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ペルビアンホワイトレッグとは何者なのか。

2020.07.29 10:16
昨今、ペルビアンホワイトレッグがScolopendra gigantea なのか、そうではないのかネット上で議論になっているのを見かけます。


Scolopendra giganteaといえば、

大リンネが1758年、Scolopendra morsitans に次いで2番目に名を付けたScolopendra属のムカデで、世界最大級のムカデとしても有名です。


しかしながら、大リンネがScolopendra giganteaとして記載した最初の標本は何らかの理由で失われ、このムカデが一体何だったのか、不明瞭となりました。



そこでご覧頂きたいのが、本論文。


ベネズエラ北部の個体をScolopendra gigantea として再指定、分類学的な再検討を行なっています。


本論文によるとScolopendra giganteaの棲息地はコロンビア北部、ベネズエラ、トリニダード、マルガリータ島、キュラソー島、アルバ島とされており、ペルーは出てきません。


ペルビアンホワイトレッグは名前の通り、ペルーから来ているムカデです。


棲息地から外れている時点で、現時点ではScolopendra gigantea 路線から離れて考えて良いと思います。


一方、Scolopendra galapagoensis はココス島、ガラパゴス諸島、南アメリカの太平洋沿岸、およびエクアドルからペルー南部までのアンデス西部の斜面に棲息していると書かれています。


ロカリティだけ見ればペルビアンホワイトレッグはScolopendra galapagoensis として考えるのが妥当かも知れません。


さて、ここからはムカデの同定形質である、歯板や曳航肢を確認してみましょう。


スケッチは Scolopendra gigantea

R. M. Shelley&S. B. Kiser(2000)

Neotype designation and a diagnostic account for the centipede, Scolopendra gigantea L. 1758, with an account of S. galapagoensis Bollman 1889 (Chilopoda Scolopendromorpha Scolopendridae)

Tropical Zoology,13:1, 159-170 に掲載されているものです。

まずは歯板の形状。ほぼ完璧に付合します。

こちらベネズエラブラックが片方再生肢のためか、トゲの位置や本数が左右でも異なっています。


1個体しか見れていないため、およそでしか語れませんが、位置関係などはまずまずと言ったところでしょうか。


もし飼育していたり、標本をお持ちでしたら情報をお寄せ下さい。

この部分はスケッチも左右非対称です。


ペルビアンホワイトレッグはCHでベビーから自切などをしていません。

こちらも微妙な雰囲気。

スケッチの方も左右で本数などが異なるため、完全に合致するわけではないようです。


実際のところ、数量を見ないと同定は難しいですね。

直上の写真はペルビアンホワイトレッグです。第1歩肢の腿節に棘がありますね。

第2歩肢以降にはありません。つまりScolopendra galapagoensis の特徴と合致します。


歩肢のトゲに関しても確認が出来ました。(ベネズエラジャイアントの方は標本が硬直してしまい、肉眼での確認となります。)

ここに関してはかなり詳細にみる必要があるため、後日追記をする必要がありそうです。


2021.3.27 修正

最後、まばらに毛の生えた触角節 (ここでは便宜上、疎毛触角節と呼びます。)

これも2種を分類するカギと書かれています。

こちらが根本付近の疎毛触角節、

こちらは先端付近の密毛触角節。


根元から第6節目の触角は疎毛触角節、密毛触角節が交差する中間部分でした。

含めても含めなくても疎毛触角節に関しては

ペルビアンホワイトレッグでは左右5:5 または左右6:6となります。

ベネズエラブラックでは左右8:8、または9:9でした。


ペルビアンホワイトレッグはまばらに毛の生えた触角節数を見ればScolopendra galapagoensis に近いようです。

産地情報とあわせると、Scolopendra gigantea より

むしろ Scolopendra galapagoensis に近いような様子になってきました。


また本論文は中国系の論文と異なり、色に関する記述がなく、判断が付きにくい状況です。

※色はあまり同定の参考にはなりません。


第一歩肢の腿節にのみ一対の蹴爪を持つことを含めると

Scolopendra galapagoensisとして考えるが妥当ではないでしょうか。


本記事では写真に不完全な部分ありますが、

さらに個体数(最低でも10以上は必要でしょうか)を見る機会があれば、改めて言及していきたいと思います。


以上から、Terminal Legsではペルビアンホワイトレッグを Scolopendra galapagoensis として扱っています。

ちなみに幼体はこのような姿です。


特徴がある程度出ているため、幼体の頃から判別は出来そうですね。

ガラパゴスジャイアントについても、書いております。


南米オオムカデも一度、整理が必要そうです。

アジア産オオムカデをまとめた書籍を発行しています。

南米と共通する部分も多いため、ぜひご覧ください。


ペルビアンホワイトレッグ

ペルビアンジャイアントとも呼ばれています。


アルバゴールドについてはこちら。



参照:

R. M. Shelley&S. B. Kiser(2000)

Neotype designation and a diagnostic account for the centipede, Scolopendra gigantea L. 1758, with an account of S. galapagoensis Bollman 1889 (Chilopoda Scolopendromorpha Scolopendridae)

Tropical Zoology,13:1, 159-170


スケッチ

R. M. Shelley&S. B. Kiser(2000)

Neotype designation and a diagnostic account for the centipede, Scolopendra gigantea L. 1758, with an account of S. galapagoensis Bollman 1889 (Chilopoda Scolopendromorpha Scolopendridae)

Tropical Zoology,13:1, 159-170