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レオナルド・猫One〜🐾

「創世〜ミシュタルスシリーズ」

2020.07.29 13:17


【異質の存在】


ナレーション:

廃墟となったシティタウン、瓦礫が転がる中…影が動く

誰もいなくなったひとつの街で、無表情のまま…彼は、瓦礫に腰をかけている


リャンティ:

「つまんない…誰も僕に…喜びを与えてくんない…

もっと踠(もが)いてくれれば、楽しみも湧くのになぁ…ちぇ…」


ナレーション:

至る所で…黒煙が上がり、見渡せば…人であったかさえ、判別不可能な骸(むくろ)たちが、至る所に転がっている

彼が眼を凝らしていると…

息を残すものがふと立ち上がり、

その場から逃げようとするのを目の端で捉えると…

彼は嬉しそうに立ち上がり足音もたてないまま…その息を残すものへ忍び寄った

リャンティ:

「ねぇ…まだ生きてる?兵士さん…なら、僕と遊ぼ?」


兵士:

『く、くるなぁバケモノ!!!』


リャンティ:

「ひどいな…僕は君と同じ生き物だよ?」


兵士:

『黙れ…バケモノ!!この街を生身で…1日で廃墟に変えたお前が…バケモノじゃなければ…なんだと言うんだ!』

リャンティ:

「廃墟?

そんなの興味ないよ?

僕は生きた人達と戯れたいだけなんだ

一緒に楽しみたいだけなのに…

すぐ…離脱しちゃうんだもん」


兵士:

『ヒトを遊びの道具にする奴が、同じ生き物だとよく言ったな?!』


リャンティ:

「道具?

違うよ…鬼ごっこでしょ?

僕が鬼で…捕まえる遊び

僕はその遊びだけを叩き込まれてきたんだ…

道具だなんて思ってないよ?」


兵士:

『クソ野郎が!!!!』


ナレーション:

兵士は持っていたライフルを彼に向け引き金を引いた…

至近距離である

必ず被弾するはずの距離で発砲した兵士の目の前で…

彼は見えない動きをしたかと思うと

指先でその銃弾を摘まみ取り

見せつける様に兵士の顔の前へ突きつけた


リャンティ:

「お兄さん…こんなのじゃ…僕は殺せないんだよ…殺すなら……僕の体の中から破壊するもの…必要かもね?」


兵士:

『うわぁぁぁぁぁ!!!!!』

リャンティ:

「お兄さん…もっと強いのかなぁって…思ってたのに…あーあ…漏らしちゃった…

僕…汚いのは嫌いなの…

ごめんね?お兄さん…バイバイ」


ナレーション:

摘んでいた銃弾を軽く指先をクッと振り上げて振り下ろすと、兵士の頭にその弾が打ち抜き…内から弾けて飛び散り…兵士はみるも無惨な最期を遂げた…


リャンティ:

「…汚いのがふえちゃった…

ほんと、つまんない…

鬼ごっこ終わっちゃった…

また次の場所に…行こうかな」


ナレーション:

立ち上がり見下すような視線を投げかけ、空を仰ぎながらふと我に返った表情を浮かべ、彼は歓喜をあらわにした。


リャンティ:

「そうだ!テティに抱きしめてもらいに行こう

今日も全員捕まえたよ!

って教えてあげなきゃ!」


ナレーション:

小雨が降り始め…廃墟となった街を背に…彼は…一瞬空を見上げ手を伸ばし何かを掴む動作をしたかと思うと…次の瞬間その場から消えていた…


【場面転換】


ナレーション:

暗闇が広がり森の中に小さな灯りが灯る

木々にがその家を覆い隠している

その灯りが灯ったのを確認して、影が動いたと思うと扉をすり抜ける様に、その影は部屋へ忍び込む


テティス:

『リャンティ…御行儀わるいよ?』


リャンティ:

「驚かせようと思ったのに…テティは本当にすぐわかっちゃうんだもん…つまんない…」


テティス:

『リャンティはつまんないが口癖ね…

困った子…ご飯はこれからよ?

