ・シャーマニズムと呼ぶ。

シャーマニズムの復権

現代におけるシャーマニズム復活の先鞭をつけたのは、1960年代、ヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファンに弟子入りをし、その体験報告をしたためたアメリカの人類学者、カルロス・カスタネダの一連の著作だった。そして、カスタネダと並んで、ネオ・シャーマニズムの旗手として知られるもう一人の人類学者がマイケル・ハーナーだ。ハーナーはみずからの体験を基に、シャーマニスティックな技法を誰もが参加できるワークショップの形で展開した。

元来、シャーマンというものは、共同体の規範からはみだした特別の存在とみなされていたが、ネオ・シャーマニズムの特徴は、シャーマン的な体験を特別視せずに、誰もがなんらかの方法によって意識を変えれば、体験をすることができるとしている点にある。

意識を変える媒体として、もっとも強烈な作用をおよぼすのは、アヤフアスカ、ペヨーテ、マジック・マッシュルームなどの幻覚性植物である。シャーマニズムの伝統においては、実際にこうした植物がほうぼうで用いられていた。しかし、ネオ・シャーマニズムのワークショップでは、こうした植物は使われず、代わりに、呼吸法、チャンティング、祈り、観想法などが用いられる。

トランスパーソナル心理学の創始者の一人であるチェコ出身の心理学者、スタニスラフ・グロフが開発した「ホロトロピック・ブレスワーク」は、激しい深い呼吸を続けることによってトランス状態に入り、深層の無意識を浮かびあがらせる手法だが、トランス状態を活用するという点で、広義の意味でのネオ・シャーマニズムの技法とみなすことができる。

日本でも数年前から、ネオ・シャーマニズムの系統に属するものとして「コンテンポラリー・シャーマニズム」といったワークショップが開催されるようになっている。

創造性の原点へ

「コンテンポラリー・シャーマニズム」では、メインになるのは、徹底した呼吸法である。とはいっても、現代人のほとんどは喉にチョーキングと呼ばれる障害をもっていることが多く、ほとんどの人はなかなかスムースな呼吸ができない。そこで、呼吸法を行なう前には、喉の筋肉をゆるめるためのワークが入念に施される。

長時間の呼吸法は、無意識のエネルギーを身体の動き、発声や発語、叫び、ヴィジョンやイメージというものを通して昇華させ、心身の浄化にいちじるしい効果を発揮する。長時間の呼吸の後は、深いリラクゼーションがもたらされる。さらに、一時的に心理的防衛がゆるめられるので、思いがけない気づきがもたらされる場合もある。

「コンテンポラリー・シャーマニズム」のワークショップでは、呼吸法のほかに、さまざまなイマジネーションのワーク、瞑想、チャンティングなどが行なわれる。特に重視されるのは、イマジネーションの解放ということである。自由なイマジネーションの働きこそ、創造性の原点であり、ひいては生命活動の基本だからだ。

ワークショップのしめくくりとしては、ドローイングを用いたディスカッションをする場合が多い。なにげなく描いた絵の中にも、それぞれの人間の独特な個性が出ているケースが多く、隠された自分の一面を発見するよい機会となる。

シャーマニズムは文化によって抑制された意識のダイナミズムを、非日常的な体験を通して回復させる強力な手法なので、どうしても解放というベクトルが強調されるが、現代社会の中でそれを展開していくためには、しっかりした心理学的なメカニズムの理解も必要である。