お手伝いしてくれる?』


ナレーション:

小さな小屋の中で手際よく夕食の用意をこなしていくテティ

リャンティは隅っこに体を丸めながらスヤスヤと寝息を立て始めた…


テティス:

『寝ちゃったのね、リャンティ。本当に…猫みたいなんだから…

風邪ひいちゃうよ?』


ナレーション:

温かな毛布をそっと体にかけると、更に気持ち良さそうな寝息が聞こえ始める


テティス:

『きっと可愛い顔して寝てるんでしょうね…みることは叶わなくても気配で頭の中にみえてくるわ♪』


ナレーション:

クスっと小さく微笑むと残りの材料を手際よく切りそろえ鍋に火にかける…

しばらくすると優しいミルクシチューの香りが部屋に広がり始めた

お皿を並べてシチューを注ぎ、部屋の端で寝ていたリャンティを起こそうと思った次の瞬間…

テーブルの前でスプーンを握りめてリャンティが座っている


テティス:

『…相変わらずの素早さね(笑)』


リャンティ:

「お皿の音が聴こえて良い匂いがしてたから飛び起きちゃった」


テティス:

『ふふ…お子様♪』


リャンティ:

「違うもん!僕はもうお子様じゃないんだからね!」


テティス:

『はいはい…可愛い可愛い♪』


リャンティ

「テティはすぐ子供扱いするけど…れっきとした17歳を迎えた青年だよ?僕は!!!」


ナレーション:

しなやかな動き、俊敏性、洞察力、本来ならとても凛々しく成長していたのだろう…

だが、リャンティの体は12歳の少年のままの容姿で外見は止まっている

5年前の「あの日」から…

リャンティの身体は…成長を別のものに変換されることを余儀なくされた…

そしてテティもその時に両眼の視力を失う事となった

「バルデンの魔王降臨の日」

1つの町で起きた科学実験場の爆発事故

概要は伏せられ謎のままになっている。

が…そこで光を浴びたものは視力を失い、また別のものは身体が溶け、また別なものは原因不明の化学反応を起こし…ヒトでありながら人と違うものへと姿を変えた…

その町の爆破で1つの街は死滅し…生き残ったものは子供が僅か数名

その生き残りの名簿の中に…

リャンティ・シレン12歳

テティス・オルガ16歳

ルーシィ・エレノア9歳

マルコス・ブリティッシュ18歳

……計7名

記された名簿は機密事項として国に保管され、生き延びた子供は死亡扱いされ、国の秘密機関に収容された。

町一つが全滅、生存者無しとされ、最大の爆発事故の惨事だと人々の記憶に刻まれた…


リャンティ:

「テティ…これすごく美味しい!僕はテティの作るシチュー大好き!おかわりある?」


テティス:

『ありがとう、あるよ!身体は小さくても、本当に食欲旺盛だね!まだまだ成長の時だもんね!』


リャンティ:

「パンも美味しい!今日ね?鬼ごっこしてきたんだ!」


テティス:

『え?』


リャンティ:

「白い服を着た大人達にいつもみたいに呼ばれてね?

椅子の上に座らされたら、頭の中に映像が入り込んできて…

そこで鬼ごっこしてきなさいって言われたんだ!

だからいつも通り…

頭の中にある映像を元に、その場に辿り着いた途端に「スタート!」って頭の中で号令が鳴り響いた。

だからワクワクしながら、捕まえたの!そして今日も全員捕まえたんだよ!テティ!すごい?!」


テティス:

『…リャンティ…来て?』


リャンティ:

「…どうしたの?怖い顔…して…」


テティス:

『リャンティ…あなたは優しくてとても良い子…素直で…。ダメなの…傷付けちゃ、本当はダメなんだよ…』


リャンティ:

「テティ…泣いてるの?僕のせいで…泣いてるの?!」


テティス:

『違うよ…リャンティ…

だけどね…ヒトは人を捕まえる必要はないんだよ?

話せば人は心が通う…だから鬼ごっこなんて…必要ないんだよ?…リャンティ…』


リャンティ:

「でも…僕は…鬼ごっこで1番になりなさいって…

あの閉ざされた、気の狂いそうな場所でずっと…それだけを…教えられた。身体が焼け焦げて、溶けていく様な錯覚の中で…捕まえたら…その痛みから解放される飲み物を貰えた…。

頭も体も痛くて…生ることの方が辛くて…自分の体を消そうとすれば…気を失う。僕は…自分の手で死ねない…!」


テティス:

『リャンティ…お願い…もう呼ばれても…あの組織の人達のところへ行ってはダメだよ…?リャンティが…壊れちゃうから…』


リャンティ:

「でも…脳内から信号が全身に駆け巡って…。

行きたくなくても!足が勝手に…そこへ向いちゃうんだよ…。テティ…!僕は…、生きてちゃダメなのかな…?人の姿をした…バケモノって…言われたんだ…。僕は…何も…あの日から…変わってないのに…」


テティス:

『愛しいリャンティ…大丈夫…必ず解き放ってあげる…。この見えない楔から…必ず…』


リャンティ:

「テティがいたら僕は平気!優しい気持ちなれる!

テティが笑う顔、大好きなんだ!だから…ずっと僕のそばにいてね?」


テティス:

『リャンティ…話してくれて…ありがとう。しっかり食べたら…ゆっくり寝ようね…』


リャンティ:

「うん!」


ナレーション:

温かな、闇の中に光を灯す時間。だがそれは静かに…何かを吞み込もうとしていた…


【場面転換】

ナレーション:

薄暗い部屋の中で、荒々しい息遣いが響き渡る…


リャンティ:

「嫌だ…テティと約束したんだ…!いかないよ!僕は…もう鬼にはならない…」


兵士:

【無駄だぁ…お前は鬼…そう…バケモノなんだよ!!! ほら…あそこにも…ここにも…目を凝らせ!…もっとよくみろ!!!お前が殺したもの達の魂が…膨れ上がっていくぞ…!!!】


リャンティ:

「やめろぉ…!!!テティ…助けて…僕は…どこに行けばいいの?!」


兵士:

【お前の存在は…人類の害…消えろ…消えろ…消えろ!!!!】


リャンティ:

「害…違う…!!!僕はみんなと変わらない…同じ生き物なのに…うわぁぁぁぁ!!!!」


テティス:

『リャンティ…リャンティ!!!起きて!大丈夫!大丈夫だから!!!!』


リャンティ:

「はっ!!!テティ…!!!」


テティス:

『…私がいるよ…?だから…大丈夫!!』


ナレーション:

うなされるリャンティを抱きしめながら

何度も強く抱きしめながら、優しく諭す。

「時が近づいている…」

リャンティの心の均衡が崩れはじめているとテティは感じていた。

光さえ差し込む事のない、暗い実験室で繰り返し薬物注射を打たれた身体。

見えない恐怖と焼ける肌の痛み…、脳が溶ける様な錯覚…。

その全てが、細胞に刷り込まれていく。

気配だけで物の形や生死を感じ取る。

脳内で繰り広げる空間生存認識と危険察知能力の開花

寝静まるとナイフや銃を持った、半狂乱のヒトが解き放たれ…襲い掛かるモノのなかで生き延びる事が出来なければ「死」を意味する。

「生きる事は地獄の始まり」

だが絶える事を許さない、脳から支配される見えない制御。

「人からヒトへ」

その反動が大きい程…超人的な能力を開花させていく者達…


リャンティ:

「…テティ、くる!!!!!!!!」


ナレーション:

吐き捨てるような言葉とともに、大きな物音をたてて2人の人影がリャンティとテティを取囲んだ


テティス:

『誰?!』


ルーシー:

リャンティ・シレン、テティス・オルガの2人で間違いないかなぁ?


リャンティ:

「人に名前聞く前にお前から名乗れ!」


マルコ:

相変わらず小生意気なガキだ…!姿はあの日から、変わってないのだな…


ルーシー:

私は…ルーシィ・エレノア

彼は…マルコス・ブリティッシュ


マルコ:

勝手に名乗るな!ルーシー!!!…勝手な行動が1番私をイラつかせる…!


ルーシー:

ごめんなさい…マルコ…怒らないで…


マルコ:

いちいち感情を表に出すな…!だから子守は好きじゃない…


テティス:

『エレノア?マルコス?!あなた達はあの魔王降臨の日の…生き残り!?』


マルコ:

久しぶりだな…テティス…相変わらず子煩悩らしいなぁ…


リャンティ:

「僕を子供扱いするな!!!!」


マルコ:

黙れ…リャンティ…!私は…お前が大嫌いなのだ…

生き延びている事に嫌悪感さえ感じる…


テティス:

『マルコ…鋼鉄(こうてつ)の鎧を纏う身体と言われる、破壊者マルコス・ブリティッシュ…』


マルコ:

誰も…私の体に傷をつける事は…出来ない…許さない…それ故に鋼鉄の身体と呼ばれるのだ…私を称えよ…崇めろ…!!!


リャンティ:

「虫唾が走るのはこっちだ!…本当に気持ちの悪いヤツ…!!!テティ…行こう…!こんな奴らの相手してるのは時間の無駄だよ!」


テティス:

『待って…リャンティ。

マルコ、ルーシー、何故2人はここへ来たの?』


ルーシー:

テティス…お久しぶりなのぉ♪

マルコと私がここに来たのは…テティスの回収とリャンティを抹殺しろとの命を受けたからなのよ♪


マルコ:

ルーシー…お前も消されたいのか?


ルーシー:

ハッ…ち、違うわマルコ!私は聞かれたから答えただけ!!!


マルコ:

テティス…この世界を動かしている者達がお前の帰りを待っている…素直に戻ってこい…そして…リャンティを…殺せ…!


テティス:

『バカな事言わないで!!!誰かを殺すとか殺さないとか!もうそんな事しない!あそこから出たあの日から…私はもう誰かを殺めることはしないと誓った!

私はヒトには成り下がらない!リャンティは私の命に変えても…守り抜く!!!』


ルーシー:

テティスって異質的存在って聞かされてたんだけど…ただの頭の悪い人なのね♪いっそ2人とも殺しちゃおう?マルコ♪


マルコ:

…ルーシー。調子に乗るな…!


ルーシー:

…ごめんなさい…怒らないで…マルコ… 


マルコ:

テティス…お前の意思は受け取った…帰るか帰らないかは…リャンティを殺してから決めようか…

…死ねぇ…リャンティ…!


ナレーション:

稲妻のような光が辺りを包んだと思った次の瞬間…

マルコの指先が…槍へと変化してリャンティの心臓を目掛け振り下ろされた。

だが寸分の所で体を翻し、攻撃をかわしたリャンティは激しくマルコを睨みつけ、唸り声を上げた


リャンティ:

「あはは…!僕を殺す?

僕も死んだ方が…楽になれるかなぁ…なんて思い始めてたんだけど。だけどね?これだけは言って置いてあげる!マルコ!お前だけには殺されない!

僕もね、アンタが大嫌いだから!!!!」


ナレーション:

小さな石を拾いあげ、電光石火の如く指先から弾き飛ばす。

それはまるで散弾銃のように砕け散りながらマルコに襲い掛かった!

だが彼は、それには動じず指先をクッと持ち上げ、先程まで槍だった指が盾へ変化し、凶弾を弾き落としたのだ!


マルコ:

意思だけは気が合うようだ…リャンティ…死ねよ…消え去れ…!


ナレーション:

盾は再び鋭い槍へ形を変え、リャンティの右肩を貫(つらぬ)く


リャンティ:

「うわぁ!!!うぅ…初めて…傷ついちゃった…僕の身体…」


テティス:

『やめて!!!2人ともお願いだからやめて!!!』


ルーシー:

ねぇテティス♪リャンティはマルコには…勝てないね♪あっという間にリャンティは死んじゃうから、身支度整えといてね♪


テティス:

『させない!殺させないわ!!!リャンティは…傷つけさせない!!!!』


ナレーション:

テティスが叫び終わるのと同時に…身体から激しい光が溢れ出しす。

テティスがリャンティに指先を伸ばすとその柔らかな光が体を包みこんでいき、その芯へと光が吸い込まれるのと同時にテティスは気を失った


リャンティ:

「…テティ!!!!」


ナレーション:

テティスを抱え、リャンティはマルコス達との間合いをとる中で、体の奥から不思議な感覚が呼び覚まされる気がした。


リャンティ:

「な!?…何これ…!体の奥から…何かがあふれてくる…何か違うものが更にみえる…」


マルコ:

小賢しい…!ルーシー空間を塞いでねじ曲げろ…


ルーシー:

わかった♪


ナレーション:

ルーシーが指で線を描き始めると見えない壁が現れ、さらにそれをねじる仕草を見せた瞬間!

空間は捻じ曲げられ、まるで箱の様に切り取られたのだ!


ルーシー:

私の得意なお絵かきで…空間を切り取り捻じ曲げて、別空間を作る。

私が解かない限り…この空間からは抜け出せない…

リャンティ…逃げ場所ないよぉ?終わりだね…♪


ナレーション:

テティスを抱き抱えたまま…リャンティはそっと静かに目を閉じた


リャンティ:

「身体が熱い…!!そして…体の奥底から優しい音色が聞こえてくる…」


ナレーション:

気を失っているテティスを抱き抱えるリャンティは、明らかに戦況は不利だった。

だが、それすら凌駕するほど全身の細胞が研ぎ澄まされていくのがわかる。


マルコ:

さぁ…死への祈りは…済んだか?


リャンティ:

「そんなものは必要ない!…僕はきっと…お前には…負けない!」


マルコ:

とことん癪に触るやつだ…!では、無残に死ね…リャンティ…!


ナレーション:

マルコは指先全てをリャンティに向け眼を見開いた。

それと同時に指先全てが鋭いピックのように尖り、リャンティの頭部めがけて伸びていく!


リャンティ:

「頭、心臓、肺…3点重視で指が襲ってくる…

左へ飛び交わし、そのままマックススピードでマルコの心臓めがけて飛ぶ…。

マルコは指を戻すスピードが間に合わないから、左手で俺の体を刺そうとする…左肩の筋肉細胞を張り巡らせ中枢神経から外して受け止め、この右手でこの石を鉄も貫く弾丸スピードに加速させて…終わらせる!」


マルコ:

ぐはっ!!!!な、なんだと?!!!!

俺の鋼鉄の体をも撃ち抜くなど有り得ない…

そして一体何故…?!俺の攻撃が分かったぁぁぁ?!!!俺の行動をどうやって先に読み取ったのだ!!


リャンティ:

「先見の瞳…全ての行動が…事が起こるより先に見える…これがテティスの力…全部…テティスのおかげなんだ…!」


マルコ:

テティスの回収命令…成る程、そういう理由か…

テティスそのものが大きな鍵を握り…俺たちは捨て駒だというのか…!!!許さない…許さないぞ!!!

ミシュタルス様はこれをお望みなのか?…聖也…聖也め!!!!うおおおおおおおおお!!!!!


リャンティ:

「マルコやめろ!!!鋼鉄に身体を変化させ体内から爆発させる気か?!!!」


マルコ:

俺は…俺は…!!!支配されない!!!もう誰にも支配されないんだ!!!!


リャンティ:

「何が起きるのか手に取るように見えるのに…

それを防ぐ手だてがない…テティスを僕は守れない…いやだ!!!やめろぉぉぉ!!!」


マルコ:

テティス回収など糞食らえだ!!!ここで全員…死ねばいい!!!!チリと消えろぉぉぉ!」


ナレーション:

マルコの身体が電流のような光を帯びて、激しい落雷となり箱の空間を振動させる。

次の瞬間、マルコの身体が鉄の破片となり砕け飛んだ…

この破片を浴びれば、身体は蜂の巣になり絶命するだけである!


リャンティ:

「テティス…ごめんね…僕は守れなかったよ…だけど、テティスと一緒なら、僕は幸せだよ…?」


ナレーション:

リャンティはテティスの体においかぶさり抱きしめると、覚悟を決めて目を閉じた。

だが…いつまでも痛みはリャンティを襲ってはこない…


リャンティ:

「死って…痛みさえ感じない程…呆気なく終わるんだね…テティス…なんだか驚きだよ…(笑う感じ)」


ルーシー:

ねぇ…バカな事言ってないで…さっさと眼を開けて目の前の状況を確認して、起き上がってよ!」


リャンティ:

「…え?あれ…?!あんたもまだ生きてたんだ…!」


ルーシー:

アンタの事は本気でほっとけばよかったかな…(吐き捨てる様に)

あの瞬間…マルコは…私までアンタ達と共に殺すつもりだった…!信じられない!!!

どんなにキツくて冷たくても…私の存在を認めてくれていると…思ってたのに…

なのに…この私まで殺そうとしたんだよ!!!!


ナレーション:

マルコがいた場所に目をやると、

人ひとりぐらいの切り取られた空間の中で、鋼鉄の破片達が縦横無尽(じゅうおうむじん)に激しくぶつかり合っている


リャンティ:

「そっか!あんたが…空間を切り取り、ねじ曲げて箱にしてくれたんだ…!

ありがとぅ…ありがとうルーシー!!!」


ナレーション:

リャンティは喜びの余り飛び跳ねると、力一杯ルーシーの体を抱きしめた!


ルーシー:

ちょ、ちょっと!!!

なにしてるの!アンタ達のためじゃないわよ?!自分の命を守っただけなんだから!


リャンティ:

「それでも!ルーシーのおかげで僕もテティスも守られたんだ!!!!

僕達を助けてくれて本当にありがとう!!!!」


ルーシー:(抱きしめられ温かみに涙が溢れる感じで)

あったかい…人の肌って…あたたかいや…


ナレーション:

ルーシーの目からこぼれた涙が、リャンティの肩を濡らしていく

力一杯抱きしめたルーシーの背中を…そっとあやす様にリャンティが撫でると、ルーシーは感情を全て吐き出す様に嗚咽をあげた


ルーシー:

ありがとう…ね。なんかずっと胸に刺さってたものが流れて…気持ち、楽になったよ…


リャンティ:

「それは良かったよ♪!僕はいつもテティスに抱きしめられると、心があたたかくなれるんだ!

あっ?!ところであの箱って…マルコの鋼鉄の肉弾の衝撃で壊れたりしないの?」


ルーシー:

箱に見えるだけで形は本当は無いの。

空間をねじ曲げてるからそれを解けば、マルコの破片はこの世界へ飛び散るかも知れないかなぁ?

…かなりな衝撃を解放しちゃうかも知れないけど…


リャンティ:

「それ…想像すると怖すぎなんだけど…」


ルーシー:

マルコの意識は身体を鋼鉄へ自在に変化させていた…

でもこうなった以上、感情はその破片には宿されてはいないと思うの…

目の前のマルコはただの鋼鉄と成り果てた物体でしかないね…


リャンティ:

「あのね?ルーシー、すごく気になってるんだけど…マルコが言ってた聖也って一体誰?

悪魔の日の生き残りなのかな?そして…ミシュタルスって何なの?」


ルーシー:

アンタ本当に…よくもまぁそんなんで生きながらえてこれたものねw

バカは世にはばかるからなのかなwwww


リャンティ:

「いちいち…バカバカって言わないでよ…!

全く…僕はバカじゃ無いんだから!多分…(ちょっと不安そうに否定)

テティスがいろんなことを教えてくれたから、僕なりには世界のこと知ってるつもりだよ!」


ルーシー:

はいはいw

なんかアンタ、見た目が子供だからあれだけど本当はアタシより年上なんだもんね…

まぁいいや!

ミシュタルス様は、全知全能の神として存在する樹(き)と私達の周りでは言われてる。

でもその存在を周りで見た人はいないわ…

ミシュタルス様は声を発し、未来を構想していく力を宿すものとされ、その声を聞く事ができるのが…

魔王降臨の日に生き延びて選ばれた7名の子供の1人、「聖也」…


リャンティ:

「僕、聖也ってやつのこと…全く記憶にないけど…?」


ルーシー:

あるわけないでしょうね…

神に選ばれし子供って意味を持つ名前。

悪魔の日ですら…まるで眠る様に光に包まれた状態で発見された…

まるで何事もなかったかの様に無傷で…

あの忌々しい化学兵器の産物さえ身を守る光の中で、身体に融合させたみたい。

だから、私達が運ばれたあの施設には、聖也はいなかったの…


リャンティ:

「なんか…聞くだけでムカつくね…

間違いなく…嫌な奴に決まってる「聖也」ってやつは!」


ルーシー:

アンタ…馬鹿正直なのか…無知なのか…見極められないw

聖也は今、ミシュタルス様の声をこの世に届ける伝道者として地位を確立した。

まるで神に近い存在として君臨してるって話だよ?

彼の特殊能力は…「光のバリケード」

誰にも触れさせない力と言われてる


リャンティ:

「ふーん…本当にどうでもいいけど、戦闘能力は低そうだよね」


ルーシー:

私もも聖也の姿を見たことはないんだけど…

でも聖也の話はたくさん聞いた。

マルコの話では…聖也の前で…触れることさえできないまま圧倒的な力の差を見せつけられたって。

それ以上マルコは何も語らなかった…

その日以来マルコが聖也の話をするときだけは…恐怖の色を滲ませるぐらいだから…余程すごいんだって思ったの。


リャンティ:

「へぇ…それはおもしろそうだなぁ!」


ルーシー:

アンタ…命いくつあっても足りないタイプね…テティスの事…ちょっと可哀想に思えてきちゃった…


リャンティ:

「あ!!!!!そういえば!

テティス、まだ意識戻らないけど!!!

大丈夫なのかな?!!」


ルーシー:

覚醒を起こすと、マルっと一日は目を覚さないって聞いたことあるけど…

ベッドで寝かせてあげれるといいんだけどなぁ…

その為にはまずこの空間を元に戻さないと…!


ナレーション:

ルーシーは目の前の、マルコの破片が飛び交う空間を指先で押しつぶす様な仕草をした。

するとその空間は圧縮がかかり押し潰され、薄い一枚の小さな板の様に変化した!


リャンティ:

「なに?!ルーシー!なにしたの?!!!」


ルーシー:

空間を解放するわけにはいかないから、マルコの空間だけ圧縮をかけたの♪

そうすればその空間を持ち運べて便利だし、えへへ♪コレが私の最大の能力かな?♪


リャンティ:

「ルーシーすごいね!!!!なんかカッコいいね!!!」


ルーシー:

ま、まぁね♪

なんか本当、拍子抜けするwさぁ、空間元に戻すね!


ナレーション:

ルーシーが掌で線を消すような仕草をした途端…

切り取られ別空間だった場所が、テティスと暮らす部屋の空間とつながり、重苦しさが消えた。

 と、同時に自然の空気が流れ込み溶け合う。


リャンティ:

「ルーシー、いろんなこと教えてくれてありがとう。テティスを守ってくれて…ありがとう」


ルーシー:

お礼はいいから、とりあえず…!

テティスをベッドに運んであげて?

私は…戻ればきっと消される。

だったら、テティスが目を覚ましたら聞きたいこともあるしぃ?

アタシもここでお世話になっちゃおっかな♪


リャンティ:

「わぁ!!!ルーシーも家族になるんだね♪」


ルーシー:

家族になるとは言ってない!!!!


リャンティ:

「ふふ♪ルーシーって素直じゃないね♪」


ルーシー:

むぅ…!って…、気が抜けたらお腹減っちゃった…


リャンティ:

「うんうん!本当だね…!

あ!!!テティスが作ってくれたシチューがまだあるから、部屋を片付けて一緒に食べよう!」


ナレーション:

ほのかに灯った部屋の明かり…

外はほのかに白(しら)み、また新たな朝を迎えようとしている。

新たに家族の仲間入りしたルーシーと共に…

物語は更なる道を…刻むこととなってゆく

    

   【第一部終了】